monologue
夜明けに向けて
 




先日、BSニュースで今年のノーベル文学賞に選ばれた英国の劇作家、ハロルド・ピンター(Harold Pinter)氏(75)の受賞記念講演の模様が流れた。かれはガンで入院中なのだが「芸術、真実、政治」というテーマで車椅子で講演した。
ブッシュ大統領とブレア首相の二人をサダム・フセイン政権の大量破壊兵器保有をでっち上げ無辜の市民を大量殺人をした廉(かど)により、「戦争犯罪人」として国際刑事裁判所(International Criminal Court )に訴追するよう呼びかけていた。一般の反戦家ではなくノーベル賞作家が公然とこういうことを表明したのであきらめかけた民衆や世界の識者の正義感を覚醒させた。

 かれハロルド・・ピンター氏の経歴をみると
1930年10月10日、ロンドン東部ハックニー(Hacney)で、ユダヤ系ポルトガル人の洋服屋の息子として生まれる。
第2次世界大戦中には疎開し、14歳の時にロンドンに戻ってくる。
1949年には兵役を拒否し、危うく投獄されそうになるが罰金で許されている。
1951年に舞台俳優となった後、1957年に戯曲「部屋」(The Room)で劇作家に転身。
アパートの一室の占有権をめぐる3人の争いを描いた59年の「管理人」で、劇作家としての地位を確立。
代表作に「昔の日々」(70年)、「誰もいない国」(74年)「料理昇降機」(57年)などがある。 映画のシナリオやラジオの台本も手掛ける。

 そして近年政治的活動にかかわり、99年の北大西洋条約機構(NATO)によるユーゴスラビア空爆に抗議。01年のアフガニスタン空爆やブッシュ政権のイラク侵攻をナチス・ドイツにたとえてイラク開戦に反対の立場を鮮明にし、反戦集会で自作の詩を読む。
今年2月、劇作からの引退を表明し、イラクからの英軍撤退を求める政治活動に専念すると発表。
そして今年10月13日に
スウェーデン・アカデミーは、今年のノーベル文学賞をハロルド・ピンター氏に授与すると発表したのであった。

 こうして見てみると、かれは突然、あの講演でブッシュ大統領とブレア首相を批判したわけではなかった。
ユダヤ系ポルトガル人として生まれ差別を受けてナチスの迫害を生き延びたのだ。
かれを育てたものはそんな逆境だったのだろう。戦争を好む為政者たちを常に批判の目で見て生きてきたのだ。
:現代も為政者たちは様々な口実を設けて戦争を起こし民衆を騙(だま)し侵略をつづける。
そしてピンター氏は今ガンの病床にあっても人々の目を覚まさせようと「芸術、真実、政治」のメッセージを発し続ける。このような病人に任せきりにせずわたしたちも自立してかれら現代の為政者の為すことの正否をはっきり見分けなければ申し訳ない。
fumio



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