「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子の愛情飢餓

2006年02月13日 19時39分17秒 | 心子、もろもろ
 
 普通子供は、乳児期に親から全面的に抱かれ、何の心配もなく育っていくことができます。

 子供は両親から無条件で愛護されることによって、自分は大切にされているんだ,この世に生きていていいんだという、人間として生きる基本的な精神が無意識に養われていくわけです。

 ところがこの時期に相応の愛情が与えられず、身体的にも快適なアタッチメントがないと、子供は自分の存在を肯定できず、安心して愛情を信じることもできなくなってしまいます。

 それは成長してからでは取り返しが付きません。


 心子も右へ左へ浮き草のように漂い、愛情を欲しながら人の愛情を疑う、非常にアンバランスな心性を持つようになってしまいました。

 心子の摂食障害はこうした魂の渇きの現れでしょう。

 愛情を食べ物に置き換えてしゃにむに取り入れたり、その結果破綻して、反動で食べ物=愛情を拒絶することを繰り返すのです。


 『愛情飢餓』。

 それが心子の生きざまを縁取る根源的な苦悩でした。

 幼子が最も必須とするときに獲得できなかった親の愛情を、大人になってから死に物狂いで取り戻そうとする無意識の渇望です。

 しかし、それはどこまでも続く茨のような道なのでした。

(続く)
 
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