「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

傷ついた治療者(1)

2006年02月24日 20時33分03秒 | BPDの治療について
 
 以前の記事で、僕は「ユング心理学研究会」という所に所属していることを書きました。

(書庫「心理」1月29日「ユングの連想実験(1)」)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/u-jung/Index.htm

 今月は「傷ついた治療者をめぐって」というタイトルでセミナーがありました。

 傷ついた治療者でなければ患者を癒せないのか、というテーマです。

 そのなかで次のようなことが言われました。


 治療中、患者が治療者に起こす投影〔*注〕は、治療者に不安を引き起こしたり、攻撃的なものとして感じられる。

〔*注:自分の中のネガティブな感情や難点を、自分のものとして抱えるのは堪えられないため、それを相手のほうへ投げ映し、相手のものとして移しかえてしまうこと。

 自分の心を守るための無意識の防衛機制。〕

 しかし、治療者は患者から受けたこの傷(逆転移)を、引き受けることが重要である。

 治療者の個人的な傷がうずくことで、深い治療関係になる。

 治療者は逆転移を分析し、それを活用して患者を癒すことができる。

 これを患者の側から見ると、患者の無意識の働きがあるように思われる。

 投影は患者が自分の不快な感情を取り除くためだけではなく、ポジティブな目的も含まれている。

 つまり、患者が治療者の中に傷つきを見い出したり、作り出したりしようとしている。

 そのことによって、無意識に治療状況に持ち込もうとしているかのようである。

(続く)