「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子との付き合い方(1)

2006年02月19日 18時26分04秒 | 心子、もろもろ
 
 心子と向き合うときに重要なのは、彼女の発言や行ないに「巻き込まれないように」極力努めることでした。

 彼女の言うことを真に受けて困惑したり怒ったり、巻き込まれてしまうと共倒れになり、それでは元も子もありません。


 例えばあるとき、心子は生きる望みを失い、悲憤に駆られて僕に詰め寄ってきました。

「どう生きてったらいいの!? 彼氏なら教えて! 

 あたしの彼氏はちゃんと答えられる人であってほしいの! 

 答えられなかったら別れるからね! 

 彼氏はあたしより全てにおいて上じゃないといけないの!」

 心子の問い詰めに即答できるかどうか、僕は内心うろたえました。

「それも白か黒かを求めてるってことだよ。ひとつの答はないんだよ」

 僕は辛うじて取り澄まし答えましたが、心子は軽蔑的なため息をついて言いました。

「答えられないんだね……これで別れよう」

(続く)
 
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