「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

心子との付き合い方(2)

2006年02月20日 21時25分05秒 | 心子、もろもろ
 
 巻き込まれないようにということが分かっているはずなのに、僕はすっかり彼女の言い草に乗せられていました。

 詰問に答えなければと焦ってしまいました。

 しかし、心子は実際に具体的な答が聞きたくて言っているのではありません。

 もし別のどんな返答をしても、彼女は満足しなかったでしょう。

 心子は自分自身に対する絶望的な怒りを抱えきれないために、ありあまる情念を僕のほうに向けていたのです。

 「別れよう」というのもそのときは本心に他ならないのですが、決して持続的な意思ではありません。


 それらを重々心得て、うろたえないように自分を保つことが僕には必要でした。

 ある程度振り回されるのは仕方ありませんが、バランスを取っていないと二人ともつぶれてしまいます。

 自分の常識的な感覚を頼りにして取り乱さないよう構え、日頃トラブルが重なっても、気疲れしたり嫌気がさしたりしないようにすること。

 それが肝心なのでした。