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Mikuのブログ

「同一労働同一賃金」は、日本にとってプラスを生むか?

2016-05-13 20:44:17 | 政治・国防・外交・経済

[HRPニュースファイル1628]http://hrp-newsfile.jp/2016/2758/

HS政経塾スタッフ 赤塚一範

◆嘘のある言葉

安倍首相が1月22日に行われた施政方針演説の中で「同一労働同一賃金の実現」について触れたように、これに関する話題が増えてきました。

しかし、与野党の言葉には嘘が入っていることに気を付けなければなりません。

◆「同一労働同一賃金」と「非正規雇用の待遇改善」はイコールではない

まず「同一労働同一賃金」と「非正規雇用の待遇改善、非正規社員の正社員化」は同じではないということを指摘しなければなりません。

与野党共に、同一労働同一賃金と非正規雇用の待遇改善を同じように訴えていますが、これは単なる選挙対策でしょう。

同一労働同一賃金は単に、「職務内容が同一であれば、人種、性別、年齢に拘わらず同じ賃金を支払う」ことを意味しているにすぎません。

新自由主義的な改革を推し進めた経済学者の竹中平蔵氏は、あるテレビ番組の中で「同一労働同一賃金と言うならば、正社員を無くしましょうと言わなければならない」と言ったように、これは労働市場の自由化、流動化と共に考えるべき概念です。

◆非正規雇用者の正社員化の間違い

経済学では、完全競争市場であれば、「一物一価」が成り立つ、つまり市場が完全に機能すれば、同じ労働には同じ賃金が支払われると考えます。

簡単に言えば、市場の自由化が重要ということです。例えば定年制について、同一労働同一賃金では仕事内容ではなく年齢で差別しているので廃止しなければならないと考えます。

与野党が言う非正規雇用の正社員化は労働市場の規制を増やす政策で、これにより労働市場はさらに混乱するでしょう。

◆正社員化は新たな失業を生む

景気変動の調整役として「非正規雇用」を活用することに対して数多くの非難があり、これが正社員化の要求の原因となっています。

しかし、現実として多くの非正規雇用者が、正社員ほど責任のない立場でいたいと考えています。

もし政府が企業に正社員化を命令するならば、企業は景気変動に対応するために、雇用者数を減らすでしょう。それは結局、新たな失業の原因となるのです。

◆日本と欧米の違い

また、日本で欧米と同じタイプの、同一労働同一賃金は簡単には実現できないと言うことも指摘しておかなくてはなりません。

その理由は欧米との雇用形態の違いにあります。欧米では職務に応じて賃金が支払われる「職務給」が採用されており、職務ごとの同一労働同一賃金がある程度実現されています。

ところが、日本では、正規雇用では、職能ごとつまり仕事能力ごとに賃金を支払う「職能給」が多い一方、非正規雇用では「職務給」が採用されているように複雑な労働市場になっています。

◆判断しにくい仕事能力

例えばアメリカでは「職務給」が厳格に守られている国として有名です。時給の高い経営管理者が掃除などをすると、その掃除を生業としている人から「仕事を奪った」と訴えられることすらあるそうです。

このような「職務給」は仕事の責任の範囲が明確で、同一労働同一賃金が実現しやすいのです。

一方、日本では「年齢が高くなれば、経験も増え、仕事能力も上がるだろう」という「職能給」が採用されています。

この仕事能力とは、トータルの仕事能力、その組織特有の仕事能力を含み、欧米のように職務で分けて考えることができません。

職能は同じ組織に長くいた方が蓄積されるので、年功序列型の賃金体系と流動性の少ない労働市場が生まれやすくなります。

日本型の「職能給」から欧米型の「職務給」への移行が同一労働同一賃金と同列に議論されるのは、このような原因があります。

◆「職務給」「職能給」の二者択一ではなく、「多様化」を!

政府が言うように確かに、同一労働同一賃金の移行は、女性やお年寄りの雇用増加に貢献するでしょう。

なぜならば、仕事の責任範囲が明確であるほうが、「ワークライフバランス」が取りやすく、体力の衰えたお年寄り、子育てのある女性にとって多様な働き方が選択できるからです。

ただ、一方で、「職能給」のような従来の日本型の雇用形態を好む企業もあるでしょう。

どちらの賃金形態を選ぶにしても一長一短あるのでこの選択は政府ではなく各企業に任せるべきで、欧米の雇用形態の強制はかえって企業の競争力を減退させることにもなりかねません。

必要な事は労働市場への規制ではなく、労働者と企業側がお互いの自由意思にもとづいて賃金水準を決定できる労働市場です。

◆最終的には生産面が大切

結局のところ、賃金水準をどうするかというのはあくまで分配の議論です。

分配をどれだけ考えても、今あるパイ以上に分けることはできません。どれだけ富を生んだか、生産性の議論こそ本質です。

アメリカの自動車王ヘンリー・フォードは、労働者の待遇改善に努めたことで有名で、当時の平均よりも2倍も高い5ドルもの日給を払いました。

このおかげで、労働者もがんばれば車が買えるということで、フォードの車はますます売れました。

安倍首相の賃上げ要請などもこの好循環を狙ってのものですが、しかし、この労働者の待遇改善は、フォードシステムによる劇的な生産性の向上があったから可能となったのです。

生産性の向上なしに賃金を上げればたちまち、会社は潰れてしまうことを忘れてはいけないのです。

 

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