インドネシア、マレーシア、フィリピンの3カ国は、海洋テロ対策で共同パトロール活動を始めることを発表した。18日付日経新聞などが報じた。
この背景には、中国が南シナ海で軍事拠点化を進め、周辺国との緊張感を高めていることがある。中国は、南シナ海のほぼ全域を自国領と主張しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)の、一部の国の海域に中国船が頻繁に侵入している。
冒頭の3カ国の中間に位置するセレベス海は、南シナ海のシーレーン(海上交通路)の代替ルートとしての役割もあるため、この海域で、航行の安全が確保されることは、日本や韓国にとっても重要だ。
この3カ国の最近の動きを見ると、中国の海洋侵出に対する防衛体制の強化を急いでいることが分かる。
中国漁船問題で泣き寝入りしないインドネシア
インドネシア領ナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)で3月中旬、違法操業中の中国漁船を、インドネシア当局が摘発した際、中国海警局の公船に妨害され、漁船を奪われる事件が起きた。
これを受けて、インドネシア軍は総額約4兆3000億円に上るナトゥナ諸島の防衛強化計画をまとめた。計画によると、ナトゥナ諸島に潜水艦基地を建設し、2024年までに12隻以上の潜水艦の配備を行うという。
ASEAN諸国と協力して中国をけん制したいマレーシア
中国海軍はこのほど、マレーシアの排他的経済水域(EEZ)内にあるジェームズ礁の近海で実戦を想定した艦艇の補給演習を行うなど、挑発的な行動を取っている。
マレーシアのヒシャムディン国防相は3月、「一国では(中国の)攻撃的行為を止めることはできない」として、同じASEAN加盟国で支え合い、「大国(中国)の行為を抑制する」と強調していた。
強硬姿勢の新大統領による舵取りが注目のフィリピン
フィリピンでは5月に大統領選挙が行われ、現ダバオ(南部ミンダナオ島)市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏が圧勝した。ドゥテルテ氏は、南シナ海で中国と領有権を争う南沙諸島についても、一時は対話や協力の可能性を探るとしていた。
しかしその後、一転し、「フィリピンの旗を立てる」と強硬姿勢を示した。今後、新大統領の下で、フィリピンの防衛体制がどう強化されるのか、注目されている。
ASEAN諸国の日本への期待
南シナ海で中国と領土問題を持つ東南アジア諸国は、日本にもアジアの平和を守る大きな役割を果たすことを期待している。
日本では、集団的自衛権を含む安全保障関連法が2015年に、可決・成立した。当時、日本国内では反対派の活動が連日報じられていたが、ASEANのほと んどの国は、「世界平和維持のため、正しい役割を果たす機会になる」(フィリピン)、「アジア太平洋地域と世界の平和と安定、発展のために地域の大国の1 つである日本が積極的に貢献していくことを期待している」(ベトナム)と歓迎していた。
南シナ海にシーレーンを持つ日本は、ASEAN諸国と関係を深め、南シナ海やセレベス海を監視する航空機や船舶を提供するなどの具体的な支援を行い、中国包囲網を強化する必要がある。
(小林真由美)
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