行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

国籍法についての考察⑨

2016-08-24 09:11:39 | 行政書士のお仕事
 前回の⑤のケースですと、

 日本人父と外国人母の婚姻外の子には、

 日本国籍がある一方で、

 ②のケースのように、母が日本人であれば、

 日本国籍が無なくなってしまいます。

 その理由を皆さんは説明できるでしょうか?

 私も、当初はその理屈がさっぱり分からず、

 血統的には日本人であったのに、

 日本国籍が回復出来ない多くのペルーの方々に

 不公平だと散々言われた経験があります。


 さて、その理由ですが、以下のとおりです。

 先ず、日本人の母の子ですから、

 出生時に日本国籍があります。

 ですので、国籍留保の義務が発生していますが、

 国籍留保の届出を怠っていたとすれば、

 出生時点に遡って、その子は日本国籍を

 喪失してしまっていたのです。

 しかし、日本人父から後日認知されたから、

 それで日本国籍が再び認められるでは?

 と、当然ながら考えるのですが、

 一旦、日本国籍を喪失した者については、

 認知による再取得は認めないとの

 法務省の見解が既に出ているのです。

(昭和29・11・15民事五466号回答)

(昭和37・12・13民事甲3354号回答)

 従って、確かに不公平のようには見えますが、

 同じ日本人の父によって認知された子でも、

 日本人の子で国籍留保をしなかった場合には、

 日本国籍は喪失し、日本人父の認知よっても

 回復は出来ないということになります。

 一方で、外国籍の子は、そもそも国籍留保の義務が

 生じていないことから、認知によって日本国籍が

 得られており、それが今現在でも残っているという

 結果としては妙なことになっているのです。


 余談ですが、日本人父と外国人母との婚外子

 というのは、国策移民先の国々では極めて少なく、

 ボリビアのようにペルー国境から越境して

 ボリビアに移り住み着いた日本人移民のような場合

 に多いのですが、ブラジル、ペルー、

 アルゼンチンなどでも多くはありませんが、

 相当数の日系人とのハーフがいると思われます。


 ところで、ボリビアに越境した日系人が、

 独身だったかというと、実は既婚者がかなり多く、

 ペルーで一旗揚げることも出来ずに、

 ボリビアまで、越境して辿り着いたが、

 現地の女性と恋仲となって、土着してしまい、
 
 日本にも帰国できなかった方々が多かったようです。

 ただし、この点を悪用して、国籍留保義務のあった

 勅令指定国であったブラジル、ペルー、アルゼンチン

 も含めて、婚外子だとの虚偽申告をする日系人も、

 多分、今後は相当数現れそうですから、

 これからは、法務局+外務省による現地での調査は、

 極めて慎重に進めていただきたいと思う次第です!

 
 ところで、日本に妻を残したまま帰るに帰れず、

 現地ボリビア人女性と婚姻し、結果として重婚

 となってしまった日本人移民男性の婚姻を、

 我が国の戸籍制度の中で、合法的に成立した

 婚姻として戸籍に記載させることが

 実際できるのものなのでしょうか?

 (以下、次回)

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