行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

国籍法についての考察⑫

2016-08-31 14:43:34 | 行政書士のお仕事
 現行の新国籍法第11条では、

 自らの意思で外国籍を取得した者は、

 日本国籍を喪失するとしています。

第11条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

 未成年者は、当然自らの意思を

 法的に行使することはできないので、

 その未成年者の法定代理人が誰になるかが、

 大変重要な意味を有することになります。

 例えば、日本人父と米国人母を持つ子が、

 米国で出生した後に、家族揃って英国へ

 転勤し、その転勤中に、米国人母が

 英国に帰化申請をして、その付随する子として

 子を記載した場合で、日本人父が

 その子の英国籍取得に同意署名したかどうかが、

 大変重要になってくるのです。

 英国の場合には、両親の同意がなければ、

 英国籍の附随的な取得は認められないので、

 もし、この子が英国籍を取得していれば、

 自らの意思で外国籍を取得したことになり、

 日本国籍を喪失することになります。


 ところで、未成年者自らの意思で外国籍を取得する、

 と判断される為には、本邦の民法における

 未成年者の法定代理人が誰であるかを

 知る必要があります。

第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

 民法第818条に記載されているように、

 本邦の子の親権は、父母が共同して行って、

 初めて有効となります。

 逆に言えば、片親のみで行使された親権は、

 本人に代わって行われた行為とはなりません。

 従って、例えば外国人父が、日本人母の

 同意を得ずに行った父とその子の某外国籍への

 帰化申請は、自らの意思によって得た外国籍とならず、

 本邦国籍法第11条で定める、自らの意思による

 外国籍の取得とはならないことから、その子の

 重国籍が認められることになります。

 つまり、片親のみでの申請が認められる

 国での帰化申請によって、

 新たな外国籍を獲た日本人の子には、

 場合によっては、国籍を2つどころか、

 3つ以上取得できることもあり得るのです。

 とはいえ、「両親が同意して子の国籍を申請した」

 としている国々が多数である以上、

 外国人配偶者の領事館への届出については、

 それが、単なる届出なのか、或いは、申請なのか、

 を注意して見極める必要があります。

 安易に、在日領事館で申請してしまって、

 自分の子の日本国籍を喪失させてしまうケースも

 ありえますので、細心の注意が必要となります。

 (以下、次回最終回)

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