一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

生命保険契約の売買

2005-11-18 | あきなひ

生保売却目的の名義変更請求認めず…東京地裁判決
 (2005年11月17日 (木) 21:31 読売新聞)

肝がんと診断され、医療費などで生活が困窮、保険料を払い続けるのが困難になった男性が、生命保険金を受け取る権利を保険買い取り会社に売却するため生命保険会社に対し、保険の名義変更に同意するよう求めたが請求棄却の判決がなされました。

判決は「生命保険の売買を自由放任すれば、不当に買いたたかれる心配がある」と述べる一方、「生活に苦しむ患者には、生命保険の売買が資金取得の有効な方法となりうる」とも指摘し、議論を促した。

確かに困った人に付けこんで買い叩く業者が出てきそう、という問題はありますが、その是非を保険会社が判断する、という形で規制を働かせるのはどうなんだろうか、とも直感的には思ったのですが・・・


現状では保険金を生前に受け取れる商品というのは最近のものしかなく、その商品に乗り換える場合は、既存の契約に特約をつけるだけ、とはいかず、既存契約から新しい契約に乗り換えなければいけないことが多いと思います。
ところがこの「下取り」は悪名が高く、既存契約の有利な料率を引き継ぐ事が出来ないなど、契約者に不利に出来ています。

しかもこの男性のように、ガンと診断されてしまった人は新しい契約はできませんから、こういう手段もなくなってしまうわけです。

つぎに、保険契約を担保に保険会社からお金を借りるとか配当を引き出すという方法もありますが、これも借り入れ利率は配当よりかなり高く設定されていたりと、やはり保険会社に有利に出来ています(なのでDMなどでさかんに勧誘するのでしょう)。


つまり、現状では保険金が下りるのがわかっているのに、生前の資金に振り返る手段が、ほとんどなく、あっても保険会社に有利な枠組みだけ、ということだと思います。


一方で、悪徳業者の話を置いておくとすると、保険契約の売買が認められると

生前の資金に充当できる
保険会社の将来の倒産リスクをヘッジできる
一部売却のようなことができれば、ライフサイクルに沿った保証を受けられる

というようなことができそうです。
しかし一方で

保険会社の信用による割引率の格差がはっきりしてくるので、一律の認可制の保険料体系が維持できなくなる
売却代金は一時所得として課税されるのか、法人の場合は割引額を損金計上できるのか、その結果変額保険のとき同様、妙な節税スキームが出てきやしないか
アメリカ(保険の売買が広く行われている)と違い、日本では定期保険がまだ主力(多分)なので、売買になじまない(契約期間中に死なない可能性がある)のではないか

などの問題もありそうです。

また、保険の買取は、いろんな特約とか契約者の余命、予定利率と金利動向の評価など、きわめて金融取引に近いものになるので、一般の契約者と買い取り業者の情報格差による不公正な取引のリスクも大きいと思います。


うーん、そう考えると、現時点では保険会社が譲渡の可否を決められる約款に合理性がある、という判決の考えもありなのかもしれませんね。


アメリカではどうやって消費者保護を図っているんでしょうか。

コメント
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