一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

中国の汚染事故と川下・風下としての日本

2005-11-26 | 天災・人災

【中国】 吉林石化事故で汚染か、ハルビン断水措置
(2005年11月23日(水) NNA)

河川汚染、露ハバロフスク非常事態宣言へ
(2005年11月25日 (金) 21:23 読売新聞)

石油化学工場の爆発事故による中国黒竜江省ハルビン市の松花江汚染問題で、中国環境保護総局は25日、河川に流入したニトロベンゼンの濃度が同日午前0時に環境基準の33・15倍に達したと発表した。

松花江の下流、アムール川に面するロシア極東・ハバロフスクでは警戒が高まっており、ロシア政府は24日、アムール川での魚釣りを数年間禁止することを検討していると発表。「世界自然保護基金」ロシア支部も、「アムール川のすべての魚の消費禁止が必要になるかもしれない」との見解を示し、「汚染の影響は5~7年間続く」可能性を指摘した。

中国政府によると、有害物質の流れは長さ80キロに及び、露当局によると、露領内通過には10~14日間が必要という。


「姉歯問題」に気を取られているうちに、中国でも大変な事態が起きていました。

また、
中国・重慶でも化学工場爆発、1万人以上が避難
(2005年11月25日 (金) 18:28 読売新聞)
という事故もあったようです。

工業用水や輸送のために工場も大きな河川に沿って立地することが多いので、工場での事故が河川の汚染につながることが多いのだと思いますが、
中国は実は水資源が不足していて、人口一人当たりの水資源は世界平均の4分の1にすぎず、しかもその分布はきわめて偏っており、江南地区にその70%が集中しているそうです(『中国農民の反乱』による)

つまり、河川の汚染は農業生産にとっても深刻な打撃になるわけです。
(ちなみに中国の人口一人あたりの耕地面積は世界平均の半分以下、日本や韓国の数分の一だそうです)

その結果中国の食料輸入が世界の市場を押し上げて同じ食料輸入大国である日本への影響もありますし、農地が荒廃して砂漠化が更に進むと、黄砂問題などもより深刻化しそうです。

黄砂に関しては偏西風の風下である日本への影響も大きいですし、
アムール川の汚染なども、日本海が汚染の排出口になるわけです。

しっかりしてもらいたいものですし、自国の安全の見地からも、災害対策援助をしたほうがいいのではないでしょうか?

******** 付 記 ***********

こちらのエントリからの再掲ですが、

中国から見ると、日本は(南西諸島を含めると特に)太平洋への出口をふさいでいるように見えるし、中国から流れ出たものは日本海にたまることになる、という図です。ご参考まで。

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再発防止のために必要なもの(構造計算書偽造問題 その6)

2005-11-26 | あきなひ

耐震強度偽装、「見逃し」自治体も困惑
(2005年11月25日 (金) 12:39 朝日新聞)

耐震性が不足している設計のホテルが、神奈川県平塚市の建築確認をすり抜けていた疑いが強まった。建築確認したのは自治体なのに、安全が確認できないとして営業を休止しているホテルは、愛知県刈谷市や長野県松本市にもある。

民間の検査機関が建築確認できるようになった99年以前に自治体が行った審査の信用性にも疑いが生じている。

前にコメントしたように(こちらの記事の最後のほう)、今回の事件は建築確認を民間に委託したから起きた、という議論は問題の所在をミスリードするように思います。

今回の偽造が単純なもので、民間の検査機関や役所がそれすら見抜けなかった杜撰な検査をしていた、というのなら、再発防止はそこの検査機能を強化すればいいわけですから比較的容易です。

しかし事の本質は、今回の偽装が建築確認のしくみが想定していない悪質な偽装だった、というところにあるのではないでしょうか。


すべての検査、確認のしくみは関係者に一定レベルの信頼がおける、という前提で成り立っています。そのために公的な資格があるわけです。

逆に関係者が全く信用が置けない、となると、隅から隅まで徹底して調べなければならなくなりますが、そうすると世の中すべてのしくみに膨大な経済的・時間的コストがかかってしまいます。
極端な話、大臣認定ソフトウエア自体の改ざんとかまで考えると、構造計算を建築確認をする企業や役所が一からやり直さないといけなくなってしまいます。


ところがここ数年、雪印乳業の賞味期限切れ牛乳の再利用、三井物産のディーゼル触媒のデータ改ざん、三菱自動車の欠陥隠しなど、「さすがにここまではやらないだろう」と思われるような出てきて、従来の常識は崩れつつあるように思います。

上の企業は大企業でしたので、役員の辞任、社会的な制裁や株式市場での評価というペナルティがそれなりに効を奏して、他の大企業もコンプライアンス態勢の充実に取り組むようになってきた訳です。


しかし、今回の姉歯建築士のような「背に腹は替えられない」という個人事業主や、ヒューザーのような自分の会社の急成長しか視野にないオーナー企業に対しては社会的制裁では限界があるということが明らかになってしまったと思います。

となると、今後は世の中の諸制度を上手く機能させるためには、刑事的な罰則の強化(木村建設のように破産に逃げ込んだときのための経営者個人への両罰規定の強化も必要かもしれません)や懲罰的賠償のような民事的な制裁の強化をしていかないといけないのかもしれません。


それが社会全体にとっていい方向ではないとは思えないところが悩ましい部分でもありますが・・・

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