一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『世襲議員のからくり』

2009-08-29 | 乱読日記
上杉隆氏の週刊文春の連載に加筆したもの。

世襲議員は政治活動において、資金面や後援会組織作りに関し、一般の候補と比べて極めて有利になるしくみがあることを指摘した本です。


かいつまんで言えば、

政治家個人の持つの政治資金管理団体間の寄付は非課税であり、親政治家の政治資金管理団体が子政治家の政治資金管理団体に無税で寄付をすることで、政治活動資金をそっくり「相続」できる。

また実質親政治家のみを支持する「政治団体」が支持対象を子政治家に変更すれば、その政治団体の資金は子政治家が(当然無税で)引き継ぐこともできる。

さらには、親政治家が党の支部長だったり党の支部に影響力を持っていると、党の支部からの資金(これはもともとは政党助成金という国費)を子政治家に有利に配分することもできる。

また、後援会組織(=地盤)も親のものを引き継げるため、政治活動においても有利であり、逆に、後援会組織が自らの利権維持のために、親政治家が引退・死亡した後に、同じ苗字の(時には同じ苗字であるというだけで)子政治家を担ぎ上げる、ということもある。

ということ。


カネの流れを分かりやすくしよう、ということで政治資金管理団体などの制度が導入されたわけですが、「本丸」はもう少し奥にあったわけです。


あわせて文芸春秋9月号(既に在庫はないかもしれませんが)の「鳩山由紀夫「個人資産86億円」のルーツ/佐野眞一&特別取材班」は各論としての鳩山一族(兄弟)の政治資金の原資についての分析も参考になると思います。

この文芸春秋には「自民党政治はいつ終わったのか/中曽根康弘×渡辺恒雄」という対談が載っていて、こちらもけっこう面白いです。


ちなみに、本書に、新人記者時代の渡辺恒雄が鳩山御殿に出入りして鳩山一郎に近づくために、他の記者たちとともに孫の由紀夫・邦夫の「馬」となって鳩山御殿の庭で四つんばいで競争していた、というエピソードがあります。



曽祖父で帝国議会最初の選挙に出馬し、衆議院議長までつとめた鳩山和夫以来4代にわたり政治家を続けてきた鳩山家と、オーナーでもないのにずっと「主筆」を維持し今や政界のフィクサーのナベツネ氏、良くも悪くも現在の日本の政治の象徴ではあります。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする