一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

2010-01-16 | キネマ
アメリカ人は、ヨーロッパ人よりあきらめが悪い分だけ、逆に残酷な側面も含めて人生を描かせると迫力が出るのかもしれません。

ブラッド・ピットとケイト・ブランシェトがだんだん年齢が交錯していくあたり、メイクは頑張ってるんですが冷静に年齢をカウントすると無理があるだろう、という部分はありますが、佳作。


ところで「ベンジャミン」とgoogleに入れると「ベンジャミン・フルフォード」が上の方に出てきくるというハードルを乗り越えて検索してみると、F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説が原作なんですね。
観たときはジョン・アーヴィング的だな、と思ったのですが。



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EXILEで考える執行役員制度

2010-01-15 | あきなひ
と、タイトルにはかいたのですが、僕はEXILEについてはほとんど知りません。
年末レコ大を見ていてEXILEの人数が総勢14人だと初めて知ったり、新年も甥っ子にアクセントがおかしい(英語風にEにアクセントを置くのでなく「ザ」に置くのが正しいらしい)などと指摘された程度です。

一方、昨年12月7日号の日経ビジネスに「執行役員はつらいよ」という記事があって、権限と責任が明確でないまま執行役員制度を導入した結果新たな「高級中間管理職」を生んだだけで意思決定の迅速化・効率化につながらず、見直す企業も多いというようなことが書いてありました。
取締役も社内出身者がほとんどを占める会社が多い中で、取締役の前の出世階段のワンステップとして使っているとそうなるのかもしれません。

結局、自分は歌わずに、同じ振り付けで周りと一緒に踊る人が増えるだけ、というのが、14人いて歌うのが2人だけというEXILEと同じだな、とテレビを見ながらふと思いました。

EXILEはダンスチームが魅力だから一緒にするな、という批判も来そうですが、日本企業も「周りときっちりと振りを揃えて(突出しないように)きれいに踊るのが重要」という文化があるとすれば、EXILEはその意味でも日本を代表するグループと言えるのかもしれません。

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 『アバター』で考えるコーポレート・ガバナンス

2010-01-14 | キネマ
(映画のネタばれがあるので注意)
『アバター』では惑星での鉱山の開発主体は私企業という設定でした。
映画の中で「あまり先住民をたくさん殺すと株主がうるさい」というセリフが出てきます。
未来でもCSRはより重要という想定でしょう(その割に軍隊とか持ってますし、「1人も殺してはいけない」とは言っていないのはどうかと思いますが)。

(地球との交信のタイムラグがどれくらいあるのかは映画ではわかりませんでしたが)そもそも現地に行くのに6年もかかる状況で現地の暴走をコントロールする体制を作るとなると現実的には不可能に思えます。


そこで、もうちょっと近未来にありそうな例におきかえて宇宙時代のコーポレートガバナンスを考えてみます。

たとえば火星に鉱山なり工場があるとします。
火星に行くのには6カ月かかります。往復で1年。ただ、電波のタイムラグは10分55秒なので、コミュニケーション自体は比較的簡単にできそうです。

では、火星の現場に対するガバナンスをどう効かせるか。
監査を例にあげて考えてみます。

通信技術を使って遠隔でするのも可能でしょうが、映像に細工をされる可能性もあります。
一方で、往復1年かかるとなると、わざわざ監査のために往復するのも無駄なので、内部監査要員は現地に常駐することになるのでしょうか。
そうするとストックホルム・シンドロームではないですが寝食を共にするうちに現地の執行側に取り込まれるリスクもあります。

監査役監査はもっと難しくて、任期4年のうちのまるまる1年をかけて往復するのが業務執行として適正か、逆に重要な拠点を往査しなくていいのか、というあたりは難しい判断を迫られます。

火星レベルの距離だとしても、上場企業が取り組むには相当ハードルが高そうですね。


上場企業では火星への投資は難しいとなると、投資組合とか「火星ファンド」の出番になるわけですが、外部監査を省略してしまうと、今度は悪さをする輩がいっぱい出そうです。
アポロの月面着陸も作り物ではないかといわれるくらいですから、現代の技術で詐欺をするのは簡単でしょう。


『アバター』でも、最後に「これが投資の失敗の顛末です」という報告書とともに地球に帰ってきたけど、ビデオログなどはすべて偽造で、実際は設備投資も軍事物資への投資もせず、武装チームは殺してしまって、使わなかった資金は現地責任者とリアルな映像資料を作ったジェームズ・キャメロン監督で山分け、なんてオチがあったら面白かったかもしれません。

 
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『イエスマン』

2010-01-13 | キネマ
「イエスマン」というと僕らの世代だと子どものころ上司の言うことには絶対に逆らわないサラリーマンを指すことばだったのですが、それは死語になったのでしょうか。

これは、なんにでもNoといわずにYesといえば人生は幸せになる、というセミナーに感化された男の話。

主演はジム・キャリー。

ジム・キャリーの映画は、ストーリーが何であってもジム・キャリーの映画になってしまうことが良くも悪くも特徴で、本作もその例外ではありませんが、逆に言えば手堅く楽しめる作品でもあります。

90分の尺にあわせたのでしょうが、もう少し悪ふざけをしてほしかった感じ。


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『排出権商人』

2010-01-12 | 乱読日記
黒木亮氏の他の作品同様タイムリーな話題を綿密な取材をもとに小説にしています。
COP15をにらみながらの2007年から2009年初頭までを舞台にし、原油高やリーマンショックを背景に盛り込んでいて、タイムリーという点では随一かもしれません。

排出権取引の仕組みとそれをめぐる関係者の利害関係、認証の仕組みの問題点などが非常に分かりやすくまとまっています。

たとえば「日本一人負け」の京都議定書の枠組みからCOP15で米国と中国(両国で地球のCo2の40%を排出している)を巻き込んだ合意に達することが以下に難しいか、認証の仕組みからいずれは国連「中国政府に疑惑」…風力発電「排出権取引承認」を停止ということがおきるのではないか、というあたりも示唆されています

「週間金融財政事情」に連載されていたというのもわかります。

経済小説なので仕方ないのかもしれませんが、登場人物が分かりやすい人が多いというあたりが残念ですが、ビジネスを舞台にした場合、人間の行動はかなりの程度合理的になるので仕方のないことかもしれませんし、これ以上人物に深みを与えと、焦点がぼけてしまうかもしれません。
登場人物の情念に焦点を当てるのは、山崎豊子さんにまかせればいいという考えもありますね。

下手な解説書や雑誌の記事よりはわかりやすいし面白いですので、おすすめです。


PS
世界各地の描写があるのですが、著者はビール好きなのか、必ずビールについては銘柄と味への論評がはいるのがこれまた参考になります。



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天一保

2010-01-11 | 飲んだり食べたり
『アバター』を観た後はやはり麻婆豆腐。

「麻婆豆腐」は最初にレシピを開発した四川のお店のおばあさんがあばた面だったので「麻(あばた)の婆さんの豆腐」というとおり名がそのまま名前になった、というのは中学の担任の受け売りなのですが、ネットなどを見る限り、あながちウソでもないようです

ということで、六本木ヒルズの天一保(店名表示は「保」の下に「火」)へ。
いつも迷うのですが、ケヤキ坂に抜ける路地風のところにまとまってある中華の店の一つ。

土鍋で出す料理が名物らしく「土鍋麻婆飯」をいただく。



唐辛子がこれ見よがしに入っているので、唐辛子一発勝負系の単調な味かなと思ったが、きちんと山椒も効いて複雑な辛味を出してます。
ご飯が足りなかったら単品の麻婆豆腐+ご飯のほうがよかったかなとおもったけど、ご飯のボリュームも十分でした(逆に単品より麻婆豆腐が少ないか・・・)

店のデザインや土鍋などの出し方に凝るところは際コーポレーション風だな、と思って帰って調べたらやはりそうでした。

まあ、六本木ヒルズでランチを1000円以内で食べられてあの味なら十分満足だと思います。

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『アバター』

2010-01-11 | キネマ

TOHO CINEMASが

末尾が「1」もしくは「4」の「お年玉付き年賀はがき」をお持ちの方は、該当の年賀はがき持参で、1月9日(土)~2月28日(日)の期間中、1000円でご覧頂けます。

という太っ腹なキャンペーンをはじめたので、それに便乗して観に行きました。
でも3Dの追加料金300円は別にとられる(仕方ない)のと、ネット予約は対象外(確認しようがないもんね)というので、早起きして六本木ヒルズまで。

一言で言うととても面白い映画です。
ジェームス・キャメロンが3Dの映画を作りたくて作りたくて、力を入れたって感じがつたわります。
ストーリーやシーンや小物がいろんな映画からのいいとこどりのてんこ盛りです。

自作ではターミネーター、タイタニック、エイリアン(シガニー・ウィーバー!)、他の監督の作品ではロードオブザリング、もののけ姫やナウシカも入ってる、それにLOSTもちょいとはいってます(LOSTではちょっとだけ出てきたアナ・ルシア役の女優が出てて懐かしかった)。

まさにおせち料理か幕の内弁当のような豪華さで、それを破綻なくまとめるところがさすが巨匠です。

作品世界がどうとかテーマがどうとか言う前に一流の娯楽作品です。
(それを言い出すと、鯨油のための捕鯨船の補給基地を目当てに黒船で押し寄せたペリーとか、石油資源確保で侵攻したイランはどうよ、なんて話になってしまいます。でも、そういう戦争ってアメリカにとっては従来型の二次元の世界だけど、相手方にとっては瞠目の3Dというようなかんじだったんでしょうね)

3Dですが、あまり極端に何かが飛び出て来ることもなく、スクリーンの中ですべてが展開している抑え目の演出です。
これくらいがリアリティがあってしかも疲れなくていいかも。
このへん、これからは3Dしか撮らないと豪語するジェームズ・キャメロンとしては「普通の表現」にこだわりたかったのかもしれません。
草むらを書き分けて走るというような小さなところのリアリティは大事です。
3Dが進むと、都会モノより自然モノのほうが増えるかもしれませんね。

キャンペーン割引の800円はポップコーンやら飲み物やらで回収されてしまったのですが、満足度は高かったです。


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御守り

2010-01-09 | よしなしごと

商事法務のメルマガのリンク先をクリックしたら、いきなり中国政府のサイトに飛んでしまったのでちょっとびっくり。  

中国の第11期全国人民代表大会常務委員会、「侵権責任法」(日本の不法行為法に相当)を採択、成立(2010年7月1日施行)(26日)  

まあ、政府の情報なので当然と言えば当然ですが。  

最近はwebでの自動翻訳も充実しているので、けっこう雰囲気くらいは伝わるところは便利です(このページについて言えばexciteの方がYahooよりわかりやすかった)。  

以下はこの法律の「侵権」への対応の方法を規定した部分。(カッコ内は自動翻訳などをもとに私が推測したものなので根拠ありません。)  

第十五条 承担侵权责任的方式主要有:(権利侵害への責任追及の方法は以下の各号のとおり)
(一)停止侵害;(権利侵害の差し止め)
(二)排除妨碍;(妨害排除)
(三)消除危险;(危険の除去)
(四)返还财产;(財産の返還)
(五)恢复原状;(原状回復)
(六)赔偿损失;(損害賠償)
(七)赔礼道歉;(謝罪、「歉」は穀物の実らないことから「あきたらない」の意)
(八)消除影响、恢复名誉。(影響を排除し名誉回復、「响」は「ひびく」の意)

(それぞれの関係が重複しているようにも思いますが、「以上承担侵权责任的方式,可以单独适用,也可以合并适用。」(以上の方法は単独でまたは合併して適用できることができる) となってるのでどうにかなるのでしょう。) 

正月明けのせいか、上の4文字熟語は御守り札の文句のように見えます。  
災厄消除
開運招福
金運招福
家内安全
交通安全
学業成就ってやつですね。

まあ、似てるのは(三)くらいか・・・  

将来のことを願うよりは起きてしまったことへの対応が日常生活では多くを占めるわけですが、上のようなお札は掲げないで済むに越したことはないですね。 


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「NAVI」休刊

2010-01-08 | よしなしごと

感慨深いニュース。

自動車誌「NAVI」休刊
(2010/01/06-11:24 時事通信) 

月刊自動車誌「NAVI」が2月26日発売の4月号を最後に休刊することが6日分かった。発行元の二玄社は「売り上げと広告収入の減少で発行が立ちゆかなくなった」としている。同誌は1984年2月創刊。発行部数は公表していない。

僕が運転免許を取った1980年代自動車雑誌の中ではきれいな写真と海外の情報、本格的なインプレッションで群を抜いて高級路線を走っていた「CAR GRAFIC」ですが、その姉妹誌として発刊されたのが「NAVI」でした。  

趣味や文化などのこだわりかつちょっと斜に構えた切り口が結構好きでしばらく毎月買っていました。  

自動車を買う人が減ったことに加えて、マニアな人はネットの発達でそれぞれ独自のコミュニティや情報収集ルートを持つようになったのかもしれません。
その結果雑誌のターゲットとしては「のめり込むほどではないけども車にはうるさい」というカテゴリーの人になってしまい、またそういう人達(とそうなろうとする人達)自体も減ってきているのかもしれません。


世の中全体として、こだわりとか薀蓄というのがはやらなくなってきているというのも背景にあるのでしょうか。


 

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『組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか』

2010-01-07 | 乱読日記
読んだ順番が悪かったのかもしれません。

以前取り上げた『「命令違反」が組織を伸ばす』の著者菊澤研宗氏の本で、こちらのほうがきちんとした研究書的です。


第二次世界大戦における日本軍のガダルカナル作戦やインパール作戦などを、行動経済学の人間の限定合理性による行動モデルをあてはめ、今まで「日本軍は不合理だから失敗した」という見方に反して日本軍(またはそれぞれの指揮官)は(限定)合理的に行動したために不条理な結果を招いたという分析をします。

ただ、『「命令違反」が組織を伸ばす』を読んでしまったせいか、あまり新味が感じられず、論理的に精緻な説明をしているところがかえってまだるっこしく感じてしまいました。
そのうちだんだん「欧米で最新の理論をあてはめたらこうなりました」という世間に数多ある経営(学)の本と同じく「よく切れる包丁」を紹介している以上のものはないのかな、などと思っているうちに読了。

本書で取り上げているのは帝国陸軍の作戦ですが、せっかくなら結果的に不条理を招くような構造をなぜ作り上げてきたのか(陸軍士官学校-陸軍大学校というキャリアシステムのなど問題)というあたりの分析もつっこんでほしかったし、そこだ最終章で現代の企業経営への教訓に結びつけるのではなく、他国の軍隊はどうなのか、というところにも言及してもっと広がりのある本になっていたらよかったのに。(値段も3000円近くするんだし)

そのへんは別の著作を読んでくれ、ということなのでしょうけど。


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ワーストドレッサー

2010-01-06 | よしなしごと



「最もダサい男性」はブラウン首相…英の雑誌
(2010年1月5日11時31分 読売新聞) 

男性向け総合誌「GQ」の英国版は4日、今年の「最もダサい男性」にブラウン英首相を選出した。特にネクタイのセンスを酷評し、「典型的な英国紳士からはほど遠い」として、順位を昨年の3位から上げた。  

サルコジ仏大統領(3位)や北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記(8位)もランク入りした。高いヒールの靴で身長をかさ上げしているサルコジ大統領は、ランニング時のTシャツを批評され、「身長より服装を気にするべきだ」。金総書記は、厚手の上着に黒ズボンを合わせるお決まりのコーディネートについて、「彼の政策並みの好感度」と皮肉られた。

この手の話には余の東西を問わず政治家は人気ですね。

ブラウン首相はネクタイが曲がってお疲れのようですが、政治家は四六時中シャッターチャンスを狙われているので仕方ないですね。

気に入ったのが4位のBoris Johnsonロンドン市長。

 


GQのサイトで紹介されているコメントは以下のとおり  

"Boris has created a new sartorial standard: shabby chic, where Charlie Chaplin meets Karl Lagerfeld with a touch of Laurel and Hardy,(注) more Hardy than Laurel, of course." Geordie Greig, Editor, Evening Standard

"shabby chic"とはよく言ったものですが、ジョンソン市長はまだ44歳と若いし、身だしなみがだらしないことをトレードマークにしているようで、 身だしなみに問題ありのロンドン市長、『ELLE』の表紙に なんてネタにもなってます。 
面構えもなかなかな人で、ご本人としては逆に4位だと不満かもしれませんね。


ベストドレッサーは芸能人がほとんどですが、なるほどと思ったのが2位のTake That
GQ誌のコメントは

Proof that men making their way towards 40 can remain stylish and relevant without succumbing to embarrassing, age-inappropriate, down-with-the-kids desperation.  
40歳になろうとする男性が、回りが困惑するような年齢不相応でガキっぽい格好に堕することなく、スタイリッシュで今日的であり得ることを証明した。  

とでも訳すのでしょうか。  

逆に言うとオッサンが年相応にstylishであり続けるのはそれだけ難しいということですね。

(注) Laurel and HardyはWikipediaによると かつてサイレントからトーキーの時代にかけて活躍したアメリカのお笑いコンビ。チビではにかみ屋のスタン・ローレルと巨漢で気むずかし屋のオリヴァー・ハーディによるこのチームは日本でも極楽コンビの名称で親しまれた。

(おまけ)
Laurel & Hardy - Hollywood Party (1934)

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『日本辺境論』

2010-01-06 | 乱読日記
帯に「これ以降、私たちの日本人論は、本書抜きでは語られないだろう。」と大きく出ていて、その下に「話題作 養老孟司さん絶賛」とあるのですが、よく見ると上のセリフが養老孟司さんの発言の引用とは書いていないなどというあざとさも含め、出版元の新潮社は内田樹ブーム(って一部か?)に乗ろうという意図が見え見えですが、ウチダ先生自体はいつものレトリックというか、思考の階梯を自在に行き来しながら自由に書いた本です。

多分、「こういう帯につられてしまうこと自体が辺境性の現われだ」とか言ってにやりとしているんじゃないでしょうか。


ざくっと言えば、
日本人の辺境性とは「正しいことは外部にある」という文化的劣等感である。
そのため過去のほとんどの日本文化論が外来思想の輸入・吸収に費やされていること、日本文化論が他所の国と比較しての日本の後進性や独自性の主張になっていることに象徴される。
そして、この日本人の辺境性の指摘自体も(ウチダ先生のオリジナルではなく)以前からなされているがそれを忘れて常に「最新の」日本文化論が紹介されていることも象徴的である。

なので、ここで日本人の「辺境性」を認めて、辺境ならではの日本人でなければ出来ないことは何かを考えようではないか、というのがこの本のテーマです。


自分の外部に正しいものがあるという意識は、「外部から来るものに対して本態的に開放性がある」という態度につながり、(極端な話、これは「メッセージだ」という思い込みさえあれば学びが起動する)「学び」に対して効率的な文化を育てた。

一方で「私は辺境人であるがゆえに未熟であり、無知であり、それゆえ正しく導かれなければならない」という論理型式を手放せないために、「○○道」のように常に成熟の過程にあることが心地よく、自分の未成熟を正当化する文化においては、霊的な成熟(「絶対的な信」とも表現されています)に至ることが妨げられている。

このへんの「辺境人」としての特性を認識しながら、日本文化について考え直してみようじゃないか、と著者は主張します。
(霊的な成熟を実現してしまったら辺境人じゃなくなってしまうのではないか、とも思ったのですが・・・)


終章の日本語について語っているところは、文化的資源に乏しい辺境人としての日本人が、有用性が分からないものの意義を先駆的に知る能力(レヴィ・ストロースはこれを「ブリコルール」と名づけたそうです。要するに「これはなんとなく役に立ちそうだ」と気づく能力のことですね。)ために日本語独自性の果たした役割について触れています。
ただここは著者自身も養老先生の受け売り、と言っているように、『プルーストとイカ』(これは養老先生推奨本)や『日本語が亡びるとき』などの影響を受けながらまだウチダ先生の論理になってないな、という印象をうけます。
まあ、これはウチダ先生のブリコルールの発露と思って読むのがいいと思います。

「学術的論件をコロキアルな(口語の)語法で展開するということに知的リソースを投じるという習慣は欧米にはありません」という日本においてこそ、こういうウチダ流論考が楽しめるわけで、そこに過剰に厳密さを求めることは自らの「偏狭性」をあらわすだけなのかもしれませんし。

(お後がよろしいようで)





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年末年始の本などからのふたこと

2010-01-05 | 乱読日記

昨今の金価格の上昇は、ファンダメンタルズでは部分的にしか説明できない。また、世界景気が再び景気後退に陥り、恐慌に近い状況や深刻なデフレへの懸念が高まっているのであれば、なぜ投資家が金を貯めこもうとするのかも不可解だ。本当に世界経済の崩壊を恐れているのであれば、銃や缶詰など籠城するのに役立つ商品を買い込む方がよほど賢明だ。

ノリエル・ルービニ「金バブル崩壊を警戒せよ」日経ビジネス2010.1.4

「買うから上がる、上がるから買う」という状況とともに、皆高すぎると思いながらも自分だけは売り抜けられる、と思っているのもバブルの典型ですね。



私たちの政治風土で用いられているのは説得の言語ではありません。もっとも広範に用いられているのは、「私はあなたより多くの情報を有しており、あなたよりも合理的に推論することが出来るのであるから、あなたがどのような結論に達しようと、私の結論の方が常に正しい」という恫喝の語法です。自分の方が立場が上であるということを相手にまず認めさせさえすれば、メッセージの真偽や当否はもう問われない。

「何が正しいのか」という問いよりも、「正しいことを言いそうなのは誰か」という問いの方が優先する。そして、「正しいことを言いそうな人間」とそうでない人間の違いはどうやって見分けるのかについては客観的基準がない。だから、結局は、「不自然なほどに態度の大きい人間」の言うことが傾聴される。

内田樹『日本辺境論』

だから「朝まで生テレビ」がきらいな人と、だからこそ好きな人が分かれるのでしょう。
本のレビューは明日書きます。


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神前結婚式の由来

2010-01-04 | よしなしごと

新年早々なのでおめでたい話から。

年末本を整理していて、ぱらぱらとめくって見つけた話。

そもそも婚家で床の間を背にして行われていた一般庶民の結婚式が、神前で挙行されるようになったのは、明治33年、大正天皇の結婚式が、皇居内賢所の神前で行われて以来とされる。これを大々的にマスコミが報じたのを受けて、東京大神宮が神前結婚式を挙げ、話題になった。しかし神前結婚式が民間に普及したのは、ようやく第二次世界大戦後であった。神社での結婚式だと、披露宴の場は他に設けなくてはならない。いち早く帝国ホテルは、1923年(大正12年)関東大震災で焼失した神社をホテル内に祀り、美容室と写真館も取り入れて、挙式と披露宴を一体化させている。ホテル・ウエディングのはしりであるが(以下略)
(武田佐知子「ガスビルと大阪学士会倶楽部」学士会会報No.877)  

東京大神宮のサイトの「ご由緒」をみると、確かにそんなことが書いてあります。

明治の新国家が誕生すると、明治天皇のご裁断を仰ぎ、東京における伊勢神宮の遥拝殿として明治13年に創建された当社は、最初日比谷の地に鎮座していたことから、世に「日比谷大神宮」と称されていました。関東大震災後の昭和3年に現在地に移ってからは「飯田橋大神宮」と呼ばれ、戦後は社名を「東京大神宮」と改め今日に至っております。 
現在広く行われている神前結婚式は、当社の創始によるものであり、今も神前において伝統的な結婚の儀式を守り伝えております。

より詳しくは「神前結婚式」のところに  

現在広く行われている神前結婚式の歴史は、明治33年、当時の皇太子殿下(後の大正天皇)と九条節子姫(後の貞明皇后)のご成婚に始まります。宮中の歴史において初めて皇居内の賢所(神前)で行われたご成婚の慶事を記念して、東京大神宮では神前結婚式を創始し、以後その普及に力を注いでまいりました。それ以前の挙式は家庭で行うのが通例だったので、神前で厳粛かつ神聖な儀式を行うことは、画期的なできごととして人々の関心を集めたのでした。 
大正元年に発表された夏目漱石の有名な小説「行人」にも、日比谷大神宮(現在の東京大神宮)における結婚式の様子が克明に描かれております。

神社だけあって由緒にはこだわっているようです。

一方で、帝国ホテルは一体どこの神社を持ってきたんだろうと調べてみたら、さすがに帝国ホテルのサイトにはありませんでしたが こちらによると

今では一般的となったホテルウエディングは、大正12(1923)年の関東大震災がきっかけで始まった。 日本では元来、結婚式を自宅で行う風習があったが、明治期には日比谷大神宮など神社での挙式が盛んになる。帝国ホテルでは開業当初から、挙式後の披露宴が開かれていた。 
しかし、震災で日比谷大神宮が焼失。そこで帝国ホテルが施設内に神社をつくり、挙式と披露宴を組み合わせたホテルウエディングの原型ができた。  

今の東京大神宮が日比谷にあって「日比谷大神宮」と呼ばれていて、既に神前結婚式を行っていたときに関東大震災があり、消失した日比谷大神宮の神前結婚式ごと引き継いだということのようです。どこかの小さな神社を持ってきたのかと思ったら、さすが帝国ホテル、きちんとしていますね。(神社的には分祀になるのでしょうか。)

帝国ホテルはフランク・ロイド・ライトの設計のいわゆるライト館の竣工が大正12年なので、竣工早々どこに神社を作りこんだのでしょうか。

フランク・ロイド・ライトがどういう反応をしたのかも興味があります

まさか"Oh, my God!"とかとは言わなかったでしょうが・・・


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新年のご挨拶

2010-01-01 | よしなしごと

 

あけましておめでとうございます



今年もよろしくお付き合いくださいませ。

 


寅年といえば


(リリー)
あたし達みたいな生活ってさ、普通の人達とは違うんだよね。それもいい方に違うんじゃなくて、何て言うのかなぁ、あってもなくてもどうでもいいみたいな、つまりさ、アブクみたいなもんだね。
(寅)
うん、アブクだよ。それも上等なアブクじゃねぇや。風呂の中でこいた屁じゃねぇけども、背中の方に回ってパチンだ。

(第11作 「寅次郎忘れな草」 )


風呂に浸かっていい気分だったけど自分も相当臭い屁をしているのを知らん振りしていたらそれが「背中の方に回ってパチン」とはじけたのが昨年でした。
今年は異臭から早く立ち直れるといいですね。




アメリカでは昨年末から話題のこの人

 

契約を打ち切ってしまったアクセンチュアですが、コピーはけっこういいことを言ってます。

It's rough out there.
Economic realities are daunting. And yet, as with every competitive challenge, some businesses will respond proactively and effectively, while others are left behind.
The winners will be those who act quickly, make the right decisions and execute them flawlessly.

"act quickly"は比較的簡単なんだけど"make the right decisions"が難しいんですよね。
何につけても。



なにはともあれ、今年も明るく前向きにいきましょう!

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