NHKアーカイブスの あの人に会いたい の番組で一昨年亡くなった
第十四代酒井田柿右衛門さんの番組が 再放送されました。
焼き物のいろはも解らぬ私は ただ きれい美しいと眺めるだけですが
柿右衛門作品は 素人の目から見ても 余白の美しさにまず魅かれます。
温かみのある乳白色の地肌に 柿右衛門特有の赤が映えて 全部絵柄で
埋めるより こっちが遥かに難しかろうと 素人の私の目には映ります。
もう5-6年前になりますが 高知県立美術館で開催された 日本のわざと美展
重要無形文化財とそれを支える人々 のテーマで 各方面の人間国宝の作品が
展示されました。
焼き物からは柿右衛門作品が展示され 開催期間中に 十四代柿右衛門さんの
講演があると知り 夫婦で聞きに行きました。
おだやかな口調でユーモアも交え 素人にも解りやすい言葉で語られた
主な内容は きれいと美しいの違い であったと夫は言います。
私が心に残った箇所は 鉄を酸化させ 時間をかけて濁手の肌に映える
柿右衛門の赤を作る努力と 分業制の柿右衛門窯で 先代からの各部署の
職人は うちの宝です との語りが印象的でした。
十四代はスケッチが上手で 野山に出て どこにでもある野草を描く姿が
番組でも紹介されました。
次の十五代を継ぐ 息子の描いた絵を
もっと ちゃんと見て描け! 右でも左でも 足でも描けるようになってから
作品になるんだ スケッチが足らんたい! と厳しく叱る姿も放送されました。
番組は ヨーロッパの陶磁器に 大きな影響を与えたとされる柿右衛門陶器を
数多く所蔵する大英博物館や 柿右衛門に憧れ コピーから始めて今もなお
柿右衛門様式を作り続けるマイセン窯を 十四代が訪ねる旅でもありました。
あの人に会いたい・・・ あの講演を もう一度聞きたかったです。
十四代が野でくり返しスケッチしたイヌ蓼が 余白の美しい器になりました。
時間が限られるツアーでなく 柿右衛門窯の展示品をゆっくりと見たい 有田の
町を歩きたい 呼子でイカも食べてと すぐには叶わぬ夢が 膨らんでいきます。