枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

うさぎのダンス・23

2023年03月01日 | Weblog
 冬の夜空に眼を向ければ、一際輝く星の群れがある。和名はすばるで、プレアデス星団と呼ばれる。ふみこは数多の星を眺めながら、生命の誕生が為される不可思議に心が騒ぐ。彼方より超し来ての自分は、どこに往こうとしているのかが判らないのも。何かを失くしている想いがするのに、どうしても分からず切ない。

 ふみこは宙に浮かんだその人が、おいでというのを聴いた。無意識にふみこが右手を渡そうとした瞬間、激しい痛みを伴い撥ねのけられた。えっ!何が起きたの?驚いて言葉もなく立ち竦み、右手の甲に指の痕が赤くついたのを見た。睨みつけられた気がするものの、会ったこともなく知らない人であるのは確かなこと。

 約束をした筈なのに、時間が過ぎても来ないって変だなぁ。ふみこは仕方なく踵を返して、元の路を歩き始めた。あれっ?誰とだったの…、あたし何でここにいるんだろう。ふみこはまるで綿菓子の上にいるような、不安と心細さで深い闇に追い落とされる気がした。回りからも夢見勝ちなふみこは、異端児扱いである。

 ふみこは、自分の身体を天から見下ろしていた。ふっと意識だけが漂い、漆黒の闇に吸込まれていくのを感じた。身体は動かずなのに、視えて来るのが不思議だった。どこからか声がして、ふみこの頭に直接語り始める。映像が走馬灯のように転じていき、世界の終りで停まる。冷たくて寒さは異様で、心を凍てさせる。
 
 ふみこを捉えて離さなかった意識が消えていき、気づいた時には地上にいた。これからは、自分を見失わず生きなければと。ふみこは、迷う心に区切りをつけ新たなる一歩を踏み出した。きっと遇えるリョウさんに、その時に認めてもらえる存在でいようと誓うふみこ。だが暗雲たる気配も、同時に潜むのも事実だった。
コメント (4)
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