ふみこが不思議に思う祖母の行動の一つは、どんなに晴れていても山に行かぬ三隣亡の日。春休みだと気が抜けるようだが、牛の世話も他の家畜の餌取りとすることは多い。祖母は明ける朝を待ち籠を背にし出かけて、ふみこが起きる頃には一仕事終えて汗を拭いてだ。野良着を着替え、普段着で風だけを通している。
竹竿で揺れる野良着は裏の場所でも良く乾くが、破れを繕い汗の臭いもする。滅多に洗うこともなく、最後には燻しにするので棄てない。田畑での作業中、虫が寄って来るのを防ぐと言うが余り当てにはならない。ふみこは虫に刺されるし眼に飛び込むので「けむてぇばあじゃが」軽口を叩くので、よけいに虫が寄る。
お彼岸を過ぎると畑に出て、祖母は母と草抜きをしながら苗床を作る。木型の50㎝正方の箱に、草を抜いたのを下に土を被せ箱を填める。そこに胡瓜や茄子、とまとに南瓜の種を置いて芽を出させる。硝子の蓋をして、その上に新たな草を乗せきっちりと締めて置く。祖母の方法は、確実に発芽するのでふみこは驚く。
だがこれを母が遣ると失敗が多く、発芽しても苗が萎びてしまう。祖母は、母のしているのを見越しており種を再び撒く。ふみこには同じに思えるが、祖母はほほっと笑い「気持ちが通じんとな、あれらにも命があるんじゃわ」「種にか?」「そうじゃ命じゃ。それが無かったら芽は出りゃせん」祖母の魔法なのかも。
祖母のしていることは、自然への畏怖であり感謝からの行いとふみこは気づかない。野良仕事はしゃがんでするので、腰や足がつらくなる。へたり込めば泥だらけになり、洗濯物が増えると母親から小言だ。盥での洗い物は絞れても乾きが悪く、何日も干され着替えに事欠く。靴は、学校に履いて行けない汚れ様となる。
竹竿で揺れる野良着は裏の場所でも良く乾くが、破れを繕い汗の臭いもする。滅多に洗うこともなく、最後には燻しにするので棄てない。田畑での作業中、虫が寄って来るのを防ぐと言うが余り当てにはならない。ふみこは虫に刺されるし眼に飛び込むので「けむてぇばあじゃが」軽口を叩くので、よけいに虫が寄る。
お彼岸を過ぎると畑に出て、祖母は母と草抜きをしながら苗床を作る。木型の50㎝正方の箱に、草を抜いたのを下に土を被せ箱を填める。そこに胡瓜や茄子、とまとに南瓜の種を置いて芽を出させる。硝子の蓋をして、その上に新たな草を乗せきっちりと締めて置く。祖母の方法は、確実に発芽するのでふみこは驚く。
だがこれを母が遣ると失敗が多く、発芽しても苗が萎びてしまう。祖母は、母のしているのを見越しており種を再び撒く。ふみこには同じに思えるが、祖母はほほっと笑い「気持ちが通じんとな、あれらにも命があるんじゃわ」「種にか?」「そうじゃ命じゃ。それが無かったら芽は出りゃせん」祖母の魔法なのかも。
祖母のしていることは、自然への畏怖であり感謝からの行いとふみこは気づかない。野良仕事はしゃがんでするので、腰や足がつらくなる。へたり込めば泥だらけになり、洗濯物が増えると母親から小言だ。盥での洗い物は絞れても乾きが悪く、何日も干され着替えに事欠く。靴は、学校に履いて行けない汚れ様となる。