ふみこにはそれが誰からなのかが、直ぐと知れた。あの小母さんだ!「ばあちゃん、お礼を言わなならんな行って来てもええか」ふみこはお宮の横道を駆けあがり、門にしている枝折戸を押し玄関に立つ。こじんまりとした造りだが細かい処に彫り物の贅が尽くされて、ふみこの家とは比べられない佇まいに気後れした。
玄関の硝子戸がするすると開いて、小母さんが現れた。「あの…小母さんありがとう」「ええんよ、ふみこちゃんが気に入ってくれれば」「小母さん、学芸会には見に来てちょうだい」「行かせてもらうわ、小父さんも一緒にな」ふみこはそれだけを言い、踵を返したが「ふみこちゃん、一つお願いをきいてもらえる?」
ふみこを見つめる眼差しがやさしい「ふみこちゃん、一度でいいから…おかあさんて呼んでちょうだい」小母さんは、じっとふみこを見つめる。「おかあさん…」途端に、小母さんの胸にきつく抱かれた。小母さんが声を出さずに泣いていると分かりながら、鼻腔をくすぐって香る匂いに母とは違う感じを受け心が揺れた。
次の瞬間ふみこに視えた映像が、見たこともない家での様子だった。そこにはふみこの大きくなった姿と、リョウが居た。ちょこまかと動く幼い児も?陽射しの注ぎこむ部屋ではリョウが何かを話していて、傍にいるふみこにほほえむ。えっ?小母さん地の子どもになったら、遇えるんリョウさんに。謎が凍み広がりゆく。
ふみこは、風呂焚きをしている祖母の傍に行き「ちゃんとお礼言うたけぇ、小母さん泣いてた。うちのどこがええんかな」風呂場の焚き物が火の勢いで崩れ、火花が飛び散った。祖母は黙って月の上がり始めた宙を見遣り「うさぎが踊っとるわ、ふみこよう見て習えや」衣装は、月の光に濡れた光沢を放って七色に彩る。
玄関の硝子戸がするすると開いて、小母さんが現れた。「あの…小母さんありがとう」「ええんよ、ふみこちゃんが気に入ってくれれば」「小母さん、学芸会には見に来てちょうだい」「行かせてもらうわ、小父さんも一緒にな」ふみこはそれだけを言い、踵を返したが「ふみこちゃん、一つお願いをきいてもらえる?」
ふみこを見つめる眼差しがやさしい「ふみこちゃん、一度でいいから…おかあさんて呼んでちょうだい」小母さんは、じっとふみこを見つめる。「おかあさん…」途端に、小母さんの胸にきつく抱かれた。小母さんが声を出さずに泣いていると分かりながら、鼻腔をくすぐって香る匂いに母とは違う感じを受け心が揺れた。
次の瞬間ふみこに視えた映像が、見たこともない家での様子だった。そこにはふみこの大きくなった姿と、リョウが居た。ちょこまかと動く幼い児も?陽射しの注ぎこむ部屋ではリョウが何かを話していて、傍にいるふみこにほほえむ。えっ?小母さん地の子どもになったら、遇えるんリョウさんに。謎が凍み広がりゆく。
ふみこは、風呂焚きをしている祖母の傍に行き「ちゃんとお礼言うたけぇ、小母さん泣いてた。うちのどこがええんかな」風呂場の焚き物が火の勢いで崩れ、火花が飛び散った。祖母は黙って月の上がり始めた宙を見遣り「うさぎが踊っとるわ、ふみこよう見て習えや」衣装は、月の光に濡れた光沢を放って七色に彩る。