それは明けて行く時には間のある、例えて云えばもう少し眠りたい気もするまどろみの中でふみこは祖母の声を聴いた。「ふみこ、ついておいで」ふみこは醒めない眼を擦り、祖母の後を追う。山を切り開いた裾野には田が幾段にもあって続き、細い路から畔に移り平地に出ると大きな樹が井戸の側に見えてきた。
ふみこは何の樹だろう?と瞬きもせずに見ていると「これは枇杷じゃ、この樹を使って訪なう者を援けてやれ」「誰をなん?何の為にするんじゃ」祖母は、事細やかに遣り方を話しふみこに云い聴かせた。「あたしにできるんかな?」思えば必ず、と祖母は頷くがふみこには疑いの心が沸き上がって眉間をよせる。
ふと、何かに視られているような気がした。枇杷の樹に影が見えて、それがするすると地に降り姿を現す。龍だ!それも白い龍が、涼しい彩の瞳を向けてふみこを見つめている。おいで、おまえの使命を果たせるように魅せてやろう。白龍はふみこの心を捉え、鉤裂きの拳で背に乗せ上げ瞬時に宙を翔けだした。
それはこれからを告げる事象で、ふみこの心に容赦なく侵入し蓄積していく。それらを視ていると、背筋の凍りつく風景も飛び込んで来るのだ。何故?どうしてなの?あたしには何もできない、ふみこは思わずかぶりを振った。おまえの力に気づく者は同胞だが、利用されることも多く災いも転じてを覚悟せよ。
ふみこは、白龍の背で身じろぎもできない。辺りに景色は何もなく、耳には白龍の訓えだけが聴こえ溜る。静寂な時空に浮かぶのはふみこと白龍の他いず、身体中に何かが溢れていくのも確かなこと。おまえが使命を拒んだり忘れそうな時に、我は姿を魅せるであろう。ふみこは惑乱しそうだが、努めて頷いた。
ふみこは何の樹だろう?と瞬きもせずに見ていると「これは枇杷じゃ、この樹を使って訪なう者を援けてやれ」「誰をなん?何の為にするんじゃ」祖母は、事細やかに遣り方を話しふみこに云い聴かせた。「あたしにできるんかな?」思えば必ず、と祖母は頷くがふみこには疑いの心が沸き上がって眉間をよせる。
ふと、何かに視られているような気がした。枇杷の樹に影が見えて、それがするすると地に降り姿を現す。龍だ!それも白い龍が、涼しい彩の瞳を向けてふみこを見つめている。おいで、おまえの使命を果たせるように魅せてやろう。白龍はふみこの心を捉え、鉤裂きの拳で背に乗せ上げ瞬時に宙を翔けだした。
それはこれからを告げる事象で、ふみこの心に容赦なく侵入し蓄積していく。それらを視ていると、背筋の凍りつく風景も飛び込んで来るのだ。何故?どうしてなの?あたしには何もできない、ふみこは思わずかぶりを振った。おまえの力に気づく者は同胞だが、利用されることも多く災いも転じてを覚悟せよ。
ふみこは、白龍の背で身じろぎもできない。辺りに景色は何もなく、耳には白龍の訓えだけが聴こえ溜る。静寂な時空に浮かぶのはふみこと白龍の他いず、身体中に何かが溢れていくのも確かなこと。おまえが使命を拒んだり忘れそうな時に、我は姿を魅せるであろう。ふみこは惑乱しそうだが、努めて頷いた。