石が足裏に触る。視える景色は大小取り交ぜての石畳原を、ふみこは歩いていた。ふと瞳を上げて見回せば、辺りに物云わずで歩く者達がいる。影を重ねるように、ひしめき合ってひたすらに同じ方角に向かうのは薄気味悪い。ここはどこなんだろう…あたしは何をしに何処に?行こうとしているんだろうと歩く。
河原のようだと思えるのは、小さな舟が一艘見えたからでもある。まるで江戸時代の関所のようで、背の低い小さなお婆が何かを受け取っては舟に渡している。ふみこは背伸びをしてみたが、大勢の人で前が見えない。そこの者、何処に逝きやる。えっ?あたしのことかな。おまえは影をつけているではないか。
どこって、それが分かるくらいならここには居ないわよ。結界を勝手に超えてはならん、それとも向こう岸に渡りたいのか?何それって、言ってることが分からない。ふみこは、思わず祖母を呼んだ。すると祖母が対岸に姿を見せ「ふみこ、未だ来るには及ばん。早うに還れや」「還れって、どうしたらええの」
ふみこはそこで目が覚めた。祖母が亡くなって久しいことに想いを馳せると共に、小さな吾児が見ているのにはっとした。ふみこは胸に秘めての人とは添えないと知り、嫁ぐのも相手が誰であろうと同じだった。ふみこは子どもの為に堪えていたが、心は定まらず虚しい時ばかりが過ぎて翻弄され疲れに埋もれた。
祖母に遭いたいと、心底想い願うふみこの身体は賽の河原に辿り着いていた。ふみこは吾児を抱きしめ、涙がほろほろと頬を伝うに任せた。祖母の処にも逝けないとすれば、生きるしか路はないのだろうか?この先へと進むには辛さが勝るばかりだ。その年の春、町の集団検診を受けると心臓に欠陥と診断が出た。
河原のようだと思えるのは、小さな舟が一艘見えたからでもある。まるで江戸時代の関所のようで、背の低い小さなお婆が何かを受け取っては舟に渡している。ふみこは背伸びをしてみたが、大勢の人で前が見えない。そこの者、何処に逝きやる。えっ?あたしのことかな。おまえは影をつけているではないか。
どこって、それが分かるくらいならここには居ないわよ。結界を勝手に超えてはならん、それとも向こう岸に渡りたいのか?何それって、言ってることが分からない。ふみこは、思わず祖母を呼んだ。すると祖母が対岸に姿を見せ「ふみこ、未だ来るには及ばん。早うに還れや」「還れって、どうしたらええの」
ふみこはそこで目が覚めた。祖母が亡くなって久しいことに想いを馳せると共に、小さな吾児が見ているのにはっとした。ふみこは胸に秘めての人とは添えないと知り、嫁ぐのも相手が誰であろうと同じだった。ふみこは子どもの為に堪えていたが、心は定まらず虚しい時ばかりが過ぎて翻弄され疲れに埋もれた。
祖母に遭いたいと、心底想い願うふみこの身体は賽の河原に辿り着いていた。ふみこは吾児を抱きしめ、涙がほろほろと頬を伝うに任せた。祖母の処にも逝けないとすれば、生きるしか路はないのだろうか?この先へと進むには辛さが勝るばかりだ。その年の春、町の集団検診を受けると心臓に欠陥と診断が出た。