春休みには宿題もなく、気温も緩やかになるのがふみこはうれしいばかりだ。ところがその期間は、遠くの山に焚き物をしに行くのと筆軸を切りに出かける。朝寝ができるどころか、学校に行くよりも早く布団を剥がれる始末で寝惚け眼で起きる。祖母は七輪に炭を熾し、網をかけた上にお結びを乗せ焼いていた。
竹の皮を干したのに包んだのを、ふみこの背に括りつける。お彼岸の時期だが、早朝には肌寒く温かくていい。朝日の昇る中を歩いて行くが、手押し車の上には妹が乗り他には鎌や鋸があるだけだ。子どもの足だと二時間はかかる場所で遊びながらだと、途中小走りになる。ふみこは歩くのが嫌になり、お腹も空く。
背中の弁当が気になるが「食うなよ!」兄が煩く言う。祖母が大事にしてある袋を腰に下げているのを、ふみこは知っている。袋には、小豆が入っているのだ。それを到着したら直ぐに湧き水の中に漬けて置き、一合分の米とを鍋で炊く。お結びもだが、屑小豆であっても山では殊更に旨く感じ待つのはうれしいもの。
山に入るのは生き物への用心もだが、火事には細心の注意を払う。湧き水を掘るのもその為で、乾いた土の場所を深くして石で囲んでおく。祖母はぶつぶつと呪文のように呟き、澄んだ水を鍋に汲んで小豆を浸す。焚き物をしながら空を見上げては束を作り、頃合いを計って火を熾して小豆と小米の鍋をかけおいた。
家には柱時計しかなく、祖母が時間を分るのも不思議で「ばあちゃん、なんで?」「お天とうさまよ。あそこに来たら支度して、こっちに移ったらええ加減じゃ」ふみこにはさっぱりだが、影でも分かると言う。ふみこは、学校で教わらないことばかりだった。星の動きや並び方にも祖母は詳しく、天気は必ず中る。
竹の皮を干したのに包んだのを、ふみこの背に括りつける。お彼岸の時期だが、早朝には肌寒く温かくていい。朝日の昇る中を歩いて行くが、手押し車の上には妹が乗り他には鎌や鋸があるだけだ。子どもの足だと二時間はかかる場所で遊びながらだと、途中小走りになる。ふみこは歩くのが嫌になり、お腹も空く。
背中の弁当が気になるが「食うなよ!」兄が煩く言う。祖母が大事にしてある袋を腰に下げているのを、ふみこは知っている。袋には、小豆が入っているのだ。それを到着したら直ぐに湧き水の中に漬けて置き、一合分の米とを鍋で炊く。お結びもだが、屑小豆であっても山では殊更に旨く感じ待つのはうれしいもの。
山に入るのは生き物への用心もだが、火事には細心の注意を払う。湧き水を掘るのもその為で、乾いた土の場所を深くして石で囲んでおく。祖母はぶつぶつと呪文のように呟き、澄んだ水を鍋に汲んで小豆を浸す。焚き物をしながら空を見上げては束を作り、頃合いを計って火を熾して小豆と小米の鍋をかけおいた。
家には柱時計しかなく、祖母が時間を分るのも不思議で「ばあちゃん、なんで?」「お天とうさまよ。あそこに来たら支度して、こっちに移ったらええ加減じゃ」ふみこにはさっぱりだが、影でも分かると言う。ふみこは、学校で教わらないことばかりだった。星の動きや並び方にも祖母は詳しく、天気は必ず中る。