その男の人が、どこから来たのかは分からないまでもふみこの心を捉える。何よりも、微笑む顔に妙な懐かしさを感じ声にも聴き覚えがある。それが何なのか、どこでだったのか記憶は曖昧なのだ。「ここにね、何だか来た覚えがあるんだよ」ふ~ん、ここらに住んでたの?小父さん。ふみこはその声に耳を傾ける。
ふみこに男の人の年齢は分らないが、大人には違いない。「誰か、さがしょん?どこに行きたいんかな」ふみこが小さな声で言う「う~ん、捜しているというか…道を歩いていたらここに出たのさ」「小父さん、迷子になったんか」「仕事に行こうとしてて駅で車を下りたんだよ、気がついたらここにいたってこと」
ふみこはちんぷんかんぷんな話に、疑いの瞳を向けた。その時、ふみこははっとした。もしかしたらこの人は、あそこの路に迷い込んだのではと胸騒ぎがしてしまう。それでふみこは「小父さん帰りたいの?」「そうだよ、可なりの遅刻だけれどね。休暇願を出してないから」「だったら、元の所に還りたい言うて」
ふみこは、自分にできることが相手にも出来ると思うので何気に言う。「そうかぁ、そこまでは気がつかなったよ。ありがとう」ふみこは声音に惹かれながら、頷いてしまう。誰?だれじゃろう、名前が出そうで思い浮かばない。「じゃあ言うよ、元の場所に還して」消えた!ふみこも呪文にして唱えただけなのに。
ふみこは、思わず買い物籠を見た。豆腐と揚げは無事だが、空恐ろしさに家までを夢中で駆けた。祖母を見つけ「ばあちゃん、お宮には抜け道があるって言うたなぁ」「あるともさ、どうかしたんか」ふみこは祖母に一部始終を話す。祖母の顔色が変わるのを、ふみこは瞬きもせず見つめた。「迎えにきんさった…」
ふみこに男の人の年齢は分らないが、大人には違いない。「誰か、さがしょん?どこに行きたいんかな」ふみこが小さな声で言う「う~ん、捜しているというか…道を歩いていたらここに出たのさ」「小父さん、迷子になったんか」「仕事に行こうとしてて駅で車を下りたんだよ、気がついたらここにいたってこと」
ふみこはちんぷんかんぷんな話に、疑いの瞳を向けた。その時、ふみこははっとした。もしかしたらこの人は、あそこの路に迷い込んだのではと胸騒ぎがしてしまう。それでふみこは「小父さん帰りたいの?」「そうだよ、可なりの遅刻だけれどね。休暇願を出してないから」「だったら、元の所に還りたい言うて」
ふみこは、自分にできることが相手にも出来ると思うので何気に言う。「そうかぁ、そこまでは気がつかなったよ。ありがとう」ふみこは声音に惹かれながら、頷いてしまう。誰?だれじゃろう、名前が出そうで思い浮かばない。「じゃあ言うよ、元の場所に還して」消えた!ふみこも呪文にして唱えただけなのに。
ふみこは、思わず買い物籠を見た。豆腐と揚げは無事だが、空恐ろしさに家までを夢中で駆けた。祖母を見つけ「ばあちゃん、お宮には抜け道があるって言うたなぁ」「あるともさ、どうかしたんか」ふみこは祖母に一部始終を話す。祖母の顔色が変わるのを、ふみこは瞬きもせず見つめた。「迎えにきんさった…」