砂時計だ!ふみこはそれが何を意味していたかに気づいた。もう一つのからくり時計を持っていた人が、いたはずなんじゃ。あたしをふみこと呼んでいた…誰?どこに居るんじゃろ。祖母が布団に正座して手招く、ふみこはその前の畳に座わり「ばあちゃん、なんでこれを持っとん?」ふみこは怪訝な顔を祖母に向ける。
祖母は、ふみこの瞳を真正面に見て「これはなぁ、まさ婆が死ぬ前に大切にしてくれと渡した物よ」まさ婆?誰だったろう…なぜか懐かしい心になれる。「娘のおらに失くさねぇで、決して誰にも見せちゃならんときつうに言うてな」「まさ婆って、ばあちゃんの母さんか?」そうじゃと祖母は頷き、ふみこを見つめた。
ああ・そうなんだ。ふみこはまざまざと記憶が甦り、まさ婆が突然現れた二人に殊更驚きもせず親身になってくれたのが分った。リョウさん!あの児はリョウと云った。月の世界に送って往き、そこからまさ婆の時に紛れ込んでいたのだ。リョウさんは、どこにおるんかな?ふみこの胸に不安が波立ち止まらなくなった。
祖母は顔を強張らせ「あの方は月へ帰らんさった」ふみこは、思い出そうとしてはっとした。リョウさん川で溺れなさったけど、死んだんじゃなく月に還えれたんじゃな。ふみこは月を観上げる度に、切なく堪らなくなるのが漸くのことに分かった。祖母は不思議な縁を感じる反面、ふみこが持つ力に戸惑いも隠せずだ。
ふみこは障子の向こうに立てた戸袋の隙間から漏れ零れる、月光に包まれこんで眠った。秋祭りが始終賑やかに行われ神事を祝うと、取り入れが始まる。お宮の北隣にある小母さんが家にやって来たのはその頃で、ふみこを養女にと言う。ふみこは兄や妹と離れられるのが何よりもうれしく思うものの、祖母との別れは辛い。
祖母は、ふみこの瞳を真正面に見て「これはなぁ、まさ婆が死ぬ前に大切にしてくれと渡した物よ」まさ婆?誰だったろう…なぜか懐かしい心になれる。「娘のおらに失くさねぇで、決して誰にも見せちゃならんときつうに言うてな」「まさ婆って、ばあちゃんの母さんか?」そうじゃと祖母は頷き、ふみこを見つめた。
ああ・そうなんだ。ふみこはまざまざと記憶が甦り、まさ婆が突然現れた二人に殊更驚きもせず親身になってくれたのが分った。リョウさん!あの児はリョウと云った。月の世界に送って往き、そこからまさ婆の時に紛れ込んでいたのだ。リョウさんは、どこにおるんかな?ふみこの胸に不安が波立ち止まらなくなった。
祖母は顔を強張らせ「あの方は月へ帰らんさった」ふみこは、思い出そうとしてはっとした。リョウさん川で溺れなさったけど、死んだんじゃなく月に還えれたんじゃな。ふみこは月を観上げる度に、切なく堪らなくなるのが漸くのことに分かった。祖母は不思議な縁を感じる反面、ふみこが持つ力に戸惑いも隠せずだ。
ふみこは障子の向こうに立てた戸袋の隙間から漏れ零れる、月光に包まれこんで眠った。秋祭りが始終賑やかに行われ神事を祝うと、取り入れが始まる。お宮の北隣にある小母さんが家にやって来たのはその頃で、ふみこを養女にと言う。ふみこは兄や妹と離れられるのが何よりもうれしく思うものの、祖母との別れは辛い。