ふみこには、思うこともなく束の間に景色が視えることがある。眠っている時ではなくて、日中に起きる。祖母には話すが、両親や兄達等云われないことだと相手にしない。それが兄妹間をぎこちなくさせて、心での距離をおいてしまうのは明かだった。ふみこは、祖母と居れば何の不足なく過せるし遊びに呆けた。
その日は、半ドンでお昼からの授業はなく一斉下校。並んでの帰り道、ともすれば道草をし始めるふみこに兄が冷めた目を向ける。「おまえは、上級生の言うことがきけんのか」うん?上級生って誰なんじゃ、ふみこは口に出す代りに年子の兄に背を向けた。今度は後ろ向きに歩き、空を見上げながら飛び跳ねるが。
家に着くと、兄の告げ口のお陰で母親から小言をもらう。ふみこは、ご飯もそこそこに山に駆け上がり破れた筵を隠していたのも引き出した。小路の頂上から、落ち葉の上を筵に乗って下りるのは気分がすかっとした。仲間や誰かと遊ばなくとも、下りては上りで何度も滑り暗くなる前に背負い篭に落ち葉は忘れず。
風呂場の焚口は北側で秋ともなれば風が冷たく感じて来るし、火の用心は怠れない。ふみこは落ち葉を背負い篭から出し、林檎箱に詰めた。「ばあちゃん、代ろうか」祖母は黙って表に回り、竹箒を手に門を掃き明日の段取りもしているようだ。そこに兄がやって来たが、手にしている物にふみこの瞳は釘付けになる。
あれは、リョウさんが作った…からくり時計だ。「兄ちゃん、それをどこで見つけたん?」「どこでもええが、見つけたもんの勝ちじゃあ」それはリョウさんの物なんじゃわ!ふみこの全身を怒りが襲い「返してや、それはだいじなんじゃ」「いやだね」ふみこは、兄の持つ手を掴もうと突進したが兄にかわされた。
その途端に兄の手を外れたからくり時計は、音を立てて土に落ち消えた。リョウさん!行かないで、あたしを連れていって。ふみこの叫びは虚しく空に吸い込まれて、闇の中を彷徨い始じめた。ふみこは螺旋の渦が大きくうねり、忽ちにして惹き込まれ数多の星の群れに投げ出され漂うものの身体は微妙だにしない。
その日は、半ドンでお昼からの授業はなく一斉下校。並んでの帰り道、ともすれば道草をし始めるふみこに兄が冷めた目を向ける。「おまえは、上級生の言うことがきけんのか」うん?上級生って誰なんじゃ、ふみこは口に出す代りに年子の兄に背を向けた。今度は後ろ向きに歩き、空を見上げながら飛び跳ねるが。
家に着くと、兄の告げ口のお陰で母親から小言をもらう。ふみこは、ご飯もそこそこに山に駆け上がり破れた筵を隠していたのも引き出した。小路の頂上から、落ち葉の上を筵に乗って下りるのは気分がすかっとした。仲間や誰かと遊ばなくとも、下りては上りで何度も滑り暗くなる前に背負い篭に落ち葉は忘れず。
風呂場の焚口は北側で秋ともなれば風が冷たく感じて来るし、火の用心は怠れない。ふみこは落ち葉を背負い篭から出し、林檎箱に詰めた。「ばあちゃん、代ろうか」祖母は黙って表に回り、竹箒を手に門を掃き明日の段取りもしているようだ。そこに兄がやって来たが、手にしている物にふみこの瞳は釘付けになる。
あれは、リョウさんが作った…からくり時計だ。「兄ちゃん、それをどこで見つけたん?」「どこでもええが、見つけたもんの勝ちじゃあ」それはリョウさんの物なんじゃわ!ふみこの全身を怒りが襲い「返してや、それはだいじなんじゃ」「いやだね」ふみこは、兄の持つ手を掴もうと突進したが兄にかわされた。
その途端に兄の手を外れたからくり時計は、音を立てて土に落ち消えた。リョウさん!行かないで、あたしを連れていって。ふみこの叫びは虚しく空に吸い込まれて、闇の中を彷徨い始じめた。ふみこは螺旋の渦が大きくうねり、忽ちにして惹き込まれ数多の星の群れに投げ出され漂うものの身体は微妙だにしない。