ふみこの通う木造の小学校校舎とは離れた台地に、二階建ての中学校がある。講堂は南に位置しているが、川の側でもあり冬場には風が吹きつけて来る。学芸会の発表は幼稚園から始まり、午前中は小学生にあてられ午後からが中学生だ。村の者は誰もが自由に出入りでき、弁当を用意しての集いの場でもあり賑やかだ。
祖母は、前日から余所行きの着物を衛門掛けに風を通し「踊りは?ちゃんとできるんか」ふみこは自信がなかったので、黙って頷く。昨日、何かがあったようにも思え「ばあちゃん、学校休もうかな」「学校にはいかにゃいけん、かしこぉなれんぞ」ふみこは、胸のもやもやを言いかけて止めた。宙には月が懸り明るい。
うさぎの衣装は家庭により違っていたが、ふみこは自分に羨望の目が注がれているのを感じてもいた。ひそひそと意地悪なささやきも交され、聞こえよがしの言葉もした。幼馴染も目を瞠り「これ、どうしたん?」ふみこは「ばあちゃんが織ってくれた」とだけ答え余計なことは口を閉じた。やっかみと妬ましが混じる。
教室で着替えると、講堂までの移動だが北風が冷たい。ふみこは衣装が絹なので温かく、祖母が肩や腰に真綿をひき足してのもうれしかった。舞台の幕が下り一年生が終わると、ふみこらの二年生が並んだ。音楽がかかり、踊り始めてふみこはあれっ?と感じた。誰という訳でもないが、ふみこを押して端へと追いやる。
ふみこは、祖母やあの小母さんと小父さんに見てもらえればいいと踊る。曲が終わった時点で、完全に幕からは見えない位置にいた。ふみこはこれは仲間外れだと思うものの、衣装の素晴らしさへの妬みとも知った。教室で着替えていると、盗んだんじゃわ…と言う声がした。背中を向けていても、それが誰かと分かる。
祖母は、前日から余所行きの着物を衛門掛けに風を通し「踊りは?ちゃんとできるんか」ふみこは自信がなかったので、黙って頷く。昨日、何かがあったようにも思え「ばあちゃん、学校休もうかな」「学校にはいかにゃいけん、かしこぉなれんぞ」ふみこは、胸のもやもやを言いかけて止めた。宙には月が懸り明るい。
うさぎの衣装は家庭により違っていたが、ふみこは自分に羨望の目が注がれているのを感じてもいた。ひそひそと意地悪なささやきも交され、聞こえよがしの言葉もした。幼馴染も目を瞠り「これ、どうしたん?」ふみこは「ばあちゃんが織ってくれた」とだけ答え余計なことは口を閉じた。やっかみと妬ましが混じる。
教室で着替えると、講堂までの移動だが北風が冷たい。ふみこは衣装が絹なので温かく、祖母が肩や腰に真綿をひき足してのもうれしかった。舞台の幕が下り一年生が終わると、ふみこらの二年生が並んだ。音楽がかかり、踊り始めてふみこはあれっ?と感じた。誰という訳でもないが、ふみこを押して端へと追いやる。
ふみこは、祖母やあの小母さんと小父さんに見てもらえればいいと踊る。曲が終わった時点で、完全に幕からは見えない位置にいた。ふみこはこれは仲間外れだと思うものの、衣装の素晴らしさへの妬みとも知った。教室で着替えていると、盗んだんじゃわ…と言う声がした。背中を向けていても、それが誰かと分かる。