ふみこと幼馴染とは、家を二軒離した距離にあり裕福なのでお八つがある。見せびらかされても一度としてもらったことはなく、遊びに行っても庭で待ち玄関さえ入るのを遠慮な家だ。その幼馴染が「アイスな、冷たくておいしいんよ」と自慢げに言う。ふみこは夏の暑い日に「ばあちゃん、アイスって知っとるんか?」
祖母は少し考えていたが、おもむろに座敷に上がり箪笥の引き出しを開けて十円札を取り出した。ついでに弁当缶を持たされ、下の店まで三人分を買いに行けと言う。「なんじゃ兄やんの分もか?走って帰らにゃいけんが」ふみこが口を尖らせると、祖母は「ふみこは速う走るでな」すっかり煽てられふみこは駆けた。
アイスを一なめしたふみこは満足で、世の中にこんな冷たくておいしい物があり幼馴染はいつも口にしていると羨ましかった。服も綺麗で可愛らしい恰好をして、ふみこのように泥がついていることもない。遊ぶのもお人形相手で、ふみこの買ってはもらえない高価な物だ。お雛様さえ、ふみこのは見当たらず叔母のだ。
夏の休みは長く四十数日で、途中で何回かの登校をするが遊ぶのには事欠かないふみこだ。蝉を捕まえるのも素手で、網は直ぐに破れて役に立たなくしてしまう。樹の上で鳴いているのには、するするとよじ登り息を殺しておいて捕る。虫篭には動けない程の蝉がいて、母親は呆れ果て佃煮にするんか!と怒られる始末。
夏休みの間中、川にも行き鮠を捕るのに夢中になる。魚篭に追い込んでいく為、男の子顔負けの素早さなのも気に入らぬようだ。井戸水は冷たく、祖母が吊るしている瓜や西瓜は格別だ。陽射しは容赦なく照りつけ、川の水を柄杓で梳くっては手桶に汲み畑まで運ぶ。畑に生り熟れている野菜を、直に齧る味は格別也。
暦 如月・望・大潮 当地の気温は19℃となる。
祖母は少し考えていたが、おもむろに座敷に上がり箪笥の引き出しを開けて十円札を取り出した。ついでに弁当缶を持たされ、下の店まで三人分を買いに行けと言う。「なんじゃ兄やんの分もか?走って帰らにゃいけんが」ふみこが口を尖らせると、祖母は「ふみこは速う走るでな」すっかり煽てられふみこは駆けた。
アイスを一なめしたふみこは満足で、世の中にこんな冷たくておいしい物があり幼馴染はいつも口にしていると羨ましかった。服も綺麗で可愛らしい恰好をして、ふみこのように泥がついていることもない。遊ぶのもお人形相手で、ふみこの買ってはもらえない高価な物だ。お雛様さえ、ふみこのは見当たらず叔母のだ。
夏の休みは長く四十数日で、途中で何回かの登校をするが遊ぶのには事欠かないふみこだ。蝉を捕まえるのも素手で、網は直ぐに破れて役に立たなくしてしまう。樹の上で鳴いているのには、するするとよじ登り息を殺しておいて捕る。虫篭には動けない程の蝉がいて、母親は呆れ果て佃煮にするんか!と怒られる始末。
夏休みの間中、川にも行き鮠を捕るのに夢中になる。魚篭に追い込んでいく為、男の子顔負けの素早さなのも気に入らぬようだ。井戸水は冷たく、祖母が吊るしている瓜や西瓜は格別だ。陽射しは容赦なく照りつけ、川の水を柄杓で梳くっては手桶に汲み畑まで運ぶ。畑に生り熟れている野菜を、直に齧る味は格別也。
暦 如月・望・大潮 当地の気温は19℃となる。