遂に来た!朝が来た! 棚卸しの朝だ。
半年ぶりだ!私にとっては、二度目の棚卸し。
ここで働き始めて、8ヶ月が過ぎた。
8時35分に職場に到着。ちょっと、まだ、早いけれど、まあ、いいか。
山崎パンのトラックの陰から南副店長が、ひょい!っと、現れた。突然だったので、ビクっとしたが、おはようございます、というと、
「おいっす」と、入学したての小学生のように、元気よく答えた。こういう特別な日に、一番張り切るのが、副店長だ。
それゆえ、熱血教師タイプだとか、モーレツ副店長と呼ばれるのである。
プラットホームから、御店の中へ入ろうとすると、康永君が台車に入荷商品を積んでいるのが見えた。
「おはようございます・・・」
といいながら、思わずニッとしてしまう。
よお~康永君、張り切って、仕事してるねえ~
と、声を掛けたい気もしたが、すぐ背後には、南副店長がいるので、やめておいた。前日の、「灰色勤務表。。。一人だけ8時出勤」ストーリーがよみがえる。
何故、こうも、このスーパーには、オモシロネタが転がっているのだろう??
棚卸しの日は、全員出勤。
「グロッサリー担当者、10番まで!」
という南副店長の店内放送で、全員バックに集合した。
副店長は、全員集まったところで、クルリと後ろを向き、名前札が相撲部屋のように、ズラリと並んだ白板を見ながら、名前札順に、名前を読み上げた。
「矢木さん」
「はい」
「岸辺さん」
「は~い」
「カト君」
「ハイ」
「鈴木さん」
私は、一瞬、考えた。
「YesHere I am( はい、ここにいま~す」
と、英語で 答えるか否かを・・・。
だが、棚卸し前から、副店長の顔を引きつらせてはいけないと、思い、
おとなしく、「は・・・い」と、お答えしておいた。
副店長の方も、何かを予感したらしく、私の前までは、
一定のリズムで出席を取っていたのだが、私の名前を呼んだあと、二、三秒の間があった。
「鈴木さん」
「は・・・い」
「・・・(えっ・・・と・・・ 次は・・・そう、気を取り直してっと) 末永さん!」
「はい」
無事、最初の難関?出席が終了し、いよいよ棚卸しの説明が始まった。
「今日、一日の流れを説明します。まず、今日の入荷商品に、あたること。次にカー・トラックの整理・・・」
CAR TRACK??? 車とトラックの整理って、なんじゃいな?
気付いた時には、副店長の説明を中断させ、「CAR TRACK・・・って、なんですか?」と、聞いていた。
すると、副店長は、長台車を引っ張ってきて、台車の底の部分を左から右へと指し示し、
「カート・・・」
次に、上の部分へ移行し、
「ラック」
と、言った。
これを動作付きで、なんと、二回も、
「カート・・・ラック・・・」
と、デモストレーションをご丁寧にやって見せてくれたのである!
カートは、押し車。ラックは入れ物。
合わせて、カートラック。すなわち、長台車のことだ。
カー ・ トラック・・・ではなくて、
カート ・ ラックだったのね!
何処で切るか(もしくは息つぎするか?)で、随分イメージするものも、変わるものだなあ。
朝から、副店長に英語を教えてもらったのである。
もう、副店長ったらあ~。最初から日本語で「長台車」と言ってくれたら分かったのに。イングリッシュで言うもんだから、分からなかったわ~。
さて、その後、いよいよ本題に入り、今回から、新システムが導入され、先ほど話題になった、カートラック(長台車=各、部門の在庫置き場)に番号がつけられることになったという。
課会が終了し、荷出しも終わる頃には、
副店長が、順番に、「棚卸し20番、21番・・・60番」まで、台車に貼っていった。私の乾物の台車には、21,22,23番の紙が貼られた。
そのお隣は、矢木さん担当、調味だから、24番。
岸辺さんは、言った。
「私のは、30番だから、私、30歳よ!あら・・・矢木さんは、24歳。私より、若いわねえ」
矢木さんは、グロッサリーでは、一番先輩で、今年還暦なのだ。
24歳と聞いて、矢木さんも、まんざらではないらしい。
ニコニコ (^_^*)
南副店長の、あの一言を聞くまでは・・・。
「(ニッ)余命、24年・・・」
「・・・・絶句」(矢木さん)
岸辺さんは、必死に、「副店長が店長になって、この店に戻って来たときには、矢木さんも、私も毎日ここに杖ついて、通うよ。あの二人、又、来てる!!って、煙たがられるかもねえ・・・はっ・・・はははっ」
すると、副店長は、「ふっ、ふっ、ふっ・・・」と、背中と肩で笑い、
「その時は、やさしく接客してやるよ!」
南副店長、ちょっと、キザなセリフです。
にやりと笑う副店長に見送られ、私達、グロッサリー女史5人は、お昼の休憩に入ったのであった・・・。
ああ~お腹すいた!
続く・・・