日曜日の朝。
思えば、新メンバーになってから、初めての日曜日の早朝出勤だ。
「お姉さま方、行きましょう!」
一体、どうしたのか!? 「ババア呼んで来て!」と、つい、この間まで失言続きだった川石さんが、まるで一夜にして生まれ変わったかのごとく、丁寧語でグロッサリーの「お姉さま方」をお茶へ誘った。
「まあ、お姉さま方だって^0^」
まず、一番に喜んで ついて行ったのは、矢木さんである。
伝票チェックに追われていた私と岸辺さんが後へ続こうとした。
康永君は、訳が分からずにいるようなので、
「康永君、テイータイムよ!プラットホームへ行こう!」
と、声をかけた。
「僕、早朝から何度も仕事してるんですけど・・・。初めてなんですけど・・・。テイータイムなんて・・・」
どうやら康永君、彼を誘わず毎日、早朝にお茶していると勘違いしたようだ。
「違うのよ。日曜日だけよ」
そう言った私に、矢木さんも付け足した。
「それに、日曜といっても毎週じゃないよ。人と状況によるんよ」
そう!その通り!
この日のトピックは、さながら店長慰労会のようだった。本人は その場に居なかったのだが・・・。
「昨日、店長ね、一人で ここに座って眉間にシワ寄せてた。大変ですねって声掛けたけど、返答がなかったよ。相当 疲れてるよね・・・」
と、矢木さん。
そうなんだ・・・。
二人の上司が去った後、私の前では店長、やたらと明るい気がする。
「店長」
と呼べば、
「はいっ 」
と元気よく返事をし、真正面を向いて、ニコリと笑う。質問をすれば、時間を割いて丁寧に いっぱい説明してくれる。発注の事で悩んでいると、一緒に考えてくれる。仕事以外の話に触れたり、冗談も言う・・・まるで南副店長のよう。
・・・だと思っていた。
「相当、疲れてるみたい・・・」
最近、新たに3つのスーパーが「とある会社系列」になったが、その内、一つは店長の自宅近くらしい。
もし、店長がそこへ異動になったら、お客様は近所の人ばかりで、店長のお知り合い、**さんの奥様も!更には*:さんの奥様も、ご来店。
「お宅のイケてる御主人、こないだラーメンを積んでたわよ!」
と噂話の主役にさせられそう?なのかな。
これは店長にとっては、カワイイ部類の「お悩み」ね。
こうして日曜日の朝の朝礼及びお茶会は終了。
貴重なスタッフ同士のコミュニケーションの機会である。
解散後、翌日月曜日が休みの私は、前倒しで発注をしていた。
「鈴木さ~ん!南さんが来てますよ!南さんが!!バックに!」
こう言いながら売り場へ跳んできたのは、カトちゃんだ。
ミ・ナ・ミ 副店長が!?
「えっ! ほんと??何処?何処??」
「バックです」
前日は、西村チーフが来てくれたばかり。
今回は、南副店長が来たという。
私は発注を途中で放り出し、カトちゃんに続いてバックへすっ跳んで行った。
(きっと、昨日の「さくらオールレデイース」による曲目、「いとしのミナミ@_@」が本人にも届いたのねえ・・・)
それで早速、訪ねてくれたんだわ、きっと・・・。
ミナミ副店長、いいとこ、あるわねえ。
即、リクエストに答えてくれるなんて。
バックへ駆け込むと、そこには岸辺さんが一人、なんだか、寂しそうに立っていた。
「あれ?南副店長は??」
「売り場へ行ったよ」
私とカトちゃんは、売り場へ急いだ。
辺りをキョロキョロ。
居ない。
南副店長は、いつも、月面を歩くような感じで前にツンのめながら、早歩きする人だから・・・なあ。
もう、行ってしまった・・・訳??
もう一度、バックへ行き、岸辺さんに聞いた。
「『岸辺さん!検品して!』っていきなり姿は見えないけど、声がしてね・・・。なんか、南副店長の声みたいだなあ・・・と思って机の方を見たら、南副店長、机の影に隠れるようにしてるじゃない!そのまま、売り場へ行った・・・。挨拶もなしにやって来て、挨拶せずに・・・結局、 売り場から帰ったみたい・・・ね」
なっ・・・なんで!?
「それで、南副店長の目的は何だったんですか?」
「さあ・・・?風のようにやって来て、風のように去っていった・・・ね」
まさしく南風・・・ね。
でも、どうして・・・?
せっかく ここまで来たのなら、挨拶くらいしてくれても良かったのに・・・ね。
私が諦めた後も、カトちゃんは、あきらめ切れない様子で南副店長を売り場で探していた。
「聞きたいことがあったから、電話したのに・・・」
と、カトちゃん。
宝くじに当たった!と喜んで引き換えに跳んで行ったら、「この券、去年のですよ」
と言われ、谷底へ突き落とされたような心境だわ。
一気に喜んで・・・。
同じく一気に沈没。
MVP待遇を約束したにも関わらず、赤いじゅうたんはおろか、出迎えにも行かなかったので、スネたんだろうか??
それでも声くらい掛けてくれたって・・・。
西村チーフと えらい違いだ・・・ね。
最後に南副店長に一言。
ミナミ副店長の・・・
お馬鹿!