平成24年4月 靖国神社社頭に掲示された遺書
昭和20年4月16日 海軍大尉 小久保 節彌 様 (24歳)
愛知県渥美郡昭和20年4月16日 南西諸島にて戦死 合掌
今号はお若いお方が故郷に別れを惜しむお言葉の一言一言に涙が溢れます。
ここに全文を綴らせて頂きます。
我が故郷。
何と美しき四季とりどりの花は咲き、鳥は歌ひ山あり海あり。
太平洋の何と雄大なる、あの土用波の光景が眼にうかぶ。
椿は咲く。紅い花が咲く。
その下で図画を書いた事もあったっけ。
ゑのぐ筆をなめなめ稚い絵を書いた。
或いは夕野田に鮒釣に行った。
稲を荒して叱られた事もあったっけ。
海=そのもつひびき何と雄々しき事よ。
幼時より海辺に育ち真に偉大なる海に親しむ事が出来た。
ドンとうつ波の音は太古より未来永久につづくであらう。
我が故郷よ。無尽の幸あれ。
然して生れ来る国の童等を何時までも何時までも育んで呉れ。
我がふるさと人よ。
何時までも何時までも、純粋であってくれ。
(遺稿 『句集 はまゆふ』 から抜粋)以上全文を綴らせて頂きました。
両親への思いは綴られておりませんが「故郷」の2文字に思いの全てが表現されております事と存じます。悲しみは永遠です。
今号にも全国から鎮魂の歌が寄せられておりますので、お目を通して頂けましたら幸に存じます。
靖国の神と祀られ兄と夫遺影仰げば涙あふるる 角田市 妻
夜も更けて九段短歌を詠みをりし遺族の思ひは繋がりてをり 長浜市 遺族女性
ひと言も便りの中にさよならの言葉残せず散りしわが父 甲州市 遺児女性
夫のみ魂九段の杜に鎮もるも折には添ひくれわれの夢路に 横手市 妻
ラバウルの空をのどかにセナス飛ぶ哀しき歴史もつ大空を 富士吉田市 遺児男性
セピア色になりし写し絵のみに知る戦死の父のわれに似る貌 青森県 遺児女性
一年中シベリアの地は凍るらし眠る兵の父いかにいまさむ 大阪市 遺児女性
金婚を言祝きてくれるな孫たちよ曾祖母(ひひばば)は僅か八年 南相馬市 遺児男性
雪深き被災地支援の宝くじつかの間の夢共に見るらむ 名古屋市 遺児女性
父戦死の桂林に来て桂江に酒をそそぎて慰霊に祈る うきは市 遺児男性
靖国の兄の英魂神としてまつられ過去の思ひは深し 京都市 遺族
「里の秋」甲板に歌ひしみじみと故郷に帰れぬ父らに贈る 千葉市 私
おかげさまで、貴重な紙面に今年3首目の掲載を頂きました。
昨年 (2012年) 洋上慰霊に参加させて頂きました折りの歌ですが、大切な慰霊巡拝の旅に感謝を申し上げながら、歌詞に思いを寄せております。