歩けば楽し

楽しさを歩いて発見

  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

ヒト皮膚線維芽細胞からヒト褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発

2020-04-12 | 健康・病気
 京都府立医科大学大学院医学研究科細胞再生医学戴平研究教授らの研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞を最適化された数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を用いて培養することにより、褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発した。本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」(英国時間:2020年2月28日)に掲載。
 褐色脂肪細胞は、脂肪を蓄えるための細胞ではなく、脂肪を燃焼し熱を産生する細胞として知られており、体温の維持や代謝の向上によって、肥満や糖尿病の予防に重要な役割を果たしていると考えられている。研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞から数種類の低分子化合物を添加した無血清培地を使用し、褐色脂肪細胞を簡便かつ短期間で誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく、創薬研究にとって極めて重要である。また、この褐色脂肪細胞は上記の理由から安全性が高いことが想定され、将来的な臨床応用や細胞移植治療を行う上で大きなメリットとなる。今後、ciBAsを用いて褐色脂肪細胞がヒトの体内で発生する仕組みの解明や、体内の褐色脂肪細胞を増加させる機能性食品や薬の評価、個別化医療などに利用されることなどが期待される。
 研究成果のポイント
 ○数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を使用し、ヒト皮膚線維芽細胞から、褐色脂肪細胞ciBAs (chemical compound-induced brown adipocytes)を誘導する方法を開発した。
 ○ciBAs は、褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子発現を示し、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、新規なヒト褐色脂肪細胞モデルとして利用可能である。
 ○ciBAsは、無血清培地を用いて簡便かつ短期間に誘導されることから、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索を目的とした創薬研究に最適であると考えられる。
 ○ciBAsは、個別化医療の他、将来的な細胞移植治療への臨床応用が期待される
 研究概要
 研究の背景
 食事や運動などの生活習慣において、エネルギーの摂取が消費を超えると肥満の原因となり、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などの重篤な疾患を発症する大きな要因となる。病的な肥満だけでなく、加齢に伴う基礎代謝の減少による軽度の肥満であっても、長期的にはこれらの代謝疾患のリスクと関連することが指摘されている。脂肪細胞には大きく分けて2種類あり、通常の脂肪を蓄える白色脂肪細胞と、脂肪を消費して熱に変換する褐色脂肪細胞がある。我々ヒトでは個人差が大きいですが、褐色脂肪細胞は首回りや胸回りの脂肪内に散在しており、活発な糖や脂肪の代謝を行っている。これらの褐色脂肪細胞は、褐色化(Browning)という現象により白色脂肪細胞から性質が変化したベージュ細胞に近いと考えられている。褐色化によるベージュ細胞の増加は、長期的な寒冷刺激や運動などによって起こると報告されているが、その発生メカニズムの詳細はまだ明らかとなっていない。
 -- --ダイレクトリプログラミング
 分化した細胞に特定の遺伝子を人為的に発現させることによって、目的の細胞を直接誘導する手法をダイレクトリプログラミングと言う。しかし、遺伝子の導入に基づいた方法では、細胞の機能や遺伝情報を損なう危険性がある。また、多能性幹細胞などから特定の細胞を分化させても、未分化の幹細胞が残留することによる腫瘍化のリスクが存在する。
 そこで我々はこれまで、細胞のシグナル伝達経路や転写因子を制御する低分子化合物を複数用いて、ヒト線維芽細胞から神経細胞や褐色脂肪細胞を誘導することに成功した。このように、遺伝子の導入を行わず低分子化合物のみで直接誘導することによって、安全性が高い細胞を短期間で誘導することができる。以前の研究から、5種類の低分子化合物を用いて低分子化合物誘導性褐色脂肪細胞ciBAs の誘導に成功したものの、創薬研究や臨床への応用には、誘導培地中の血清の使用が障害となっていた。
 本研究では、血清を使用しない無血清培地と、これに最適化された化合物カクテルを新たに同定し、簡便かつ短期間にciBAs を誘導する方法を開発した。
 研究の内容
 本研究では、まず褐色脂肪細胞の分化に重要なBMP7(骨形成タンパク質)というサイトカインを新たに使用すると同時に、前回ciBAs の誘導に使用した5種類の低分子化合物の組み合わせについて検討した。その結果、この5種類の中で骨形成タンパク質の機能を阻害する2種類の化合物を除くと、BMP7 はciBAs の誘導効率には影響を与えないものの、褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUcp1( Uncoupling protein 1 ) の発現を活性化させることがわかった。次に、無血清培地において、血清の代わりに特定の脂肪酸のみが結合したアルブミンを使用することで、脂肪酸の供給と細胞の安定性の向上を図った。この時、上記のBMP7 を使用した新しい化合物の組み合わせが、無血清培地下での誘導においても有効であることがわかった。また、血清の存在下ではciBAs の誘導に、TGF.シグナル伝達経路の阻害剤が必要であったが、無血清培地ではこの経路が活性化しておらず、この阻害剤を使用しない方がより効率よく誘導されることが判明した。
 このように最適化された化合物カクテル( Rosiglitazone 、Forskolin 、BMP7)を添加した無血清培地を用いて線維芽細胞を培養することで、2.4週間以内にciBAs が誘導される。また、このciBAs は、ヒトの褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)に特徴的な遺伝子発現を示し、アドレナリン受容体作動薬によるUcp1 遺伝子の発現上昇が検出された。また、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、細胞内の脂肪酸代謝が活性化していることを証明した。
 今後の展開
 近年、世界中で肥満者の増加が社会問題となっており、日本においても肥満が引き起こす糖尿病や循環器疾患が医療費高騰の大きな要因の一つとなってる。本研究では、ヒト皮膚線維芽細胞から数種類の低分子化合物と無血清培地を用いて、簡便かつ短期間に褐色脂肪細胞ciBAs を誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、また動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく創薬研究にとって必須の誘導方法となる。採取が難しいヒト褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)の代わりに、ciBAs を新規な褐色脂肪細胞モデルとして用いることで、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索といった創薬研究に最適であると期待されるす。
 そして、これまで具体的な方法がなかった、日々の生活から機能性食品などの摂取により、体内でベージュ細胞を増加させることができれば、安全で画期的な肥満や糖尿病の予防になると期待される。また、ciBAs を用いて褐色脂肪細胞がヒトの体
内で発生する仕組みの解明に資することが期待されます。他にも我々の開発した誘導法により、複数の人から採取した線維芽細胞をciBAs に誘導し食品成分や薬の効果を解析することで、個々の人に合わせたより効果的な食品成分や薬の選択、また副作用の有無を解析するといった個別化医療への応用にも道が開けると期待される。無血清培地と低分子化合物で誘導されるciBAsは安全性が高いことが想定され、将来の臨床応用や細胞移植治療を行う上でも重要であると考えられる。

 今日の天気は晴れ。風も穏やか。明日は雨の予報なので、畑作業は雨の準備。
 畑までの道沿い、お庭に”ジューンベリー”の花が咲いていた。葉が完全に展葉する前に白い花が咲く。名(ジューンベリー)の如くに、6月(june:ジューン)には実が熟す。因みに、”ジューンベリー”の果実は酸味が弱く味に締りが感じられないので、酸味を補ってジャムなどにした方が味的には美味しい、と言う。
 ”ジューンベリー(June berry)”と呼んでいるのは、ザイフリボク属の同じ様な果実が付く種の総称であるが、”アメリカザイフリボク”とも呼ばれる。”ザイフリボク”との違いは、”ザイフリボク”は雄しべが20個・雌しべの花柱が5個で下部が合着している、”アメリカザイフリボク(ジューンベリー)”は雄しべが18個、1つの花柱の先が5分裂している。
 ジューンベリー
 別名:アメリカザイフリボク
 英名:Juneberry
 学名:Amelanchier canadensis
 バラ科ザイフリボク属
 落葉性広葉樹、低~中木
 原産地:北アメリカ北東部
 開花時期:4月~5月
 花は5弁で白色、果実は6月頃に熟す
 果実はスグリほどの小さな実で、熟すと赤から濃い紫へと色付く


18桁精度の可搬型光格子時計、東京スカイツリーで一般相対性理論を検証

2020-04-11 | 科学・技術
 理化学研究所の高本将男 専任研究員と東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授(理化学研究所チームリーダー/主任研究員)らの共同研究グループは、島津製作所と共同で18桁精度の超高精度な可搬型光格子時計を開発した。成果は英国の光学専門誌「Nature Photonics(ネイチャー・フォトニクス)」に日本時間4月7日に掲載。
 東京スカイツリーの地上階と地上450メートルの展望台に設置した2台の時計の進み方の違いを測定し、この結果を国土地理院が測定した標高差と比較することで、一般相対性理論を従来の衛星を使った実験に迫る精度で検証することに成功した。原子時計を人工衛星やロケットに搭載して、宇宙空間と地表の間で約1万キロメートルの高低差をつけることで測定された従来の宇宙実験に比べて、今回開発した可搬型光格子時計を使うことで、1万倍以上少ない高低差で、同等の実験が可能になった。
 一般相対論的効果の多くは「宇宙スケール」の現象として議論されてきたが、18桁精度の原子時計では、わずか数センチメートルの「日常的なスケール」の高さの違いで時間の遅れが観測できる。この結果、従来の技術の範疇では考えられることのなかった、新たな「相対論的センシング技術」が誕生する。これまで実験室環境で実証されてきた超高精度な光格子時計の小型化・可搬化と実験室外運転の実証は、この「相対論的センシング技術」の実用化に向けた大きな突破口である。
 高精度な可搬型光格子時計は、プレート運動や火山活動などによる地殻の数センチメートル精度の上下変動の監視、GNSS(全球測位衛星システム)や高感度重力計と補完的に利用できる超高精度な標高差・重力場計測システムの確立など、将来の社会基盤への実装が期待される。
 ポイント
 〇18桁の精度(百億年に一秒のずれに相当)をもつ可搬型光格子時計の開発に世界で初めて成功した。
 〇東京スカイツリーの地上階と展望台に設置した2台の可搬型光格子時計を使って重力赤方偏移を高精度に観測し、一般相対性理論を検証した。本研究で得られた検証精度は、従来、1万キロメートルの高低差を必要とした衛星を用いた実験に迫る。
 〇高精度な可搬型光格子時計の実験室外運転の実証は、光格子時計の社会実装に向けた大きな一歩である。今後、プレート運動や火山活動などに伴う地殻変動の監視など相対論的センシング技術の実用化が期待される。
 成果
 これまで、最高性能のセシウム原子時計(16桁精度)を使っても、数日測定を続けてやっと10メートルの高低差による時間の遅れを観測できる程度であった。このため、相対論的効果で標高計測を行うことの(他の測量手法に対する)優位性を見出すことは困難であった。
 可搬型光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台の2カ所に置き、それぞれが示す時間の進み方の違いを計測した。その結果、展望台では1日あたり4.26ナノ秒(ナノは10億分の1)、地上よりも時間が速く進んでいた。この差を基に、両者の高低差が452.603メートル、不確かさ39ミリであることが求められた。一方、確認のためにレーザーで高低差を測ると452.596メートル、不確かさ13ミリとなり高精度で一致した。可搬型光格子時計が、従来の実験室のものと同程度の性能を発揮することが示された。
 発表内容
 高精度な原子時計は、高精度に同期された時刻を必要とする高速大容量通信や衛星測位など現代社会の基幹技術である。現在、セシウム原子時計によって国際単位系の1秒が定義され、5千万年に1秒のずれに相当する精度が実現されている。この精度を100倍以上改善する光格子時計は、次世代の「秒」の定義の有力候補として注目され、世界中で研究が進んでいる。その精度はおよそ百億年に一秒のずれ(18桁の精度)に相当する。
 このような高精度な原子時計では、地上でわずか数センチメートルの高さの違いで、アインシュタインの一般相対性理論から導かれる時間の遅れによる周波数の変化「重力赤方偏移」効果が観測可能になる。時計周波数の重力赤方偏移を利用した標高差の計測は、時計の新しい応用「相対論的センシング技術」として注目されている。しかし、高精度な原子時計は実験室内のみで稼働できる複雑な装置となっていた。高精度な原子時計の小型化・可搬化と実験室外でも安定に動作できる堅牢化は、「相対論的センシング技術」の実用化の課題となっていた。
 研究グループは、実験室で使用していた大型光学定盤上のレーザー装置を含む光学系を集約し、制御系を含めてボックス化した。それにより、実験室環境で実現した時計の精度を劣化させることなく、システムの小型化・可搬化を実現し、実験室外の環境でも18桁精度を実現できるような可搬型ストロンチウム光格子時計を開発した。また、長時間安定に動作できるように合計17台のレーザー装置の周波数制御の自動化を図り、かつインターネット経由で遠隔操作が可能なシステムを構築した。
 研究グループは、可搬型光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台の2か所に設置し、約450メートルの標高差を与えた。これらの2台の光格子時計の周波数差を測定することで、重力赤方偏移を求めた。この一方、GNSS測量、水準測量、レーザー測距などによる標高差測定と相対重力計による重力測定を組み合わせることで、2台の時計のおかれた地点間の重力ポテンシャル差(単位質量あたりの位置エネルギー差)を求めた。こうして求めた重力赤方偏移と重力ポテンシャル差を比較することで、一般相対性理論の検証実験を行った。
 実験の概要
 原子の共鳴スペクトルが、450メートル標高差でおよそ21ヘルツ分ずれていることが観測された。それぞれの時計で、スペクトルのピークに常に共鳴するようにレーザー周波数を制御し、共鳴周波数の差を数日にわたって平均化することで、高精度に時計の周波数差Δνを計測した。およそ1週間の平均化によって、展望台の時計が地上階の時計よりも相対周波数がΔν/ν=(49,337.8±4.3)×10-18だけ高い(時間が早く進んでいる)ことが計測された。その後、2台の時計を理化学研究所に持ち帰り、同じ高さに設置して測定した結果、相対周波数差は(-0.3±4.7)×10-18、つまり、計測に使った時計は18桁の精度で一致していることが検証された。
 一方、2台の時計の標高差Δhを、GNSS測量及び水準測量とレーザー測距の2つの方法で測定するとともに、相対重力計を使って重力加速度gを測定した。この結果から、2台の時計の重力ポテンシャル差gΔh/c2=(49,337.1±1.4)×10-18を得た。一般相対論によれば、重力赤方偏移は、重力ポテンシャル差に等しくなります(注)。時計で得られた重力赤方偏移と、従来の測定手法によって得られた重力ポテンシャル差を比較することで、この予言を(1.4±9.1)×10-5の精度で検証した。この成果は、およそ1万キロメートルの高低差を利用するロケット/人工衛星を使った相対論検証実験に迫る精度である。従来よりも1万倍高精度な原子時計を使うことで、宇宙実験に比べて1万倍以上少ない高低差で、同等の実験が可能になった。
 このような高精度な可搬型光格子時計を使えば、GNSS測量では検出が困難な数センチメートル精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視や、数時間から数年という時間スケール(注)で起こる地殻変動(標高変化)を精密に観測できるようになる。また、GNSSや高感度重力計と補完的に利用できる超高精度な標高差計測・測位システムの確立や、地下資源探査、地下空洞、マグマ溜まりの検出など、光格子時計は将来の社会基盤となる可能性を秘めている。今後、光格子時計の実用化に向けて、さらなる時計の小型化、可搬化が加速され、新たな測地技術への応用が期待される。
 ◆用語解説
 〇光格子時計
 2001年、香取秀俊東京大学大学院工学系研究科准教授(当時)が考案した次世代の原子時計。まず、「魔法波長」と呼ばれる特別な波長のレーザー光を干渉させて作った微小空間(光格子)に、レーザー冷却された原子を1つずつ捕獲し、原子同士の相互作用が起きないようにする。次に、これらの原子にレーザー光を当て、光を吸収する「原子の振り子」の振動数を精密に測定する。この光の振動を数えて、1秒の長さを決める。光格子全体には多数の原子を捕獲できるので、それらの「原子の振り子」の振動数を一度に測定して平均をとることで、短時間で時間を決めることができる。
 〇18桁の精度
 時計の精度は、ある時間経過した後の時間のずれで評価する。例えば、月差10秒の腕時計なら、(10秒)/(ひと月はおよそ2,600,000秒)から計算される、およそ4×10-6が時計の精度である。これを指数の数字を取って、6桁の精度の時計という。18桁の精度は、およそ百億年の間測定するとやっと1秒ずれる精度である。このような時計の精度は、時計の振り子の振動数の精度で決まる。
 〇一般相対性理論
 アルベルト・アインシュタインによって築かれた現代物理の基本理論の1つである。物質のまわりに生じた時・空間のひずみとして重力場を表現する。重力の強いところでは時間はゆっくり流れることも一般相対論から導かれることの1つである。
 〇重力赤方偏移
 重力が強いほど時間の進み方が遅くなるという現象。重力場中での光の波長が伸びる(低い周波数にシフトする)ことから「赤方偏移」と呼ばれている。重力赤方偏移の検証は、異なる慣性系間での実験を比較することを意味しており、「重力場中の実験と等加速度運動する系での実験は区別できない」とするアインシュタインの等価原理を検証することに相当する。この等価原理が破れていると、一般相対性理論の出発点が危ぶまれることになる。本研究では、その意味で「一般相対性理論の検証」という言い方をしている。
 〇注)
 今回の実験のように重力ポテンシャル差が十分小さいとき、極めていい近似になります。
 〇注)数時間から数年(以上)という時間スケールでセンチメートル精度の計測が可能なことも、光格子時計を使う相対論的センシング技術の特長である。光格子時計では多数の原子を使うことで短時間(数時間)で高精度な標高計測ができる。一方、原子時計の刻む時間は不変であることから、長期(数年、それ以上)の計測の安定性が保証される。このように、数時間から数年(以上)という時間スケールでセンチメートル精度が維持されることは、従来の水準測量や、GNSS測量にはない特長である。

 天気は晴れ、雲が少し多い。風が少しあり、少し冷たい。・・少し・少しの世界!。
 梅田川と仙石線が交差する所があり、堤防の近くに、”ハナモモ”が植えられている。この”ハナモモ”、花が咲き始めた。花は電車から見えるかな。
 ”モモ”には、果実を食用とする品種と、花を観賞する品種がある。花木として扱う品種は、”ハナモモ”と呼ばれる。”ハナモモ”は実を付けないと言われるが、幾らかは付いている。
 ”モモ”は縄文時代から栽培されており、江戸時代に”ハナモモ”の8品種の記述があり、この頃に改良が始まったとされる。現在の園芸品種の多くもこの時代のものが多いと言う。
 名(モモ)の由来には、果実(実)が赤いので「もえみ(燃実)」から転訛で「もも」となった説がある。
 花は桃の節句(雛祭り)に飾られる。桃の字の「兆」は「妊娠の兆し」の意味なので、桃が女性やひな祭りと関連があると言う。因みに、桃の木は万葉の頃から霊力のある木とされ、桃太郎(日本昔話)が有名だ。原典となる、「桃太郎の鬼退治」のお話は、中国から日本に伝わった話で、中国では犬は「仁」、猿は「知恵」、キジは「勇気」を示している、とか。
 モモ(桃)、ハナモモ(花桃)
 学名:Prunus persica
 バラ科サクラ属
 耐寒性落葉小高木
 原産地は中国、桃の字は中国から
 開花時期は3月~4月
 花は5弁花、栽培される園芸品種は八重咲きが多い
 花色は桃色・白色・紅色


世界初、光スイッチング効果を示す超イオン伝導体を発見

2020-04-10 | 科学・技術
 東京大学大学院理学系研究科大越慎一教授と筑波大学数理物質系所裕子教授の研究グループは、光スイッチング効果を示す超イオン伝導性極性結晶を発見した。本研究成果は、日本時間2020年3月17日(火)にNature Chemistry(ネイチャー・ケミストリー)のオンライン版で公開。
 発表のポイント
 〇光スイッチング効果を示す超イオン伝導体を世界で初めて発見した。
 〇この超イオン伝導体は、超イオン伝導性と極性結晶構造が共存しているために、第二高調波発生も示すことを明らかにした。
 〇超イオン伝導体は、全固体電池の固体電解質として用いられている。光でイオン伝導度がスイッチングできる本物質の性質を使えば、将来、電池のON/OFFを光で行うことができるようになると期待される。
 発表概要
 東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授の研究グループは、光スイッチング効果を示す超イオン伝導性極性結晶を発見した。
 この結晶は鉄-モリブデンシアノ骨格錯体にセシウムイオンを含んだ3次元ネットワークで構成される極性結晶構造の物質である。この物質は318K(45°C)において4×10-3Scm-1という高いイオン伝導度を示し、超イオン伝導体(注2)であることがわかった。本物質に、室温において532nmの光を照射したところ、イオン伝導性が1×10-3Scm-1から6×10-5Scm-1へ可逆的に変化し、イオン伝導性の光スイッチング効果が観測された。また、自発電気分極により第二高調波発生(SHG)を示す超イオン伝導体であった。光応答性およびSHG活性を示す超イオン伝導体はこれまでに例のない物質であり、燃料電池の電解質の機能提案につながることが期待される。光でイオン伝導度がスイッチングできる本物質の性質を使えば、将来、電池のON/OFFを光で行うことができるようになると期待される。
 発表内容
 イオン伝導体は、燃料電池、リチウムイオン電池や化学センサなど、さまざまな用途で使用されている。イオン伝導度が10.4 S cm.1 を超える高い伝導性を持つ固体材料を超イオン伝導体と呼ぶ。
 本研究において、発表者らは、光スイッチング効果を示す超イオン伝導性極性結晶を開発した。この結晶は、鉄-モリブデンシアノ骨格錯体にセシウムイオンを含んだ3 次元ネットワークで構成されるセシウム-鉄-モリブデンシアノ錯体(Cs1.1Fe0.95[Mo(CN)5(NO) ]・4H2O)という青色の物質である。結晶構造解析の結果、正の電荷をもつセシウムイオンと負の電荷をもつ鉄-モリブデンシアノ骨格の重心のずれにより自発分極を有する極性結晶であることがわかった。また、ネットワークを構築するニトロシル(NO)基の酸素原子と水分子からなる1 次元の水素結合ネットワークが存在していることも明らかとなった田。
 イオン伝導性測定の結果、45 °C で相対湿度100%におけるイオン伝導度は4.4 × 10.3 S cm.1 と非常に高く、超イオン伝導体に分類されることがわかった。この超イオン伝導は、ニトロシル基と水分子が形成した水素結合ネットワークを介してバケツリレーのようにプロトン(H+)が運ばれるメカニズムで生じていることが示唆された。
 本物質のセシウム-鉄-モリブデンシアノ錯体は、光応答性が期待されるニトロシル基を含んでいるため光照射実験を行った。湿度が制御された容器内で錯体に532 nm 光を照射したところ、イオン伝導度は1.3×10.3 S cm.1 から6.3×10.5 S cm.1 へと二桁も低下した。一方、光照射後、時間経過にともない超イオン伝導は回復した。このような超イオン伝導体の光スイッチング現象の観測は、本研究が世界で初めてである。この光スイッチング現象は、モリブデンイオンとニトロシル基の結合角度が光照射で可逆的に変化する光異性化現象に起因しており、結合角度の変化により水素結合ネットワークが一部切断されることで、超イオン伝導を担っているプロトン伝導度が低下したものと考えられる。
 また、本物質は通常は共存しない超イオン伝導性と極性結晶構造が共存する材料であることが分かった。強誘電体や焦電体などの極性結晶は、電気分極を有する誘電体(伝導率が10.8 S cm.1 以下)に分類され、電気抵抗の観点から超イオン伝導性と極性結晶構造は単一の材料には現れないため、その機能性に興味が持たれる。そこで、二次の非線形光学効果の一つであ
る第二高調波発生(SHG)の検討を行った。1040 nm のレーザーを試料に照射したところ、波長が半分の520 nm の光の出射が観測され、SHG 出射が確認された。SHG 顕微鏡によっても個々の粒子からSHG が観測されている。
 本研究は、全固体電池の固体電解質としての機能提案を念頭に行われた。光でイオン伝導度がスイッチングできる本物質の性質を使えば、将来、電池のON/OFF を光で行うこともできるようになると期待される。
 ◆用語解説
 〇極性結晶
 外から電界を与えなくても自発的な分極を有している結晶のこと。焦電体とも呼ばれる。
 〇超イオン伝導体
 イオンが電気を輸送する伝導体のうち、電解質水溶液の伝導率に匹敵する10.4 S cm.1 を超える高い伝導率を示す物質を、超イオン伝導体と呼ぶ。
 〇自発電気分極
 極性結晶では、外部から電界がかけられなくても、プラスの電荷を有する部分とマイナスの電荷を有する部分に偏りが生じており、電気分極を有する。これを自発分極と呼ぶ。
 〇第二高調波発生(SHG)
 物質にある波長の光を当てたとき、光の周波数が二倍、すなわち半分の波長の光が物質から出射される現象。
 〇光異性化
 構成する原子の数を保ったまま、構造(原子のつながり方)が変化することを異性化というが、この反応が光エネルギーによって起こること。
 〇強誘電体および焦電体
 極性結晶は焦電体とも呼ばれるが、中でも、外部電圧の極性を反転させることで自発分極の向きを可逆的に反転できる物質を強誘電体と呼ぶ。
 〇Cole.Cole プロット
 さまざまな周波数で測定したインピーダンス(Z) を複素平面に図示したもので、横軸に実部(Z’)、縦軸に虚部(Z”)をプロットした図を指す。測定対象がコンデンサ成分を含む場合、プロットは半円を描き、横軸を横切る点が伝導度の逆数である抵抗値に相当する。

 天気は晴れ。少し雲があるが、快晴。風がとても強く、冷たい。・・時間が戻った感じ。
 所用があり、郊外に出かけた。街道沿いに”モクレン”の花が咲き始めている。お隣の”サクラ”は満開だ。
 ”モクレン(木蓮)”と言えばこの木で、”シモクレン(紫木蓮)”とも呼ばれ、白い花の”ハクモクレン(白木蓮)”と対比される。”ハクモクレン(白木蓮)”の花期は終わったようで、”モクレン”の花期は現在。
 花は上向きで、全開せず半開状(開ききらない状態)に咲いている。花弁6枚、萼3枚、雄しべと雌しべは螺旋状に多数が付く。良い香りがする。
 名(木蓮:もくれん)の由来は、花がラン(蘭)に似ているから「木蘭(もくらん)」、ハス(蓮)に似ているから”木蓮(もくれん)”と呼ばれるようになった、と言う。因みに、モクレン属は地球上で最古の花木と言われ、白亜紀(恐竜時代、約1億年以上前)の地層から化石が発掘されている。
 モクレン(木蓮)
 別名:紫木蓮(しもくれん)、もくれんげ(木蓮花、木蓮華、木蘭花)
    マグノリア(Magnolia)
 モクレン科モクレン属
 落葉高低木(樹高は3m~5m)
 原産地は中国
 開花時期は3月~5月
 新葉が出る前に、紫紅色で卵形の大きな花を咲かせる
 咲くのは、白木蓮より少し遅い・・10日位かな
 花色は濃紅色(外側)・白色(内側)


世界で初めて、金属チタンをベースとした生体軟組織用接着材を開発

2020-04-09 | 科学・技術
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)生体材料学分野の松本卓也教授、岡田正弘准教授、昭和大学、大阪大学、柳下技研株式会社の共同研究グループは、医療用金属材料であるチタンを表面処理することで、このチタンが真皮や筋膜などの生体軟組織と瞬時に接着することを見出した。この研究成果は3月23日、ドイツ科学誌「Advanced Materials Interfaces」のオンライン電子版で公開。
 発表のポイント
 〇世界で初めて、金属チタンをベースとした生体軟組織用接着材を開発した。
 〇開発した接着材は、粘着性などは全くないが、生体軟組織に対して高い親和性を持っており、軽く押し当てるだけで瞬時に真皮組織や筋膜に強く接着する。
 〇インプランタブル(人体への埋め込みが可能な)センサや医療用デバイスの体内固定への応用、組織接合や組織変形矯正など簡便な外科処置への応用が期待される。
 インプランタブルセンサや医療用デバイスの生体内への固定、生体組織どうしの接合といった目的のためには、高分子製の縫合糸が一般に使用されている。一方で、医療現場においてはこれら用途に簡便かつ迅速に使用できる生体組織用接着材の開発が強く望まれている。
 本チタン材料は一般的なチタン薄膜を一定温度下で酸処理しただけのものである。簡単な処理にも関わらず、このチタン薄膜は生体軟組織、特に真皮組織や筋膜組織に高い接着力を示すことが見出された。この酸処理によりチタン表面は疎水化するとともに著しい結合水量の減少が生じる。この状態が生体軟組織との疎水性相互作用を増強し接着力が生じるものと考えられる。研究グループによると、血液が固まる性質を利用した従来の医療用接着剤「フィブリンのり」と比べ、接着力は3倍以上だという。
 本研究成果は、簡便かつ迅速に強い接着力を示す生体親和性に優れた新しい接着材として、インプランタブルセンサや医療用デバイスの体内固定への応用、組織接合や組織変形矯正など簡便な外科処置への応用が期待される。
 研究者からのひとこと
 接着材というと糊やボンドを思い浮かべると思いますが、これらは化学反応の結果、液状のものが固化することで接着性を示します。今回の接着材はこのようなものとは全く別のものです。本材料は見た目はただの金属の薄膜です。にも関わらず、体の軟らかい組織(特に、真皮、筋膜)にそっとおいて、トントンと圧接するだけで、すぐに接着します。表皮とはくっつかないので、手にはくっつきません。世の中の既存の概念にはないものなので、想像しにくいかと思いますが、なかなか面白いモノです。

 天気は晴れ。少し風が強い。
 風が強いと、アチラコチラを見る散歩にはチョット辛い。・・対象となるお花が揺れ、焦点が定まらないからだ。
 風が少し穏やかになったら、何処からか良い香りがする。”ジンチョウゲ”の花、花期は3月・4月で満開だ。
 花から強い芳香を放つ庭木の代表格には、ジンチョウゲ(沈丁花)・クチナシ(梔子)・キンモクセイ(金木犀)がある。
 名(ジンチョウゲ;沈丁花)の由来は、香が沈香(じんこう)、葉の形が丁子(ちょうじ)に似ているからと言う。漢名は、瑞香(ずいこう)、良い香りを愛でて付けられた。
 ジンチョウゲの品種は、花の蕾が赤で開くと薄いピンク交じりの白となる赤花品種(ウスイロジンチョウゲ)と、蕾から開花まで白の白花品種(シロバナジンチョウゲ)がある。どうも白花が先に咲き、少し遅れて赤花が咲くのかな。
 雌雄異株だが流通する苗木の殆どが雄株で、雌株は極めて少ないとの事。花はどちらも同じで外観からは区別がつかないと言う。雌株は紅色の果実を付けるが有毒、でも日本では殆どお目にかからない。
 ジンチョウゲ(沈丁花)
 学名:Daphne odora
 ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属
 常緑低木、丈は0.5m~1.5m
 雌雄異株、日本では殆どが雄株
 中国中部・ヒマラヤに分布
 日本には室町時代に薬用として渡来
 花期は3月~4月、花から強い芳香を放つ
 白い花弁に見える部分は萼(がく)で、花弁状に変化したもの。・・花姿が長く持つ。


学士院賞に斎藤氏ら9人に、北氏にエジンバラ公賞

2020-04-08 | 学問
 日本学士院は、優れた業績を上げた研究者に贈る日本学士院賞に、哺乳類で生殖細胞が発生する仕組みを解明した斎藤通紀・京都大高等研究院教授ら9人を選んだと発表した(4月6日)。斎藤氏には恩賜賞も贈る。自然保護分野の優れた研究を隔年でたたえる日本学士院エジンバラ公賞に、北潔・長崎大熱帯医学・グローバルヘルス研究科長を選んだ。
 日本学士院賞・恩賜賞
 斎藤通紀:京都大教授、細胞生物学・発生生物学。哺乳類の多能性幹細胞から生殖細胞を作り出す研究で、発生機構を解明。49歳。
 日本学士院賞
 田口正樹:東京大教授、西洋法制史。中世後期ドイツの国王裁判権の実態を、史料に基づき解明。54歳。
 神林龍:一橋大教授、労働経済学。非正規雇用の増加原因の分析などを通じ、日本の労働市場の全体像を提示。48歳。
 川合真紀:分子科学研究所長、物理化学・表面科学。固体表面に吸着した分子の研究で、触媒の機構解明に貢献。68歳。
 小嶋稔:東大名誉教授、地球惑星物理学。希ガスの同位体分析で、地球の大気や海の起源、進化論の基礎を構築した。89歳。
 岡田恒男:東大名誉教授、建築学。鉄筋コンクリート製の建築物の耐震性能を表す指標を開発し、耐震診断や改修に貢献。84歳。
 喜連川優:国立情報学研究所長、情報学。大量のデータ処理を飛躍的に高速化させる手法を開発。64歳。
 佐野輝男:弘前大教授、ウイロイド学。農作物に被害をもたらすウイロイドの病原性を解明し、診断や防除に貢献。64歳。
 間野博行:国立がん研究センター研究所長、ゲノム医科学・分子腫瘍学。肺がんの原因遺伝子を発見。がんゲノム医療の発展に貢献。60歳。
 日本学士院エジンバラ公賞
 北潔:長崎大熱帯医学・グローバルヘルス研究科長、生化学・寄生虫学。細菌や寄生虫、がん細胞などが低酸素環境に適応する仕組みを解明、新薬開発に向けた研究につなげた。69歳。
 〇授賞理由(斎藤通紀) 日本学士院より
 斎藤通紀氏は、マウス生殖細胞の形成機構を解明し、マウス多能性幹細胞から始原生殖細胞様細胞を試験管内で誘導、精子や卵子、健常な産仔を作出することに成功しました。その実験系に基づき、エピゲノムリプログラミングや卵母細胞分化機構・減数分裂誘導機構など、生殖細胞の発生における基幹現象の分子機構を解明しました。斎藤氏は、カニクイザル初期胚の発生機構を解析し、マウス・サル・ヒトにおける多能性細胞系譜の特性や霊長類生殖細胞の発生機構を解明するとともに、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞様細胞、さらに卵原細胞を誘導し、ヒト生殖細胞発生過程の試験管内再構成研究の礎を築きました。斎藤氏の研究は、生命の根源たる生殖細胞の発生機構を解明することでヒトや霊長類の進化機構を明らかにするのみならず、不妊や遺伝病・エピゲノム異常の原因究明につながり、医学に新しい可能性を提示するものです。
 用語解説
 多能性幹細胞
 自己複製能力と、身体を構成するほぼ全ての細胞に分化する能力を持つ細胞。受精卵から発生する胚盤胞を培養することで樹立される胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES細胞)や、皮膚等の体細胞に特定因子を導入することで作製される人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells: iPS細胞)の総称。
 始原生殖細胞
 発生初期に形成される、精子や卵子の起源となる細胞。始原生殖細胞は、オスでは前精原細胞を経て精原細胞、精子へと、メスでは卵原細胞を経て卵母細胞、卵子へと分化する。始原生殖細胞様細胞は、多能性幹細胞から試験管内で誘導した、始原生殖細胞によく似た性質を持つ細胞。
 エピゲノムリプログラミング
 DNAの塩基配列を変えることなく、DNAやヒストンタンパク質に付与される様々な化学修飾(メチル化やアセチル化等)を介して遺伝子の働きを制御する仕組みをエピジェネティク制御と呼ぶ。エピゲノムとはエピジェネティク制御が付与されたゲノムの総体のことで、エピゲノムリプログラミングとは、始原生殖細胞の発生中にエピゲノムが大規模に再編成されることをいう。
 減数分裂
 父母由来の一対の染色体を持つ細胞(二倍体:始原生殖細胞、精原細胞、卵原細胞等)から、一倍体の細胞(精子、卵子)を形成する細胞分裂のことで、生殖細胞特異的に起こる。減数分裂前期では父母由来の相同染色体の間で組換えが起こり、その後、2回の細胞分裂により、まず相同染色体が、次に姉妹染色分体が分離され、一倍体の配偶子(精子、卵子)が形成される。相同染色体間の組換えにより新たな遺伝情報の組み合わせを持つ染色体が形成され遺伝的多様性を創り出す。

 朝から晴れ。夕方から夜にかけて雨の予報。・・畑にとっては恵の雨となる。
 道沿いの空き地で咲いている花、スズランの様な・”スイセン”の様な・”スノーフレーク”。フレーク・・小雪のかたまり”の意味らしい。別名は鈴蘭水仙(すずらんずいせん)、スズランに似た白い花の花弁の先に緑色の斑点が特徴だ。
 似た花に、”スノードロップ”があり、緑色の斑点が内冠にあるのが特徴。私は、両者を取り違える事が多い・・何故だろう。”スノードロップ(ガランツス・エルウィジー)”は、ヒガンバナ科ガランサス属、開花期は2月~3月である。
 スノーフレーク(Giant Snowflake)
 別名:鈴蘭水仙(すずらんすいせん)、大待雪草(おおまつゆきそう)
 学名:Leucojum aestivum
 ヒガンバナ科スノーフレーク属
 原産地は地中海沿岸
 多年草(秋植の球根草)
 開花時期は3月~5月
 地際から花茎を1~数本伸ばし、先端に花が数輪咲く
 花径は1.5cm程で釣り鐘状
 花色は白、花びらの先端に緑色の斑点


ペットにかけた年間費用、犬に30万円・猫に16万円

2020-04-06 | 日記
 ペット保険のアニコム損害保険株式会社保」は、同社の保険契約者がペットにかけた1年間の出費(2019年)をまとめて発表した(3月31日)。結果は、アニコム損保のペット保険契約者5,000名以上から得られた回答から。
 小型犬:回答が最も多かった、年間の出費は平均30万円弱
 中型犬:ほぼ同等の31万円だったが、大型犬では食費、しつけ・トレーニング料等も大幅にアップして、45万円だった
 猫の費用:16万円だった。
  項目別の支出では犬猫ともに「フード・おやつ」がトップで、年間約5万円。
  「治療費」と「保険」を加えた3項目が支出の中で大きな割合を占めた。
  犬ではシャンプー・カット等の費用が4位に入ったが、猫では光熱費が4位だった。
 アニコム損保では今回初めて、エキゾチックアニマルも調査の対象に含めた。
 うさぎ、鳥、フェレット、ハムスター、ハリネズミのうち最も費用が高かったうさぎは平均約8万8000円、最も低かったハムスターは平均約2万4000円だった。
 ペットフード協会による2019年(令和元年)全国犬猫飼育実態調査によると、
 推計飼育頭数  全国合計は、1,857万5千頭
  犬:879万7千頭、猫:977万8千頭(猫の頭数調査結果には外猫の数は含まれない)
 生涯必要経費
  犬:全体 2,004,139円 超小型:2,201,448円 小型:1,864,155円 中・大型:1,903,980 円
  猫:全体 1,344,751円 外に出る:1,375,716円 外に出ない:1,391,199 円

 天気は晴れ。風が少し強く、最高気温11℃とあるが体感気温は数度かな。
 近所のお庭に”シデコブシ”に花が咲きだした。花は直径10cm程で、花弁はピンク色や白色に紅色を帯び、10~20枚と多い。コブシとの違いは、この花片の多さと形状。”コブシ(辛夷)”は、”モクレン”似で花弁6枚。
 名(シデコブシ:幣拳、四手辛夷)の由来は、花の形が神前に供えられる玉串や注連縄(しめなわ)に付けられる紙製の飾り「幣(しで)、四手」に似ているから。
 ”シデコブシ”は、湿地周辺という限られた立地に生育する種で、生育基盤の脆弱な種である。開発などで減少しつつある種であり、準絶滅危惧種に指定されている。
 シデコブシ(幣拳、四手辛夷)
 別名:ヒメコブシ
 学名:Magnolia stellata
 日本の固有種、本州中部の東海地方を中心とした限られた範囲に分布
 低山に生える落葉小高木または低木
 開花時期:3月末~4月上旬
     葉に先立って咲く
 花片の長さは7~10cmと細長く、数は10~20枚と多い
 色には変異があり、白色から淡紅色
 花被片の縁は多少波を打つ
 集合果は垂れ下がり、長さ3~7cm、赤熟する


筋ジストロフィーの治療標的となり得る新規の因子を発見

2020-04-05 | 医学
 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授らの研究グループは、ジスフェルリンタンパク質の異常によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の治療標的となり得る新規の因子を発見した。東北大学医学系研究科神経内科学分野の小野洋也非常勤講師、鈴木直輝非常勤講師、割田仁院内講師、青木正志教授らの研究グループは、菅野新一郎講師(東北大学加齢医学研究所)、林由起子教授(東京医科大学病態生理学分野)、三宅克也教授(国際医療福祉大学基礎医学研究センター)らと協力した。本研究成果は、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」のオンライン版に、米国時間2020年2月12日に掲載。
 ジスフェルリン異常症は、筋肉細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの異常によって引き起こされる成人発症の筋ジストロフィーの総称である。ジスフェルリンの欠損によって、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、その結果として筋細胞の変性・壊死が生じ、筋肉の萎縮と筋力の低下につながると考えられている。研究では、ジスフェルリンに結合するタンパク質として新たにAMPK複合体を同定し、AMPK活性化剤(アカデシン)を投与することにより、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜の修復機能が改善することを見出した。さらに、薬剤(メトホルミン)投与によりAMPKを活性化させると、ジスフェルリン異常症のモデル動物での筋力低下や筋損傷を改善することを示した。本研究で得られた知見から、ジスフェルリン異常症の治療法の開発が進むと期待される。
 発表のポイント
 〇筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)は、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、筋肉の萎縮と筋力の低下といった障害を示す根治療法のない国の指定難病である。
 〇筋細胞膜の修復に必要な分子として、AMPKタンパク質複合体を新規に発見した。
 〇薬剤によるAMPKの活性化によって、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜修復機能およびジスフェルリン異常症モデル動物の筋力低下や筋損傷を改善させることができた。
 研究内容
 国の指定難病である筋ジストロフィーは、いまだ根治療法のない難治性の遺伝性疾患で、筋肉の萎縮や筋力の低下といった障害を示す進行性の筋疾患である。この疾患では、筋細胞膜を構成するタンパク質の異常や欠損、筋細胞膜の損傷からの修復に必要な機構の破綻によって、筋細胞が正常に維持されなくなることが原因であるとされている。
 東北大学医学系研究科神経内科学分野は、1998 年に筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の原因遺伝子を同定して以来、臨床遺伝子診断を通じてジスフェルリン異常症の病態解明に貢献してきた。ジスフェルリンは筋細胞膜の修復に重要な役割を持つことが明らかにされており、近年、ジスフェルリンに結合し、筋細胞膜の修復に関与するタンパク質が存在することが報告されているが、筋細胞膜の修復の分子機構の詳細は不明のままであった。
 本研究では初めに、ジスフェルリンの一部分に結合するタンパク質を培養細胞の抽出物から単離し、質量分析装置を用いたプロテオミクス解析によって複数の結合タンパク質を同定した。つぎに、同定された候補タンパク質の一つであるAMPK に注目し、このタンパク質が筋細胞膜の障害に対してどのように働くのか、レーザー照射による筋細胞膜障害実験によって解析した。結果、マウスにおいてレーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPK タンパク質複合体が損傷部位に集積し、また、筋肉由来の培養細胞においてAMPKの働きを抑制すると筋細胞膜修復機能が低下することを発見した。さらに、ジスフェルリンを欠損させたマウスにおいてレーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPK 複合体の損傷部位への集積が遅延することから、ジスフェルリンがAMPK 複合体の集積に必要であり、AMPK 複合体集積の足場として機能している可能性を見出した。また、ジスフェルリンに変異をもつ患者由来の培養細胞において、AMPK を活性化する薬剤(アカデシン)を投与すると筋細胞膜修復が改善することを明らかにするとともに、ジスフェルリン異常症のモデル動物(ゼブラフィッシュおよびマウス)において、AMPK 活性化剤メトホルミンを投与すると骨格筋の障害が改善することを確認した。
 本研究で得られたAMPK複合体が損傷を受けた筋細胞膜の修復において重要な役割を担っているという新たな知見は、根治療法がいまだないジスフェルリン異常症の治療法の開発に結びつく可能性がある。本研究で得られた知見を発展させることで、ジスフェルリン異常症のみならず、筋ジストロフィー全体の新しい治療法の開発が進むことも期待される。
 ◆用語説明
 〇ジスフェルリン
 筋肉細胞に存在する2080 アミノ酸残基からなる巨大タンパク質。
 〇 AMPKタンパク質複合体
 AMP活性化タンパク質リン酸化酵素(AMPK)の複合体。細胞内のエネルギー源であるATP(アデノシン-3-リン酸)が
分解されてできるAMP によって活性化されることから、細胞内のエネルギーセンサーとしての役割を担っている。
 〇質量分析装置
 タンパク質を分解した断片を大きさ(質量)によって分離し、どのようなタンパク質が含まれていたかを分析できる装置。
 〇プロテオミクス解析
 生体サンプルに含まれるタンパク質の種類を網羅的に解析する技術。
 〇ゼブラフィッシュ
 モデル生物として研究に使用される熱帯魚。
 ゼブラフィッシュの筋組織は形態・機能の面でヒト筋組織とよく類似しており、ヒト疾患の原因遺伝子について変異体を作成することで、疾患の原因解明・治療法開発に繋げることができる。

 朝は曇り、時々小雨がパラパラと。午後から晴れてきた。風は1日中少し強い。
 4月に入り、サクラが咲けば季節は春本番となる。先月末に仙台管区気象台では開花宣言をした。3月28日の開花宣言は、平年より14日、昨年より8日早い・・畑の種まきも早くなる!!。
 いつもの散歩道のサクラも満開だ。
 サクラ(桜)はバラ科サクラ属サクラ亜属の樹木の総称。
 日本には固有種・交配種を含め600種以上の品種が確認されている。
 その中の”染井吉野:ソメイヨシノ”は、江戸末期に染井村(現在の東京都豊島区巣鴨・駒込あたり)の植木職人が、吉野桜として出したと伝えられる。明治以降日本全国各地に広まり、サクラの中で最も多く植えられた品種となった。
 この吉野桜は大島桜と江戸彼岸の雑種説が定説である。一代交雑種であり、自家交配の結実はほとんどない。このため、殖やすのは挿し木となる。
 ◆サクラの語源
 サクラの語は有史以前からある。語源の存在は不明、だがよく知られる説がある。
 〇「咲く」に複数を意味する「ら」を加えたもの、花の密生する植物全体を指す
 〇春に里にやってくる稲(サ)の神が憑依する座(クラ)をいう
 〇花の種をまいて花を咲かせたとされる、「コノハナノサクヤビメ(木花之開耶姫)」の「さくや」から


新小学1年生の就きたい職業、男子はスポーツ選手、女子はケーキ屋さん

2020-04-04 | 受験・学校
 クラレ(樹脂・化学品・繊維等の製造・販売会社)は、2020年版「新小学1年生の将来就きたい職業」「親の就かせたい職業」を発表した(4月2日)。調査は2019年7月~2019年12月、同社製ランドセルを購入した2020年4月に小学校に入学する子ども4,000名(男女各2,000名)とその親4,000名を対象に、インターネットで行われた。
 新小学1年生の男の子が将来就きたい職業は、22年連続の1位で「スポーツ選手」。2位は「警察官」、3位は「運転士・運転手」だった。スポーツ選手の内訳をみると、サッカー、野球に続き、ラグビーが人気を集めた。
女の子の将来就きたい職業は、調査開始以来22年連続で「ケーキ屋・パン屋」が断トツの1位。内訳をみると、特に、ケーキ屋とパティシエの人気が高く、あわせて8割ほどを占めた。2位は「芸能人・歌手・モデル」、3位「看護師」、4位「花屋」「保育士」と、10位までの顔ぶれは昨年と同様の結果となった。
男の子の親が子どもに就かせたい職業は、1位「公務員」、2位「医師」、3位「会社員」で、「スポーツ選手」が初めてトップ3落ちとなり、安定志向が強まっていることが伺えた。
 女の子の親が就かせたい職業は、1位「看護師」、2位「公務員」、3位「薬剤師」という結果に。調査開始以来連続1位の「看護師」をはじめ、3位「薬剤師」、4位「医師」、5位「医療関係」と、医療系の職業が引き続き人気を集める結果となった。
 ◇新小学1年生が将来就きたい職業(2020年)
   女の子          男の子
 1 ケーキ屋・パン屋 26.0%  スポーツ選手 18.8%
 2 芸能人・歌手・モデル 8.8  警察官 15.1
 3 看護師 6.0         運転士・運転手 9.5
 4 花屋  5.4         消防・レスキュー隊 7.8
 5 保育士 5.4         TV・アニメキャラクター  5.5
 6 アイスクリーム屋 4.9    研究者  4.7
 7 医師   4.7        ケーキ屋・パン屋 3.9
 8 教員   4.6        医師 3.4
 9 警察官   3.7       大工・職人 2.6
 10 美容師  3.5       ユーチューバー 2.4
 ◇新小学1年生の親が就かせたい職業(2020年)
   女の子の親    男の子の親
 1 看護師 17.9     公務員 19.8
 2 公務員 11.9     医師  8.6
 3 薬剤師 7.9      会社員  8.2
 4 医師  6.8      スポーツ選手  8.0
 5 医療関係 6.0     警察官  6.7
 6 会社員  5.1     消防・レスキュー隊  6.1
 7 ケーキ屋・パン屋 4.9  研究者  5.0
 8 教員  4.3      エンジニア  3.8
 9 保育士  3.9     運転士・運転手  3.6
 10 芸能人・歌手・モデル 3.7  医療関係  2.6

 晴れ。気温は、最高気温16℃とかで暖かい、吹く風が少し強く冷たい・・暖かさを体感できない。
 街道(利府街道)沿いにある大きな木、”ギンヨウサカシア”、花が満開となっている。花色は輝く黄色、1cm程の球状の花が幾つも集まり、この集まりが集まり、迫力ある黄花のかたまりだ。
 ”ギンヨウアカシア(銀葉アカシア)”のギンヨウ(銀葉)とは、葉が偶数2回羽状複葉(小葉が葉軸の左右に羽状に並ぶ)で白い粉を被った様な銀緑色だから。同じ様な花を咲かせるフサアカシア(房アカシア、ギンヨウと同科同属)は、ギンヨウより葉・花とも大きい。特に葉は、ギンヨウの小葉は8~20対位だがフサの小葉は30~40対位である。
 ”ギンヨウアカシア”、”フサアカシア”は”ミモザ”と呼ばれる事があるが、本来の”ミモザ”は”オジギソウ(オジギソウ属の学名)”のことである。
 ギンヨウアカシア(銀葉アカシア)
 別名:ミモザアカシア、ハナアカシア
 英名:golden mimosa、Cootamundra wattle、Bailey's acacia
 学名:Acacia baileyana
 マメ科(ネムノキ科)アカシア属
 原産地はオーストラリア
 常緑高木(樹高は5m~10m)
 開花時期は2月~4月
 花色は輝く黄色、小さな球状の花が塊となって咲く
 実は沢山の豆果、枝から垂れ下がる


混ぜると自ら伸びる超分子ポリマーの開発に成功

2020-04-03 | 科学・技術
 千葉大学グローバルプロミネント研究基幹の矢貝史樹 教授を中心とする国際共同研究チームは、酸素原子が1つ異なる2種類の分子を混ぜると、分子の認識で形成されたユニットが積層するという全く新しい超分子重合を実現した。さらに、ある温度帯で一気に構造が崩壊するというこれまでになかった熱応答性を示すポリマー材料の創製に成功した。この成果は、刺激に対して高速で応答して状態を変えるソフトマテリアルの設計指針となることが期待される。本研究の成果は、「Nature Communications」にて 2020年4月1日に公開。
 研究の背景
 分子(モノマー)が弱い可逆的な相互作用(非共有結合)によって結合したものは「超分子ポリマー」と呼ばれ、近年スマートソフトマテリアルとして注目を集めている。超分子ポリマーは、共有結合という強い結合で重合した従来のポリマーと比較して、多様な機能を持った分子を簡単に高分子化することができ、分解が容易で自己修復が可能であるなど、従来のポリマーにはない性質を持っている。分子構造を緻密にデザインした超分子ポリマーを開発することで、より高度な環境応答性を示すポリマー材料設計が可能になる。
 研究成果
 研究チームは、今回、わずかに分子構造の異なる2種類のモノマーを混ぜるだけで分子認識によるユニットの形成によって駆動される超分子重合法の開発に成功した。
 研究チームではこれまで、脂溶性ナフタレン誘導体の1つが、有機溶剤中で水素結合によって風車状ユニットを形成し、このユニットが曲率を生み出しながら弱い力で積層(超分子重合)することで、リング状の超分子ポリマーを形成することを見出していた。また、そのナフタレン誘導体に酸素原子を1つ付加した分子は、電気陰性度が大きい酸素原子によってナフタレン
部位の電子密度が減少することで積層様式が変化し、曲がることなくまっすぐに伸びたファイバー構造を形成することも明らかにしていた。
 今回、研究者らは、2つのナフタレン分子を混合することで、ナフタレン部位の電子密度の違いによって分子が引き合う力を利用し、超分子高次構造の曲率の度合いを制御できるのではないかとの仮説のもと、実験を行った。2種の分子を有機溶媒中で混ぜたのち、構造体を乾燥させて原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果、はじめにアモルファス構造と呼ばれる明確な構造がない状態が観察された。その後、このアモルファス構造溶液を室温で放置したところ、数日かけて徐々にらせん構造が形成していく様子が観察された。また、このらせん構造の形成は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所フォトンファクトリーBL-10C における小角X 線散乱測定によっても確認できた。
 続いて、このアモルファス構造から、らせん構造の形成メカニズムを明らかにするため、様々なスペクトルを測定した。その結果、アモルファス構造の状態では、赤と緑の分子がランダムに集合してできる多様な風車状ユニットで構成されているものの、らせん構造は、赤と緑の分子が交互に配列した統合型風車状ユニットからなることがわかった。この統合型ユニットが
形成される仕組みとして重要なのは、積層することで、電子に富んだ赤分子と電子が不足した緑分子の電子的な相互作用を最大にでき、エネルギーが安定化することであると考えられる。
 研究チームは、この電子的な相互作用によって、風車状ユニット間が重合する力も強くなることから、統合型ユニットはリングで止まらずにらせん構造へと自発的に成長することを見出した。また、らせん構造の分解メカニズムを調べるため、らせん構造の溶液を加熱したところ、45 ℃から50 ℃という非常に狭い温度範囲でアモルファス構造へと一気に崩壊するという現象が確認された。従来、溶液中における超分子ポリマーの熱分解は、その末端や欠陥部位から徐々に起こることが一般的である。今回の超分子ポリマーにおいては、2つの分子が交互に並んだ統合型ユニットの積層は非常に強く、温度に対してある程度の耐性を示すが、その内部では、温度上昇に伴ってより乱雑になろうとする傾向が強くなる。このらせん構造は、ある温度においてエネルギーの均衡が崩れることで一気に崩壊するという、これまでにない分解メカニズムを持っていることが明らかになった。
 今後の展望
 本研究のプロジェクトリーダーである矢貝史樹 教授は次のように述べています。「今回、モノマーが風車状のユニットを介して階層的に超分子ポリマーを形成し、そのユニットの組成が超分子ポリマーの形成を支配することが明らかになりました。また、この仕組みを利用すれば、温度に対して鋭敏に応答する高分子材料を生み出すことができることもわかりました。今後、さらに多様な分子を用いることで、より様々な刺激に対して高速に応答する新たなソフトマテリアルの材料の創出が可能になると期待されます。」
 ◆用語解説
 〇分子認識
 分子が他の分子を見分ける現象。水素結合、配位結合、疎水効果、ファンデルワールス力、π.π 相互作用、静電相互作用などの分子間相互作用によって起きる。例えば、生体内でDNA は遺伝情報を保存するために二重らせんを形成しているが、この二重らせんを形成するための対となるDNA 鎖を構成要素間の水素結合によって分子認識している。

 朝から晴れ。気温は、最高気温18℃と温かい・・でも風はヒヤリと冷たい。
 建物の敷地にある植生地、”ツクシ”の林となっている。
 ”ツクシ”はスギナの胞子茎(胞子穂、胞子体とも言う)で、胞子茎(ほうしけい)とは胞子嚢(ほうしのう、胞子が入っている袋)をつける茎。ツクシの後に続いて、横から栄養茎(主軸の節ごとに取り巻くように細い線状の葉が付く)が出てくる・・これがスギナ(杉菜)。”ツクシ”群の中に、”スギナ”がまだ見えない。
 名(ツクシ)の由来は、”スギナ”に付いているから付子(ツクシ)説、ツクヅクシ(突く突くし、突出している様子)の転訛のツクシ説、突々串〈つくつくくし、串の様に突き出ている)からの説、澪標(みをつくし、航路標識:水から突きでた柱)からの説、などがある。漢字での「土筆」は、土から伸びる筆の姿を表している。
 因みに、ツクシは食用となる・・「胞子のほろ苦さと茎の歯ざわりは最高」らしい。
 ツクシ(土筆、付子)
 英名:horsetail(馬の尻尾)
 スギナ(杉菜)の胞子茎、スギナはトクサ科トクサ属
 出る時期は、桜の開花と同じ頃の3月下旬~4月上旬
 スギナ(杉菜);緑色の細い葉は4月頃に見る


2019年度升田幸三賞、将棋ソフト「elmo(エルモ)」の「エルモ囲い」

2020-04-02 | 世相
 「第47回将棋大賞」の選考委員会が、東京都内で開かれた(4月1日)。
 最優秀棋士賞に渡辺明棋聖(35)棋王・王将が選ばれた。渡辺棋聖は昨年のヒューリック杯棋聖戦で自身初の棋聖位を獲得し、3冠に復帰した。今年に入り、王将戦、棋王戦と続けて防衛を果たし、3冠を堅持。順位戦A級も制し、今月開幕する名人戦への挑戦権も決めた。最優秀棋士賞の受賞は2回目。
 優秀棋士賞は豊島将之竜王・名人(29)が受賞。特別賞は史上最年長(46歳3ヵ月)で初タイトルを獲得した木村一基王位(46)が選ばれた。
 高校生棋士の藤井聡太七段(17)は53勝12敗(未放送のテレビ対局を含む)、勝率8割1分5厘で、勝率はプロ入りから3年連続1位、勝利数は2年ぶり2回目の1位(デビュー年は対局数が少ないため対象外)となった。
 敢闘賞:永瀬拓矢二冠(初) 新人賞:本田奎五段 最多対局賞:佐々木大地五段 67対局(初)
 最多勝利賞:藤井聡太七段 53勝(2回目) 勝率1位賞:藤井聡太七段 53勝12敗 0.815(3年連続3回目)
 連勝賞:永瀬拓矢二冠 15連勝(2019/2/22~2019/4/23)(3回目) 最優秀女流棋士賞:里見香奈女流四冠(5年連続10回目) 優秀女流棋士賞:伊藤沙恵女流三段 (2回目) 女流最多対局賞:伊藤沙恵女流三段 (3年連続3回目)46局
 東京将棋記者会賞:高橋和女流三段 升田幸三賞:elmo(エルモ囲い) 升田幸三賞特別賞:脇謙二八段(脇システム)
 ◆将棋大賞
 将棋大賞は、毎年度功績を残した将棋棋士などに日本将棋連盟から与えられる賞である。将棋大賞における受賞年は「前年度の記録・活躍」が対象となる
 第1回の表彰は1974年に行われた。記録に関する賞以外は選考委員によって決定され、その模様は『将棋世界』誌に掲載される。
 升田幸三賞
 「升田幸三賞」および「升田幸三賞特別賞」は、新手、妙手を指した者や、定跡の進歩に貢献した者に与えられる。第22回創設。「新手一生」を座右の銘とした升田幸三の名にちなんで制定された。
 受賞者はプロとは限らず、第31回ではアマチュアの立石勝巳が升田賞特別賞を受賞。第35回の今泉健司と第38回の星野良生は奨励会三段で升田賞を受賞。第47回ではコンピュータ将棋ソフトのelmoが升田賞を受賞している。

 朝は雨、9時頃には上がり曇り空、風がとても強い。
 塀沿いの狭い空き地が花壇となっている。その中で、”ハナニラ”が咲いている。花色が白色や淡青色なので清楚な感じがする、蕾も花も可愛く、花びらの縦の縞模様も特徴的で綺麗だ。
 野菜の韮と同じ科だが属(野菜のニラはネギ属)が違い、花の姿も大きく違う。韮に似ているが、食べると下痢となる・・らしい。葉を千切ってみると、韮(にら)の匂いがする。
 名(ハナニラ:花韮 )の由来は、可愛い花を付ける韮に似た葉からと言う。別名には、イフェイオン(Ipheion)、スプリングスターフラワー(Spring star flower)、セイヨウアマナ(西洋甘菜) があり、ベツレヘムの星・ダビデの星と呼ばれる事もある。
 ハナニラ(花韮)
 別名:西洋甘菜(せいようあまな)、イエイオン(Ipheion)
 英名:Spring star flower
 ユリ科(ヒガンバナ科)イフェイオン属
 球根性多年草
   秋に球根を植え、春に花が咲く
 原産地は南米(アルゼンチン)
 明治時代に園芸植物として導入、逸出し帰化している
 開花時期は2月~5月
 韮の様な葉から花茎を伸ばし、その先に6弁花で星形の花を1輪咲かせる
 花径は数cm程、花色は白・淡青紫・青紫


アオキの雄花と雌花

2020-03-31 | 園芸
 朝から晴れた。風も穏やかなので暖かい1日かな。段々と春らしくなる。
 散歩道で”アオキ”を見る機会が増える、花が咲きだしたから。
 ”アオキ”は雌雄異株で、雌株には雌花、雄株には雄花が咲く。冬に艶のある美しい赤色の実を付けるのは雌花。
  雌花;花弁が4個と柱頭の大きな雌蕊が1個あり、雄蕊はない
  雄花;花弁が4個と雄蕊が4個で雌蕊はない
 ”アオキ”は、日本の古来種で、学名は”Aucuba japonica:アウクバ ヤポニカ”とある。名(アオキ:青木)の由来は、冬でも青々とした常緑の枝・葉からのアオキバ(青木葉)から。
 アオキ(青木)
 別名:青木葉(あおきば)、ダルマノキ
 学名:Aucuba japonica
 ミズキ科アオキ属
 常緑低木
 雌雄異株
 枝は緑色、古くなると木質化し灰褐色
 開花時期は3月~5月
 枝先に紫褐色の小さな花が咲く
 果実は雌株に付く、実は1~2cm程の楕円形で深紅色となる
 果実が黄色のキミノアオキ、白色のシロミノアオキがある
  (掲載写真の前半3枚は雄花、後半3枚は雌花)
 果実は雌株に付く、実は1~2cm程の楕円形で深紅色となる
 果実が黄色のキミノアオキ、白色のシロミノアオキがある


超高精度光周波数の240キロメートルファイバー伝送に成功

2020-03-30 | 科学・技術
 日本電信電話株式会社(以下NTT)と東京大学大学院工学系研究科香取秀俊教授(理化学研究所 光量子工学研究センター チームリーダー、同開拓研究本部主任研究員)および東日本電信電話株式会社(以下NTT東)は、複数の遠隔地間で240キロメートルに及ぶ光周波数ファイバー伝送の実証実験を実施し、データ積算時間2600秒で、周波数精度1×10-18に達する超高精度光周波数遠隔地間伝送に成功した。この結果は、現在、世界最高性能の光格子時計の有する光周波数を、その性能を保ったまま、光ファイバーで200キロメートルを超える伝送が可能であることを示している。
 光格子時計は、セシウム原子時計を桁違いに上回る超高精度な原子時計である。光格子時計の驚異的な精度の高さを利用する応用の1つが、複数の遠隔地に設置した光格子時計を光ファイバーで接続し、その周波数差を遠隔比較する「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地))」である。それにより、重力ポテンシャル計測に基づく精度1センチメートルレベルの水準点や、地震や噴火の前兆現象につながるわずかな地殻変動の日常監視など、新たなインフラストラクチャーへの展開が期待されている。
 本研究において、NTTとNTT東日本は、世界で初めて、平面光波回路(PLC)技術を用いた光周波数中継装置(リピーター)を開発し、このリピーターをカスケード接続した超高精度光周波数ファイバー伝送網を構築した。構築したファイバー網に超狭線幅レーザーを伝送させ、伝送精度を評価することにより、1センチメートル精度の標高差比較が可能な1×10-18という周波数の精度を保ったまま、200キロメートル級の遠隔地間へと伝送距離を拡張することを実証した。この周波数伝送精度は、東大・理研が開発した世界最高精度の光格子時計を用いた遠隔地間周波数比較による相対論的測地が可能なレベルである。
 本成果は2020年3月17日(米国時間)に米国科学誌「オプティクス・エクスプレス」にて公開。
 実験の背景
 光格子時計は、光の周波数(数百テラヘルツ)を基準とする超高精度な原子時計で、その周波数精度は現在の「秒」の定義となっているセシウム原子時計を桁違いに上回ることから、次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で研究されている。アインシュタインの一般相対性理論によれば、異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると、低い方の時計は地球の重力ポテンシャルの影響を大きく受け、ゆっくりと時を刻むことが知られている。この原理を用いて、全国的に複数の遠隔地に設置した光格子時計を光ファイバーで接続し、その周波数差を遠隔比較する「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地)」は、従来の原子時計ではできない新しい応用として注目されてる。これを実現することによって、現在のGNSS(Global Navigation Satellite System)による測地精度では困難な1センチメートル精度の標高差測定が可能になり、各地の標高差を1センチメートル精度で常時モニターすれば、重力ポテンシャル計測に基づく水準点や、地殻変動の監視など、新たなインフラストラクチャーへの展開が期待できる。地殻変動をリアルタイムに観測するためには、1×10-18という精度で2台の光格子時計の周波数差を数時間で計測する必要がある。光格子時計は、この極限的高精度にわずか数時間のデータ積算(平均化)時間で到達するという他の原子時計には無い特徴を備えており、現在、世界最高性能を有する光格子時計では、10000秒以上のデータ積算時間で、周波数精度1×10-18に到達する。従って、その光格子時計の特徴を最大限生かした相対論的測地の実現を想定した場合、まず第一歩として、光ファイバーによる光伝送が、10000秒よりも短いデータ積算時間で、周波数18桁まで安定であることが必要不可欠である。さらに、このような光格子時計の光伝送ファイバーネットワークを全国規模に敷設することを想定すれば、そのファイバー距離の拡張性も重要な要素である。過去に、東大・理研では、その最も基本的な実験として、2017年に本郷(東大)-和光(理研)間において、30キロメートルの無中継ファイバー伝送による2台の光格子時計の周波数比較を実現し、数センチメートル精度の遠隔地間標高差測定の原理実証を行った。[Takano et al., Nature Photonics 10, 662 (2016)]。東大・理研で開発されたファイバー伝送の手法では、無中継で伝送できるのは100キロメートルまでが限度であり、数百キロメートルの県レベルや数千キロメートルの全国レベルにまで拡大するには、高精度を保ったまま光を中継しながら伝送する技術が必要となる。
 本実験では、県レベルの域内における光周波数伝送ファイバーネットワークを想定し、1センチメートル精度の標高差測定を実証するために、200キロメートル級の超高精度光周波数ファイバー伝送技術の実現を目指した。
 実験の成果
 今回の実験は、1センチメートル精度の標高差比較が可能な1×10-18という周波数の精度を保ったまま、200キロメートル級の遠隔地間へと伝送距離を拡張するために、複数の区間に分けて、リピーターを介して中継するカスケード方式を用いたことを特徴としている。そのために、NTTとNTT東は、2015年10月より、東大本郷キャンパスを基点にNTT厚木研究開発センタまで、複数の中継局(電話局)を中継した実証実験用の超高精度光周波数伝送ファイバーリンクを構築した。リピーターによる中継では、光の位相を検出するために光干渉計が用いられるが、従来の空間光学系やファイバーカプラを用いた光干渉計では、干渉計自体が発する雑音を除去できないという問題があった。そこで、NTTが独自に開発した平面光波回路(PLC)による差動検波型マッハツェンダー干渉計を用いることで、安定に動作するリピーターシステムを開発し、温度・湿度・振動などの細心の対策が施された実験室環境とは異なる電話局内の商用環境に設置した。この実証実験用ファイバーリンクを用いて、1秒間のデータ積算時間で3×10-16、2600秒で1×10-18の周波数安定度および精度での伝送を実証した。この周波数伝送安定度は、香取研究室が開発した世界最高精度の光格子時計を用いた遠隔地間周波数比較が実現可能なレベルであり、相対論的測地応用につながる成果である。
 実験の説明
 ①本実験では、東大・理研が本郷-和光間光格子時計周波数比較実験に用いた光ファイバーと、NTT東が今回新たに構築した本郷-厚木間商用ファイバーリンクを本郷で接続し、和光(理研)-本郷(東大)-厚木(NTT)間150キロメートル級光周波数伝送ファイバーリンクを構築した。本郷-厚木間には3つの中継局舎(電話局)を用意し、19インチラック1基にリピーターシステムを設置した。各局舎のリピーターは、別の通信ネットワークを介して、遠隔操作することが可能である。
 ②本ファイバーリンクの光周波数伝送精度を評価する実験では、理研に設置している超低膨張ガラス共振器に安定化した波長698ナノメートル(周波数429テラヘルツ)の超狭線幅レーザー(時計レーザー)を基準とし、その2倍の波長である1397ナノメートル(215テラヘルツ)をファイバー伝送する光周波数として用いた。理研から東大へファイバー伝送した215テラヘルツ光周波数基準を東大および局舎Aのリピーターにより中継してNTT厚木に送り、NTT厚木からはもう1本のファイバーを使って、局舎Bのリピーターで中継して、東大まで戻す本郷-厚木-本郷の240キロメートルループ網を構築する。東大から送った光周波数と、ループ網により戻ってきた光周波数の差を検出することで、ファイバーリンク伝送の周波数安定度を評価することに成功した。その結果、周波数安定度は、1秒間のデータ積算時間で3×10-16、2600秒で1×10-18と評価された。この評価結果は、東大・理研が開発した光格子時計の周波数安定度を1桁程度上回っており、ファイバーリンクを介して光格子時計の10-18精度周波数比較が数時間の測定で可能なことを意味している。
 技術のポイント
 (1)1397ナノメートル波長帯を用いたカスケード型ファイバー雑音補償技術(東大・理研・NTT)
 今回の実験で構築した超高精度光周波数ファイバー伝送網は、ストロンチウム原子による光格子時計の周波数比較実験に用いることを想定している。ストロンチウム光格子時計が提供する光周波数基準(時計周波数)は、698ナノメートル波長帯であり、今回の伝送実験で用いた1397ナノメートル波長帯は、ちょうどその2倍の関係がある。この関係により、波長変換デバイスを1つ用いるという簡素な構成で、光格子時計の光周波数基準をファイバー伝送可能な波長帯に変換することが可能である[Akatsuka et al., Japanese Journal of Applied Physics 53, 032801 (2014)]。
 一方、伝送に用いる光ファイバーには、日々の温度変化によるファイバーの伸縮や、敷設環境に由来する振動などさまざまな雑音があり、ファイバー伝送される光周波数の精度の劣化を引き起こす。このファイバー雑音を補償する技術がファイバー雑音補償技術であり、リピーターは、ファイバー雑音補償機能と再生中継機能を1つの装置にまとめたものである。ファイバー雑音補償された光周波数を次の区間へ中継し、またファイバー雑音補償するという繰り返し(カスケード)接続により、精度劣化を可能な限り抑えて遠隔地へ伝送することが可能である。
 (2)石英光導波路による集積型光干渉計技術(NTT)
 本リピーターに、複雑な光の干渉計を高精度かつ集積化可能とする石英系平面光波回路(PLC)技術を適用した。これにより、リピーターが小型化されるとともに、安定性や検出感度の向上が実現されている。具体的には、リピーターレーザーの位相を同期するための光干渉計と、ファイバー雑音を検出するための光干渉計をワンチップに集積実装した。光路長が精密に設計された干渉回路を光チップ内に作り込むことで、温度などの環境変動にも強く、光干渉計自体に由来する雑音を極限まで低減することに成功している。また、光干渉計の光の差動出力を利用することにより光干渉信号の差動検波を可能とし、検出感度の向上を図っている。
 今後の展開
 本実験チームは、今後、今回構築した超高精度周波数伝送ファイバーネットワーク環境を用いて、和光および厚木に設置する光格子時計の周波数比較実験を実施する予定である。これにより、200キロメートル級の遠隔地間で、数センチメートル精度の標高差を検知する相対論的測地の実証に挑戦する。さらに、JST未来社会創造事業「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」で目的とする光格子時計の全国規模のファイバーネットワーク化を想定し、より多中継で安定な運用が可能なリピーターの開発を進め、この超高精度光周波数基準のファイバー伝送技術を1000キロメートル級まで拡張した実証実験環境を構築する予定である。
 ◆用語解説
 〇光格子時計
 2001年に東京大学 大学院工学系研究科の香取秀俊助教授(研究当時)が考案した原子時計の手法。「魔法波長(魔法周波数)」と呼ばれる特別な波長(周波数)のレーザー光を対向させてできる、数十ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の微小空間に原子を閉じ込めて、その原子が吸収する光の周波数(共鳴周波数)を測定する。この光の周波数により、1秒の長さを決める。光格子全体には多数の原子を捕獲できるので、それらの原子の共鳴周波数を一度に測定して平均をとることで、短時間で時間を決めることができる。
 〇相対論的測地
 アルベルト・アインシュタインによって築かれた現代物理の基本理論の1つである一般相対性理論では、「重いものの周りでは時間は遅く流れる」という現象を論じており、超高精度な時計ではこの現象を観測することができるようになる。複数の超高精度な時計の時間の進み方(周波数)の差を読み取り、重力の変化を検出することで、時計の設置場所間の高低差を測定することが可能である。この原理を測量に応用することは、相対論的測地と呼ばれている。
 〇平面光波回路(Planar Lightwave Circuit: PLC)
 NTTが実用化してきた光導波路技術で、光導波路をLSIと同様のプロセスで製造でき、さまざまな干渉計を集積することができる。PLCは製造の自動化が可能であるため量産性に優れ量産時のコスト低減効果が大きいという特徴と、光ファイバーと同じガラス素材で導波路を形成できるため低損失で信頼性が高いという特徴がある。本技術は、大容量光ファイバー通信で用いられる波長多重器/分離器や光スイッチなどのデバイスで実用化されている。
 〇カスケード接続
 長距離のファイバー伝送を行う際に、中継局を設置することで短距離のファイバー伝送を次々とつないでいく方法。より高い周波数の雑音まで補償できるようになるため、全体の伝送安定度を改善することができる。
 〇周波数安定度
 周波数がどれだけ正確かを表す精度の指標の1つである。周波数安定度は、ある中心周波数fに対して、測定した周波数のばらつきをΔfとすると、Δf/fと表す。
 〇時計レーザー
 光格子時計において、原子の共鳴周波数を測定するためのレーザーのことを指す。共鳴周波数を測定することにより、原子の共鳴周波数をレーザーの周波数にコピーすることになり、光格子時計の時間基準を読み出すことに対応する。一般的に、スペクトル線幅数Hz程度の超狭線幅レーザーを、時計レーザーとして用いる。
 〇ファイバー雑音補償技術
 精度の高い光周波数を光ファイバーで遠方に送る際、ファイバーの敷設環境に由来する周波数雑音を補償し、精度の劣化を抑えて伝送する技術。ファイバー伝搬後の光を一部折り返し、送信元で光干渉をとることでファイバー雑音φ(t)を検出し、周波数シフタにより-φ(t)を与え、ファイバー雑音を補償する。ファイバー雑音補償技術では、ファイバーの往復伝搬時間よりも速く変動する雑音は補償できないため、補償区間を短くすることによって、できるだけ忠実にファイバー雑音を補償することが可能である。

 天気は晴れ。風が無く、穏やか・・でも気温が上がらず寒い
 散歩道沿いの””ヒサカキ”。塀からはみ出して花がさいている。”ヒサカキ”は雌雄異株、でも雄花・雌花だけを付ける雄株・雌株だけでなく両性花の株もあると言う。開花時期は、3月~4月で、枝の下側に短くぶら下がる様に咲く。
 雄花には雄しべ、雌花には雌しべだけが見える。花の大きさは数mm、雌花が雄花より気持ち小さいかな。花の形は、白っぽいクリーム色で壺状。強い芳香が漂ってくる。
 「榊:サカキ」が手に入らない関東地方以北では、墓・仏壇へのお供え(仏さん柴)や玉串などに、サカキ代替で使われることがある。これより、名(ヒサカキ)の由来に、「榊に非ず」から「非さかき」説、サカキより小振りから「姫サカキ」説がある。
 ヒサカキ(姫榊)
 学名:Eurya japonica
 ツバキ科ヒサカキ属
 雌雄異株(常緑小高木)
  雌花、雄花がある
  掲載写真の前半3枚は雌花、後半3枚は雄花
 開花時期は3月~4月
 白い小さな花が葉腋に付ける
 5弁花で花径は数mm
 雄花は鐘形で、雌しべは退化して見えない
 雌花は杯形、雌しべのみで花柱は3裂してる
 果実も径数mm程で、秋に黒紫色に熟す


現状検出が困難な1cm未満の膵がんを画像化、早期膵がんを診断できる

2020-03-29 | 医学
 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構量子医学・医療部門放射線医学総合研究所の吉井幸恵主幹研究員、田島英朗主任研究員、山谷泰賀グループリーダー、張明栄部長、東達也部長らは、難治性として知られる膵がんを早期に診断すると同時に、治療にも有用となる、微小膵がんの画像診断法を開発した。本成果は、英科学誌Natureの姉妹誌である「Scientific Reports」オンライン版に、2020年3月10日19時(日本時間)に公開。
 ポイント
 〇がん細胞表面に高密度に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)に結合するPET検査薬剤(64Cu-セツキシマブ)と、感度と解像度が高い3次元放射線検出器を搭載したPET装置を組み合わせた画像診断法を開発
 〇従来の画像診断法では検出できない3 mmの微小な早期膵がんをマウスで画像化
 〇難治性として知られる膵がんを1cm未満の早期に診断し、適切な治療計画の策定の実現につながる技術となることが期待される
 膵がんは、生存率が最も低い難治性のがんの一種で、その予後を改善するため早期診断・治療を可能にする手法の開発が望まれている。特に、1 cm未満の早期膵がんの検出・治療はより高い生存延長効果が得られると報告されているが、現状のCT検査、検査薬剤としてFDGを用いたPET検査、MRI検査、超音波検査のいずれも1 cm未満の早期膵がんを画像化することは困難である。
 これに対して量研では、PET検査薬剤として、膵がんなど多くのがん細胞の表面に高密度に存在している上皮成長因子受容体(EGFR)に結合する抗体(セツキシマブ)を放射性同位体の銅-64(64Cu)で標識した64Cu-セツキシマブを開発し、本薬剤を腹腔投与すると膵がんに特異的に高集積させられることを、これまでの研究で見出していた。また、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載することにより、従来のPET装置よりも高解像度の画像を撮像できるPET装置を独自に開発していた。
 今回プレスリリースした研究では、これらの技術を融合することで、治療にも有用な早期膵がんの画像診断法を開発できると考え、64Cu-セツキシマブを早期膵がんモデルマウスに腹腔投与し、3次元放射線検出器を搭載した独自のPET装置で撮像した。その結果、マウス膵臓内の3 mm大の微小膵がんを明瞭に検出することができ、64Cu-セツキシマブと独自のPET装置を用いた画像診断法が早期膵がんを画像化する手法として有用であることが示された。本画像診断法は、1 cm未満の早期膵がんを診断し、適切な治療計画を策定する上で役立つ技術となることが期待される。
 それだけでなく、今回使用したPET装置は、検出器の並べ方を工夫することで、患者さんが装置で囲われていない開放部分から重粒子線を照射することができる設計(Open-PET)になっている。そのため、今回の研究成果で可能となった解像度の高い撮像法と重粒子線がん治療を併せて用いることで、将来的には、治療時に微小ながんの正確な位置を画像で確認しながらより効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療を提供することも期待される。
 背景
 膵がんは、5年相対生存率が10%以下と極めて低い難治性のがんである。膵がんの生存率が低い原因として、膵臓は体深部に位置するため早期発見が難しいことや、自覚症状が乏しいことが知られており、膵がんの予後改善のためには、早期診断・治療法の開発が求められている。特に、1cm未満の早期膵がんの発見・治療は、より高い生存延長効果が得られると報告されており、その手法開発は非常に重要である(Kikuyama et al. Cancers. 2018, Jung et al. J Korean Med Sci. 2007)。
 近年、血液中のがん特異的なバイオマーカーを検出する血液バイオマーカー検査7)が早期膵がん患者の有望なスクリーニング法として注目され、臨床で使用され始めている。しかし、現状の画像診断法では、血液バイオマーカーで膵がん高リスクと診断されても腫瘍位置を特定できず、確定診断並びにその後の適切な治療計画を立てることは困難である。また現在、膵がんの画像診断法としては、CT検査、MRI検査、FDG-PET検査、超音波検査などがあるが、これらの方法を用いたとしても、1 cm未満の膵がん病変の検出は困難なのが現状である。
 これに対して、吉井・張・東らは、これまでに、膵がんを含む多くのがんに過剰発現するEGFRに対する抗体(抗EGFR抗体セツキシマブ)をPET画像診断に使用できる放射性核種64Cuで標識した64Cu-セツキシマブを開発した(Yoshii et al. Oncotarget 2018)。さらに、マウスを用いた実験より64Cu-セツキシマブを腹腔投与することで、同薬剤がマウスの膵臓内に形成された膵がん病巣に高集積することを示した(Yoshii et al. J Nucl Med 2019)。
 また、田島・山谷らは、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載した次世代型PET装置として、OpenPETを開発、改良してきた。OpenPETは、従来の一般的なPET装置よりも解像度が高く(分解能2mm)、リアルタイムにPETを撮像しながら、装置で患者さんが囲われていない部分から、手術や重粒子線治療などを施すことが可能な世界初の開放型PET装置である。
 研究内容と成果
 本研究では、これらの技術を融合し、64Cu-セツキシマブを腹腔投与し、OpenPETで撮像することで、膵臓内にある微小な早期膵がんを検出することが可能になるのではないかと考え、マウスを用いた動物実験を行った。その結果、マウス膵臓内の1 cm未満の早期膵がんを明瞭に画像化できた。また、これまでの技術では非常に困難であった3 mm大の微小な早期膵がんの画像化にも成功しており、特筆すべき成果と言える。
 一方、現在臨床において膵がんの画像診断に使用されているPET薬剤のFDGを静脈投与・腹腔投与した場合や、64Cu-セツキシマブを静脈投与した場合は、OpenPETを用いても、マウスに形成された早期膵がんを画像化することはできなかった。
 これらのことから、64Cu-セツキシマブを腹腔投与してOpenPETで撮像する手法は、膵がんの早期画像診断に有用であることが示された。また、OpenPETには患者さんが装置で囲われていない部分があるので、そこから治療(重粒子線がん治療や手術など)を施すことができる。治療時に64Cu-セツキシマブを投与してOpenPETで撮像することにより、微小膵がんの位置をリアルタイムに確認しながら、重粒子線を腫瘍に正確に治療照射する技術としても有用と考えられる。
 今後の展開
 本成果を受け、現在は、64Cu-セツキシマブとOpenPETを組み合わせた早期膵がん診断法の臨床実用化を目指して安全性を確認する非臨床試験を実施中です。
 本法は、血液バイオマーカーを用いた早期膵がん患者スクリーニングで膵がん疑いとなった患者に適用することで、これまで画像診断が困難であった早期膵がん患者において、腫瘍の正確な位置決定並びに適切な治療計画策定に寄与できると期待される。それだけでなく、本法を用いて、治療時にがんの位置を画像で確認しながら重粒子線を正確に照射することにより、より効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療戦略を提供することも期待される。
 ◆用語解説
 〇上皮成長因子受容体(EGFR)
 EGFRとは、Epidermal Growth Factor Receptorの略で上皮成長因子受容体のこと。膵がんを含む多くのがんで高発現することが知られる。
 〇3次元放射線検出器
 次世代のPET技術開発において、量研が世界に先駆けて開発した検出器。従来の検出器が、2次元の放射線位置検出であるのに対し、検出素子の深さ方向も含めて3次元の放射線位置検出を可能とする。
 〇FDG
 18F-fluorodeoxyglucoseのこと。多くのがんではFDGを多く取り込む性質があり、がんPET診断薬として、広く使用されている。
 〇銅-64(64Cu)
 陽電子放出放射性核種であり、PET用の放射性薬剤の標識用に使用できる。
 〇 OpenPET
 PETとは、Positron emission tomographyの略で陽電子放射断層撮影のこと。
 OpenPETは、3次元放射線検出器を使用した高感度かつ高解像度な画像撮影が可能な次世代型PET装置で、従来の一般的なPET装置よりも高分解能を有する(分解能2 mm)。また、高速画像解析システムでリアルタイムにPETを撮影しながら、患者さんが装置で囲われていない開放部分から治療を施すことが可能。
 〇重粒子線がん治療
 炭素粒子を用いたがん治療法で、がん病巣に狙いを定めた選択的照射が可能なため、正常組織への影響が少なくがんに対する効果が高い治療法。
 〇血液バイオマーカー検査
 近年、膵がんのみならず多くのがんに対し、早期にがんの疑いがあることを予測する(スクリーニング)する手法として、血中のがん特異的物質を探索する検査(血液バイオマーカー検査)が世界各国で研究されている。膵がんに対しては、アミノ酸プロファイルを使った血液バイオマーカー検査が臨床実用化されている。

 天気は曇り~小雨。昨日の予報では「積雪の恐れあり」、雪は降らずに小雨となった。
 数日前の散歩道で見つけた小さなお庭の”ペチコートスイセン”、独特な花の姿で咲いている。
 ”ペチコートスイセン”の名は英名「Hoop petticoat daffodil」からの訳名のようだ。ペチコートとは「スカート状の」との事で、ラッパの様な副花冠の姿からの由来である。副花冠が目立つが、花冠は外側の6枚の細い萼(がく)の様なヒゲの様で目立たない
 因みに、ペチコートとは、現代では”スカートの下に装着する女性用の下着、ランジェリーの一種”である。しかし、19世紀初期以前では”スカート状ドレス”との事で、19世紀初期以前の命名なら納得かな。
 別名はナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)で、”Narcissus”はギリシャ神話の水に映った自分の姿に恋した美青年の名前からである。ナルシスト(自己陶酔型の人)の言葉で残っている
 ペチコートスイセン(ペチコート水仙)
 別名:ナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)
 英名:Hoop petticoat daffodil
 学名:Narcissus bulbocodium
 ヒガンバナ科スイセン(ナルキスス)属
 原産地は地中海沿岸地方
 耐寒性多年草
 丈は10cm~20cm
 開花時期は3月~4月
 花は径4cm位、花色は黄色、円錐状の副花冠が特徴
 葉は細くほぼ筒状


巨大環状分子のナノ構造体、磁界中で環電流特性を示すことを発見

2020-03-28 | 科学・技術
 首都大学東京大学院理学研究科の伊與田正彦客員教授(名誉教授)、西長亨准教授、理化学研究所開拓研究本部内山元素化学研究室の村中厚哉専任研究員、内山真伸主任研究員(東京大学大学院薬学系研究科教授)、横浜国立大学大学院環境情報研究院の大谷裕之 教授、名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科の青柳忍教授、信州大学繊維学部の小林長夫 特任教授らの研究グループは、チオフェン分子を環状に連結した6T4A-4Buリング型分子に酸化処理を施すことで、世界で前例のない二重ドーナツ型構造の巨大超分子を作ることに成功した。この二重ドーナツ型分子の特性を詳しく調べた結果、磁界中では分子リングに沿って回転するように電気が流れるという、電気回路に使われるコイルと同じ性質を示すことを見出した。この特性により、6T4A-4Buは磁気に応答する単分子素子として、各種の応用開発が期待できる。本研究成果は、米国化学会が発行する英文誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載。
 ポイント
 〇巨大環状分子を用いるナノ構造体の構築に成功した
 〇70個の共役π電子を有する二重ドーナツ型巨大超分子の構造と電子状態を明らかにした
 〇チオフェンから作った二重ドーナツ型巨大超分子が磁界中で環電流特性を示すことを見出した
 〇本研究の成果は、磁気に応答する単分子素子として、各種の応用展開が期待できる

 研究の背景
 マテリアルサイエンスによって、新しい機能をもつ物質がつくり出されているが、その中でも周囲の環境の変化や外界からの刺激に応じて自ら応答するスマートマテリアルが注目を集めている。また、ナノサイズの分子機能材料を用いるナノサイエンスは、21世紀において鍵となる新原理と新技術の探索を続けている。しかしながら、分子機能材料のもつ秘められた可能性を最大限に引き出すのは、一般に用いられている化学物質を組み合わせるだけでは不十分で、従来とは異なる電子状態をもつ分子の物性・機能の研究が必要とされている。本研究では、非常に大きな分子が作る二重ドーナツ型巨大超分子を用いることによって、磁気に応答する新しい単分子素子の開発を目指した。
 研究の詳細
 チオフェンは、ベンゼンと同様に自然界にも存在する環状分子で、チオフェンを直線状に連結した導電性の高分子化合物(オリゴチオフェン、ポリチオフェン)は、発光ダイオードや有機EL、電界効果トランジスタ、太陽電池など、幅広い用途に応用できる。このようなチオフェンの機能を更に拡張するために、今回6個のチオフェンを環状に連結した6T4A-4Buリング型分子を合成し、酸化処理を施したときの分子特性を詳しく調べた。酸化処理により分子内の電子が1個だけ不足したラジカルカチオンの状態にすることで、新しい磁気的・電気的な特性が現れることを期待した。光吸収や電子スピン共鳴、磁気円偏光二色性などの各種測定の結果、6T4A-4Buのラジカルカチオンは溶液中で2個の分子が組み合わさったダイマーを形成することが分った。溶液から結晶を作り、大型放射光施設SPring-8でのX線回折により結晶構造を調べた結果、6T4A-4Buのラジカルカチオンは結晶中で図2 ① に示す二重ドーナツ型の巨大超分子を形成することが分かりました。分子リング内部に取り込まれた小分子(CH2Cl2)の磁界中の挙動を核磁気共鳴で調べたところ、通常よりも高い磁界に対して共鳴吸収を示した。この結果を理論計算で解析することで、6T4A-4Buのラジカルカチオンは、分子内の70個もの共役π電子により、磁界中で6個のチオフェンでできた分子リングに沿って回転するように電気が流れる環電流特性を示すことを明らかにした。この特性は、6T4A-4Buの二重ドーナツ型分子が1ナノメートル(10億分の1メートル)程度の大きさの超分子コイルとして働くことを意味する。
 研究の意義と波及効果
 本研究の大きな成果は、チオフェンを直線状に連結した従来の分子では絶対に発現し得ない二重ドーナツ型の分子構造と環電流特性を、チオフェンを環状に巧みに連結して組み合わせた超分子πダイマーにおいて初めて見出した点にあり、チオフェンなどの有機分子を基盤とする分子エレクトロニクス技術の発展に大きく貢献するものである。
 ◆用語解説
 〇チオフェン、ブチル基
 チオフェン (thiophene) とは、有機化合物の一種で、炭素原子4個と硫黄原子1個が5角形状に結合してできる複素環式化合物。化学式は C4H4S。フランの酸素が硫黄に置き換わった5員環構造を持つ。タール中に少量含まれ,工業的にはn-ブタンと硫黄から合成される。
 ブチル基(butyl group)とは、ブタン、あるいはイソブタンから水素が1つ取り除かれた形を持つ1価の基のこと。アルキル基の一種。元のブタンの構造と、取り除かれた水素の位置からいくつかの種類がある。
 ブチル(英語表記;butyl)
 アルキル基C4H9-の名称で、Buと略称。次の4種類の異性構造がある。
  n-ブチル(n-Bu-)CH3CH2CH2CH2-
  イソブチル(i-Bu-)(CH3)2CHCH2-
  sec-ブチル(s-Bu-)CH3CH2CH(CH3)-
  tert-ブチル(t-Bu-)(CH3)3C-
 〇 酸化処理
 酸素など電子を受け取りやすい物質(酸化剤)の作用などにより、対象分子から電子を奪い取る処理。
 〇超分子
複数の分子が分子間相互作用により規則的に集合した安定な化学種。
 〇コイル
 導線を環状やらせん状などに巻いたもので、電磁石や発電機、モーターなどに利用される電気回路内の素子。
 〇ラジカルカチオン
 奇数個の電子を持つ陽イオン性の分子で、偶数個の電子を持つ中性の分子を酸化処理することで得られる。
 〇光吸収
 物質の紫外、可視、近赤外領域の光の吸収の大きさを測定する実験で、分子内の電子の光励起エネルギーに関する情報などが得られる。
 〇電子スピン共鳴
 磁界中に置いた物質の電子スピン(電子が磁界に応答して2つの状態をとる性質)を測定する実験で、分子内の電子の磁気的性質に関する情報などが得られる。
 〇磁気円偏光二色性
 磁界中に置いた物質の光吸収の偏光状態による変化を測定する実験で、分子内の電子の光励起状態に関する情報などが得られる。
 〇ダイマー
 2個の同種分子が組み合わさることで形成される1組の分子。
 〇SPring-8
 高輝度短波長なX線を利用できる兵庫県にある共同利用施設。
 〇 X線回折
物質に照射したX線の回折・散乱像を測定する実験で、結晶内の分子の立体構造などが得られる。
 〇核磁気共鳴
 磁界中に置いた物質の核スピン(原子核が磁界に応答して複数の状態をとる性質)を測定する実験で、分子内の特定の原子核の磁気的性質に関する情報などが得られる。
 〇共役(きょうやく)π電子
 分子内に交互に並んだ単結合と多重結合のために非局在化した電子。
 〇環電流
 磁界中に置いた環状の分子内に生ずる、分子リングに沿った共役π電子の流れ。

 天気は晴れ。風が少し強く、気温も高くない。
 近所のレストランのお庭で、”ユキゲユリ”に花が咲いている。”ユキゲユリ”は高山植物で、自生地では雪が解けずに残っていても花が咲くこともあることからこの名(雪解ゆり)になったと言う。別名に”チオノドクサ”とあるが、チオノドクサは属名である。”チオノドクサ”には数種類が知られている。”チオノドクサ・リュシーリアエ(C. luciliae)”が良く知られており、花色は澄んだ青で中心が白い。花の澄んだ青色で中心が白色は、和名の”ユキゲユリ(雪解百合)”が似合うかな。
 学名の「Chionodoxa」は、ギリシア語の「chion:雪」と「doxa:栄光、華麗」からと言う。英名では「Glory of the snow」との事で、何れも雪に関係している。
 ユキゲユリ(雪解百合)
 別名:チオノドクサ
 英名:Glory of the snow
 学名:Chionodoxa luciliae Boiss.
 ユリ科チオノドクサ属
 クサスギカズラ科、ヒヤシンス科、キジカクシ科に分類することもある
 多年草(秋植え球根、径4cm位)
 原産地は地中海沿岸~小アジア
 開花時期は2月~4月
 花色は 青・紫・白・ピンク


長期的に非常に安定した小型原子時計を開発

2020-03-27 | 科学・技術
 産業技術総合研究所物理計測標準研究部門高周波標準研究グループ柳町真也主任研究員は、首都大学東京システムデザイン学部電子情報システム工学科五箇繁善准教授、株式会社リコー原坂和宏、鈴木暢、鈴木亮一郎と共同で長期的に非常に安定した小型原子時計を開発した。成果の詳細は、2020年3月10日に米国物理学協会の学術誌Applied Physics Lettersに掲載。
 ポイント
 〇ライトシフトの揺らぎを制御することで非常に安定した小型原子時計を実現
 〇新しい理論を構築してセシウム(Cs)原子の固有周波数が変動しない駆動条件を導出
 〇途切れの無いIoTネットワークを介したデータ収集への貢献に期待
 概要
 小型原子時計では原子の固有周波数の情報を得るのに、コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT:Coherent Population Trapping)共鳴という光と原子の相互作用に由来する共鳴現象を利用するのが主流となっている。しかし、長期的な時間・周波数の安定性はライトシフトの揺らぎによる周波数変動によって制限されていた。今回、セシウム(Cs)小型原子時計の重要部品である面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の経年変化に着目し、ライトシフトが揺らぐメカニズムを解明、揺らぎを抑制する技術を開発して、非常に安定した小型原子時計を実現した。高安定な原子時計は、IoTネットワークを通じたシームレスなデータ収集への貢献が期待される。
 開発の社会的背景
 膨大なデータの中から新たな知見を見出すビックデータの収集・分析・活用への取り組みが本格化しつつある。これまでは顧客の購入・検索履歴といったヒトから得られる情報の活用が主であった。最近は、省電力広域ネットワークなど低消費電力の通信技術の発展によりヒト以外のさまざまなモノから情報が発信される本格的なIoT時代へと向かっており、そこから得られるであろう新たな知見に期待がかかっている。しかし、情報に付随する時刻情報が不正確だとデータ分析でのノイズとなるため、正確な時刻情報の重要性が増している。これまで時刻情報は全地球航法衛星システムに頼ってきたが、電波妨害やなりすましによる時刻情報の改ざんがもたらす脆弱性が指摘されている。IoT端末に小型で安定した原子時計を搭載できるようになれば、IoT端末が利用する時刻の正確さを自律的に診断・補正可能となるため、全地球航法衛星システムで問題となっている安全性を確保することができる。
 研究の経緯
 産総研は、1970年からCs原子時計の研究開発に取り組んでいる。現在、「1秒」はCs原子の固有周波数に関連した持続時間で定義されており、産総研は時間の1次標準器を用いて国際原子時の高精度化に貢献している(産総研プレス発表2003年6月9日、産総研today2011年8月号)。近年は、実験室の外の環境で、全地球航法衛星システムに依存しないで容易かつ高精度に時刻情報を一致させる技術ニーズに対応するため、小型原子時計の開発を進めている。NEDOが推進する「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」で、2015年より無線センサー端末に搭載できる小型原子時計の開発を開始し、これまでに低消費電力化の技術を確立した(産総研プレス発表2019年2月19日)。
 研究の内容
 一般的に、小型原子時計を駆動するには量子干渉効果の一種であるCPT共鳴を利用する。半導体レーザーであるVCSELに周波数変調を加え、出力される2周波数のレーザー光とCs原子の相互作用によりCPT共鳴が生成する。その過程で、ライトシフトも共に発生してしまい、Cs原子固有周波数の変動要因となり、小型原子時計の長期的な安定性を阻害してきた。
 今回、VCSEL発振波長の経年変化がライトシフトの揺らぎに関与していることを定量的に解明した。しかし、ライトシフトの揺らぎを直接抑制することは消費電力の増加につながる。そこで、半導体レーザーの基礎方程式に基づき、VCSEL発振波長が経年変化してもCs原子の固有周波数が変動しない駆動方法としてゼロクロス法を考案し、小型原子時計に適用した。
 ゼロクロス法適用の効果は、150日以上の長期間の評価期間を経て、慎重に検証した。ゼロクロス法を適用した場合はCs原子の固有周波数の変動を十分に抑制することができ、その結果、平均時間を約50日間(4.3x10^6秒)とした場合、従来の小型原子時計と比べて100倍の安定性を得ることに成功した。
 今後の予定
 今後は小型原子時計のさらなる高安定化を目指した研究開発を進める予定である。
 ◆用語の説明
 〇小型原子時計
 原子時計は原子と電磁波の共鳴現象に現れる共鳴周波数と、一般的な時計に利用される水晶発振器の周波数を関連させている時計である。そのため、一般的な時計より安定な時計装置が実現できる。小型原子時計ではパッケージング技術により共鳴現象を得るために必要なデバイスを量子部へ集積化する。量子部内へはヒーターと測温素子からなる温度制御機構と、面発光レーザー素子(VCSEL)、Cs原子を封入したガスセル、検出器である受光素子などが配置される。
 〇CPT共鳴
 CPT(Coherent Population Trapping)は量子干渉効果の一種であり、原子と電磁波の共鳴現象である。Cs原子に光を照射すると、通常であれば吸収が起きて透過光量は減少する。そこに2種類の周波数の光を照射する場合、それらの光の周波数差がCs原子の固有周波数と一致すると、Cs原子内に光を吸収しない量子的な重ね合わせ状態が発生し、光の吸収量が減少、すなわち透過光量が増加する。以前の原子時計はCs原子とマイクロ波(波長3 cm)の直接相互作用となる共鳴現象を利用していたため大型であったが、このCPT共鳴を利用すれば光の波長領域(1μm以下)でも共鳴現象が生じるので、小型原子時計では必須の手法となっている。
 〇ライトシフト
 量子力学に基づいて発生する原子のエネルギー準位の変化(シフト)に関連する現象である。CPT共鳴を生成するためにはCs原子にレーザー光を照射し、光の電場成分(光電場)と原子の相互作用を活用する。一般的に光電場中のCs原子は電荷分布の偏りを持つようになり、さらにその電荷分布の偏りに対して周期的な変化をもたらす。その結果、原子のエネルギー準位が変化し、Cs原子の固有周波数の変化となって観測される。このようにして現れるCPT共鳴の共鳴周波数の変化をライトシフトという。
 〇VCSEL
 VCSEL(Vertical Surface Emitting Laser)は基板面に垂直にレーザー光を放射する面発光レーザーであり、半導体レーザーの一種である。このレーザーは光を閉じ込める半導体素子の体積が小さいため電流による変調帯域が広く、レーザー発振波長に、予測不能で意図しない不連続な変化がほとんど起こらないという特徴を持つ。さらに小型原子時計への搭載に対しては、閾値電流が低く、省電力動作が可能という優れた特徴をも併せ持つ。
 〇全地球航法衛星システム
 GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、Galileo(ヨーロッパ)、準天頂衛星(日本)などの衛星測位システムの総称。人工衛星からの電波を用いて、受信機の位置決めや時刻補正ができる。
 〇Cs原子固有周波数
 Cs原子の基底状態には周波数約9.2GHzのマイクロ波に相当するエネルギー準位構造があり、原子時計の基準として用いられる。
 〇ゼロクロス法
 VCSEL発振波長が経年変化してもCs原子の固有周波数を変動させず、小型原子時計を駆動する手法。

 天気は晴れ~曇り・時々小雨~晴れ。お日様が顔を出すと暖かい、見えないと寒い。
 道沿いのお庭で、”キブシ(木五倍子)”の花を見つけた。枝には葉がなく、淡黄色の花を沢山つけた穂状花序が垂れ下がっている。花は丸くプックリとしている。”キブシ”は雌雄異株で、外見で雌雄の区別は難しい。雄花は淡黄色、雌花はやや緑色を帯びる。このお花は、雄蕊が見えるから雄花かな。”キブシ”の花は早春の山菜として、おひたし・天ぷらにして食べることができる、と言う。
 名(キブシ:木五倍子)の由来は、果実をタンニンを多く含み、染料の原料である五倍子(ふし、ヌルデの虫こぶ)の代用として使ったから。因みに、江戸時代にはお歯黒の材料で利用された。
 キブシ(木五倍子)
 別名:木藤(きふじ)、豆五倍子(まめぶし)
 学名:Stachyurus praecox
 キブシ科キブシ属
 雌雄異株
 落葉低木
 日本固有種
 開花時期は3月~4月
 葉が出る前に、薄黄色の釣鐘型小花(1cm以下)が葡萄の様に垂れ下がって咲く
 花は4弁花
 果実は径1cm程の卵形・球形で、熟すと黄褐色になる