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70万人のゲノムによるリスク予測で、高血圧・肥満が現代人の寿命を最も縮めている

2020-03-26 | 健康・病気
 大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学教室坂上沙央里大学院生(東京大学大学院医学系研究科博士課程)、金井仁弘特別研究生(ハーバード大学医学部 博士課程)、岡田随象教授らの研究グループは、日本・イギリス・フィンランドの大規模バイオバンクが保有する合計70万人のゲノム情報・バイオマーカー・寿命情報を解析する手法を開発し、健康バイオマーカーの値をゲノム情報から予測するとともに、人種横断的に高血圧・肥満が現代人の寿命を縮める原因になっていることを明らかにした。 日本人では高血圧が、欧米人では肥満が寿命への影響が大きく、糖尿病罹患患者・男性など特にリスクが大きいサブグループの特定にも成功した。
 本研究成果は、米国科学誌「Nature Medicine」に、3月24日(火)午前1時(日本時間)に公開。
 研究成果のポイント
 〇個人のゲノム情報を用いて将来の健康リスクやバイオマーカー値を予測するポリジェニック・リスク・スコア(PRS)と寿命の長さとの関連を調べることで、高血圧・肥満が特に現代人の寿命を縮めていることを導き出した。
 〇世界中から集められた70万人のゲノム情報を活用することで、これまでの観察研究では困難だった、因果関係が明らかな健康リスク因子の特定に成功した。
 〇今回開発した手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる要素を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 医学研究分野では、個人の健康状態の最終結果である「健康アウトカム」、すなわち寿命や健康寿命が、どのような原因によって短くなったり長くなったりするのかを特定することが一つの目標である。これまでの大規模なゲノム研究によって、集めた遺伝情報からゲノムと病気の発症との関連について「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」という数値が導き出され、個人のゲノム情報から将来の病気の発症の予測ができるようになった。しかし、PRSは生まれつきの遺伝要因しか考慮されていないため、PRSを集団レベルで寿命や健康の改善に結び付ける方法に課題があった。
 今回、岡田教授らの研究グループは、健康の指標かつ治療可能なバイオマーカーのPRSと寿命(死亡年齢)との関連を人種横断的に調べる手法を開発し、世界70万人のゲノムデータに適用することで、現在の世界の人々の寿命を縮める最も強い原因が高血圧と肥満であることを特定した。この手法を更に多様な健康マーカーや人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、どのバイオマーカーをモニターし医学的に介入すれば健康アウトカムの改善が期待できるかを推定することができる。すなわち、ゲノム情報を用いた個別化医療・予防医療の実現が期待される。
 研究の背景
 この20年間の大規模なヒトゲノム研究により、ゲノム上の多様性がどのように病気や個人の特徴(形質)に影響を与えているかについて全体像が明らかになった。一般的な病気や形質に与える遺伝要因の影響は「ポリジェニック」、すなわち個々では非常に小さな一つの遺伝的変異の影響の数十~数千個にわたる組み合わせと足し合わせにより形成されていることが分かった。
 これまで、世界中の研究機関や国家的なバイオバンクの協力により、ヒトの個性を形作る多様な形質に関する数万人~数百万人を対象とした研究が行われ、一つずつの遺伝的変異がヒトの形質に与える効果量が概ね推定できるようになった。この結果を利用して、個人ごとの遺伝的変異の組み合わせとそれらの効果量を掛け合わせて和をとった「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」を計算することで、将来の疾患リスクが高い人たちを特定できるようになった。しかし当然、生まれたときに与えられた遺伝要因は変えることができないため、このスコアを健康アウトカムの改善に役立てる方法論に課題があった。
 一方で、人間の健康は遺伝的なリスクだけではなく環境因子や生活習慣の影響も強く受ける。寿命などの健康アウトカムの違いの原因となるリスク因子を見つけることは、医学研究の最大の目的の一つである。これらのリスク因子に医学的な観察・介入を行えば、集団レベルで健康アウトカムを改善させることが期待できるからである。従来リスク因子の特定には、観察研究やランダム化比較試験の手法が用いられてきた。しかし、観察研究からは因果関係の証明ができず、ランダム化比較試験は費用や倫理面の問題から非常に限られた検査値にしか応用できないという問題点があった。
 今回、岡田教授らのグループは、近年、臨床的有用性が注目されているPRSを、大規模なゲノム情報と臨床情報に適用し、さまざまな健康のリスク因子と寿命との関わりを調べた。
 本研究の成果
 研究グループは、身長、体重や血液検査値など多数のリスク因子の候補(バイオマーカー)に対して、それぞれのPRSを作成して寿命との関連を調べることで、どのバイオマーカーが現代人の寿命を伸ばしたり縮めたりする原因となっているかを特定する手法を開発した。これまでの観察研究では、たとえバイオマーカー自体と寿命に相関があっても、バイオマーカーが寿命の長さを規定する原因なのか、それともその他の健康状態が影響してバイオマーカーの値が変化しているのかの因果関係が分からない。生まれつきのゲノム情報によるバイオマーカーの予測値(原因)であるPRSと寿命(結果)との関連を調べることにより、因果関係を担保した状態で寿命を規定する因子を見つけることができる。この手法を、日本(バイオバンク・ジャパン--18万人)、イギリス(UK バイオバンク--36万人)、フィンランド(フィンジェン--14万人)の国家的なバイオバンクで保有する遺伝子情報と臨床情報に適用し、世界で初めて、人種横断的に高血圧が現代人の寿命を最も縮めていることを示した。特に、糖尿病・脳梗塞・脂質異常症を合併した人でその影響は強く、心血管病による死亡と最も強く関連していた。肥満も寿命を最も縮める強い要因でしたが、その影響の強さは欧米人の方が日本人よりも大きいこともわかった。特に、不安定狭心症を合併した人でその影響は強く、脳血管病による死亡と最も強く関連していた。血圧・肥満に続き、高コレステロール、高身長、低血小板も寿命を縮めるバイオマーカーとして特定された。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究では、これまで行われてきた観察研究やランダム化比較試験の課題点を克服し、遺伝情報を用いることで高血圧や肥満が現代人の寿命を縮めていることを初めて示した。今回関連が同定されたバイオマーカーは寿命を決定する原因となっている可能性が高く、医学的に観察・介入することで集団レベルでの健康アウトカムを改善することが期待される。現在、全世界で大規模なバイオバンクによるゲノム情報・臨床情報・電子カルテ情報の収集が盛んに行われ、いまだかつて無いほど膨大に蓄積されつつある。この手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる課題を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 ◆用語説明
 〇バイオマーカー
 ヒトの疾患病態や生物的特徴の説明に役立つ、測定指標のこと。体重、血圧などの身体測定値や、コレステロールや尿酸などの血液検査値が含まれる。
 〇バイオバンク
 疾患疫学や病態研究などを目的に、多数のヒトのDNA、血清、尿、組織などの検体を収集、蓄積、管理する施設のこと。近年では国家レベルで数十万人を対象とするバイオバンクが構築され、個人の検体とともに電子カルテ上の臨床情報やその後の予後などの追跡情報も蓄積される例が多い。
 〇健康アウトカム(health outcome)
 健康状態の結果を表す指標のこと。医療介入の評価の一指標として用いられる。寿命、健康寿命、薬剤治療への反応性、生活の質(Quality of life; QOL)などが含まれる。
 〇ポリジェニック・リスク・スコア(polygenic risk score; PRS)
 大規模なゲノムワイド関連解析研究(GWAS; ヒトゲノム配列上に存在する数千万カ所の遺伝子変異とヒト疾患との発症の関係を網羅的に検討する、遺伝統計解析手法)により疾患や形質との関連が示唆された数十~数千の遺伝的変異の重み付きの和を個人ごとに計算したスコア。このスコアは実際の疾患発症リスクと相関することが示されており、集団内でスコアの分布を調べることで、特にその疾患のリスクが高い個人を特定することができる。
 〇ポリジェニック(polygenic)
 糖尿病、高血圧など頻度の高い疾患や、身長、体重などの形質では、多数の(ポリ)遺伝的変異の影響(ジェニック)が組み合わされ足し合わされて全体の遺伝的な影響が説明されるということ。
 〇観察研究(observational study)
 研究のための治療などの介入を行わず、血液検査値などのある時点での観察値とアウトカムとの関連を調べる研究のこと。値とアウトカムに相関を認めても、どちらが原因でどちらが結果かの判断が困難な場合がある。(例: 体重が少ない方が寿命が短い相関が出たとき、痩せているせいで死亡率が高いのか、もともと持病があり痩せてしまったのか、判断できない。)
 〇ランダム化比較試験(randomized controlled trial; RCT)
 ある要因がアウトカムに与える影響を示すために、要因に対して投薬などの医学的な介入で変えてアウトカムへの影響を調べる方法の一つ。集団をランダムに介入群と非介入群に割り付け、アウトカムへの影響を比較することで、未知の交絡因子のない因果関係を明らかにすることができる。(例:LDLコレステロールの値が高いことが心筋梗塞のリスクを高めることを示すために、LDLコレステロールを下げる薬を与える群と与えない群での心筋梗塞の発生を追跡比較する。)
 〇バイオバンク・ジャパン(BioBank Japan)
 日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンクで、ゲノム解析が終了した人数は約20万人とアジア最大である。オーダーメイド医療の実現プログラムを通じて、ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へのデータ提供や分譲を行っている。
 〇UK バイオバンク(UK Biobank)
 英国で実施されている国家的バイオバンク機構。中高年のボランティア約50万人を対象に、ゲノム情報や2千以上の多彩な臨床情報、追跡情報を収集し、ほぼ無償で世界の研究者にデータの公開や分譲を行っている。
 〇フィンジェン(FinnGen)
 フィンランドで実施されている国家的バイオバンク機構。フィンランドの大学、既存のバイオバンク、病院、国際的な製薬会社が手を取り、50万人を目標にゲノムデータの収集を行っている。更にフィンランド政府のhealth registryとの紐付けにより豊富な臨床情報の入手が可能である。
 〇不安定狭心症
心臓に血液を送る冠動脈の流れが悪くなり、心筋に送り込まれる血液が不足し心筋が酸素不足に陥る病気を「狭心症」という。このうち、完全に血流が途絶えて閉塞した状態となるのが急性心筋梗塞で、その一歩手前で閉塞が不完全な状態でとどまっているのが、不安定狭心症。急性心筋梗塞に移行する可能性が高く、安静時にも胸痛などの症状を認める。

 晴れ。朝はまだ寒いと感じたが、昼近くから暖かくなってきた。最高気温は18℃・・暖かい。
 散歩道沿いの”ボケ”。やっと花が咲き出した。赤い花・・可愛い、小さな赤い球の蕾も多い・・満開になったらとても綺麗だ。
 名(ボケ:木瓜)の由来は、木になる瓜だから木瓜(もけ、ぼっくわ)で、これが転訛して”ボケ”となったと言う。本草和名(ほんぞうわみょう、日本現存最古の薬物辞典、延喜年間(901年-923年)に編纂)では、”もけ”と収録されている。
 花色は基本的に紅・淡紅で、白や白と紅の斑などがある。花色や由来・季節などによって色々な名で呼ばれる。
  唐木瓜:ぼけ(木瓜)の異名・・中国から渡来したから
  緋木瓜:花色が緋色から
  寒木瓜:冬(11月)に咲くボケ
  淀木瓜:真紅で小輪
  白木瓜:花色が白色
  更紗木瓜:花色が紅地に白
  広東木瓜:淡紅色で大輪
  長春木瓜:四季咲き
 ボケ(木瓜)
 別名:放春花(春を呼ぶ花)
 学名:Chaenomeles speciosa
 バラ科ボケ属
 落葉低木(樹高は1m~2m)
 中国原産、平安時代に渡来
 開花時期は3月~4月
 花の径は3cm前後、花色は紅・淡紅、白、白と紅の斑など
 ◆ボケと言えば「もの忘れ」の事でもある
 「もの忘れ」には加齢によるものと病気が引き起こすものがある。加齢によるものとは自然な老化による記憶力の低下である・・これが本来のボケ。自分が忘れたと言う自覚があれば”ボケ”で、自覚がなければ”認知症”となる。因みに、年齢と共に記憶力は低下し、20代と比べて50代では半分、70歳以上では4分の3まで失われるとの事。
 ある研究によると、70歳~90歳を対象に1日3km(歩数で約4千歩)以上歩く方と殆ど歩かない方を比較したら、歩かない方の認知症の発症率が2倍といわれる。・・歩けば楽し。


アルコール依存症の疑いがある人は全国で推計113万人

2020-03-25 | 参考資料
 厚生労働省の調査によると、国内のアルコール依存症患者数は2003年の80万人から13年に100万人に増加したとされる。2013年の調査によると、アルコール依存症の疑いがある人は全国で推計113万人おり、女性はこのうち1割強となっている。
 アルコール依存症は中年問題だったが、現在は高齢者問題となった。アルコール依存症の専門治療施設として日本最大の久里浜医療センターの新規患者に占める65歳以上の割合は、2012年に過去最高の24.3%に。10年間で9ポイント上がり、65歳以上人口の伸びを大きく上回っている。
 アルコール依存症は飲酒量や飲酒の仕方によって決定づけられるものではない。
 飲酒の仕方は常習飲酒・周期飲酒・機会飲酒に分けられ、一般には常習飲酒者のみが本症患者であるかのような誤った概念がある。確かに常習飲酒者が圧倒的に多いことは事実であるが、周期飲酒者の中にも本症患者の1/3~1/4の人々が含まれている。 渇酒症と呼ばれる患者の多くはこのタイプである。
 病的酩酊と呼ばれるものは極めて稀にしか飲酒しない機会飲酒であるが、ひとたび飲酒すると突然に意識障害が現わ、急激な興奮・攻撃的態度となり、周囲の状況の認識を欠く状態となり完全健忘を認めることが多い。
 このような人々も断酒をしなければ社会生活をスムースにおくることはできないし、医療の対象となる。
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 WHOが掲げるAUDIT(オーディット:飲酒習慣スクリーニングテスト)
 診断はできないが、飲酒問題の程度が分かる(垣渕さん:久里浜医療センター)。AUDITは厚生労働省や大手酒造メーカーのサイトなどでも公開されており、簡単に試すことができる。
 質問は全部で10個。過去1年までを対象に、普段の飲酒状況に答えるだけで数分で結果が出る。
 あくまでも目安であるが、9点以下はローリスク、10~19点はハイリスク(=予備群)、20点以上はアルコール依存症を疑う、という判断となる。

 ◆アルコール依存症
 一般にアルコール依存症と呼ばれているものは急性中毒症を含まない。
 英語のアルコホリズム「Alcoholism」の訳語としては「アルコール依存症」が一般化しつつあるといえる。
 WHOにおいては、本症を薬物依存のひとつとしてとらえ、特に「依存」という概念を重視している。
 1968年WHO薬物依存専門委員会では「薬物依存とは,生体と薬物との相互反応から生ずる精神状態および身体状態であって、行動上その他の反応がつねに強迫的であるという特徴をもっている。この強迫とは薬物の精神効果を経験したいことや、ときには薬物がないと生ずる不快を避けたいために持続的か周期的に薬物を使用することである」としている。すなわち、強迫的飲酒とは個人の自由意志によって選ばれ楽しまれる飲酒ではなく、いやおうなしに周期的または持続的に飲まなければならない渇望状態に陥ったことを意味している。
 そして、飲酒をやめると、精神的、身体的に何らかの不快な異常(障害)を生じるような状態をアルコール依存症の概念としてとらえることができる。

 天気は晴れ。風が少しあり、最高気温13℃・最低気温1℃とあり、少し寒い。
 小さなお庭の”ヒヤシンス”に花が咲いている。短い花茎に沢山の小花を付け、甘い香りが漂う。”ヒヤシンス”が咲くころには、チューリップ、スイセン、キバナサフラン(クロッカス)が咲きだす。
 ”ヒヤシンス”の花色は、本来(野生種)青紫色。同じ頃に咲く”ムスカリ”も青紫色で、この色などから、別名ブドウヒアシンスとも言われる
 原産地は地中海東部沿岸で、オスマン帝国(現トルコ)で栽培され園芸化されたと言う。その後16世紀に欧州・英国に渡り、江戸末期(1863年頃)にチューリップとともに日本に来た。園芸品種は花色も豊富で、赤・ピンク・白・黄・青・紫色など。
 ヒヤシンス(風信子、飛信子)
 別名:錦百合(にしきゆり)
 学名:Hyacinthus orientalis
 ユリ科(ヒアシンス科)ヒヤシンス属
 原産地はギリシャ地方
  江戸末期(1863年頃)にチューリップとともに渡来した
 耐寒性秋植え球根(春に花咲く秋植え球根)
   球根の表皮が花色と同じ様な色となっている(球根で花色が判る)
 開花時期は3月~5月


高変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功

2020-03-23 | 科学・技術
 理化学研究所開拓研究本部染谷薄膜素子研究室の福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫主任研究員、創発物性科学研究センター創発機能高分子研究チームの伹馬敬介チームリーダーらの国際共同研究グループは、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功した。
 本研究成果は、ウェアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエータなどに安定的に電力を供給できる、軽量で柔軟な電源として応用されると期待できる。
 国際共同研究グループは、発電層を改良するために高エネルギー交換効率と熱安定性を併せ持つバルクヘテロ接合構造の素子を新たに作製した。さらに、発電層と正孔輸送層の界面における電荷輸送効率向上のため、この素子に対してポストアニール処理(150℃)を施した。その結果、13%の高いエネルギー変換効率と、大気中保管3,000時間で劣化5%以下という長期保管安定性を両立する、超薄型有機太陽電池(厚さ3マイクロメートル)を実現した。これは過去の最高値と比較して、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍改善したことになる。
 本研究は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン版に掲載。
 背景
 有機太陽電池は、従来のシリコン型太陽電池に比べ極めて薄い有機半導体薄膜で形成されるため、柔軟性・軽量性に優れ、ウェアラブルセンサーを長時間安定に駆動する電源としての応用が期待されている。特に、基板を含めた全体の厚さを数マイクロメートル(μm、1μmは100万分の1メートル)まで薄型化した超薄型有機太陽電池は、衣服や皮膚に直接貼り付けても違和感がないことが特長である。
 福田憲二郎専任研究員らはこれまでに、耐水性、耐熱性を持ち、エネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)が10.5%に達する超薄型有機太陽電池を実現し、それらを用いたセンサーとの集積化に関する報告を行ってきた。しかし、超薄型有機太陽電池は基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使用しているため、十分なガスバリア性の確保が難しく、また安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため、エネルギー変換効率と長期保管安定性の両立は依然として不十分であった。
 研究手法と成果
 今回開発した超薄膜有機太陽電池は、基板から封止膜までの全てを合わせた膜厚が3μmと極薄でありながらエネルギー変換効率は13%に達し、大気中で3,000時間保管した後も95%以上のエネルギー変換効率を保持することができた。これまでの研究では、エネルギー変換効率は10.5%、保持率95%を満たすのは約200時間であった。これと比較すると、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍も改善したことになる。
 本研究成果のポイントは、高エネルギー交換効率と熱安定性を両立する新たなドナー・アクセプター材料ブレンド膜の設計による発電層の改良と、ポストアニール処理による発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送の改善を実現したことにある。
 今回ドナー材料に用いたPBDTTT-OFTは、東レ株式会社が近年新たに開発した熱安定性に優れる半導体ポリマーである。これまでの研究では、このPBDTTT-OFTとランダムに混合したバルクヘテロ接合構造の発電層を作製するために、アクセプター材料としてフラーレン誘導体[6]を使用していた。しかし、この組み合わせではPBDTTT-OFTの高効率や熱安定性といった特長を十分に引き出すことができなかった。今回、アクセプター材料として非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで、光捕集性と熱安定性により優れる発電層を作製できた。
 これに加え、素子作製後に簡単な熱処理(150℃)を行うポストアニール処理によって、長期保管安定性が大きく改善することを発見した。微小角入射広角X線散乱法やX線光電子分光法などによる物性評価の結果、この現象は、ポストアニール処理を施すことによって、発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善した結果であることが判明した。さらに、他の発電層材料や正孔輸送層を試したところ、ポストアニール処理後にエネルギー変換効率が低下してしまったことから、今回の素子構成でのみ高いエネルギー変換効率が保持されることが分かった。
 発電層のドナー材料に半導体ポリマーのPBDTTT-OFTを、アクセプター材料に非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで、高エネルギー変換効率と熱安定性を両立できる発電層を作製できた。また、素子作製後にポルトアニール処理(150℃、5分間)を施すことで、発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善され、それに伴い長期保管安定性も改善された。
 今後の期待
 今回、新しい発電層と簡便なポストアニール処理を組み合わせることで、超薄型有機太陽電池の高いエネルギー変換効率と長期保管安定性の両立が可能になった。本研究により、超薄型有機太陽電池がより長期間安定に、大電力を供給することが示された。本成果は、衣服貼り付け型センサーなどのウェアラブルエレクトロニクスへの長期安定電源応用の未来に貢献すると期待できる。
 ◆補足説明
 〇有機太陽電池
 有機半導体を光電変換層として用いた太陽電池のこと。塗布プロセスによる大量生産が適用できると同時に、安価かつ軽量で柔らかいことから、次世代の太陽電池として注目を集めている。
 〇ソフトロボット
 柔軟性のある材料を利用した柔らかいロボット。従来の硬い材料を利用したロボットとは全く異なるロボットが実現されるとして、近年世界中で注目を集めている。
 〇バルクヘテロ接合
 電子供与性(ドナー)と電子受容性(アクセプター)の有機半導体を混合した溶液から薄膜を作成することで、それぞれの材料がランダムに混ざり合い、接合界面が薄膜全体(バルク)に広がっている構造。
 〇ポストアニール処理
 電子素子を作製した後に行う加熱処理のこと。本研究では作製した有機太陽電池を、窒素雰囲気下で150℃のホットプレート上に5分間置くという処理を行った。
 〇半導体ポリマー
 半導体の性質を持つポリマー(高分子の有機化合物)材料。可視光を吸収することができ、有機溶剤に溶けるため、塗ることができる半導体として、有機薄膜太陽電池をはじめとした有機デバイスに応用されている。
 〇フラーレン誘導体
 フラーレンは炭素原子が球状の構造を成している化合物の総称で、ダイヤモンドや黒鉛、カーボンナノチューブと同様に炭素の同素体である。フラーレンは、付加反応などの化学修飾により容易に誘導体を合成することができ、その誘導体の中でも[6,6]-フェニル酪酸メチルエステル(PCBM)が有機太陽電池のアクセプター材料としてこれまで広く使用されてきた。.
 〇微小角入射広角X線散乱法
 薄膜試料に横方向からすれすれにX線を入射して、後方に散乱されるX線を観測することで、薄膜の結晶構造を解析する実験手法。感度が高く、密度の低い有機薄膜でも構造の解析が可能である。
 〇X線光電子分光法
 物質にX線を照射し、試料表面から放出される電子の個数とエネルギーの関係を調べることにより、物質内の電子状態を調べる実験手法。この手法により、物質内の電子のエネルギー分布を直接観測することが可能となる。硬X線光電子分光法、軟X線光電子分光法などがある。

 晴れ、少し雲が多い。風がやや強く、足元・首筋をすくう。
 垣根沿いに植えられている”ウグイスカグラ”に花が咲いている。花冠は細い漏斗形で、先端は5裂して開く。花色は、名の”ウグイスカグラ”からだと「うぐいす色:くすんだ黄緑色」だが、ピンク色である。花後の果実はグミの様な楕円形の液果、初夏に透明感のある赤に熟す。
 名(ウグイスカグラ:鶯神楽)の由来には諸説あるが、鶯が鳴き始める頃に花が咲く、からと言う。
 ウグイスカグラ(鶯神楽)
 別名:ウグイスノキ
 学名:Lonicera gracilipes var. glabra(鶯神楽)
Lonicera gracilipes var. glandulosa (深山鶯神楽)
 スイカズラ科スイカズラ属
 落葉性低木
 原産地は日本(北海道~本州、四国)
 開花時期は3月~5月、深山鶯神楽の開花時期は2月頃
 花色は薄ピンク色、花冠は細い漏斗型で先は5裂して開く
 初夏(6月頃)に1cm程の果実が透明感のある赤に熟す、食べれる


幹細胞治療による血管再生メカニズムを解明

2020-03-22 | 医学
 神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター脳循環代謝研究部の研究グループは、投与した造血幹細胞が血管内皮細胞に「細胞内で欠乏しているエネルギー源(グルコースなど)」をギャップ結合を介して直接供給することが、障害されている血管内皮細胞の再生をスタートさせるトリガーであることを発見した。
 成果は、幹細胞が障害された細胞に分化あるいはサイトカインなどで「命令」を与えて再生をスタートさせているのではなく、幹細胞が障害された細胞で欠乏している「エネルギー源」を直接供与することが再生をスタートさせる鍵であることを示しており、再生医療において全く新しいパラダイムが存在することを明らかにした。
 研究成果は、2020年2月21日に、国際学術誌「Stroke」にオンライン掲載。
 背景
 造血幹細胞を使った再生医療は、四肢虚血、心筋梗塞、脳梗塞、新生児脳性麻痺など、多くの治療困難な疾患を対象に行われてきた。私達のグループでも、難治性四肢虚血患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2003)、重症心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Stem Cells Dev. 2015)を行い、その治療効果を示してきた。しかしこれらの造血幹細胞移植がどのように血管再生を促進し、脳神経の回復まで行うのかについて、造血幹細胞の血管内皮細胞への分化や、サイトカインのパラクライン効果などが提唱されてきたが、否定的な結果も数多く報告されており、その本質は全く不明であった。
 研究手法・成果
 まず、血管内皮細胞と造血幹細胞を一緒に培養することで、血管内皮細胞にどのような変化が起こっているのかを検討した。その結果、血管内皮細胞と造血幹細胞が接する状態で培養した場合のみ、血管内皮細胞の活性化が見られ、細胞同士が直接接することで、何らかの影響を与えていることがわかった。
 次に、骨髄組織における造血幹細胞と血管内皮細胞の直接的な接着に重要であるギャップ結合に着目した。細胞と細胞は、各々の細胞が細胞膜で区切られているため、細胞の中身(細胞質)が直接的に移動することは基本的にはない。しかし、ギャップ結合は細胞質と細胞質を直接つなぐ細いトンネルのような働きを有しており、細胞間がギャップ結合で繋がると、分子量1500以下の低分子であれば濃度勾配に従って移動することが知られている。そこで造血幹細胞に低分子の蛍光物質を封入し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、造血幹細胞に封入した蛍光物質が脳梗塞巣の障害された血管に移行していることがわかった。さらに、造血幹細胞から血管内皮細胞へギャップ結合を通って流れる分子の一つがグルコースであり、グルコースの供給がトリガーとなり、血管内皮細胞では低酸素誘導因子(HIF1-α)の活性化が起こり、その後の血管再生起点となっていることを明らかにした。
 波及効果
 我々が発見したメカニズムは、宇宙ステーション/宇宙船に例えるなら、ダメージを負った宇宙ステーション(障害を受けた脳組織)の救助に小さな宇宙船(造血幹細胞)を派遣→宇宙ステーションとドッキング→狭いハッチ(ギャップ結合)を開けて連結→ハッチから修復に必要物資を搬入→ダメージを負った宇宙ステーションの修復(再生)を促進、という救助システムと全く同じであった。幹細胞を使った再生医療のメカニズムが、このような合理的な修復システムに基づいていたことは、大きな発見で、再生医療に新しいパラダイムを提示するものである。
 今回の研究では、幹細胞による障害細胞への直接的な低分子化合物供給の重要性が明らかになり、投与幹細胞の品質管理や細胞機能の向上、さらにメカニズムの解明により、幹細胞が不要な再生医療の可能性も開かれたと考えている。
 今後の予定
 今回の研究は、理化学研究所(神戸市)、日本赤十字社/医薬基盤研(箕面市)、フラウンホーファーIME研究所(ドイツ)、ウォーリック大学(英国)との共同研究の成果である。今後も、これらの研究者らと①幹細胞の機能向上研究、および②幹細胞が不要な再生医療開発を行い、脳梗塞患者および認知症患者に対する新規治療法開発を続けていく予定である。
 ◆用語解説
 〇ギャップ結合
 接触する細胞同士をつなぎ分子量1500以下の小さい分子やイオンを通過させる細胞間結合。細胞の細胞膜にはコネクソンと呼ばれるトンネルのようなタンパクが存在し、接触する細胞のコネクソン同士が繋がると、小さい分子やイオンが隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動する。
 〇低酸素誘導因子(HIF1-α)
 細胞が酸素不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質。ヒト遺伝子の約2%が直接あるいは間接的に制御されており、血管再生にも重要な役割を果たしている。

 今日の天気は、曇り~小雨~曇り、時々晴れ。ハッキリしない天気だな。
 散歩道沿いの玄関前の小さなお庭に、”フッキソウ”の花が咲いている。今年の冬は暖冬だから早く咲きだしたのかな。
 茎頂に穂状花序の雄花、雌花が付く。雄花・雌花ともに白色で花弁が無く、雄花は茶色の太い4本の雄蕊を持ち、雌花は2本の花柱を持った子房がある。雄花は花序の先に沢山で、雌花はその下に付く。多数の葉が茎にラセン状に付き、荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉で、密に互生して輪生に近く見える着き方である。
 名(フッキソウ:富貴草)の由来は、青葉が絶えない常緑性から、その姿を繁栄に擬えたとされる。別名は、キッショウソウ(吉祥草)、キチジソウ(吉事草)と縁起が良い。因みに、ユリ科には”キチジョウソウ”がある・・吉祥草:草・常緑、学名:Reineckea carnea、赤い実を付ける。
 ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木である。”草”のように見えるが、地下茎が横に這って繁茂する小低木である・・木だ!!。
 フッキソウ(富貴草)
 別名:吉祥草(きっしょうそう)、吉事草(きちじそう)。
 学名:Pachysandra terminalis
 ツゲ科フッキソウ属
 常緑小低木
 原産地は日本、中国
 開花時期は4月~5月


外部から固体触媒に電位を与えると低温で化学反応が速く進む手法を発見

2020-03-21 | 科学・技術
 早稲田大学大学院先進理工学研究科博士2年の村上洸太氏および理工学術院の関根泰教授らの研究グループは、外部から固体触媒に電位を与えることで、低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見した。これまで化学反応は高温ほど速く進むというアレニウスの法則が一般的であったが、その法則を打ち破る新しい概念である。本研究成果は、2020年3月13日(英国時間)にイギリス王立化学会のジャーナル「Chemical Communications」のオンライン版で公開。
 本成果は、JST未来社会創造事業 研究課題名「電場中での低温オンデマンド省エネルギーアンモニア合成」(研究開発代表者:関根 泰)の支援により実施された。
 ポイント
 〇化学反応は高温ほど速く進むというアレニウスの法則がこれまで一般的だった
 〇外部から固体触媒に電位を与えることで、低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見した
 背景
 スウェーデンのスヴァンテ・アレニウスは、1884年に化学反応は高温になるほど速く進むことを明らかにし、アレニウスの法則として高校の教科書にも記載されるほど有名な原理となった。本研究グループは、外部から固体触媒に電位を印加すると、この法則に反して低温ほど反応が速く進むことを発見し、その原因を探ってきた。
 研究の内容
 化学品や水素運搬体として期待されるアンモニアを、窒素と水素から作る反応はハーバーボッシュ反応として知られ、大規模に工業化されており、400度程度の高温と250気圧程度の高圧が必要である。
 本研究グループは、半導体性を有する固体触媒に、外部から電位を与えることで、この反応が200度以下の低温でも速やかに進むことを見いだした。さらに、200度以下の領域では、温度を下げたほうが反応速度が速くなる現象を発見した。一般的に、反応速度が低温で優勢になるのはアレニウスの法則に従い吸着現象のみである。しかし反応速度と吸着の相関を検討したところ、触媒表面でイオンが動く際に、吸着が多くなる低温で反応速度が速くなるというメカニズムが明らかになった。これは化学反応速度がアレニウスの法則に従うという過去の常識を打ち破る、新しい概念である。
 温度を自在に制御できる反応装置に、独自の固体触媒を設置し、外部から電場を与えて反応速度を評価し、非アレニウス法則(アレニウスの法則に従わない)型の反応となることを示した。続いて、赤外スペクトルにおいて、透過法と反射法を駆使して、固体触媒表面への吸着量を電場の有無、温度の違いで丁寧に評価し、科学的なモデルを構築した。最後にモデルによる計算結果と実験結果を照らし合わせたところ、見事に整合することが実証され、非アレニウス法則型の反応がどうして、どのように起こるのかを、吸着と速度の関係から明らかにした。
 研究の波及効果や社会的影響
 再生可能エネルギー由来の電力を利用し、低温で欲しいときに欲しいだけ化学反応が進められ、さらに温度が低い方が反応速度は上がるという現象は、これまでにない新しい特徴を有している。欲しいときに欲しいだけ、室温などの低い温度で物質変換が可能になるという、化学反応の世界にパラダイムシフトをもたらすものになる。
 このようなメカニズムで反応が進む例はまだ限られているため、再生可能エネルギーを生かして、エネルギーや物質を創り出す多様な反応を、低温で選択的に進められるような材料を探索し、展開を進めていく。
 ◆用語解説
 〇赤外スペクトル
 測定対象となる物質に対して赤外線を照射して、透過した光、あるいは反射してきた光を、波長ごとに分光することでスペクトルを得て、対象となった物の特性を知る方法。
 〇ハーバーボッシュ法
 ハーバー・ボッシュ法は鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を反応させ、アンモニアを生産する方法である。1906年に開発されたこの方法は、1世紀以上が経過した現在でも肥料生産をはじめとするさまざまな工業プロセスに使用されている。
 しかし、ハーバー・ボッシュ法は大量のエネルギーを消費する手法である。世界で消費されているエネルギーの2%はハーバー・ボッシュ法の反応に使用されており、世界の二酸化炭素排出量のうち1%を占めている。

 晴れ。雲が少し多く、風も少し強い。最高気温が17℃とあるが、それほど温かさを感じない。
 近所の畑で、”ナノハナ(菜の花)”が咲いている。
 ”ナノハナ(菜の花)”は、”野菜(菜っ葉)の花”から”菜の花”になったもので、おひたしや和え物で食べられる葉や茎頂部の花芽や花である。大雑把にいえば、アブラナ科アブラナ属の蕾・花である。この畑の花は、”チンゲンサイ:アブラナ科アブラナ属)かな・・取り残したようだ。
 ナノハナ(菜の花)
 別名:花菜(はなな)、菜花(なばな)、菜種(なたね)
 アブラナ科アブラナ属
 開花時期は、2月~5月
 花弁数は4枚、黄花
 菜の花は春に見かける黄色い花の総称として使われる
 西洋油菜(せいようあぶらな)を「菜の花」と呼ぶことも多い


2019年度芸術院賞に幸四郎さんら5人に、杵屋勝国さんら2人は恩賜賞も

2020-03-20 | アート・文化
 日本芸術院(黒井千次院長)は、芸術分野で顕著な業績があった人に贈る2019年度の日本芸術院賞に、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんら5人を選んだと発表した(3月19日)。長唄三味線方の杵屋勝国さんと日本画家の村居正之さんには特に顕著な業績を認め、恩賜賞も併せて贈る。
 恩賜賞・日本芸術院賞
 村居正之(むらい・まさゆき)日本画家。72歳。日展出品作「月照」。京都府出身。
 杵屋勝国(きねや・かつくに、本名牟田口照國=むたぐち・てるくに)長唄三味線方。74歳。長年にわたり長唄界と歌舞伎長唄に貢献、後進を育成。福岡県出身。
 日本芸術院賞
 藤森照信(ふじもり・てるのぶ)建築家。73歳。「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」。長野県出身。
 藤間蘭黄(ふじま・らんこう、本名田中裕士=たなか・ひろし)日本舞踊家。57歳。日本舞踊の古典を継承するとともに、発展・普及に寄与。東京都出身。
 松本幸四郎(まつもと・こうしろう、本名藤間照薫=ふじま・てるまさ)歌舞伎俳優。47歳。近年の歌舞伎俳優としての活躍。東京都出身。
 ◆日本芸術院賞
 芸術上の功績が顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関、日本芸術院が毎年授与する賞。第1回目の実施は1941年。日本芸術院の会員以外で、優れた芸術作品を制作した人、および明らかに芸術の進歩に貢献する業績がある人に贈られ、賞状、賞牌、賞金が出る。
 戦前は帝国芸術院賞と呼ばれた。日本芸術院賞を受賞した人の中からさらに選ばれる恩賜賞がある。恩賜賞、日本芸術院賞ともに、授賞式は毎年6月に行われ、天皇皇后両陛下も出席する。戦中、戦後の一時期を除いて毎年授与されている。
 毎年1月中に日本芸術院の会員が候補者を推薦し、やはり会員で構成される選考委員会でさらに選考が行われる。選ばれるジャンルは日本画、舞踊、音楽、建築、彫塑、小説など幅広い。

 天気は晴れ。風が強く時々突風が吹く・・帽子が飛ばされる。最高気温は13℃と寒い・・この寒さは今日だけかな。
 今日は3月20日で、春分の日:昼と夜の長さが等しくなる日、といわれるが、実際は昼の方が少し長い。
 梅田川沿いの”サンシュユ”。葉が出る前に黄色の小さい花を咲かせ、枝先に花が満開だ。春の到来を知らせる。木全体を覆う花が早春の光を浴びて黄金色に輝くことから、別名に春黄金花(はるこがねばな)がある。
 秋に果実を付ける。果実はグミに似た楕円形で赤い色で光沢がある。この様子から、別名に秋珊瑚(あきさんご)がある。。江戸中期に朝鮮から渡来し、薬用植物として栽培された。今でもそのまま食べられ、滋養・強壮の薬効がある山茱萸酒を作る。名の”サンシュユ”は中国名「山茱萸」を音読みしたもの。茱萸とはグミのこと。
 サンシュユ(山茱萸 )
 別名:春黄金花(はるこがねばな)、秋珊瑚(あきさんご)、山茱萸(やまぐみ)
    Japanese cornel(ジャパニーズ・コーネル)
 学名:Cornus officinalis Siebold et Zucc
 ミズキ科ミズキ属
 原産地は中国・朝鮮、薬用植物として
  江戸中期(享保七年:1722年)に朝鮮から渡来
 落葉小高木
 開花時期は2月~4月
 秋(11月頃)にグミのような赤い実に熟す


がん10年生存率57%に、技術進歩で改善続く

2020-03-19 | 健康・病気
 国立がん研究センターはがんと診断された人の10年後の生存率を発表した(3月17日)。
 2003~06年にがんと診断された人の10年後の生存率は、がん全体で57.2%だった。昨年の集計に比べて0.8ポイント上昇し、データを取り始めた1990年代末から伸び続けている。特定のがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬の登場や、早期発見につながる診断技術の進歩が貢献したとみられる。
 10年生存率の発表は5回目で、全国約20のがん専門病院で診断、治療を受けた約8万人を集計した。調査を担当した千葉県がんセンター研究所の永瀬浩喜所長は「最新の研究や治療法の進歩によって生存率が上がっていることが示された。今後も、がんゲノム医療やオプジーボをはじめとする『免疫チェックポイント阻害剤』の効果で上昇するだろう」と話した。
 また2009~2011年にがんと診断された約14万3千人の5年生存率は、がん全体で68.4%で、前年集計よりも0.5ポイント高かった。
 部位別で生存率(10年生存)が高かったのは前立腺がん(97.8%)乳がん(85.9%)甲状腺がん(84.1%)。最も低かったのは膵臓(すいぞう)がん(5.3%)で、肝臓がん(15.6%)胆のう胆道がん(18%)が続いた。
 ◆がん生存率
 がんと診断された人が、一定期間経過した後に生存している割合。がん医療を評価する指標の一つで、100%に近いほど治療の効果が高いことを示す。がんの部位や進行度、治療法ごとに集計し、がん以外の死亡の影響を除いた「相対生存率」がよく使われる。
 早期発見や治療効果の検証に役立てる目的で長期間の健康状態を見る10年生存率や、新たな治療法の影響を短期間に探る3年生存率などがある。
 ◆主ながんの5年・10年生存率(%)
        (国立がん研究センター)
 5年生存率は2009~2011年
 10年生存率は2003~2006年に診断された患者
       5年   10年 (1期 2期 3期 4期)
 前立腺がん 100.0   97.8(100.0 100.0 94.7 53.8)
 乳がん   93.7   85.9(97.6 87.4 61.9 18.3)
 甲状腺がん 92.4   84.1(99.2 100.0 94.7 53.8)
 子宮体がん 96.4   81.2(92.4 87.0 58.8 12.1)
 子宮頸がん 76.8   68.8(88.6 67.6 47.7 18.3)
 大腸がん  76.8   67.8(92.9 81.0 73.5 12.7)
 胃がん   74.9   65.3(90.7 54.9 35.5 4.4)
 腎臓など  69.4   64.0(90.9 68.7 52.4 13.1)
 卵巣がん  66.2   45.3
 肺がん   45.2   30.9(4.8 28.4 12.0 1.7)
 食道がん  46.0   30.9(68.3 33.7 21.3 7.1)
 肝臓がん  37.0   15.6(27.3 17.5 6.7 2.4)
 胆のう胆道がん 28.6 18.0
 膵臓がん  9.9    5.3
 ◆調査結果
 今回の詳しい調査結果の閲覧は、
 全国がんセンター協議会のウェブサイト(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)

 今日の天気は晴れ。心は曇りor雨・・プリンターが壊れ、新機を購入した・・。
 散歩で見つけた”ヒマラヤユキノシタ”の花。大きなシャモジの様な丸い葉で、花茎を伸ばしてピンク色の花径1cm程の花が纏まっている。
 名(ヒマラヤユキノシタ:ヒマラヤ雪ノ下)の由来は、ヒマラヤやシベリア地方に多く、寒さに強く、雪でも常緑の葉だから、の説がある。葉は革質で固く、タンニンを多く含むので、ロシアではこのタンニンを製革に使用する・・とか。
 ”ヒマラヤユキノシタ”が属するユキノシタ科ベルゲニア属は10種程が知られており、種間雑種も多い。”ヒマラヤユキノシタ”はベルゲニア・ストレイチー(Bergenia stracheyi)に付けられた名であるが、交雑種も含めてヒマラヤユキノシタと呼んでいる事が多い。
 ヒマラヤユキノシタ(ヒマラヤ雪ノ下)
 別名:大岩軍配(おおいわぐんばい)、桜鏡(さくらかがみ)
   ウインター・ベゴニア(Winter begonia) 、ベルゲニア(Bergenia)
 学名:Bergenia stracheyi
 ユキノシタ科ベルゲニア属
 耐寒性常緑多年草
 原産地はヒマラヤ山脈周辺、明治初期に渡来
 開花時期は3月~5月
 花色には赤色・白色がある


廃水中などに含まれるアンモニウムイオンの炭酸塩類から尿素を合成

2020-03-18 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院応用化学系の眞中雄一准教授と本倉健准教授らは、有機塩基触媒を用いることで廃水中などに含まれるアンモニア(以下アンモニウムイオン)の炭酸塩類から尿素を合成できる。従来の下水処理場のアンモニウムイオンの無害化処理(窒素への分解)とは異なり、アンモニウムイオンを有用物質に変換することにより、資源として用いることができるようになる。
 この研究結果は有機塩基触媒が触媒反応中にイオン交換反応を介することが特徴であり、高価な遷移金属を含まない有機合成的なアプローチにより達成された。今後は廃水処理のプロセスとの組み合わせを検討する。合成された尿素は、様々な化成品の原料となる基礎化成品として活用可能であり、近年は固体で安定な水素キャリアとしても注目されている。
 研究成果はネイチャーリサーチ社の科学誌「Scientific Reports」に2月18日に公開。
 要点
 〇有機塩基触媒を用いてアンモニアの炭酸塩類から尿素を合成することに成功
 〇水質汚濁防止法の有害物質である廃水中のアンモニアを資源として再利用可能
 〇尿素は基礎化成品として活用、固体で安定な水素キャリアとしても注目される
 研究成果
 眞中准教授らは有機塩基触媒を用いることでアンモニウムイオンの炭酸塩類から尿素を合成できることを見出した。特に原料にカルバミン酸アンモニウムを用い、有機塩基触媒として1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene(ジアザビシクロウンデセン)を用いて反応条件を最適化すると、最大35%の収率で尿素を得ることができた。
 尿素は一般的には、ガス状態のアンモニアと二酸化炭素を150 ℃以上の高温・20気圧程度の高圧の条件下におくことで合成されている。今回の発見では、アンモニアよりも反応させにくいと考えられているアンモニウムイオンを用い、70~140 ℃で加圧することなく尿素の合成に成功した。
 一定の強さ以上の塩基性(今回の検討ではアセトニトリル中での共役酸のpKaが20以上)を持つ有機塩基触媒を用いることで、有機塩基触媒とアンモニウムイオンがイオン交換を起こし、反応が進みやすい中間体が生成することが効率的な反応の鍵となっていると推測される。
 また、カルバミン酸アンモニウム以外の炭酸塩として、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムを用いても尿素を合成することに成功した。これらは、アンモニウムイオンの存在する水中に二酸化炭素を吹き込むことで生成される化合物群であり、アンモニウムイオンの安価な濃縮の一助になると考えられる。
 研究の背景
 廃水処理場では、悪臭物質であり劇物でもあるアンモニア(もしくはアンモニウムイオン)を硝化・脱窒という工程を経て無害な窒素分子に変えている。この処理方法では、無害化のためにエネルギーを多く投入しており、副生成物として温室効果ガスの亜酸化窒素が発生する可能性もある。
 一方で見方を変えると、アンモニウムイオンは、窒素分子の強固な三重結合が破壊された形であり、窒素分子に戻して三重結合を復活させるよりも、アンモニウムイオンの状態で何らかの分子に変換できると、投入エネルギー的に有利になる。つまり、アンモニウムイオンを活かした有機合成が可能になると、エネルギー削減をしつつ、有害物質を減少させ、有用な物質を供給することが可能になる。
 展望および意義
 今回の研究では、有機塩基触媒を用いることでアンモニウムイオンからでも有用な分子が合成できることを示した。実際の廃水処理に組み込むために適した触媒の形状や反応系、反応率の向上などの検討を経て、アンモニウムイオンの活用を行う予定である。また、今回合成した尿素以外の付加価値の高い分子への転換も検討していく。
 ◆用語説明
 〇有機塩基触媒
 触媒として働く有機塩基。触媒とは、化学反応に添加することで、反応速度を変化させる物質。その際に自身は変化しない。有機塩基とは塩基性を示す有機化合物。
 〇アンモニウムイオン
 NH4+で表されるイオン。アンモニア(NH3)にプロトン(H+)が付加することで生成される。アンモニアが水に溶けると一部がアンモニウムイオンになる。
 〇炭酸塩類
 本稿では炭酸塩類として炭酸イオン、重炭酸イオン、カルバミン酸イオンを含む塩と定義する。
 〇尿素
 哺乳類の尿中に含まれる窒素化合物。体内でタンパク質が分解して生成される。化学式(NH2)2CO 。工業的にはアンモニアと二酸化炭素とから合成される。無色の柱状結晶で、肥料・尿素樹脂・医薬・接着剤の原料となる。1828年に初めて化学的に合成された有機化合物として有名。
 〇遷移金属
 周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称。
 〇カルバミン酸アンモニウム
 カルバミン酸イオンとアンモニウムイオンから構成される塩。アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成する際の合成中間体と考えられている。
 〇1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene
 強塩基性を示すアミジン骨格(炭素に窒素が二重結合で一つ、単結合で一つ結合した構造)を持ち、かつ環状の分子形状と大きさから求核性が低い有機塩基化合物。有機化学の反応に用いられる。
 〇塩基性
 塩基として働く性質。塩基とは、OH-を放出する物質(アレニウスの定義)、プロトンを受け取る物質(ブレンステッド-ローリーの定義)、電子対を与える物質(ルイスの定義)などにより決められる。
 〇pKa
 酸解離定数。酸の強さを表す値で、小さいほど強力な酸になる。共役酸のpKaが大きいほど強力な塩基になる。
 〇硝化・脱窒
 廃水中の窒素化合物を微生物の力で窒素分子に変換する過程の名称。硝化過程では、アンモニアを亜硝酸に変え、亜硝酸を硝酸に変える。脱窒過程では硝酸もしくは亜硝酸を窒素分子へ変え、2つの過程を併せて窒素化合物を無害化する。

 お天気は晴れ。3月も半ばとなると春が来た、と感じる。今日の最高気温は15℃・・温かくなってきたけど、風が強いな。
 お隣の畑を見たら、雑草の中に花が咲いている。”ホトケノザ:仏の座”の花だ。
 名(ホトケノザ:仏の座)の由来は、対生する半円形の葉が茎を囲む様子を蓮華座(れんげざ)に見立てたことからと言う。花が付く茎の上では葉が茎を抱いて葉柄がないが、下の方の葉は長い葉柄がある。葉が段々と付いているので、三階草(さんがいぐさ)とも呼ばれる。
 ホトケノザ(仏の座)
 別名:三階草(さんがいぐさ)
 シソ科オドリコソウ属
 一年草あるいは越年草
 古い時代にヨーロッパから渡来した帰化植物と考えられている
 開花時期は2月~6月(秋にも咲く)
 上部の葉脇に長さ2cmほどのピンク色で唇形状の花を付ける
 この花より小さくて濃赤色をしたつぼみの様に見える花がある。これは閉鎖花と呼ばれるもので、開花することなく受粉して結実する
 白色の花色もあり、”シロバナホトケノザ”と呼ばれる


安定で高活性な白金の単原子触媒の開発に成功

2020-03-16 | 科学・技術
 東京工業大学 元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授、同センターの叶天南特任助教、北野政明准教授らは、カルシウムとアルミニウムの酸化物C12A7(12CaO・7Al2O3)がサブナノサイズのケージから構成されていて、その最表面ではケージ構造が破れていることに着目し、その部分に白金原子を入れ込んで安定的に固定した単原子触媒の開発に成功した。
 遷移金属の単原子触媒は、原子の周りの結合が不飽和なために、バルクの金属に比べて圧倒的に触媒活性が高いことや、金属原子の利用効率が極めて高いことから、活発な研究がおこなわれている。しかし、高温にすると担持された単原子金属が凝集してしまい、活性が低下することが問題であった。本研究成果は、この課題を克服するものである。
 この成果は英国科学誌Nature Communicationsにて2月24日にオンライン公開。
 要点
 〇白金原子を担持体表面のケージ構造の破れ部分に入れ込むことで安定に固定した、新たな単原子触媒の開発に成功
 〇従来の単原子触媒で問題とされていた、高温で原子が凝集してしまうという欠点を克服
 〇担持体として12CaO・7Al2O3を用いることで、CaOやAl2O3より桁違いに高い活性と安定性を実現
 背景
 触媒として有効に機能する物質には、白金やロジウムなど高価な貴金属が多い。そうした金属の使用量を大幅に減少させる方法として、単原子として固体表面に固定(担持)する単原子触媒が熱心に研究されている。この単原子触媒は、バルクの金属と比べて原子の周りの結合が不飽和なので、高い活性が得られる。しかしほとんどの場合、担持された単原子は温度をあげると凝集し、通常の金属ナノ粒子触媒と同じになってしまうという欠点がある。いかにして単原子金属を固体表面に安定的に固定するかが技術的課題となっていた。
 本研究のアプローチ
 この課題に対して本研究では、単原子がちょうど収まる大きさの極小のケージに、目的とする金属の単原子を入れ込むことを目指した。対象とする金属には、最も代表的な貴金属触媒である白金を、そして触媒性能を左右する、白金を担持する固体(担持体)には、12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」)を選択した。C12A7は、直径がサブナノメートルサイズの正に帯電したケージが3次元的に繋がった結晶構造をしており、これまでの基礎的研究によって、その最表面はゲージが破れた構造をしていることがわかっている。今回の研究の鍵となったのは、この破れたケージに白金原子を入れ込むことであった。そこで、[PtCl4]2-というアニオンの大きさが、破れたケージの入り口の大きさよりも少し小さいことに注目し、まずこのアニオンをケージの入口に入れ込んで、その後熱還元によってPt原子にして、単原子触媒を調製する方法を考えた。
 単原子白金触媒の確認
 調製した触媒について、高分解能電子顕微鏡(STEM)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって、目指した通りに白金原子がC12A7表面に担持されていることが確認された。ケージのサイズより大きなPt錯体分子アニオンを用いた場合には、このような単原子構造は確認できなかった。また、通常の単原子触媒では金属の凝集が生じてしまう600 ℃という高温で加熱処理を行っても、単原子構造が保持されていることがわかった。
 触媒性能
 触媒反応としては、工業的に重要な様々な置換基を有するニトロベンゼン分子のNO2基の選択的還元を検討した。この水素化反応では、水素分子の開裂が律速段階となるが、C12A7骨格の酸素イオンによって配位された白金原子の環境は、水素が2つの水素原子になるよりも、H+とH-にヘテロリティックに解離するのに有利であると考えられる。実験では予想通り、分極したNO2基が H+とH-によって選択的に水素化され、目的分子が高収率で得られた。また、触媒の活性サイトの性能を示す指標であるTOF(Turnover Frequency)は、C12A7の構成成分であるCaOやAl2O3の上に担持した場合よりも桁違いに高い活性を示し、さらにこの触媒が熱的にも格段に安定なことがわかった。
 今後の展開
 C12A7は、市販のアルミナセメントの主な構成成分の一つで、安価でしかも環境調和性に優れている。これまでの走査トンネル顕微鏡観察による表面構造に関する研究で、ケージの破れを修復する処理方法も確立されている。また、表面再構成を伴う電子状態の変化についても研究が既に終了している。よって今後は、用途に応じた単原子触媒の設計が可能になる段階に進んでいけると期待している。本研究は、ありふれた元素からなる安価な物質と高価な貴金属の効率的利用を可能にしたものであり、「元素戦略」に対応した成果だといえる。
 ◆用語説明
 〇広域X線吸収微細構造(EXAFS)
 原子によるX線の吸収端から50 eV~1,000 eV程度までの範囲に観測される振動のこと。吸収端を与える原子から飛び出した電子(光電子)があちこちに衝突した結果、電子の波が重なりあって生じる。これを解析することで、どんな元素が、どのくらいの距離に、どのくらい存在するかなどの情報を得ることができる。
 〇HAADF-STEM像
 細く絞った電子線を試料に走査させながら当て、透過した電子のうち、大きな角度で散乱したものを環状の検出器で検出した像。原子番号に比例したコントラストが得られる。この試料ではカルシウム、酸素、アルミニウムに比べ、白金の像が強調されて観測される。
 〇TOF(Turnover Frequency、触媒回転数)
 1つの触媒サイトにおいて、単位時間あたりに生成物に変換できる分子数の最大値を表す。活性サイト当たりの触媒の活性の大きさの指標。
 ◆白金(Pt)の埋蔵量はわずか8万t
 Ptは希少金属であり,世界全体の推定埋蔵量は約8万t程度と見られる。価格も3000円/gと高価な貴金属である。
 自動車向けの現状の白金使用量のままでは、1000万台の燃料電池車を作るとなると、世界中の白金を使っても足りない、という試算されている。

 天気は晴れ。少し風が強く寒い。
 コンクリート塀際の小さな花壇。”ミチタネツケバナ”が小さな白い花を付けている。茎に沿って鋭角に細長い棒状の実(長角果)、小葉は小さく楕円形から円形。
 タネツケバナ(種漬花)の名の由来は、種籾(たねもみ)を水に浸ける頃に花が咲くからとの説と、実が熟すと種を四方に飛ばして発芽させて繁殖力が強から(種付花)の説がある・・前者説が有力かな。田圃などの湿った所で多く見られるのは”タネツケバナ(種漬花)”、道(路傍)などのやや乾燥した所で育つのは”ミチタネツケバナ(道種漬花)”。見た花は、雄蕊が4本で、茎にほとんど毛がないので、”ミチタネツケバナ(道種漬花)”・・と思う。
 ミチタネツケバナ(道種漬花、路種漬花)
 アブラナ科タネツケバナ属
 越年草または一年草
 ヨーロッパ原産の帰化植物
 渡来したのは新しく、1970年代と言われる
 タネツケバナ(種漬花)は江戸時代に渡来したと思われる
 開花時期は2月~3月
 花は小さく白色、アブラナ科特有の四弁花(十字花)
 果実は直立して花を挟んでいる


次世代のFPGAチップにトランジスタを用いず12倍の高密度化実装に成功

2020-03-15 | 科学・技術
 大阪大学大学院情報科学研究科の橋本昌宜教授らの研究グループは、新ナノデバイスであるビアスイッチをFPGA(Field Programmable Gate Array)のプログラム機能実現に利用することで、FPGAチップの12倍の高密度化実装に世界で初めて成功した。また、AIアプリケーションに適したFPGAアーキテクチャを開発し、5倍のエネルギー効率向上が期待できること、半導体微細プロセスの採用により継続的な性能向上が期待できることを明らかにした。
 これまでのFPGAは、プログラム機能の実現にトランジスタを多数利用しており、チップの低密度化、低性能化を招いていた。今回、橋本教授らの研究グループは、トランジスタを用いずに配線層内に配置したビアスイッチを用いてプログラム機能を実現するビアスイッチFPGAチップの開発に成功し、12倍の実装密度向上を達成した。最小線幅65nmのシリコンCMOSプロセスを用いた試作FPGAチップに所望のプログラムができることを確認した。最先端AIアルゴリズムを短期間で高性能に実装できるプラットフォームとしての利用が期待される。
 本技術の詳細は、2月19日(米国太平洋時間)に米国サンフランシスコで開催される半導体技術に関する最大の会議である「国際固体素子回路会議ISSCC 2020(IEEE International Solid-State Circuits Conference 2020)」で発表。
 ポイント
 〇新ナノデバイスをFPGAのプログラム機能実現に利用することで12倍の実装密度向上に成功
 〇FPGAは、ユーザーが論理機能を自由にプログラムできる半導体チップである。機能実現までに必要な設計期間が短く、日進月歩で開発が進むAIアプリケーションの実現プラットフォームとして注目
 〇従来のFPGAでプログラム機能実現に必要だったシリコン面積を不要に
 〇最先端AIアルゴリズムの短期間・高性能実装プラットフォームとして期待
 研究内容
 これまでFPGAは、短期間で機能実現でき、少量多品種の製品に適するという特徴により利用拡大が進んできた。しかし、チップ内のプログラミング機能の実現に多数のトランジスタを利用するため、チップの実装密度が低く、動作速度や消費電力などの性能が低いという課題があった。
 橋本教授らの研究グループでは、ビアスイッチと呼ぶ新しい不揮発スイッチデバイスの開発を進めてきた。今回、ビアスイッチを用いたFPGAの試作に世界で初めて成功し、従来のトランジスタでプログラム機能を実現するFPGAに対して、12倍の実装密度向上を実証した。実装密度はFPGAチップの価格に直結するため、大幅なコスト低減が期待できる。また、プログラム機能の実現にトランジスタを利用しなくなったため、全てのトランジスタをコンピューティングに利用できるようになり、高いコンピューティング性能の実現も可能となる。最小線幅65nmのシリコンCMOSプロセスを用いて製造したFPGAチップをプログラミングし、期待通りの機能が実現できていることを確認した。ビアスイッチが次世代のFPGAに適したデバイスであることを明らかにした。
 さらに、AIアプリケーションが効率的に実現できるFPGAアーキテクチャを開発し、その性能予測を行った。トランジスタを用いてプログラミング機能を実現したFPGAに対して、5倍のエネルギー効率向上が可能であることもわかった。最小線幅7nmのシリコンCMOSプロセスで製造した場合、さらに11倍のエネルギー効率向上が期待できる。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究成果により、AIアプリケーションを実現するプラットフォームとして期待が集まるFPGAデバイスの性能並びにエネルギー効率を向上させることができる。さらに高密度化により、FPGAデバイスの低価格化も期待できる。
 ◆用語解説
 〇ビアスイッチ
 配線層内に実現された不揮発スイッチ(原子スイッチ)とプログラム用の選択デバイス(バリスタ)からなるデバイス。プログラムを制御するためのアクセストランジスタが不要のため、配線層内に小面積で実装できる特徴を持つ。
 〇実装密度
 チップの単位面積あたりにプログラムできる量。ユーザーが論理機能を自由にプログラムできる半導体チップ。機能実現までに必要な設計期間が短く、日進月歩で開発が進むAIアプリケーションの実現プラットフォームとして注目が集まっており、各社が提供するクラウドサービスでも活用が進んでいる。
 〇原子スイッチ
 スイッチ機能と不揮発メモリ機能を合わせ持ったスイッチデバイス。金属原子が固体電解質内を移動してスイッチするため、低抵抗で低入力容量という特徴を持つ。
 〇バリスタ
 格子構造上に配置されたビアスイッチアレイに対して、選択したビアスイッチのみをプログラムするために導入された素子。低電圧印加時に抵抗が高く、高電圧印加時に抵抗が低くなる。
 ◆FPGA
 FPGA(英: field-programmable gate array)は、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であり、広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種である。現場でプログラム可能なゲートアレイであることから、このように呼ばれている。
 特定の処理を実行する論理回路を実装したICチップにはASIC(Application Specific IC)もあるが、これは製造時に固定的に回路を形成するもので、消費者向け電子機器など大量生産する場合には一個あたりの製造コストはASICの方が低くなるが、例えば企業内の特定の業務のために数十台、数百台のコンピュータに組み込むといった用途ではFPGAのほうが低コストとなる。また、FPGAは回路データを作成すれば即座にチップに実装して実行してみることができるが、ASICは通常の半導体製造工程で生産されるため設計が完了してから製品が完成するまで最短で数週間かかるという違いもある。電子製品の開発・試作段階ではFPGAを用い、本生産時には同じ回路設計でASICを製造するといった使い分けが行われることもある。

 天気は晴れ、雲が少ない。気温は最高気温11℃、桜はまだ咲かない。
 畑に作った花壇、菊を昨年植え替えた。その中に、1輪”クロッカス-ハナサフラン”が咲いている。どこから紛れ込んだのか?。
 ”クロッカス(Crocus)”の名は、ギリシャ語の”croke:クロケ、糸の意味”からで、雌しべが糸状に長く伸びることに由来する。雌しべは薬用やスパイスとして用いられるが、このクロッカスは、春咲きで観賞用だけに栽培されるものである。因みに、雌しべを用いるのは、クロッカスの一種の”サフラン”で、晩秋に咲くので、秋咲きクロッカスの別名がある。
 クロッカス
 別名:花サフラン、春サフラン
 アヤメ科クロッカス属
 耐寒性秋植え球根(春咲き球根)
 原産地はヨーロッパのアルペン地域
 開花期は2月~4月
 花色は白・黄・紫・藤、網目状に模様が入る絞り咲きもある


糖尿病治療の新候補物質を確定

2020-03-14 | 健康・病気
 京都大学の松田文彦教授と島津製作所、フランス、レバノンなどの共同研究チームは糖尿病患者は通常の人と比べ、血液中の有機化合物「4ークレゾール」が少ないことを突き止めた。ネズミの実験で、「4―クレゾール」が膵臓(すいぞう)のベータ細胞の増加を促し、インスリン分泌量を増やしたり血糖値を下げて安定させたりする作用があった。糖尿病の予防や治療に役立つ可能性がある。(2月26日、新聞記事より)
 研究チームは心筋梗塞などを起こしたレバノンの137人を糖尿病患者とそれ以外の通常の人に分けて血液を調べた。糖尿病患者は4―クレゾールの血中濃度が低かった。この物質をマウスの皮下に投与し高脂肪食を与えたり、糖尿病のモデルラットに皮下投与したりする実験をした。 脂肪細胞の状態改善や脂肪肝を抑えるといった作用も確認できた。人は4―クレゾールを体内で直接作れないため、大半は複数の腸内細菌の働きでできたとみており、詳しく調べる。
 ◆日本の糖尿病医療費は世界第5位
 世界で糖尿病人口がもっとも多い国の順位は(1)中国(1億1,400万人)、(2)インド(7,300万人)、(3)米国(3,000万人)となり、上位3ヵ国だけで2億人を超えている。
 日本は2015年の調査では世界ランキングの9位だったが、2017年の調査では上位10位から外れた。日本は65歳以上の糖尿病人口が多く、ランキングでは2017年は世界第6位の430万人となっている。
 糖尿病関連の医療費は約83兆円(7,270億ドル)で、2015年から8%増加し、世界の主な国で全医療費の12%を占めている。糖尿病の医療費の負担は世界的に増大しているが、糖尿病を予防するために費やされる予算は不足している。
 糖尿病の医療費が多い国の順位は、(1)米国(39.5兆円)、(2)中国(12.5兆円)、(3)ドイツ(4.8兆円)、(4)インド(3.5兆円)、(5)日本(3.2兆円)となっている。

 今日の天気は、晴れ~曇り。気温は、最高気温7℃・最低気温2℃。最高気温が昨日より10℃は下がった・・寒い。
 散歩道の横の空き地で、”タンポポ”が咲いている。見慣れた”タンポポ(西洋タンポポ)”と少し花の様子が違っている。チョット失礼して花の下の総苞(そうほう)を見ると、総苞外片は外側に反り返らず立っている。・・なので、在来種の”カントウタンポポ”でしょう・・総苞外片が外側に反り返っているのは外来種の”セイヨウタンポポ”。外来種(西洋タンポポ)は季節を選ばずに咲き、在来種は春に咲く、目にするのはセイヨウタンポポが多くなる。春に在来種を確認できた・・うれしい。
 名(タンポポ)の由来は、種子の冠毛が丸く集まる様子がたんぽ(綿を丸めて布ど包んだもの)に似ていることから”たんぽ穂→タンポポ”となったとの事。蒲公英は漢名から。
 タンポポ(蒲公英)
 別名:鼓草(つづみぐさ)
 学名:Taraxacum platycarpum(関東タンポポ)
   :Taraxacum officinale (西洋タンポポ)
 キク科タンポポ属
 多年草
 開花時期は3月~5月(関東タンポポ)
 花色は黄色で白花もある


電子スピンの自在な操作が可能な積層材料を開発、超高記録密度・省エネ磁気メモリの実現に

2020-03-13 | 科学・技術
 量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門の李松田主任研究員、境誠司プロジェクトリーダーらは、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の雨宮健太教授、物質・材料研究機構の桜庭裕弥グループリーダーらとの共同研究により、電子スピンを使った情報処理に重要な、電子スピンの向きを揃える性能とスピンの向きを保つ性能のそれぞれに最も優れるホイスラー合金とグラフェンからなる積層材料の開発に成功した。この新しい材料により電子スピンの自在な操作が可能になることで、超高記録密度で省エネな磁気メモリの実現など、日常生活の情報化を支える情報技術の発展に新たな道が拓かれることが期待できる。本成果は、Advanced Materials誌のオンライン版に2019年12月3日(火)12:00(現地時間)に掲載。
 ポイント
 〇電子スピンを自在に操ることができる積層材料の実現により、超高記録密度な磁気メモリの実現など情報技術の発展に新たな道筋
 〇世界で初めて電子スピンの制御と保持の性能に最も優れたホイスラー合金とグラフェンからなる積層材料の開発に成功し、電子スピンの自在な操作が可能に
 研究の背景
 近年、情報機器の高性能化やインターネットの発達など情報化社会の発展に伴い、電子のスピンを利用することで多くの情報を少ない電力で保存できる磁気メモリのさらなる高記録密度化が求められている。磁気メモリは、電子スピンの向きが揃った電流(スピン偏極電流)を生み出す磁性体の層(磁性層)とスピン偏極した電流を伝える非磁性体の層(スペーサー層)を積み重ねた積層材料からなる磁気抵抗素子で出来ている。磁気抵抗素子は、積層材料を流れるスピン偏極電流の大/小が(電気抵抗)がスペーサー層の上下にある電極層の磁気の向き(磁石の方向)に応じて変化する磁気抵抗効果という現象を利用してデジタル情報の0/1を記録する。
 現在のハードディスクやMRAMなどの磁気メモリにはトンネル磁気抵抗素子という種類の磁気抵抗素子が使われている。トンネル磁気抵抗素子には、磁性層として強磁性金属、スペーサー層として絶縁性の酸化物からなる積層材料が用いられている。この素子は、スピン偏極電流に含まれる電子のスピン偏極率の大きさを反映して磁気抵抗比が高いことが特徴であるが、スペーサー層に絶縁体を用いているため電気抵抗が高く、電気抵抗を下げようとして酸化物の厚さを薄くすると、酸化物の質が低下して磁気抵抗比が下がってしまう問題を抱えている。そのため、現在の磁気抵抗素子では、電子のスピン偏極率を反映する磁気抵抗比の高さとスピン偏極電流が流れる際の電気抵抗の大きさを、次世代の磁気メモリに必要とされる領域に合わせることができていない。このように、磁気メモリをさらに高記録密度化するためには、高スピン偏極率の電流を低抵抗で流すことができる、即ち、電流に含まれる電子のスピンを効率良く操作できる積層材料を開発する必要があった。
 成果の詳細
 研究チームは、電子スピンの効率的な操作が可能で、高スピン偏極率の電流を低い電気抵抗で流すことができる積層材料を実現するための新しいアプローチとして、磁性体の中で最もスピン偏極率が高いホイスラー合金と非磁性体の中でスピンの伝達能力に最も優れるグラフェンを積層することを考えた。
 グラフェンと磁性金属の積層材料は、これまでニッケルやコバルトなど一般的で構造が単純な磁性金属を用いて作製されてきたが、ホイスラー合金のように多種類の元素を含み複雑な構造を持つ金属材料とグラフェンの積層化は世界に例がなかった。そこで研究チームは、はじめにグラフェンとホイスラー合金薄膜を積層化する作製技術の開発に取り組んだ。試料の酸化を防ぐために超高真空を保ちながら、マグネトロンスパッタリング法と化学気相成長法という手法を用いてホイスラー合金とグラフェンを順次成長する技術を開発し、試料の作製条件を最適化した結果、ホイスラー合金の一種であるCFGG合金薄膜(組成:Co2FeGe0.5Ga0.5)の表面に厚さが一原子層のグラフェンが完全に覆うように成長した積層材料を作製することに成功した。これにより、世界で初めてグラフェン/ホイスラー合金積層材料を実現した。
 さらに、研究チームは、深さ分解X線磁気円二色性分光という放射光を用いた分析技術を使って、グラフェン/CFGG合金積層材料に含まれるグラフェンとCFGG合金の状態を調べた。その結果、グラフェン/CFGG合金積層材料では、グラフェンとCFGG合金が接する界面と呼ばれる領域でも、CFGG合金が本来持っている磁気的な性質や高いスピン偏極率が失われていないことが分かった。また、グラフェンについても、ディラックコーンと呼ばれる特徴的な電子状態が保たれていることが分かった。これらの結果から、グラフェン/CFGG合金積層材料では、それぞれの材料が本来持っている電子スピンの向きを完全に近く揃える性質とスピンの向きを保ったまま低抵抗で伝えることができる性質が積層した状態でも保たれており、磁気抵抗素子への応用に理想的といえる、スピン偏極電流の効率的操作に最適な状態が実現されていることが明らかになった。
 今後の展望
 今回、電子のスピン偏極率が最も高いホイスラー合金と電子のスピンを伝える性質に最も優れるグラフェンを積層する技術を開発し、スピン偏極電流の効率的操作に最適な積層材料を実現できたことで、磁気メモリの高記録密度化などスピントロニクスによる情報技術の発展に新しい道筋が開かれた。
 現在、研究チームでは、グラフェン/CFGG合金積層材料を用いた磁気抵抗素子の開発を進めている。また、今後も原子スケールの材料の積層化や複合構造による電子・磁気的性質の制御や機能化に注目して研究を行い、スピントロニクス材料・デバイスの高度化による情報技術の発展に貢献する。
 ◆用語解説
 〇電子スピン、スピン偏極率
 電子の自転により生じる磁石の性質をスピンという。スピンには上向きと下向きという2つの状態がある。材料の中で電子スピンの向きの分布が上向きに偏ることをスピン偏極という。また、スピン偏極の度合いはスピン偏極率(P)として表され、上向きスピンを持つ電子の数(Dup)と下向きスピンを持つ電子の数(Ddown)によってP=(Dup-Ddown)/(Dup+Ddown)と定義される。 電子スピン
 電子のスピンには上向きと下向きの二つの状態がある。スピントロニクスでは、例えば、スピンの上向きを0、下向きを1のデジタル情報として演算や記憶を行う。
 〇ホイスラー合金
 ハーフメタルと呼ばれる磁石(磁性体)の一種である。ハーフメタルとは、例えば、上向きスピンが金属的な状態を持つ一方で下向きスピンはバンドギャップと呼ばれる半導体的な状態を持つために、電流として材料の中を流れることができるフェルミ準位付近の電子(伝導電子)のスピンの向きが一方向に完全に揃っている材料を指す。ホイスラー合金は、そのようなハーフメタルの一種であるが、室温より遙かに高い温度まで磁石の性質を保つことができることなど実用に適した特性を持つことから、スピントロニクスデバイスの材料として注目されている。
 〇グラフェン
 炭素原子が蜂の巣状に結合してできた厚さが1原子のシート状の物質である。シリコン等と比較して数桁以上も高速に電子を運ぶことができ、スピン軌道相互作用と呼ばれる電子のスピンの向きに乱れが生じる原因になる作用が全物質の中で最も弱いこと等の特徴を持つことから、スピントロニクスへの応用が期待されている材料である。また、厚さが1原子の状態でも安定に存在できることや軽量かつ高強度であること、化学処理等によりその性質を幅広く制御できることなどの特徴から、スピントロニクスデバイスに限らず、バイオセンサーや電池、飛行機の部材など様々な応用が期待されており、多くの分野で実用化を目指した研究開発が進められている。
 〇磁気メモリ
 微小な磁石(スピンの集合体)を使ってデジタル情報を記録するメモリの総称。磁気メモリは磁性体のスピンの向きにより情報を記録しているので、電源がなくても情報が失われない。磁気メモリの種類には、円盤上に塗布した磁性体の磁気の向き(上向き/下向き)を磁気抵抗素子で検出することによりデジタル情報(0/1)を読み出すハードディスクドライブと、磁気抵抗素子そのものに含まれる磁性体の磁気の向きに応じた素子の電気抵抗の変化(高抵抗/低抵抗)をデジタル情報(0/1)として読み出す磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)がある。
 〇スピントロニクス
 電子のスピンの向き(上向き/下向き)をデジタル情報の0と1のように扱い、これを制御したり識別したりすることで情報の処理を行う技術である。電子の電荷に加えてスピンを情報処理に用いることで、今日の情報技術が直面する電力消費の肥大化などの問題を克服することができる技術として注目されている。
 〇磁気抵抗素子、磁気抵抗比
 磁性体からなる磁性層と非磁性体からなるスペーサー層を磁性層/スペーサー層/磁性層の順に積み重ねた積層材料からなる素子を磁気抵抗素子と呼ぶ。磁気抵抗素子では、上下の磁性層の磁気の相対的な向き(平行/反平行)に応じて素子の電気抵抗が変化(大/小)する磁気抵抗効果と呼ばれる現象を利用してデジタル情報(0/1)を記録する。
 現在、磁気メモリに使われている磁気抵抗素子は、トンネル磁気抵抗素子と呼ばれるもの。このトンネル磁気抵抗素子では、絶縁体の酸化物がスペーサー層に使われており、電流は、上下の磁性層の間をスペーサー層を介したトンネル効果により流れる。磁気抵抗素子の性能の指標として、磁性層の磁化の向きにより電気抵抗が変化する割合を百分率で表したものを磁気抵抗比と呼ぶ。
 〇マグネトロンスパッタリング法
 アルゴンなどの不活性ガスを数百ボルトの電圧をかけながら真空中に導入することで放電を発生させ、それによって生じた電子を磁場により囲い込むことでターゲットの近くに密度が濃いプラズマを生成し、そこから生じたイオンをターゲットに衝突させる事で、ターゲットの表面からたたき出された原子等を基板上に堆積させて薄膜を成長させる方法である。
 〇化学気相蒸着法
 目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、試料表面における原料ガスとの化学反応を利用して薄膜を成長させる方法である。
  〇深さ分解X線磁気円二色性分光
 X線磁気円二色性分光とは、磁性体の試料に円偏光X線を照射するとX線の吸収量が試料の磁化(磁石)の方向に応じて変化する現象(磁気円二色性)を計測することで、試料の磁気的な性質を調べる分光手法である。X線のエネルギーを特定の元素の吸収端付近に合わせて測定することで、試料に含まれる個々の元素の磁気モーメント(磁気の強さ)を調べることができる。
 深さ分解X線磁気円二色性分光は、上記に深さ分解の機能を持たせた手法で、X線の吸収に伴い試料の表面から放出される電子を放出角度により分別して測定することで、放出角度に応じた検出深さの変化を利用して、試料表面からの深さに応じた磁気モーメントの変化を調べることができる。
 〇ディラックコーン
 グラフェンは、炭素原子がシート状に並んだ形態に起因して電子の状態に特徴的な円錐型の構造が現れる。そのような構造をディラックコーンと呼ぶ。ディラックコーンの電子は、グラフェンの中を高速に流れることができる。
 グラフェンの中の電子は、ディラックコーンと呼ばれる円錐型の運動量(速度)の分布を持つ。

 晴れ。気温は高く、最高気温17℃、でもあまり温かさを感じない・・風が強いからかな。
 駅に向かう道沿い畑で、”ネコヤナギ”の蕾が大きくなり、半分位は開花している。花穂が銀白色で柔らかく、猫の尻尾の様に見える。葉はない・・花(尾状花序)の後に出る。
 ヤナギ(柳)は、ヤナギ科ヤナギ属 の樹木の総称である。世界に約350種あるとされ、日本でも30種以上はあると言う。日本では、柳と言えば”シダレヤナギ(枝垂柳、落葉高木)”を指すことが多いが、”ネコヤナギ(猫柳、落葉低木)”もある。
 名(ネコヤナギ:猫柳)の由来は、花穂が銀白色で柔らかく、猫の尻尾の様に見える「猫の尾をした柳」からである。別名には、「猫の尾」ではなく「小犬の尾」に例えて”エノコロヤナギ(狗尾柳)”とある。
 因みに、”ネコヤナギ”の花言葉は、率直・自由・思いのまま。
 ネコヤナギ(猫柳)
 別名:川楊(かわやなぎ)、狗尾柳(えのころやなぎ)
 学名:Salix gracilistyla
 ヤナギ科ヤナギ属
 落葉性低木
 雌雄異株
 原産地は日本・中国など
 早春、葉が出る前に大きな花穂を付ける
 開花時期:3月~4月
 花は尾状花序


金属並みの熱伝導性のゴム複合材料を開発

2020-03-12 | 科学・技術
 産業技術総合研究所先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリタフコンポジット材料プロセスチーム伯田幸也ラボチーム長、後藤拓リサーチアシスタント(東京大学大学院新領域創成科学研究科大学院生)と東京大学大学院新領域創成科学研究科寺嶋和夫教授(産総研先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ特定フェロー)らは、カーボンナノファイバー(CNF)とカーボンナノチューブ(CNT)の2種類の繊維状カーボンと、環動高分子のポリロタキサンを複合化させて、ゴムのように柔軟で、金属に匹敵する高い熱伝導性を示すゴム複合材料を開発した。
 従来、高分子への分散が困難であった繊維状カーボンを、水中プラズマ技術で表面改質して分散性を高め、さらに、高分子と複合化する過程で交流電界をかけてCNFを配列させた。その結果、CNFの配列方向では14 W/mKという高い熱伝導性を示し、柔軟性を併せ持つゴム複合材料を実現した。今回開発したゴム複合材料は、フレキシブル電子デバイスの熱層間材や放熱シート、放熱板などへの応用が期待される。この技術の詳細は、2020年2月14日に国際誌Composites Science and Technologyに掲載。
 ポイント
 〇2種類の繊維状カーボンでネットワークを構築し、金属に匹敵する高い熱伝導率を実現
 〇ゴムの原料に環動高分子を用いることで、繊維状カーボンを大量に添加してもゴム弾性を維持
 〇フレキシブル電子デバイス用の熱層間材や放熱シートなどの熱マネジメント材料として利用可能
 開発の社会的背景
 近年、フレキシブル電子デバイス用の熱層間材や放熱シートなど高い放熱性を示す柔軟な熱マネジメント材料が注目を集めている。これらには、高い熱伝導性に加えて、低ヤング率、高引張強度、高靭性などの機械的特性が求められるため、次世代の熱伝導性フレキシブル材料として、柔軟なゴム素材と熱伝導性の高いCNFやCNTとの複合材料が精力的に研究開発されている。しかし、CNTの熱伝導率は2,000 W/mKを超えるにもかかわらず、複合材料の熱伝導率2 W/mKを達成するのに、10 wt%の添加が必要とされる。また、多量のCNFを添加すると複合材料の柔軟性が失われて脆くなる。一般に、繊維状カーボンは凝集性が強く、複合材料中に一様に分散しにくいため、繊維状カーボン同士が互いに接触してつながった熱伝導のネットワークを複合材料全体にわたって形成するのは困難であった。また、大きな繊維状カーボン凝集体とゴム素材との界面が変形時の破壊の起点となり、脆化の要因のひとつとなっている。
 研究の内容
 今回開発したゴム複合材料は、ポリロタキサン中に、フィラーとしてサイズの異なる2種類の繊維状カーボン(CNFとCNT)を分散させた。CNFは太さ200 nm、長さ10 ~ 100 μm、CNTは太さ10~30 nm、長さ0.5 ~ 2 μmであった。ゴム材料への繊維状カーボンの分散性の改善と、複合材料中の熱伝導ネットワークの形成が高い熱伝導性のカギと考えられている。分散性改善のためCNFとCNT(CNF:CNT重量比9:1)を塩化ナトリウム水溶液に分散し、独自に開発した流通式水中プラズマ改質装置を通して表面改質を行った。次に、表面改質したCNF/CNT混合物を溶媒(トルエン)中でポリロタキサン、触媒、架橋剤と混合したのち、交流電界処理用容器に入れ、交流電界をかけながら架橋反応させてゲルを作製した。得られたゲルをオーブンで加熱して溶媒を取り除き、フィルム状の複合材料を得た。
 開発した複合材料内部の電子顕微鏡像、表面改質により、まゆ状の凝集体がほぐれ、加えた電界の方向にCNFが配列していた。さらに、配列した大きなCNFに小さなCNTが巻き付き、CNF間をつなぐように分散していた。この少量のCNTがCNF同士をつなぐことで複合材料全体にわたる熱伝導のネットワークが形成され、高い熱伝導性が実現したと考えられる。
 今後の予定
 今後は、CNFの配向条件や改質条件を最適化して、熱伝導性と柔軟性の向上を図ると同時に、フィラーの3次元構造の観察や解析を通して、複合材料の構造と特性との数理的関係の解明を進める。さらに、企業との共同研究により、部材、デバイスへの展開、実用化を図る。
 ◆用語の説明
 〇カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)
 CNFは直径がナノメートルサイズの繊維状炭素。CNTはシート状の炭素が同軸環状になった物質。機械的特性や熱伝導性・電気伝導性に優れており、プラスチックなどさまざまな材料の機械特性・機能性の強化に利用される。
 〇環動高分子、環状分子
 環動高分子は、環状分子と直鎖高分子(ポリエチレングリコールなど)で構成された高分子で、環状分子が直鎖高分子に沿って「動く」ため「環動」高分子と呼ぶ。環状分子とは、穴の開いたドーナツ状の構造の分子のことで、代表的な環状分子に、シクロデキストリンがある。
 〇ポリロタキサン
 直鎖のポリエチレングリコールと複数個の環状のシクロデキストリンからなるネックレス状の環動高分子の一種。大阪大学原田明教授らにより開発された。東京大学伊藤耕三教授らはこれをベースにゴムのように伸び縮みするゲルを開発した。
 〇複合化
 2種類以上の材料(例えば、金属とゴム)を組み合わせて、材料に単独素材にない機能や性能を持たせること。
 〇水中プラズマ
 水溶液中に設置した電極間に高電圧をかけたり、パルスレーザーを照射したりして水溶液中に発生させたプラズマ。無機フィラーを水中に分散させて水中プラズマにより水中に分散させた無機フィラーの表面に水由来の水酸基を付与できる。
 〇熱層間材
 2つの材料(例えば、発熱デバイスとヒートシンク)の接合部に使用し、材料間の熱伝導性を高める材料。材料間のわずかなギャップや凸凹を埋めて、効率よく熱を伝えるため、高い柔軟性、加工性、熱伝導性が求められる。
 〇ヤング率
 材料の硬さの指標。材料の応力-ひずみ曲線の弾性領域の応力とひずみの比例定数であり、大きいほど材料が硬いことを意味する。
 〇靭性(じんせい)
 材料の粘り強さ、壊れにくさの指標。材料の靭性は破壊試験や応力-ひずみ曲線の面積値から評価することができる。
 〇脆化(ぜいか)
 金属やプラスチックがその粘りや伸びがなくなり、脆く、壊れやすくなること。
 〇超分子
 複数の分子が共有結合以外の相互作用(水素結合、配位結合、ファンデルワース力など)によって結合して形成される集合体。
 〇フィラー
 プラスチック、ゴム、塗料などに機械強度や機能性の向上のために添加される物質。[参照元へ戻る]

 今日の天気は晴れ。雲が多く、風が少し強い。気温は最高気温12℃、少し暖かいかな。
 花が咲きだした”オウバイ”。玄関のアポローチの石垣にかかる”オウバイ”でカーテンの様だ。
 名(オウバイ:黄梅)に梅と付くが、梅(バラ科サクラ属)ではなくジャスミン(モクセイ科ジャスミン属)の仲間である。ジャスミン属ではあるが花に香りはない。
 名の由来は、黄色の花が梅に似る、咲く時期が梅と同じ頃、からと言う。”オウバイ”は落葉樹、花期には葉はまだ出ない。花・姿が良く似ているものに、”ウンナンオウバイ(雲南黄梅)”とか”オウバイモドキ”と呼ばれるのがあるが、これらは常緑樹。
 オウバイ(黄梅)
  中国では、迎春花(げいしゅんか)と呼ばれる
   旧正月(2月)頃に咲き出すから
 学名:Jasminum nudiflorum
 モクセイ科ソケイ(ジャスミン)属
 落葉性半つる性低木
 中国北部原産、15世紀末(1488年、1666年説もある)に渡来
 開花時期は2月~4月、花期には葉はまだ出ない
 花色は明るい黄色、花径は2.5cm位
 花の形は高杯形で、梅に似る
 花には一重と八重がある


朝食の欠食が糖尿病の血管硬化に悪影響を与える

2020-03-11 | 食・レシピ
 順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の三田智也准教授、綿田裕孝教授らの研究グループは、朝食の欠食が2型糖尿病における血管硬化に悪影響を与えることを明らかにした(3月5日発表)。今回、生活習慣が血管の硬化に与える影響を明らかにすることを目的に、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントの既往のない患者さんを対象に様々な生活習慣と血管硬化との関連性を調査した。その結果、朝食の回数が少ないほど血管の硬化が続くことがわかった。これらの結果は、2型糖尿病患者さんにおいて朝食をしっかり摂ることが血管硬化の抑制に繋がることを示唆している。本研究成果は、英国の医学専門誌「BMJ open Diabetes Research& Care」に掲載。
 背景
 糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントの発症を増加させる。従って、糖尿病の治療では、血管の硬化を予防し、硬化がさらに進まないように維持することは重要な課題である。
 これまでの報告では、2型糖尿病患者さんでは高齢であること、血糖のコントロールが悪いこと、糖尿病の罹病期間が長いこと、血圧が高いことなどが血管の硬化を進める危険因子であることが報告されている。しかし、2型糖尿病患者さんにおける生活習慣と血管の硬化の関連性は十分に明らかになっていなかった。そこで、今回、生活習慣が血管の硬化に与える影響を明らかにすることを目的に、心血管イベントの既往のない2型糖尿病患者さんを対象に様々な生活習慣と血管硬化の指標であるbaPWV(brachial-ankle pulse wave velocity)の関連性を調査した。
 内容
 順天堂医院等の外来に通院中の心血管イベントの既往のない2型糖尿病患者さん736名を対象に質問紙などを使用して生活習慣を調査し、研究開始時、2年後、5年後にそれぞれbaPWVを測定することで、生活習慣と動脈硬化との関連性を解析した。生活習慣に関しては、朝型あるいは夜型などの生活パターン、睡眠時間、睡眠の質、うつ状態、食事のカロリー、身体活動量、飲酒量、喫煙の有無、朝食の欠食や夕食の時間などを調査項目とした。
 結果、朝食の欠食回数が多い人は毎日朝食を摂る人に比べ、baPWVの値(血管の硬さの指標)が5年に渡って高く出続けることを発見した。さらに、年齢、性別、血糖コントロールや血圧などオーソドックスな動脈硬化の因子を調整しても、朝食の欠食回数は、baPWVの持続高値に関連していた。さらに、1週間の朝食の回数によりグループに分けて、各群の特徴を比較をしたところ、朝食の回数が4回未満のグループの患者さんでは、夜型の生活パターン、睡眠の質が不良、うつ傾向、アルコールの摂取量が多い、夕食時間が遅い、中食や外食の頻度が多いなど他の悪い生活習慣が集積していた。そのような患者さんでは、5年に渡り、BMIが高い、HDL(善玉コレステロール)が低いそして尿酸値が高く、さらに、baPWVが高値であることが明らかになった。
 このことから、朝食の欠食が多い患者さんでは、他の悪い生活習慣や動脈硬化の危険因子(BMI高値、HDL低値や尿酸高値)が集積することが、血管の硬化に影響した可能性があるが、さらに詳細な解析を進めたところ、これらの因子とは独立して、朝食の欠食が多い患者さんでは血管の硬化が続くことが明らかになった。
 以上より、朝食の欠食そのものが動脈の硬化に悪影響を与えることが明らかになった。
 今後の展開
 今回、朝食の欠食が2型糖尿病患者さんの血管の硬化に悪影響を与えることを明らかにした。血管の硬化が進行し、心血管イベントを起こしてしまうと、患者さんの寿命が短くなる、あるいは生活の質が大きく損なわれることもあり、経済的な負担も増加してしまう。
 心血管イベント発症の予防策として、朝食をしっかり摂ることが重要である。日本の健常人を対象としたコホート調査では、朝食の欠食が脳卒中の増加に関連することが報告されていますが、本研究では、心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者さんにおいて朝食の欠食が血管の硬化をさらに促進させる可能性があることを示した。今後は、血管イベントを引き起こす生活習慣を明らかにしたいと考えている。さらに、その生活習慣を改善させることが、動脈硬化や心血管イベントの抑制に繋がるかを検証する予定である。
 ◆用語解説
 〇心血管イベント
 心血管イベントとは、心筋梗塞や脳梗塞などに代表される心血管系の病気のこと。糖尿病患者さんではこのような心血管イベントによる死亡が多いため、心血管イベントの発症を回避することは糖尿病治療において重大な課題である。
 〇baPWV (brachial-ankle pulse wave velocity) 上腕-足首脈波伝播速度
 心臓からの血液が押し出される際に生じる動脈の脈動が末梢へと伝播する波が脈波であり、血管が硬いほど速く伝わる。この原理を利用して、血管の硬化を簡便に検査できるのが脈波伝播検査である。両上腕、両足首に血圧測定カフ(腕帯)を巻いて、血管を流れる血液の脈動の速さ測定する。

 今日の天気は、晴れ、雲が多い。最高気温16℃と温かいが風がとても強いので、体感気温では寒い。
 今日(3月11日)は、東日本大震災から9年となった。この日は小雪が舞う寒い1日だった。沢山の方が亡くなり、沢山の家・施設が壊れた。この災害に対し、沢山の方々から応援・支援を頂いた。ありがとう、感謝しています。
 ◆東日本大震災
 地震発生:2011年(平成23年)3月11日14時46分18秒
 震源:宮城県牡鹿半島の東南東沖130km、仙台市東方沖70kmの海底
 地震規模:モーメントマグニチュード (Mw) 9.0
 最大震度:震度7(宮城県栗原市で観測)
      震度6強を観測したのは宮城・福島・茨城・栃木の4県36市町村
 津波の発生:場所により波高10m以上、最大遡上高40.1m
 死者+行方不明(2014年3月10日時点)
      :18,517人(岩手県4,673+1,142、宮城県9,537+1,280、・・・)
 建築物の全壊・半壊:40万0,151戸
 東京電力福島第一原子力発電所の原子力事故
      :地震から約1時間後に遡上高14~15mの津波に襲われ
       原子炉の冷却不能となり、3機で炉心溶融(メルトダウン)が発生
       水素爆発により原子炉建屋が壊れ大量の放射性物質が漏洩した

 今日の散歩は、なるべく風が当たらない道を行く。
 見つけたのは、近くの畑、様々な雑草が生い茂り、”ヒメオドリコソウ”、花が咲きだしている。花は”ホトケノザ:仏の座”と良く似ている。両者ともシソ科オドリコソウ属で、同じ仲間だ。葉の形や色などが少し異なっている。
 ”ヒメオドリコソウ”は、五重塔の様に重なった紫がかった葉・葉面の細脈に沿ったしわ・毛が生えた葉や茎が四角形などが特徴である。先端の葉の脇に、小さな唇形をした淡い紅紫色の花を沢山つける。
 名(ヒメオドリコソウ:姫踊子草)の由来は、オドリコソウ(踊子草、シソ科オドリコソウ属、花の形が笠をかぶって踊る人の姿に似る)を小さくした様な花からと言う。花言葉は「愛嬌」。
 ヒメオドリコソウ(姫踊子草)
 シソ科オドリコソウ属
 二年草
 ヨーロッパ原産、明治時代中期に帰化を確認
 開花時期は2月~5月
 上部の葉は赤紫色を帯び密集、その葉腋に淡紅色の唇形花がつく
 花の長さは1cmくらい


加齢に伴う聴力低下、たんぱく質が劣化

2020-03-09 | 健康・病気
 順天堂大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学の神谷和作准教授、田島勝利大学院生らの研究チームは、老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした(2月28日)。研究チームが内耳の「ギャップ結合」という分子の複合体に注目して解析したところ、この分子が老化に伴って崩壊・減少し、老人性難聴の進行に関与する可能性が示された。このメカニズムの解明により、当研究チームが現在開発中の内耳ギャップ結合を標的とした薬剤や遺伝子治療が老人性難聴にも適用できる可能性がある。本研究はネイチャー系列誌「Experimental & Molecular Medicine」に掲載。
 本研究成果のポイント
 〇老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした
 〇老化に伴って内耳の「ギャップ結合」という構造体が疎水化・断片化し、タンパク質量が低下していた
 〇ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通しており、同じ治療法が適用できる可能性
 背景
 老人性難聴(加齢性難聴)は老化に伴う進行的な聴力障害で、場合によっては40代で補聴器がを必要になる例も少なくない。最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因に中年期以降の聴力低下(老人性難聴)が含まれるとのデータが報告され、老人性難聴への早期予防が認知症予防の最重要項目の一つであると考えられている。
 今回着目した内耳ギャップ結合は内耳のイオン環境を整える重要な分子構造であり、遺伝性難聴では、検出される遺伝性難聴の半数程度はギャップ結合遺伝子(GJB2遺伝子など)の異常によるコネキシン26遺伝子変異型難聴であることがわかってきた。
 研究チームでは2014年に内耳ギャップ結合構造の崩壊による遺伝性難聴の発症メカニズムを解明、2015年にモデル動物の遺伝子治療実験によりギャップ結合の修復と聴力回復に成功、2016年にはiPS細胞から内耳ギャップ結合を作る基盤技術を開発し、内耳ギャップ結合を標的とした創薬や遺伝子治療の技術開発を進めています。その中で老人性難聴にもこれらの新しい治療法が役立つ可能性があると考え、メカニズムの解析を進めた。
 内容
 研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考えた。まず、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定し、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察した。従来の報告では、老人性難聴は内耳の有毛細胞と呼ばれる感覚細胞の脱落が主な原因という説があったが、病態初期には有毛細胞はまだ正常に存在していた。しかし、内耳の重要な分子構造であるギャップ結合の複合体とその構成成分であるコネキシン26とコネキシン30を解析したところ、若年期に比べてギャップ結合複合体の構造が著しく崩壊しており、構成成分であるコネキシン26とコネキシン30タンパク質の量も大きく減少していた。そこで、ギャップ結合複合体の構造を詳細に解析したところ、老化初期の内耳(32週齢)ではこの構造は分断され、2マイクロメートル程度と若年期(5マイクロメートル程度)に比べて大きく減少していた。さらにタンパク質量を測定すると老化初期の内耳では若年期の約40%に減少していた。次に、ギャップ結合タンパク質の生化学的な特性を調べたところ、老化の影響でギャップ結合は脂質に取り囲まれたり共存するようになるという性質の変化があることが分かった。
 以上の結果から、この現象が安定したギャップ結合複合体を維持することを妨げて分解されやすくなり、タンパク質量が低下することでギャップ結合の劣化・老化につながっていることが考えられた。さらに、ギャップ結合機能の低下は、内耳が活動するためのリンパ液の電位の低下や、内耳の感覚細胞である有毛細胞の活動低下を伴うため、老化による聴力の低下に大きな影響を与えることが考えられる。
 今後の展開
 研究チームは内耳のギャップ結合を修復するための医薬品や遺伝子治療ベクターの開発を進めている。現在、老人性難聴の根本的治療法や治療薬はないが、将来的には、研究チームが開発中のギャップ結合タンパク質を安定化する薬剤やコネキシンを補充する遺伝子治療の開発によって老人性難聴の予防や聴力の回復が期待できる。
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 因みに、国立国際医療研究センターなどの調査でわかった、「喫煙は耳の聞こえにも悪い影響をもたらすらしい。」
 追跡より、年齢や高血圧、糖尿病の有無などを踏まえて分析すると、たばこの本数が多いほど聴力低下の傾向がある。
  〇1日21本以上吸う人は吸わない人に比べて高音域で1.7倍、低音域で1.4倍だった。
  〇調査時に5年以上禁煙していた人は、聴力低下のリスクは吸わない人とほとんどかわらなかった。
  〇中年期の聴力の低下は、認知症にかかるリスクを高めることも指摘されている。
 ◆用語説明
 〇老人性難聴
  加齢性難聴(老人性難聴)は、加齢によって起こる難聴で、「年齢以外に特別な原因がないもの」である。加齢性難聴は誰でも起こる可能性がある。
 一般的に50歳頃から始まり、場合によっては40代で補聴器が必要になる例も少なくない。65歳を超えると急に増加するといわれる。その頻度は、60歳代前半では5~10人に1人、60歳代後半では3人に1人、75歳以上になると7割以上との報告がある。
 最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因は中年期以降の聴力低下(老人性難聴)であるとのデータが医学誌Lancetで報告され、認知症予防の観点からも老人性難聴への早期予防が最重要項目の一つであると考えられている。
 〇ギャップ結合
 コネキシンは6個の集合体により細胞膜に分子の通り道を作り、隣の細胞の集合体と連結して細胞と細胞をつなぐトンネルを作る。このギャップ結合は分子量約1000以下の低分子やイオンを濃度勾配によって透過させ、細胞間の物質輸送を可能とする。
 〇コネキシン26・GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)
 コネキシン26は遺伝子GJB2(GAP JUNCTION PROTEIN, BETA-2)により合成され、内耳のギャップ結合を構成する主要タンパク質の一つ。最も高頻度に検出される遺伝性難聴の原因因子。 GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)は、我が国では遺伝性難聴の50%以上もの割合を占めるとされており、常染色体劣性と常染色体優性の遺伝形式を持つ感音性難聴。

 晴れ~曇り。気温が昨日より高くなった。昨日の最高気温は10℃以下で、今日は14℃で最低気温は8℃・・春の気温だよ。
 畑に行った。梅に花が咲き出している。花色は白~桃色だ。ひと月前に榴岡天満宮の梅の開花を見たが、畑での開花を見ると感激。
 ”ウメ”が満開となると、次の開花は桜(吉野桜)だね。”ウメ””サクラ”、どちらも花見は良いね・・桜が咲くころに病が収まってくれ・。
 奈良時代に「花」と言えば梅(の花)。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となる。
 ウメ(梅)
  梅の果実も梅と言う
 学名:Prunus mume
 バラ科サクラ属、落葉高木
 原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
 開花時期は1月~4月
 種類により開花期が異なる
 梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類される