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従来の1/10の時間で大腸菌数を測定する手法を開発

2020-02-16 | 科学・技術
 北海道大学大学院工学研究院の佐藤久教授、セルスペクト株式会社の平野麗子研究員らの研究グループは、一度に多数のサンプル中の大腸菌数を早くて安価な上、簡単に測定できる技術の開発に成功した。本研究成果は、2020年1月25日(土)「Science of The Total Environment」誌に掲載。
 ポイント
 〇大腸菌が分解できる蛍光色素の蛍光強度を高感度で測り、大腸菌数を測定する技術を開発。
 〇測定時間はわずか2時間、測定コストは約2円の上、一度に96サンプルも測定可能。
 〇浄水場や食品加工場、開発途上国の井戸といった実際の現場での利用に期待。
 背景
 大腸菌は本来、その名のとおり大腸の中に存在する細菌であり、自然界や食品には存在しない。そのような大腸菌が河川や地下水・飲料水や食品に存在することは、それらが大腸の中にあるもの、すなわち糞便で汚染されていることを示している。ほとんどの大腸菌はヒトにとって無害であるが、糞便中には多種多様な病原菌が存在する可能性が極めて高く、糞便で汚染されたものを口にすることは好ましくないため、水や食品中の大腸菌数の測定が法律で定められている。また、大腸菌数の調査結果が出るまで安全性を保証できず水や食品を出荷できないため、製品が汚染されているかどうかをできるだけ早く調査する必要がある。
 研究手法・研究成果
 現在、大腸菌数は寒天培地や液体培地を用いて測定しているが、従来の方法では結果を得るまでに24時間程度かかる。研究グループは、大腸菌が持つ酵素を蛍光色素により高感度に検出することで、測定時間をわずか2時間に短縮することに成功した。また、蛍光強度は大腸菌数と比例するため大腸菌数も測定できるほか、一度に96サンプルも測定できるため1サンプルあたりの測定コストは約2円と非常に安価であることも特徴である。
 今後への期待
 本研究では下水しか測っていないが、研究グループは大腸菌数が 1 MPN/L程度という低濃度のサンプルの測定や河川水や牛乳中の大腸菌数の測定にも成功している。実験室での検証は終わっているため、今後は浄水場や食品加工場・開発途上国の井戸などの実際の現場で使用していく考えである。
 ◇新手法開発
 この手法は大腸菌が持つ酵素に着目した点にある。この酵素は基質のみを分解する働きを持っているため、酵素に分解される前は蛍光を発せず、分解後にのみ蛍光を発する基質を用いることで、大腸菌の存在を知ることに成功した。
 新手法では、下水のような汚れたサンプルでも事前の処理なく測定できた。新手法では10~10,000 MPN/mLの範囲であれば希釈しなくても測定できる。
 本研究で用いた高感度の装置により、大腸菌が 増殖する前の培養開始直後の微弱な蛍光も30分以内に検出できた。そのため、わずか2時間で大腸菌の数を測定できた。また、分解能は高く80 MPN 6/mLと96 MPN/mLの差も十分判別できた。
 ◆用語解説
 〇培地
 微生物の培養に用いられるエサを含んだ液体や固体のこと。
 〇コロニー
 24時間程度微生物を培養すると目に見えるようになる微生物の塊のこと。
 〇基質
 ある酵素が分解できる特定の物質のこと。蛍光基質はこれに蛍光色素が付いたもの。
 〇マイクロプレート
 縦8cm×横13cm×高さ1.5cm程度の板状のプラスチック容器。0.2mLの液体が入る小さなくぼみが96個ある。
 〇マイクロプレートリーダー
 マイクロプレートの一つ一つのくぼみの中の蛍光強度を測る装置。
 〇MPN
 微生物の数の単位。正確には匹ではないが 1MPNは 1匹 1cfu と考えて差し支えない。

超微量硫黄同位体比分析を考古学に応用する

2020-02-15 | 科学・技術
 理化学研究所仁科加速器科学研究センター雪氷宇宙科学研究開発室の高橋和也専任研究員、望月優子室長、近畿大学理工学部の南武志教授(研究当時)らの共同研究グループは、独自に開発した試料採取法と高感度な硫黄同位体比分析法を組み合わせ、島根県出雲市の京田遺跡(約3,500年前の縄文時代後期中葉に営まれた大規模な集落跡)から出土した超微量の赤色顔料(朱:組成は硫化水銀)の産地同定に成功した(2019年11月26日発表)。
 本手法は、世界中の壁画や遺物表面に存在する朱の解析に広く適用可能であり、今後、文化財科学の分野で一般化するものと期待できる。
 背景
 鮮やかな赤色を呈する朱は、古代社会において壁画や土器などの装飾に広く使用された。なかでも古代日本では、辰砂(しんしゃ)鉱石から得られる朱を用いていた。辰砂鉱石の産地である鉱山は日本および中国に多数存在し、日本のいくつかの鉱山は縄文時代から朱の採取に利用されてきたと推定されている。朱の産地を知ることで、古代における朱の流通状況が明らかになり、当時の日本社会の貴重な情報を得ることができる。
 朱の産地を特定するには、朱の構成成分である硫黄(S)の同位体比を調べる方法が用いられる。硫黄の同位体のうち、中性子数が16、17、18、20のものが自然界に存在し、自然界に多いのは32Sと34Sであるため、硫黄同位体比は34S/32Sを測定し、それを標準物質であるキャニオン・ディアブロ隕石中の硫化鉱物の割合と比較する方法で得る。標準物質との偏差の千分率(パーミル:‰)として表し、δ34Sと表記する。
 δ34S (‰) ={(34S/32S)試料/(34S/32S)標準物質-1}×1000
 δ34Sは辰砂鉱石の産地で差がみられる。また、辰砂は化学的には非常に安定であるため、δ34Sは古代から変化なく現在に至っていると考えられ、試料のδ34Sを分析し、各地の鉱山の辰砂のδ34Sと比較すれば、産地を推定できる。
 考古学に応用するに、硫黄同位体分析の高感度化と対象物を傷つけない試料採取法、両方の開発に取り組んだ。
 研究手法と成果
 硫黄同位体比(δ34S)分析では、まず試料から取り出した硫黄化合物を酸化的条件で燃焼させ、硫黄酸化物として取り出し、純銅を詰めた還元管に通すことで、二酸化硫黄ガスとする。この二酸化硫黄ガスをガスクロマトグラフィーに通して窒素や二酸化炭素を分離した後、安定同位体比分析用質量分析計に導入すれば、試料のδ34Sの値を得ることができる。
 従来の硫黄同位体比分析では、朱として50~100マイクログラム(μg、1μgは100万分の1グラム)程度の量を必要としていた。この量は硫黄としては200ナノモル(nmol、1nmolは10億分の1モル)程度に相当する。これに対し、高橋専任研究員らは2018年に、試料から取り出した二酸化硫黄ガスを高感度化する装置を開発し、従来の1/100程度の量の0.5μg(硫黄として2nmol)の朱のδ34Sを分析できる技術を開発しました。これは、試料から発生した二酸化硫黄ガスをいったん液体窒素温度(-198℃)に冷却・凝縮させることで、実質的に濃縮する効果を利用している。この結果、まさに「目に見える程度の一粒」の朱でも、δ34S分析が可能な感度を得ることに成功した。
 今後の期待
 近年、考古学分野における科学技術を利用した解析の果たす役割は非常に大きくなっている。分析技術の発展と共に、次々と新たな知見が得られるようになってきた。本研究で用いた、高感度硫黄同位体分析とユニークな試料採取法を組み合わせた分析手法は、現時点では理研独自のものです。
 今後、この高感度硫黄同位体分析手法が同位体分析法として一般化することで、さまざまな時代の遺物、壁画などの文化財に使用された朱の産地同定に役立てられ、考古学分野へ貴重な知見をもたらすものと期待できる。また、理研では硫黄に限らず、窒素、鉛などのさまざまな元素の同位体分析の高度化に努めており、宇宙、原子核などの分野への応用を目指す研究を進めている。
 ◆補足説明
 〇同位体
 同じ元素であって、質量数(陽子数+中性子数)が異なる原子のこと。例えば、酸素(原子番号8)の場合、質量数が16、17、18の三つの同位体が天然に安定に存在している。
 硫黄(原子番号16)は原子核に陽子が16個存在する。硫黄の同位体のうち、中性子数が16、17、18、20のものが自然界に存在し、その存在比は32S:33S:34S:35S = 95.02:0.75:4.21:0.02である。自然界に多いのは32Sと34Sであるため、硫黄同位体比は34S/32Sを測定し、それを標準物質であるキャニオン・ディアブロ隕石中の硫化鉱物の割合と比較する方法で得られる。式により、標準物質との偏差の千分率(パーミル:‰)として表し、δ34Sと表記する。
 〇辰砂(しんしゃ)
 英語名、cinnabar。化学組成がHgS(硫化水銀)で表される鉱物。鮮やかな赤い色をしており、日本では古来より、「丹(に)」と呼ばれていた。
 〇キャニオン・ディアブロ隕石
 地球上のクレーターとして有名なアメリカ・アリゾナ州のバリンジャークレーターが形成される原因となった隕石と考えられている。この隕石に含まれるトロイライトと呼ばれる鉱物(化学組成:硫化鉄)の硫黄の同位体比が硫黄同位体比分析における基準の値となっている。
 〇千分率
 1000分の1を1とする単位。パーミルと読み、記号は‰で表す。1‰=0.001=0.1%である。
 〇ガスクロマトグラフィー
 主として気体の成分をその化学的、物理的性質を利用して、分離しながら分析する手法。気体の成分分析に用いる。本研究では、二酸化硫黄を他の成分(窒素や二酸化炭素など)から分離するための技術として用いられた。
 〇安定同位体比分析用質量分析計
 質量分析装置は、分子の大きさ、構造の分析や元素組成の分析など、さまざまな用途に用いられるが、特に炭素、窒素、酸素、硫黄などの元素の同位体比を分析する質量分析装置を安定同位体比分析用質量分析装置と呼んでいる。

 今日の天気は晴れ~曇り。風が弱く、気温が高いので、寒くはない。最高気温は15℃、と初春の気温か?。
 榴岡天満宮の梅が咲いている、との報があった。早速、花見に出かける。
 榴岡天満宮の祭神は菅原道真(すがわらのみちざね)。菅原道真公と梅には深い繋がりがあり、神紋(しんもん、神社の紋)は梅。
 奈良時代に「花」と言えば梅(の花)と言うほどに古来から親しまれた花である。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となった。
 ウメ(梅)・・(梅の果実も梅と言う)
 学名:Prunus mume
 バラ科サクラ属、落葉高木
 原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
 開花時期は1月~4月
 種類により開花期が異なる
 梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類され、梅の実を採るのは主に豊後系
 ◇榴岡天満宮
 榴岡天満宮は、天延2年(974)に平将春が陸奥国宇多郡(福島県)に勧諸したのが始まり。その後、宮城県柴田郡川内村に遷座、天文20年(1551)に国分小俵玉手崎(現在の仙台市青葉区東照宮)に移し、寛文6年(1666)に三代藩主・伊達綱宗により榴ヶ岡に遷座。寛文7年(1667)7月に丹塗りの社殿・唐門を新たに造営し、菅原道真公の真筆が奉納された。


硫化水素や一酸化窒素をジワジワと放出する固体材料を開発

2020-02-11 | 科学・技術
 物質・材料研究機構 (NIMS)は、大気に触れると、硫化水素や一酸化窒素などのガスをジワジワと放出する固体材料を開発した。これらのガスは、低濃度では抗炎症や血管拡張など有用な生理活性があるが、濃度制御や保存が難しく、医療応用は限定的であった。安全・簡便にガスを放出できる本材料によって、ガスの医療応用が促進すると期待される。本研究は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の石原伸輔主任研究員と井伊伸夫NIMS特別研究員によって行われた。本研究成果は、Nature Communications誌にて英国時間2020年1月23日10時 にオンライン掲載された。
 概要
 1.NIMSは、大気に触れると、硫化水素や一酸化窒素などのガスをジワジワと放出する固体材料を開発した。これらのガスは、低濃度では抗炎症や血管拡張など有用な生理活性があるが、濃度制御や保存が難しく、医療応用は限定的であった。安全・簡便にガスを放出できる本材料によって、ガスの医療応用が促進すると期待される。
 2.硫化水素や一酸化窒素は高濃度では有毒であるが、低濃度では抗酸化・抗炎症・血管拡張・インスリン分泌調節など有用な生理活性があり、体内でも微量に生成されて生体機能の制御に用いられている。近年、これらのガスを用いた医療が注目されていて、例えば、低濃度の一酸化窒素の吸入により肺血管が拡張し、いくつかの重篤呼吸障害 (新生児遷延性肺高血圧症や急性呼吸窮迫症候群) が改善できる。また、硫化水素を含む温泉が皮膚や循環器に効能があることは古くから知られていて、健康長寿医療への応用も期待される。しかし、これらガスの利用には高圧ボンベを含む大掛かりな設備が必要となる。取り扱い難さや安全上の懸念によって制限されてきたガスの医療応用を実現するため、ガスの保存や濃度制御を安全かつ簡易に行える固体材料が求められていた。
 3.研究チームは、層状複水酸化物と呼ばれる無機化合物を用いて、大気に触れるだけで硫化水素や一酸化窒素などのガスを所望の濃度レベルで徐々に放出する固体材料を開発した。本材料のベースとなったのは、マグネシウム (Mg) とアルミニウム (Al) を含む水酸化物の二次元ナノシートが層状に積み重なった構造を持つ物質である。この物質の層間に挟まれた炭酸イオンが、大気中の二酸化炭素と活発に交換するという、当研究チームが以前に発見した現象を応用し、層間にガス源となるイオンを入れて、大気中の二酸化炭素や水蒸気の刺激によって、硫化水素や一酸化窒素を発生させた。この時、ナノシートのMgとAlの割合を調整して、層間を狭めたりすることで、所望の濃度レベルで安定して放出させることに成功した。さらに、無電源で作動する携帯型一酸化窒素吸入器の試作にも成功している。本材料は、安価で無毒なMgやAlを原料としていて安全性に優れ、ガスを通さない袋で密閉することで保存でき、大気に接するだけで簡単に使える使い捨てカイロのように、大気と接して規定量のガス発生が可能である。
 4.今後、本材料を組み込んだ医薬品や医療機器を開発し、例えば在宅・外出先・途上国での一酸化窒素吸入法の実現など、これまでにない健康・救急医療の実現を目指す。また、本手法を拡張することで、他の機能性ガスを放出する新規材料の合成も期待される。
 ◆薬としての硫化水素・一酸化窒素
 〇硫化水素
 硫化水素(H2S)は我々の体の中で産生されている生理活性物質である。
 硫化水素イオンは体内の多くの器官系に影響を及ぼし、高濃度曝露の場合は吸入してすぐに意識を失い、呼吸不全および呼吸停止の結果、死に至る。
 硫化水素イオンには有害作用だけでなく、健康に良い働きもあることが近年明らかになる。
 私達の体の中には、酵素群によって硫化水素を生体内で産生するシステムが存在し、それが体に良い作用を示すことが分かってきた。硫化水素の善玉的側面については神経伝達の調節、血管平滑筋の弛緩、抗炎症作用、細胞保護作用など、特に2000年代以降、非常に数多くの報告がなされている。
 〇一酸化窒素
 一酸化窒素(nitric oxide, NO)は生体内で合成され、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用など血栓症や止血と関わりの深い生理作用を持つ。
 NOは血管拡張作用があり、その不足は血管の内皮機能の低下や高血圧に関係する。また血管平滑筋増殖抑制作用は動脈硬化症の抑制、そして血小板凝集抑制作用は血栓症の制御に関連する。NOは平滑筋のCa2+感受性を抑制し、冠血管の攣縮を予防する。NOのドナーとなる物質やNO合成に関わるNOSの発現を制御する物質は高血圧症、動脈硬化症、血栓症、肺高血圧症などの疾患の治療薬として期待されている。狭心症治療薬のニトログリセリンや硝酸イソソルビドは細胞内でNOを発生することで血管平滑筋を弛緩する。

 今日は建国記念の日(2月11日)である。
 2月11日はかつての紀元節(きげんせつ)である。紀元節は日本書紀が伝える神武天皇の即位日(辛酉年春正月、庚辰朔)で旧暦の1月1日である。明治政府は当初(明治5年11月15日)に新暦に直して1月29日を即位日(紀元節)とした。しかし、1月29日は孝明天皇(こうめいてんのう:明治天皇の父)の命日である1月30日と近いため不都合が生じる事となった。このため、翌年の明治6年10月14日に神武天皇即位日を定め直して2月11日を紀元節とした。
 因みに、神武天皇即位の年を元年と定めた紀元(神武天皇即位紀元)が皇紀である。皇紀元年は西暦紀元前660年とされ、西暦2000年は皇紀2660年となる。
 朝起きたら一面雪。暫く積雪を見ていなかったから、季節に相応しい雪は歓迎だ。昼過ぎには、日陰を除いて溶けた。
 因みに、雪の異称には様々ある・・勉強になります。
 六花 / 六辺香 / 六出(りっか、ろっか)
  六角形の雪の結晶の形から。「むつのはな」ともいう。六弁の花の意。
 天花(てんか)
  雪の形容。「天華」とも書き、「てんげ、てんけ」で、天上界に咲く花を指す仏教用語。
 風花(かざはな、かざばな)
  晴天時に風に乗って舞う雪の形容。
 青女(せいじょ)
  古代中国における、霜や雪を降らすとされている女神のこと。そこから転じて、雪の形容。
 白魔(はくま)
  主に、災害に相当する大雪を悪魔に見立てるときなどに用いられる言葉。

感度が従来より約10倍高く、シート状の柔軟な磁気センサーを開発

2020-02-10 | 科学・技術
 大阪大学産業科学研究所の近藤雅哉(大阪大学大学院工学研究科博士後期課程)、植村隆文特任准教授(常勤)、関谷毅教授及びドイツ ライプニッツ固体・材料研究所の、Daniil Karnaushenko(ダニール カルナウシェンコ)博士、Michael Melzer(ミカエル メルツァー)博士、Oliver G. Schmidt(オリバー シュミット)教授らの共同研究チームは、世界最薄膜・最軽量の磁気センサマトリクスシートシステムを開発することに成功した。本研究成果は2020年1月23日に米国科学誌「Science Advances」(オンライン)に掲載。
 研究成果のポイント
 〇磁気の2次元分布が可視化可能な世界最薄膜・最軽量の磁気センサマトリクスシートシステムを開発
 〇薄くて柔らかい有機トランジスタ回路と巨大磁気抵抗素子を、同一シート上に集積することで、世界初のシート型磁気センサシステムを実現
 〇信号増幅回路とセンサ自動スキャン機構を有する、世界一高機能な柔軟磁気センサ回路
 〇大面積構造物の劣化検知システム、生体磁気検出による高精度な医療、次世代の柔らかい生体模倣ロボットの制御システムなどへの将来的な応用に期待
 開発した磁気センサーは、厚さ1.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのプラスチックフィルムの上に、有機材料による半導体素子や磁気によって抵抗が変わる素子などを集積した。マス目状に配置した素子によって、対象物の表面上の磁気の分布をリアルタイムで計測できる。微弱な磁気の信号を増幅し高感度で検出できる点が特色で、従来の磁気センサーより性能が向上した。
 これまでの一般的な磁気センサーは、ガラスのような硬い基板の上にシリコンでできた半導体素子を載せたものが多い。曲面や柔らかい物体に取り付けるには適していなかった。新センサーは曲げられるうえ、肌にも貼り付けられ生体の計測も可能だ。さらに感度を高めれば心臓の磁気分布も測れるようになり、心電計測より精度の高い診断ができるとみている。
 様々な機能的な素子を集積でき、製造時の温度もセ氏100度程度の低温で済むため、量産にも適している。
 本研究成果が社会に与える影響
 スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスだけでなく、最先端の柔軟センサデバイス研究でも心電などのように電気的な信号を計測するものばかりで磁気を対象にしたセンサはほとんどありません。しかしながら、磁気は物質を透過する性質があるため、本研究のように磁気分布を高感度で検出できるようなシート型センサがあれば、電気的信号を用いた従来センサよりも高精度なセンシングがどんな形状の対象物でも可能になることが期待できる。例えば、鉄筋構造物に貼り付けて使用すれば、鉄筋の劣化により発生した磁気の歪みをマッピングすることで劣化箇所の正確な特定まで可能になることが期待できる。また、よりセンサの高感度化が進めば、心臓の磁気マッピングが可能となり従来の心電計測よりも高精度な診断が期待できる。昔に建造した構造物の劣化や健康問題は現代日本が抱える課題であり、この研究はその課題を解決する一助となると考えられる。
 ◆用語説明
 〇有機トランジスタ
 有機物から構成される半導体(有機半導体)を用いた薄膜トランジスタのこと。シリコンなどの無機半導体とは異なり、有機半導体自体が柔らかいことに加えて、その多くが100度程度の低温で製造できるため、食品ラップのように薄くて柔軟性の高いフィルム上に、曲げや歪みに強いトランジスタを実現することができる。このトランジスタを複数個組み合わせることで、信号増幅やセンサを駆動するための信号を作りだす機能を有した電子回路が出来上がる。
 〇巨大磁気抵抗素子
 1nm(1mmの100万分の一)程度の厚みの強磁性薄膜と非強磁性薄膜を重ねた多層膜抵抗素子の中で、磁場の影響により数10%以上の抵抗値変化を起こす素子のこと。磁場に対する抵抗値変化が大きいことから磁気を検出するセンサとして用いられる。センサの用途としては、ハードディスクの読み取りや物体の位置検知に良く使用される。
 〇センサマトリクス
 多数のセンサをマス目状に配置した回路のこと。配置したセンサを同時、もしくは部分的に駆動させていくことで2次元平面上の物理量の分布を知ることができる。

 今日の天気は晴れ。朝起きて玄関を出たら吐く息が白くなった、寒暖計を見たら1℃だ・・最高気温は4℃・最低気温-3℃。
 所要があり、市内に出かけた。
 駅構内に、花が咲いた”ケイオウザクラ”が飾られている。この”サクラ”は、昭和5年、久留米市山本の良永敬太郎が中国系のミザクラを台木にしてヒガンザクラを接いだところ、穂木として使ったヒガンザクラからその枝変わりとしてできたもの、との説明があった。山形県は、啓翁桜(けいおうざくら)の生産量全国第1位、との説明もある。
 ○日本の桜
 日本の桜には、自生種9種、園芸種約300種があると言われる。
 なかでも、染井吉野(園芸種)が最も多く、全国の約8割で植えられている。
 染井吉野は、北海道の南部から本州まで広く植えられている。しかし、北海道と沖縄では育たないので、見られない。
 〇染井吉野
 大島桜と江戸彼岸の雑種説が定説である。
 江戸の末期に、染井村(現在の東京都豊島区巣鴨・駒込あたり)の植木職人が、吉野桜として出されたと伝えられる。
 その後、吉野山(奈良県)の桜と区分して、染井吉野と命名された(明治33年、藤野寄命)。
 全国に普及したのは、生長が早い・花が密集・満開が壮麗である言われる。
 〇開花宣言
 さくらの開花宣言は、北海道はエゾヤマ桜、本州は染井吉野、沖縄は寒緋桜を対象としている。
 各地の開花日は、各地(都道府県)の標準木が、数輪(3輪ほど)開花した日としている。
 〇標準木
 東京は靖国神社の桜。大阪は大阪城の桜。


磁気テープが復権、保存期間50年以上・ハードディスクドライブより低コスト

2020-02-06 | 科学・技術
 ビッグデータの活用が広がるなか、磁気テープが復権している。長期保存に向いてコストが安い点が評価され、2020年の世界市場は13年比で2倍以上の9千億円規模になる見通し。世界シェア首位の富士フイルムは、2020年春から製造業や小売業向けの販売を本格的に始め販路を広げる。
 磁気テープはデータを読み取るまでの時間はかかるが、保存期間が50年以上と長い。データ保存で一般的に使われるハードディスクドライブ(HDD)は常に通電する必要がある。磁気テープに置き換えると消費電力を抑え、データ保存にかかるコストは1~2割程度で済むという。使用頻度が低いが長期保管が求められる「コールドデータ」に適している。
 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、読み取り装置を含めた世界市場は2013年の4千億円弱から2020年には約9千億円に達する見込みだ。磁気テープを生産するのは世界で富士フイルムとソニーにほぼ限られ、富士フイルムは約7割の世界シェアを握る。富士フイルムはOEM(相手先ブランドによる生産)供給もしており、記録容量ベースの出荷量は過去5年で倍増したという。
 因みに、2019年9月2日、富士フイルムは磁気テープ規格「LTO Ultrium(ウルトリウム)」の第8世代「LTO-8」に対応した新製品「FUJIFILM LTO Ultrium8 データカートリッジ」を発売した。最大容量は12テラバイト(TB)で、圧縮時容量は30TB。データ転送速度は360メガバイト(MB)/秒で、圧縮時は750MB/秒である。

 今日の天気は、曇り~晴れ。朝は小雪が舞う、昼前から晴れた。気温は低く、最高気温0℃・最低気温-4℃。
 2月に入ってもチラチラと小雪が舞うが、積もらない。郊外の散歩で見つけた、除雪車。・・当分出番がないのかな。
 初雪は平年並み、初積雪は平年より1月遅れ・
 ◆仙台 2020寒候年(2019年8月~2020年7月)仙台管区気象台 2020.02.06現在
 現象名  本年  平年(注1)   昨年   最早   最晩    統計開始年
        (平年差)   (昨年差)  (年)  (年)   (寒候年)
 雪 初日 11月21日 11月24日  12月 8日  11月8日   12月19日)  1927年
          (3日早い) (17日早い)(1995年) (1927年)
   終日  -   4月7日   4月11日   3月8日   5月3日    1927年
                      (2002) (1991年)
 初積雪  1月8日  12月8日   12月8日   11月10日  1月11日
         (31日遅い) (31日遅い)(2002年) (2016年)  1927年
 (注1)平年値:1981年から2010年までの平均値


金ナノ粒子自己集合を利用し、商品管理と偽造防止を行うナノタグを開発

2020-02-04 | 科学・技術
 京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻福岡隆夫研究員は、適切に制御された金ナノ粒子のサブミクロンサイズの自己集合体が、表面増強ラマン散乱(SERS)という特徴的な光シグナルを発する現象を利用し、ナノタグ「ステルスナノビーコン」を開発した。このナノタグは液体のインクのように医薬品錠剤等に印刷でき、ナノグラム量のナノタグにレーザーを0.2 秒照射するだけで商品管理に必要な情報を得ることができる。この技術は、2020年1月29 日から東京国際展示場で開催される「nano tech 2020 第19 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」のNEDO 公式ブースに「金ナノ粒子自己集合でサプライチェーンの情報管理と偽造防止」と題して展示。
 背景
 偽造品や模倣品が大きな社会問題になっている。偽造品の流通量は世界貿易の10%を占め、ブラックマーケットとして年成長15%の巨大産業と言われている。
 近年では、物理的化学的識別子(Physical Chemical Identifier)やマイクロタガントと呼ばれる人工物微粒子を用いた偽造防止対策が注目されている。しかし、従来の”眼で見て”識別する手法は、判定の「鍵」の存在が明らかであり、やがて「鍵」の原理が解析されて模倣されてしまう問題があった。また、セキュリティの高さと迅速な判定を低コストで満たすことは困難であった。
 研究手法・成果
 金ナノ粒子を適切に集合・集積させると、単独粒子のときよりも光と強く結びついた機能を発現する。その現象のひとつが表面増強ラマン散乱(SERS)である。福岡研究員は、京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻 鈴木基史 教授、同志社大学理工学部 森康維 教授、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 山口明啓 准教授らと、斜め蒸着・拡散律速凝集・移流集積・誘電泳動を用いたSERS 活性な金ナノ粒子自己集合体の多様な作製法と、超高感度でSERS を感知するセンシング技術を長年研究してきた。そしてこの度、微小なナノ構造体に吸着した極微量の分子から、特徴的なラマン散乱スペクトルを迅速に検知できることに着目し、この新しい原理に基づいて偽造防止ナノタグ「ステルスナノビーコン」を開発した。
 約10ナノグラムのナノタグを市販の医薬品錠剤の表面に点着したところ、0.2秒のレーザー照射で強いSERS シグナルを検出できた。このシグナルは安定しており、5年経過してもナノタグのありなしを区別できるという実用性の高さを確認した。
 新しいナノタグは、レーザー光とナノ構造体、そしてラマン散乱を発する分子の化学と物理を組み合わせて、多元的な暗号鍵としている。そのため、ナノタグを電子顕微鏡で構造解析しても、発生するSERSシグナルを複製するのは極めて困難であり、高いセキュリティが期待される。さらに、必要なナノタグの量はナノグラム程度なので、金を原料にしても安価に製造できる利点がある。このように「ステルスナノビーコン」は、高いセキュリティと迅速な判定を低コストで実現できる革新的な技術といえる。
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 ナノ粒子は微量で済む。約5000種類の化学物質が使えるため、偽造は困難という。ナノ粒子を含むインクを薬の表面に印刷し、室温で5年以上保管した後も波長を検出できる。家畜や食品などの識別にも使いたい。
 金ナノ粒子を集合化し表面増強ラマン散乱を発現+ラマン活性分子を包含
 超極微量を医薬品や食品に点着
  ↓
 レーザーを0.1~1.0 秒照射する
  ↓
 このナノタグがあれば強くて特徴的なSERSスペクトルが出現
  ↓
 光の波長・ナノ構造の形状・分子の種類・物性が”暗号鍵”となって、出現するSERS スペクトルを変えられる
  ↓
 判別・検出
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 波及効果、今後の予定
 本研究では、ナノタグを紫外線硬化樹脂へ封入し、検出することにも成功し、産業部品への適合可能性を示すことができた。また、異なる化学分子を含むマルチカラーのナノタグインクを合成し、その微細な印刷パターンからそれぞれの化学分子に対応した異なるSERS シグナルを検知することにも成功した。
 SERS スペクトルには化学分子に特有のピークが現れるので、そのピーク位置のありなしをデジタル化することによって、マルチカラーのナノタグを数値情報として扱うことができる。これにより、商品ごとにナノタグの数値情報を紐付け、IC タグより安価でバーコードより高いセキュリティを有する商品管理が実現する。
 本研究では、Proof of Concept(PoC)と呼ばれる技術の実用性を検証することができたので、次の段階として、実際のサプライチェーンでナノタグを試験する社会実装実験を2020 年より実施する。近い未来に本技術が社会のインフラストラクチャーとなることが期待できる。
 ◆用語解説
 〇サブミクロンサイズ
 大きさが、1 ミリメートルの1000 分の1 であるミクロン以下であること。
 〇自己集合
 ボトムアップで微細構造を作製する一手法。自発的に機能性ナノ構造が合成できる利点がある。
 物理的には動的斜め蒸着、ナノ粒子集積では拡散律速凝集、移流集積、誘電泳動などがある。
 〇表面増強ラマン散乱・SERS
 貴金属ナノ構造体の近傍にあるラマン散乱活性分子のラマン散乱強度が著しく増強される現象。通常は弱いラマン散乱を蛍光なみの強度に増感するので、バイオセンサー、環境分析、法医学分析の手法として期待されている。
 〇ラマン散乱
 分子から散乱された光の波長が分子が有する官能基の振動エネルギーに対応して波長シフトする現象。シフトは分子の官能基に特有なので分子の色とも呼ばれるが、検出感度が低いので、表面増強ラマン散乱が注目されている。

 天気は晴れ。朝起きて寒暖計を見たら4℃だった。玄関での温度だから、外はもっと冷たい・・やっと平年並みの気温かな。 散歩道沿いの庭で、”ビワ”に花が咲いている。開花時期は冬(11月~1月)で、半年後には熟した果実が見られる。
 ”ビワ”の原産は中国で、日本へは9世紀には渡来していたと考えられている(日本自生説もある)。現在日本で栽培されている品種は、江戸時代末期(天保~弘化)に中国からの大果品の種子から育成されたもの。「唐枇杷」と呼ばれる品種から改良されて、現在の二大品種(茂木と田中)が生まれたと言う。
 名(ビワ:枇杷)の由来は、葉の形が楽器の琵琶(びわ)に似ているから。古くからの民間薬(大薬王樹と呼ばれる)で、”ビワ”の葉は関節痛に効き(産毛のある葉裏を擦って貼る)、葉を煎じて「せき止め・利尿など」に効く、と言う。
 ビワ(枇杷、比波)
    果実もビワと呼ぶ
 英名:loquat
 学名:Eriobotrya japonica
 バラ科ビワ属、常緑高木
 原産地は中国
 開花時期は11月~1月
 花は白い五弁花、葯には毛が密に生えている
 花は両全花なので自家受粉が可能
 果実の成熟は5月~6月、黄橙色の実となる


廃棄グリセロールからDHA・水素の生産に成功、酸化銅を触媒に採用

2020-01-28 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の林智広准教授らは台湾国立科学技術大学のジア-イン チャン准教授(Prof. Chia-Ying Chang)のグループとの国際共同研究により、バイオディーゼル燃料の生産過程で廃棄物となるグリセロールから、付加価値の高いジヒドロキシアセトン(dihydroxyacetone、DHA)と水素を選択的に生成する技術の開発に成功した。安価な触媒である酸化銅(CuO)を用いた電気化学的反応により達成した。研究成果は、オランダの科学誌「Applied Catalysis Environmental」オンライン速報版に2019年12月19日(現地時間)に掲載。
 研究の背景
 バイオディーゼル燃料(BDF)はカーボンニュートラルな軽油代替燃料として注目されているが、その製造時には副産物として原料の10%程度のグリセロール(グリセリン)が生成される。このグリセロールには有効な応用用途がなく、付加価値が高い物質への転換方法が求められていた。この物質転換の研究には金、白金などの貴金属が触媒に用いられていたが、地球上により豊富に存在する安価な触媒が求められていた。
 研究成果
 本研究の成果はCuOという地球上に豊富に存在し、かつ安価な材料を触媒として、バイオディーゼル製造の際の廃棄物であるグリセリンから、化粧品、甘味料などに使用されるDHAおよび水素を選択的に製造する技術を確立したことである。特にCuO触媒表面における化学反応を、ラマン分光を用いてその場観察することで、反応メカニズムの解明、反応選択性を最大化するための反応条件の最適化の2つを達成した。
 今後の展開
 本研究グループは、東工大のラマン分光技術と台湾科技大の触媒反応技術を組み合わせることにより、触媒表面における化学反応メカニズムを解明し、最適な反応条件を見つけ出した。この研究によって、廃棄物の資源としての再利用に加え、水素の産生という2つの異なる成果が生まれ、持続可能な社会の構築へ向けた大きな貢献が期待される。
 共同研究において、さらなる新触媒の開発、反応効率の向上という2つの観点から実用化に向けた研究が進んでいる。触媒の種類、溶液条件(特にpH値)などの違いによる反応経路の違いなどのデータが蓄積してきたことから、今後は機械学習などの情報科学的手法との融合により、最小限の実験で最適な物質変換条件を導出する技術の開発を行っている。
 ◆用語説明
 〇グリセロール
 廃食用油からバイオディーゼル燃料を製造する際に発生する副生成物であり、再利用のための研究が多く行われている。グリセリンとも呼ばれる。
 〇ジヒドロキシアセトン(dihydroxyacetone、DHA)
 最も小さな単糖の1つ。無害な肌の着色料、脂肪燃焼・筋肉増強のためのサプリメントの原料としても利用されることが多い。
 〇ラマン分光
 光を用いて分子振動を観察することにより、分子種・その量を 解析する手法。空気中・液中の試料も測定可能であることから、化学反応のその場観察に用いられることも多い。
 〇その場観察
 様々な環境での材料の変化や物質の状態をリアルタイムで評価すること。

 暫くお休みします。旅行に行ってきます。

 今日の天気は曇り、朝は小雨。気温は、最高気温6℃・最低気温3℃、今日1日は大きな気温変化はない。
 曇り空だから明るい草花なども曇った景色となる・・散歩の楽しみが少なく・・。
 ”ムクゲ”の実が付いた枯れ木(?)が見える。夏に一重・八重の花が咲いていた。
 ”ムクゲ(木槿)”は韓国の国花ではない・・らしい(韓国語では”無窮花:ムグンファ”とか、国花の定めはない)。韓国の最高勲章は大統領に贈られる「無窮花大勲章」。朝鮮半島を古に”槿域:きんいき”と呼んだことがあったとか。因みに、「朝鮮」の語源は「朝に鮮やかに」咲くムクゲ(槿)の花である・・との説がある。
 ”ムクゲ”の花言葉に「いつも新しい美」があり、花が毎日咲変わる”一日花”からの由来らしい。人世の短い栄華を「槿花一朝(きんかいっちょう)の夢」と例えられる。
 ムクゲ(木槿・無窮花)
 別名:ハチス、キハチス
 英名:Rose of Sharon
 アオイ科フヨウ属(ハイビスカス属)
 落葉低木
 原産地はインド・中国、日本には奈良・平安時代に渡来
 開花時期は6月~10月
 一日花と言われるが数日は咲いてる
 花径は10~15cm、花色は白・紅・紫など
 沢山の種類がある。
  咲き方(一重咲き・半八重咲き・八重咲き)、花弁の形や枚数、花の色(白・青紫・濃紅・濃紫など)。
  園芸品種に、日の丸(白地に底赤で、一重の大輪)などがある。


電気炉ダストから亜鉛と鉄を同時に回収する手法を実証

2020-01-19 | 科学・技術
 科学技術振興機構(JST)は、開発課題「電気炉製鋼ダストからの高純度亜鉛と製鉄原料コプロダクションシステム」の開発結果を成功と認定した(令和元年12月26日)。この開発課題は、東北大学大学院工学研究科長坂徹也研究科長/教授らの研究成果をもとに、平成26年3月から平成31年3月にかけて株式会社豊栄商会(愛知県豊田市)に委託して、同社開発研究室が実用化開発を進めていたものである。
 ポイント
 〇電気炉で鉄スクラップを再溶解する時に発生する電気炉ダストは、処理費の負担と処理後残渣の取り扱いが電気炉メーカー共通の悩みとなっていた。
 〇石灰添加法により有害元素を除去し、真空加熱で金属亜鉛を還元回収、残留物を製鉄原料として再利用できる手法を開発し、ベンチスケールプラントで実証した。
 〇亜鉛と鉄を高効率に両方リサイクルでき、処理の一元化とともに、還元剤として炭材を使わないため二酸化炭素(CO2)排出量の低減効果も期待される。
 背景
 鉄鋼、自動車などの幅広い産業で発生する鉄スクラップをリサイクルするには、電気炉で再溶解して鉄鋼を生産する電気炉メーカーの存在が不可欠である。現在稼働している日本国内の電気炉からは、電気炉ダスト(煙灰)と呼ばれる微粒子物質が粗鋼生産1トン当たり16~17キログラム、年間約40万トン発生している。この電気炉ダストは特別管理産業廃棄物に指定されているが、通常、亜鉛が約20パーセント、鉄が約30パーセント含まれており、亜鉛需要の約80パーセントを輸入鉱石に頼る日本にとっては重要なリサイクル資源でもある。しかし、有害元素が含まれていることや、亜鉛および鉄の含有率が低いことから、亜鉛製錬業や鉄鋼メーカーには受け入れられず、多くは特別管理産業廃棄物の中間処理業者に処理費を払ってリサイクルを委託しているのが現状である。
 現状の電気炉ダストの中間処理には、炭素熱還元法であるウェルツ法が主に用いられているが、このプロセスが抱える課題は、以下の3点に集約される。
 ①亜鉛は還元され亜鉛蒸気になった直後に再酸化され酸化亜鉛としてしか回収できないため、金属亜鉛を得るために再度製錬する必要がある。
 ②回収した酸化亜鉛にはハロゲンや鉛も含まれるため、それを分離する必要がある。
 ③亜鉛を揮発させた後の残渣に含まれる鉄は再利用されず、廃棄されることが多い。
 このため、処理費の負担と処理後残渣の取り扱いが先進工業国の電気炉メーカー共通の大きな悩みとなっています。
 開発内容
 豊栄商会は、長坂教授らが開発した石灰添加法を採用した電気炉ダストの処理方法を開発した。まず電気炉ダストに石灰を添加し加熱することで有害元素を揮発除去し、次に還元剤として働く鉄と共に真空加熱することで、亜鉛は金属亜鉛として、鉄は製鉄原料となるカルシウムフェライトとしてそれぞれ回収するものである。電気炉ダストから亜鉛と鉄をそれぞれ有価物として同時にリサイクルする処理方法を、電気炉ダスト処理量で1日当たり1トンという中規模のベンチスケールプラントで実証した。
 石灰添加処理部では、電気炉ダストに加える石灰の比率や処理温度を最適化することで、電気炉ダストに含まれる難処理性の亜鉛フェライトを酸化亜鉛とカルシウムフェライトに転換するとともに、ハロゲンや鉛を除去できることが確認できた。さらに還元処理部では、適切な還元剤を用いて真空加熱処理をすることにより、亜鉛を高純度金属の形で分離回収できた。残留物は、カルシウムフェライトが主成分の新たな製鉄原料として再利用できる。
 期待される効果
 電気炉ダストから高純度の金属亜鉛と製鉄原料を同時にリサイクルすることがベンチスケールで実証できたことから、プラントスケールへと進むための足がかりが得られた。実用化すれば、これまで中間処理、製錬、廃棄物処理と複数の業種を経ていた処理を一元化できる可能性がある。高効率プロセスであり、消費電力は従来と比べて約30パーセント削減できる見通しである。酸化亜鉛の還元剤として一般的なコークスなどの炭材を使わないため、CO2排出量は約50パーセント低減でき、地球温暖化防止への貢献が期待される。
 ◆用語解説
 〇電気炉ダスト
 鉄スクラップを電気炉で再溶解して鉄鋼を製造するプロセスから発生する、微粒子状の物質。粗鋼生産1トン当たり16~17キログラム発生する。亜鉛を含有するのは、鉄スクラップに亜鉛メッキ鋼板などが含まれているためである。
 〇ウェルツ法
 世界的に電気炉ダストの中間処理で用いられているプロセス。電気炉ダストの主な亜鉛成分である亜鉛フェライトを、炭材を用いて高温還元する。発生した亜鉛蒸気のほとんどは空気中で再酸化されるため、亜鉛50~60パーセントの粗酸化亜鉛(ZnO)として回収する。一度還元したものが再酸化されるため非効率だった。
 〇亜鉛フェライト(ZnO・Fe2O3)
 電気炉ダストに含まれる亜鉛の主な形態の1つ。難還元性のため、ウェルツ法では強力な還元剤である炭材で還元する。
 〇カルシウムフェライト(2CaO・Fe2O3)
 製鉄原料の主要な鉄の形態の1つ。高炉内における還元性が良好で、石灰石を添加して製造するために必須な成分である。

 今日の天気は晴れ~曇り。風は弱く、ほとんどない状態。
 遠出散歩として、仙台飛行場に行ってきた・・バスと列車を乗り継いで・・連れ合いと。
 空港が充実した、とのこと・・お土産屋さんが充実してた。


ディスプレーの画面の一部の粘着性を変化させる

2020-01-17 | 科学・技術
 大阪大学伊藤雄一招聘准教授らは、温度によって粘着性が変化する特殊なポリマーシートをディスプレイスクリーン上に配置し、局所的な温度変化を制御することで、表面の粘着性を局所的に制御可能なディスプレイシステムを開発した(2019年11月)。画面を指でなぞった際の摩擦力が変わり、指がくっつくような感触が得られる。視覚だけでなく触覚でも情報を取得できる。粘着度合いを変え、映像コンテンツを指で感じたり、重要な箇所を知ったりするのに役立つとみている。10年後の実用化を目指す。
 ポイント
 〇表面の一部の粘着性をコンピュータによって制御でき、画像情報(2D)に粘着性(1D)を追加し表示できるディスプレイ。
 〇従来のディスプレイガラス表面を変更する技術では、表面の一部だけ形状や摩擦係数を変えるような動的かつインタラクティブな制御はできなかった。
 〇タッチ操作、スワイプ操作を拡張できるディスプレイ。
 〇新しいエンタテインメントコンテンツや、目の不自由な方への情報提示に応用可能
 研究成果
 本ディスプレイは粘着性変化モジュールをアレイ状に並べて実装する。コンピュータはそれぞれの粘着性変化モジュールの粘着性を3段階(粘着無し、弱粘着、強粘着)でコントロールする。粘着性変化モジュールは感温型の粘着性シート、ペルチェ素子、サーミスタ、ヒートシンク、DCファンで構成され、粘着性シートに与える温度をペルチェ素子によって変更することで、その粘着性を制御する。粘着性シートはあらかじめ設定されたスイッチング温度があり、スイッチング温度付近で粘着力が急激に変化する。本研究で用いたシートはニッタ株式会社製のインテリマーテープで、利用者に痛みなどの不快感を与えない範囲の温度で粘着力の変化を提示できるように、スイッチング温度が40度のものを使用した。この温度を上回ると急激に粘着性が発生し、30℃から48℃の範囲で最大で2.6[N/25mm]の粘着性を提示することができる。このシートによる粘着性の変化に対する知覚を調査した被験者実験の結果、前述のように3段階(粘着無し、弱粘着、強粘着)の粘着が提示可能であることが分かった。粘着性変化モジュールのサイズはタッチ操作を想定して、人の人差し指の大きさ程度の8.3mm角のペルチェ素子を使用している。基板は、このモジュールを8x8で並べた。 研究グループでは、今後、エンタテインメント応用や、デジタルサイネージとしての利用といった応用を検討し、実用化を進めていく予定である。

 天気は晴れ。気温は低いが、最高気温8℃、3月上旬の気温とか。雪も氷もほとんど見ない・・やっぱり暖冬だ。
 散歩、雪や霜に負けず(暖冬だけど)、”オモト”が赤橙色の実を付けている。
 ”オモト”は日本独特の観葉植物として愛され、江戸中期に爆発的に流行した。葉・実の美しさから縁起のよい植物とされている。長寿草とも呼ばれる。漢字では、常緑の葉から万年青(まんねんせい)。園芸植物として人気が高く、様々な種類(1000種以上とか)が作出された。
 名(オモト)の由来は、根茎が太く大きな株を意味する大本(おおもと)からである。良質の”オモト”を産した大分県の御許(おもと)山からとの説もある。
 ”オモト”は花・実より葉を楽しむ観葉植物で、その種類を草丈から大葉種(30cm~50cm)・中葉種(15cm~30cm)・小葉種(3cm~15cm)に分けている。
 因みに、江戸時代にはオモトバブルがあり、天保時代には大流行して金のなる木の「金生樹(きんせいじゅ)」と呼ばれた・・とか。
 オモト(万年青)
 英名:Lily of China
 学名:Rohdea japonica
 ユリ科オモト属
 原産地は日本・中国
 耐寒性常緑多年草
 開花時期は5月~6月
 花は葉の間から花茎を伸ばし、淡い黄緑色の小さな花が円筒状に密生
 秋(10月~12月)に赤橙色に熟した扇球形の漿果(しょうか)を付ける


光学活性アミンの連続フロー合成法の開発

2020-01-12 | 科学・技術
 東京大学の研究グループは、小分子医薬の4割程度に含まれる重要な化合物群であるキラルアミンを、不斉水素化により効率的に合成を行なえる不均一系イリジウム触媒として新たに開発した(2019年11月11日発表)。
 現行の工業的な製法は触媒系がほとんど用いられず、当量のキラル源を用いた反応やラセミ体の光学分割を用いる方法などが採用されている。これらの方法は高価なキラル源を大量に必要とし、かつそれらが最終的には廃棄物となってしまう問題がある。本研究で、従来より低い圧力で高価な貴金属の触媒を使わずに連続合成でき、次世代の製造技術と期待される。本研究成果は、アメリカの化学雑誌「Nature Catalysis」のオンライン速報版で日本時間11月11日午前0時に公開。
 ポイント
 〇キラルアミンは小分子医薬の4割程度に含まれる重要な化合物群であり、今回これらを不斉水素化により効率的に合成を行える不均一系イリジウム触媒を新たに開発した。
 〇本触媒は連続フロー法に適用可能であり、50時間以上の連続運転を達成した。バッチ法に比べてより低い水素圧化で反応を行うことができ、更に不斉源の回収・再使用も可能であった。
 〇本系により、排尿障害の治療薬として用いられている「ハルナール」の医薬原体であるタムスロシンの鍵中間体の連続合成を達成した。
 研究背景
 キラリティーを持つアミン(キラルアミン)類は医薬品の構造中によく現れ、小分子医薬の40%程度に含まれていると言われている重要な化合物群である。代表的な合成方法として、対応するイミン類などのプロキラル化合物の水素化があげられる。この反応は廃棄物を一切生じないため、触媒的に不斉点を導入できれば理想的な方法になる。実験室のレベルでは、不斉触媒を用いた不斉水素化がよく研究されているものの、有用な物質の多い脂肪族基質に対する反応は選択性が十分でなく、高価な貴金属触媒及び高圧の水素(5-50 気圧)を必要としていた。それ故、現行の工業的な製法としては触媒系がほとんど用いられず、依然として当量のキラル源を用いた反応や、ラセミ体の光学分割を用いる方法などが採用されている。これらの方法は高価なキラル源を大量に必要とし、かつそれらが最終的には廃棄物となってしまう。このような背景から、より実用的かつ脂肪族基質を含む広い範囲の基質に適用可能な不斉水素化触媒システムが求められていた。
 近年、連続フロー法によるファインケミカルズの合成に注目が集まっている。従来、医薬品などのファインケミカルの合成にはバッチ法が主に用いられているが、工業生産においては大規模な装置を必要としていた。特に、高圧のガスを用いる反応においてはその安全性が大きな問題となり得る。一方、フロー法は安全性・再現性・生産効率に優れ、また連続的に目的物を供給できるため、必要な量だけ生産できるといったオンデマンド合成を実現できる。2011年に食品医薬品局(FDA)でも今後25年でバッチ法から連続フロー法に替わるべきだと提言されているが、これまで複雑な構造を有するファインケミカルズのフロー法による合成は難しいとされてきた。特に不斉反応を伴う連続フロープロセスは、その触媒の開発の難しさも相まってか適用例は非常に限られていた。
 研究の内容
 本研究では、イミンの不斉水素化に有効な不均一系触媒の開発を行った。報告のあるイリジウム錯体触媒をベースに、ポリスチレン中へのジアミン配位子の固定化を行った。調製したイリジウム触媒とキラルリン酸触媒を不斉源に用いた協働作用触媒系により、芳香族イミン類の不斉水素化をバッチ法で行ったところ、高いエナンチオ選択性で目的とするキラルアミン類が得られた。
 本不均一系イリジウム触媒においては、ポリスチレンの基本骨格と配位子との距離を十分に離す為のスペーサー部位を導入することが、高い選択性を得るための鍵であることが分かった。脂肪族基質に関しては、対応するケトン類の還元的アミノ化による検討を行った。この反応では、イミンの調製を必要としないためより簡便な合成法である。同様の触媒系を用いたところ、高いエナンチオ選択性で種々の脂肪族キラルアミン類の合成を行うことができた。特に、排尿障害の治療薬として用いられている「ハルナール」の医薬原体であるタムスロシンの鍵中間体の合成にも成功した。
 次に、本触媒を連続フロー法に適用した。芳香族イミン類の不斉水素化について、水素ガスと基質のイミンとキラルリン酸触媒のトルエン溶液を、不均一系イリジウム触媒を詰めたカラムに対して流通させることで、目的とするキラルアミンが得られた。興味深いことに、バッチ法に比べ低圧の水素(6気圧)で反応を行うことができ、エナンチオ選択性の若干の向上も見られた。本触媒系は50時間以上の連続運転にも耐え、連続的に有用化合物を合成することができた。本反応系のキラルリン酸触媒は溶液として送液しているが、触媒カラムに塩基樹脂を詰めたカラムを連結することでこれを捕捉し、反応後この樹脂を酸で処理することで回収することができた。回収されたキラルリン酸は活性、選択性を損なうことなく再利用が可能であった。  連続フロー法のバッチ法に対する優位性は、ケトン類の還元的不斉アミノ化反応においても見られ、実際に前出のタムスロシン前駆体を高い収率と選択性をもって連続合成に成功した。この系においては、3気圧程度の低圧で反応を行うことができ、30時間以上の連続運転が可能であった。
 今後の展開
 本研究では、不斉水素化反応によるキラルアミン類の連続合成を可能にする、不均一系イリジウム触媒とこれを用いたフロー法の開発を行った。従来のバッチ法に比べ低圧の水素圧下で反応を行えるなど、不均一系触媒を用いた連続フロー法がより安全性や効率に優れている方法であることを示せた。これらの知見により、キラル化合物をはじめとする高付加価値化合物の工業生産法に革新をもたらすと考えられる。本研究を元に、他の種類のキラルアミン含有医薬品の効率的連続合成への展開も可能になると考えられる。
 ◆用語解説
 〇キラリティー
 分子が自身の鏡像と重ね合わせられない場合、これをキラル分子といい、この性質をキラリティーと呼ぶ。キラル分子は光学活性を持ち、鏡像の関係にある分子を光学異性体と呼ぶ。
 〇触媒的不斉水素化
 わずかなキラル源を用いて理論上無限のキラル分子を合成する手法を触媒的不斉反応と呼ぶ。水素化反応は、炭素-炭素、炭素-酸素、炭素-窒素などの多重結合に対してそれぞれの原子に水素を付加する反応であり、この過程でキラル分子を生じる反応を不斉水素化反応と呼ぶ。不斉水素化反応に有効な触媒の開発に関する研究に関して、野依良治らが2001年にノーベル化学賞を受賞している。
 〇還元的不斉アミノ化反応
 還元剤を用いてキラルアミンを合成する方法。本研究では、ケトンとアミンを縮合させた中間体を水素で還元することによりアミンを合成している。
 〇バッチ法
 反応に用いる出発原料等をフラスコや反応釜に一度に入れて反応させ、反応後にまとめて排出させる反応方法。
 〇連続フロー法
 反応に用いる原料の溶液をポンプを使って送液し、反応カラムに送り込む装置。原料としては溶液のみでなく、水素ガス等の気体も用いることができる。反応カラムは筒状をしており、触媒を充填しておくことによって目的の反応が促進される。連続フロー法では、片方の口から溶液を入れもう片方の口から排液される為、連続的に目的物を得ることが可能、また欲しい時に欲しい量だけ合成を行うことが可能である。
 〇プロキラル化合物
 それ自体はキラリティーを持たないが、適当な付加反応や置換反応を受けることによって、一段階でキラリティーを持つ化合物に変換可能な化合物のこと。
 〇ラセミ体の光学分割
 あるキラル分子の光学異性体が1:1で含まれる混合物をラセミ体と呼び、これをそれぞれのキラル分子に分離する操作を光学分割と呼ぶ。別のキラル分子を分割剤として作用させ塩を組ませ立体異性体へと変換してから分離する方法が主である。理論上最大でも50%の収率でしか目的キラル分子を得ることができない。

 朝起きたら空が赤い。日の出前の空が茜色・・薄明と言うのかな(撮影時間;6時38分)。

吹きガラスの原理でガラス製微小レンズを開発

2020-01-09 | 科学・技術
 理化学研究所生命機能科学研究センター集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー、アイサン・ユスフ大学院生リサーチ・アソシエイト、ヤリクン・ヤシャイラ客員研究員らの研究チームは、薄板ガラスに形成した微細空洞中の気体を熱膨張させることで、レンズとして使用できるガラス製の微小ドーム構造を短時間に高精度で簡便に大量作製する技術を開発した。本研究は、米国の国際科学雑誌「Applied Physics Letters」のオンライン版(日本時間12月27日)に掲載。なお、理研は「マイクロレンズ、マイクロレンズアレイ、転写モールド、及びマイクロレンズの製造方法」として特許を出願している。
 透明な微小ドーム構造やその集合体であるアレイは、昆虫の複眼に見られるように優れたレンズの機能を持ち、光学、生命科学などの専門分野に限らず、スマートフォンのカメラ、センサーモジュールの部品などにも応用されている。特に近年は、デバイスや装置の小型化・高性能化に伴い、それらに適合した微小レンズを製造する技術が求められている。材料がプラスチックであれば鋳造法によって大量に製造できるが、プラスチックはガラスに比べて耐久性が低く、透明性も劣る。また、廃棄プラスチックによる環境負荷の問題もあることから、ガラス製レンズの需要が高まっている。しかし、ガラスの微細加工は手間と時間、さらには費用もかかるため、現状では高精度な加工を短時間で大量に行うことは困難である。
 研究手法と成果
 研究グループは
 (1)ガラス基板上に浅い微小なくぼみを形成する
 (2)カバーガラスを重ねて仮接合し閉じた微細空洞を作る
 (3)吹きガラスの原理を利用して、周囲を真空引きしながら加熱することで空洞中の空気を膨張させる
 (4)ゆっくり冷却するという手順により、設計した寸法通りにガラス微小ドーム構造を形成できることを実証した
 今回の試験では、厚さ100μm~250μmのガラス板を用いて,直径30μm~1mmのさまざまな種類の微小ドーム構造を作製し、そのまま使えば凹レンズ(縮小レンズ)、充填液を導入すれば凸レンズ(拡大レンズ)の機能を持つことを示した。また、高温条件下や酸・有機溶媒中でもレンズ機能は失われず、ガラスの性質が保たれることを確認した。
 この研究で開発したガラス微小ドーム構造の作製手法は、短時間に高精度かつ簡便に大量生産できるという利点がある。ガラスで作製されていることからレンズとしても長期安定性に優れており、この研究で行なったような極端条件下での使用のほか、多様な工業用途にも向いているという。
 さらに、研究グループではこれまでに開発したガラスの特徴を生かしたマイクロ流体チップや、細胞や組織などのさまざまな生体試料の分析などの研究を進めており、今回のレンズはガラス製でしかもマイクロ流路に組み込める大きさであることから、バイオ分析などの用途においても非常に有用なものであるとしている。
 ◆補足説明
 〇真空引き
 真空ポンプを使用して装置などの内部を真空にする作業のこと。今回のケースでは、加熱のための炉の内部を真空にした。
 〇アスペクト比
 構造物の高さと横幅の比率(高さ/横幅)で表される。アスペクト比が大きいほど構造的に不安定で、作製の難度が高い。
 〇エッチング
 微細加工手法の一つで、フッ化水素酸を使用することで、ガラスを溶かして微細な溝などをガラスに彫る技術。
 〇メニスカスレンズ
 レンズの片面が凸、もう片面が凹になったレンズ。二つの面の相対的な曲率の違いに応じて中央が周囲より厚い場合は凸レンズとして、逆の場合は凹レンズとして働く。
 〇両凸レンズ
 両面とも外側に向かって膨らんだ曲面を持つレンズ。
 〇ミネラルオイル
 鉱物油。流動パラフィンとも呼ばれ、常温では非揮発および非水溶であり、通常の使用条件下では酸化されず、経時変色もない化学的・生物学的に安定した物質。
 〇マイクロ流体チップ
 バイオ分析や化学分析(システム)をマイクロスケール化する目的で、溶液の混合、反応、分離、精製、検出などの化学操作をミクロ化したデバイスのこと。半導体製造技術(微細加工技術)を用いて基板に集積化する。

 早朝は雨、次第に晴れた。雲が多く、冬の空が残っている様だ。
 散歩で、会いたいのは空の青と緑の木々。緑・緑が嬉しいのは、”マサキ”の街路樹(垣根)だ。
 ”マサキ”に実(朔果:さくか、乾性の子房の発達した果実、熟すと割れて種を撒く)が付いている。花は6・7月頃咲くが小さくて淡緑白色なので目立たない。果実は秋に熟し、裂開して橙赤色の仮種皮におおわれた種子が見える。これがとても可愛い。
 マサキは常緑なので、”マサオキ(真青木)”から”マサキ”となったと言う。刈込みに強く、密生し、大気汚染や潮風にも比較的強いので生垣・庭木などに使われる。
 マサキ(柾、正木)
 学名:Euonymus japonicus
 ニシキギ科ニシキギ属
 耐寒性の常緑低木
 原産地は極東アジアの日本・朝鮮・中国
 開花時期は6月~7月
 花は径7mm程の4弁花、花色は淡緑白色
 果実は朔果で、径5~8mm程の球形
 熟すると果実は3~4つに割れ、赤橙色の仮種皮に包まれた種子が見える


2種類の高温超電導を用いて30テスラ超の高磁場発生に成功

2019-12-25 | 科学・技術
 理化学研究所放射光科学研究センターNMR研究開発部門超高磁場磁石開発チームの柳澤吉紀チームリーダーと末富佑研修生、物質・材料研究機構機能性材料研究拠点高温超伝導線材グループの西島元主幹研究員、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社の斉藤一功技術総括部長、科学技術振興機構の前田秀明プログラムマネージャーらの共同研究グループは、高温超電導線材をらせん形状に巻いた超電導磁石において、これまで困難とされてきた30テスラ超の高磁場発生に成功した。本成果は、2019年9月27日にカナダ・バンクーバーで開催される国際会議「26th International Conference on Magnet Technology」で発表。
 本研究成果により、創薬や医療への貢献が大きく期待される次世代1.3ギガヘルツ(30.5テスラ相当)核磁気共鳴(NMR)装置の開発に向けた重要な技術要件が満たされ、その実現に近づいた。
 今回、共同研究グループは、超電導磁石に内側から①高磁場での超電導特性に優れるがコイル化が難しいレアアース(RE)系高温超電導線材を巻いた内層コイル、②高磁場での特性は一歩劣るがコイル化しやすいビスマス(Bi)系高温超電導線材を巻いた中層コイル、③工業製品として確立された金属系低温超電導線材を巻いた外層コイルの3層構造の配置により、磁場の発生効率を最大に高めることで31テスラの高磁場を実現した。これは、らせん形状に巻いたタイプの超電導磁石としては最高記録である。また、高磁場発生の要となるRE系高温超電導コイルは焼損が生じやすいという課題があったが、絶縁のないRE系高温超電導線材をらせん形状にコイルに巻き、層間に銅とポリマーの複合シートを挟み込む新しい製造法を適用することで焼損の防止にも成功した。
 背景
 核磁気共鳴(NMR)装置や核磁気共鳴画像(MRI)装置には、超電導磁石が使われており、磁場強度が高くなるほど装置の性能(感度と分解能)が向上する。
 現在実用化されているNMR装置やMRI装置には、ニオブ(Nb)系の金属系低温超電導線材が使われているが、線材の物理的特性の制約から、24テスラ程度が発生磁場の上限と考えられている。これに対して、レアアース(RE)系やビスマス(Bi)系の銅酸化物の高温超電導線材は、24テスラを大幅に上回る高磁場においても超電導状態を保てると考えられている。そのためには、高温超電導線材で巻いたコイルを超電導磁石の内層高磁場領域に使う必要があり、この線材を活用した次世代超高磁場NMR装置の開発をめぐって国際的な競争がある。
 共同研究グループは、次世代1.3ギガヘルツ永久電流NMR装置の開発を進めており、これには30.5テスラという超高磁場が必要となる。高温超電導線材は薄くて幅広のテープ形状をしているため、これをコイルにするには、線材をロールケーキ形状に巻く方式が適している。この巻線方式のコイルを採用した32テスラの超電導磁石が、米国のグループにより既に開発されており、超電導磁石の磁場としてはこれが最高記録である。
 しかし、上記の巻線方式では線材同士のつなぎ目の数が膨大になる。NMR装置に求められる永久電流運転にはつなぎ目を超電導接合にする必要があるが、外周側のコイルとのわずかな隙間に多数の超電導接合を配置することは困難である。これに対し、線材をらせん形状に巻いて、つなぎ目が少なく、それらをコイル上部の広い空間に配置できる巻線方式が、永久電流運転には適している。この巻線方式では、欧州のメーカーが開発を進める1.2ギガヘルツNMR装置における28テスラが最高で、1.3ギガヘルツNMR装置に必要な30.5テスラの磁場の発生は達成されていなかった。
 研究手法と成果
 共同研究グループが開発を目指す1.3ギガヘルツNMR装置用の超電導磁石は、金属系低温超電導線材を巻いた外層コイル(以下低温超電導外層コイル)、Bi系高温超電導線材の中層コイル(以下Bi系中層コイル)、さらにRE系高温超電導線材の内層コイル(以下RE系内層コイル)から成る。コイルは全てらせん形状で巻かれる。このコイル構成は、金属系低温超電導線材よりBi系線材の方が、Bi系線材よりRE系線材の方が、より高い磁場の中でも電流を流すことができるという物理的特性を生かしたもので、共同研究グループ独自の構成である。
 共同研究グループは、物質・材料研究機構低温応用ステーションで運用されている大口径17テスラ超電導磁石を低温超電導外層コイルとし、Bi系中層コイルとRE系内層コイルを組み込むことで、1.3ギガヘルツNMR装置の超電導磁石と同様のコイル構成の超電導磁石を開発した。今回の超電導磁石では、超電導接合は用いていないが、コイルは全てらせん形状に巻かれている。低温超電導外層コイルが発生する17テスラの磁場に加え、Bi系中層コイルが4テスラを、RE系内層コイルが9テスラを発生することで、中心部における30テスラ超の高磁場発生を目指した。
 しかし、高磁場に置かれたRE系内層コイルには、クエンチが起きた場合、コイル内部の局所的な常電導部が、わずかコンマ数秒で金属溶断温度にまで上昇して焼損してしまう問題がある。2016年に柳澤チームリーダーらが27.6テスラを発生させた際にも、クエンチによってRE系内層コイルが焼損した。
 そこで、今回、クエンチからRE系内層コイルを守るために、絶縁を施さない線材を用いて、コイル層間に導体である銅フォイルと、絶縁体であるポリマーシートの複合材を挟み込んでコイルを巻く方式を適用した。これによって、クエンチ時にコイル層内で電流が分流でき、過度な温度上昇を防ぐことが期待される。この手法は「intra-Layer No-Insulation法(以下LNI法)」と呼ばれ、共同研究グループは先行研究において、その効果を小さな試験コイルで確認していた。
 開発した超電導磁石の試験では、全てのコイルを液体ヘリウム温度(-269℃)まで冷やし、まず低温超電導外層コイルに241アンペアの電流を流して17テスラの中心磁場を発生させた。その後、直列に接続したBi系中層コイル/RE系内層コイルに電流を流し、最終的に266アンペアの電流で30テスラの中心磁場の発生に成功した。その後、それぞれのコイルの電流値を順次下げ、消磁した。
 次に、超電導磁石の限界試験として、クエンチが発生するまでBi系中層コイル/RE系内層コイルの電流値を増加させた。すると、290アンペアの電流に至ったところで、31テスラの中心磁場が発生し、RE系内層コイルがクエンチした。電圧検出機能によって高温超電導に供給されている電流が遮断され、その後1秒程度でBi系中層コイル/RE系内層コイルの磁場が消失した。残っていた低温超電導外層コイルの電流・磁場は、保護回路を使って消磁された。
 一連の試験後、RE系内層コイルを取り出し、液体窒素(-196℃)で冷やして電流を流して検査したところ、コイルの電圧-電流特性が試験の前後で変わっていないこと、すなわちクエンチから保護されていることが確認できた。
 今回の試験によって初めて、らせん形状コイルの超電導磁石で30テスラ超の高磁場発生に成功した。さらに、LNI法によって、RE系内層コイルをクエンチによる焼損から保護することにも成功した。
 今後の期待
 今回の成果によって、次世代1.3ギガヘルツNMR装置の開発に向けた重要な技術課題の1つがクリアされ、その実現に近づいた。今後、別途開発を進めている超電導接合技術/永久電流運転技術と組み合わせて装置の実現を目指す。
 次世代1.3ギガヘルツNMR装置が実現できれば、アルツハイマー病などの神経変性疾患の要因とされるアミロイドβペプチドの構造情報の取得技術が飛躍的に進展するなど、創薬や医療への展開が期待できる。また、1.3ギガヘルツNMR装置の開発を通して得られる先端技術により、すでに普及しているレベルの磁場のNMR装置の小型化・省ヘリウム化などといった波及も期待できる。
 ◆用語解説
 〇高温超電導線材
 銅酸化物高温超電導体を線材にしたもの。主にレアアース(希土類元素)系とビスマス系がある。液体窒素温度(-196℃)においても超電導状態を示し、また、液体ヘリウム温度(-269℃)においては、24テスラを大幅に上回る高磁場においても超電導状態を維持できる。
 〇超電導磁石
 超電導線材で巻いたコイルを使った電磁石で、極めて少ない消費電力で、強力な磁場を発生することが可能。電気抵抗ゼロの超電導状態を保つために、液体ヘリウムや液体窒素といった冷媒に浸して冷却したり、冷凍機で冷却されたりする。ただし、超電導線材には、線材固有の臨界磁場(電気抵抗ゼロで電流を流せる磁場の上限)があるため、超電導磁石が発生できる磁場には上限がある。なお、「超電導」と「超伝導」はどちらも”superconductivity”の訳語であり、超電導に統一した。
 〇テスラ
 磁場の単位。1テスラはネオジム系などの強力永久磁石の表面磁場と同等の強さ。
 〇ギガヘルツ
 周波数の単位。核磁気共鳴現象において、共鳴周波数は磁場に比例するため、NMR装置では慣習的に磁場を周波数で表現する。30.5テスラの磁場において、水素核は1.3ギガヘルツの周波数で共鳴する。ギガは10億。
 〇核磁気共鳴(NMR)装置
 NMRはNuclear Magnetic Resonanceの略。
 磁場中に置かれた原子核の核スピンの共鳴現象により、物質の分子構造の解析や物性の解析を行う装置。分子の相互作用などの情報も得られるため、生命科学、医薬、化学、食品、材料物性といった幅広い分野で利用されている。
 〇金属系低温超電導線材
 NbTi(ニオブチタン)、Nb3Sn(ニオブスズ)に代表される金属系の超電導体を用いた超電導線材。NbTiは-263.7℃、Nb3Snは-254.9℃の極低温で超電導状態となる。NbTiとNb3SnはNMR装置において、NbTiはMRI装置において広く実用化されている。Nb3Sn洗剤を使えば24テスラ程度の磁場が発生可能である。
 〇核磁気共鳴画像(MRI)装置
 MRIはMagnetic Resonance Imagingの略。
 核磁気共鳴現象を利用して人体などの断面撮像を行う装置。脳や血管などの画像診断に広く使われ、磁場を高くすることで、より高分解能の診断が可能となる。
 〇永久電流
 回路全体が超電導体でできているコイルに電流を流すと、抵抗がないため半永久的に電流が流れ続ける。この現象を永久電流と呼ぶ。
 〇超電導接合
 超電導線材のつなぎ目(接合部)でも電気抵抗ゼロで電流を流す技術で、永久電流運転するために必要。酸化物材料を使った高温超電導線材の超電導接合は難しく、長らく不可能ともいわれていたが、近年目覚ましく技術が進歩しつつある。
 〇クエンチ
 超電導体が、超電導状態から常電導状態に転移すること。
 〇アミロイドβペプチド
 アミロイドβ前駆体タンパク質からプロテアーゼにより切断されて産生される生理的ペプチド。アルツハイマー病で見られるアミロイド斑の構成成分として発見されたことから、この過剰な蓄積がアルツハイマー病発症の引き金と考えられている。Aβはアミノ酸の長さで種類が分類されており、Aβ1-40、Aβ1-42が同定されており、Aβ1-42が最も神経毒性が高いとして解析が行われてきた。

未開の電磁波テラヘルツ波の検出感度を1万倍に向上、超高速無線通信の実用化に

2019-12-23 | 科学・技術
 大阪大学大学院基礎工学研究科の冨士田誠之准教授、永妻忠夫教授、西田陽亮(当時;博士前期課程学生)、西上直毅(博士前期課程学生)、Sebastian Diebold博士(当時;特任助教)らは、ローム株式会社と共同でテラヘルツ波の検出が可能な小型電子デバイスである共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunnelin Diode:RTD)のテラヘルツ波の検出感度を1万倍という大幅な向上を実現した。本研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に2019年12月2日(日本時間)にオンライン掲載。
 ポイント
 〇テラヘルツ波を検出可能な小型電子デバイスである共鳴トンネルダイオードのテラヘルツ波検出感度を同期検波によって、1万倍向上。
 〇テラヘルツ波は、超高速無線通信、高分解能センシングなどの応用が期待されているが、その発生、検出技術が未熟であるという課題があった。
 〇共鳴トンネルダイオードを用いた世界最高速のテラヘルツ無線通信実験に成功。
 〇次世代無線通信、分光分析、非破壊検査、セキュリティカメラ、高分解能レーダーなどへの応用が期待。
 研究の背景
 近年、携帯電話など、電磁波を用いた情報通信応用が進んでいる。電磁波を特徴づける値として、周波数と波長がある。一般に周波数が高いほど大容量の情報を伝送することが可能なため、次世代の携帯電話の規格である5Gでは、28ギガヘルツ帯や39ギガヘルツ帯の電磁波(ミリ波)の利用が検討されている。
 5Gを超えた超高速無線通信の実現を目指したより高い周波数の電磁波、テラヘルツ波に関する研究が進展している。テラヘルツ波を利用した応用システムの実用化に向けて、小型集積化が可能な電子デバイスによるテラヘルツ波発生器および検出器の開発が期待されているが、テラヘルツ帯は電子デバイスの高周波極限に相当するため、高出力デバイスの開発は困難である。大阪大学とロームの研究グループでは、2011年に世界で初めて共鳴トンネルダイオードと呼ばれる小型の電子デバイスでのテラヘルツ無線通信に成功し、世界に先駆けた研究開発を行ってきた。共鳴トンネルダイオードは基本波でのテラヘルツ発振が可能であり、トランジスタと比較して回路構成が簡単にできるため、低消費電力動作が可能という特徴がある。しかしながら、共鳴トンネルダイオード送信器から出力されるテラヘルツ波の出力が不十分であったため、その通信速度は9ギガビット毎秒に制限されていた。
 研究の内容
 研究グループは、検出器としての共鳴トンネルダイオードに着目した。通常、動作電圧を負性抵抗領域に設定した場合、共鳴トンネルダイオードは発振するが、検出器としての動作は不安定になる。一方、外部から到達し、共鳴トンネルダイオードにて検出されるテラヘルツ波と前述の発振周波数が十分に近い場合、共鳴トンネルダイオードの発振状態は外部からのテラヘルツ波と同期し、その発振出力が検出動作に援用されることを見いだした。このようにして、共鳴トンネルダイオード単体での同期検波をテラヘルツ帯で実現し、本方式と従来の直接検波方式を比較したところ、1万倍の感度の向上が得られた。
 また、350ギガヘルツ動作の共鳴トンネルダイオード送信器からの出力をオンオフ変調方式にて無線伝送したところ、本研究の同期検波方式を利用した共鳴トンネルダイオード受信器にて復調することで高い信号強度が得られ、30ギガビット毎秒の通信に成功した。この通信速度は、電子デバイス送受信器を用いた誤り訂正なしのエラーフリー無線通信として、過去最高の値であり、非圧縮スーパーハイビジョン映像(8K Dual Green型式)の伝送も可能である。
 今後の展開
 本研究をさらに発展させることにより、将来的には、100ギガビット毎秒を超える超高速通信も可能である。動作周波数を2テラヘルツ程度まで向上させることも期待でき、通信応用だけではなく、紙や衣服といった誘電体を透過し、特定の物質で吸収および反射されるテラヘルツ波の特性を生かした分光分析や非破壊検査、ガスや水分量の計測、セキュリティ応用および、ミリ波よりも短い波長を有するというテラヘルツ波の特長を生かした高分解能なレーダー応用なども期待できる。
 ◆用語解説
 〇テラヘルツ波
 およそ100ギガヘルツ(0.1テラヘルツ)から10,000ギガヘルツ(10テラヘルツ)の電波と光の中間領域の周波数を有する電磁波。電波の透過性と光の直進性を併せ持つ。発生、検出技術が未熟なため、未開拓電磁波領域と呼ばれている。
 〇共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunnelin Diode:RTD)
 異なる半導体材料からなるヘテロ接合により形成された2つの極薄のエネルギー障壁層と、その間の量子井戸層から構成される電子デバイス。量子井戸の両側の障壁層が十分に薄い構造では、井戸中の電子はトンネル効果により障壁層の外側に抜けることができる。一方の障壁から電子が入射した場合、量子井戸に形成されている量子準位に対応してもう一方の障壁を透過していく確率が入射電子のエネルギーにより共鳴的に増大する。この効果が共鳴トンネル効果であり、これをダイオードとして利用したデバイスで高速動作が可能。利得として働く負性微分抵抗特性を有し、共振回路と組み合わせることで発振動作する。

 今日の天気は晴れ。早朝は雨、だったようだ・・新聞がビニール袋に入っていた。
 駐車場横の”ユズ”に実が付いている。春の花には気が付かなかった。花の咲いている期間は短く、タイミングが合わないと開花を見逃す。花は純白の可愛い小さな五弁花である。(結実期は10月~11月)。
 ”ユズ”は季節とともにあり、俳句での季語は、「柚子の花」が夏、「柚子」が秋、「柚子湯」が冬である。
 今年(2019年)の冬至は、12月22日である。北半球において太陽の位置が1年で最も低くなり、日照時間が最も短くなる日である。
 ユズ(柚子、柚酸)
 学名:Citrus junos
 ミカン科ミカン属(シトラス属)
 常緑小高木、柑橘類の一種(枝に棘がある)
 原産地は中国(長江上流と言われる)
 古くに渡来し、飛鳥・奈良時代に栽培記載がある
 開花時期は5月~6月
 花は白い小さな五弁花を葉の脇につく
 結実期は10月~11月、淡黄色の熟した果実の表面は凸凹で、強い香りがする



電気を使った有機酸と水から高効率なアミノ酸合成に成功

2019-12-21 | 科学・技術
 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の福嶋貴学術研究員と山内美穂教授の研究グループは、木質バイオマスを原料に、再生可能エネルギーから調達した電気と水を使って、アミノ酸を75~99%の高効率で合成することに成功した、と発表した。反応効率はこれまでの報告の10倍以上という。アミノ酸の工業生産には大規模な設備が必要だが、再エネの活用で分散型・小規模の生産が可能になり、環境負荷を少なくすることが期待される。本研究成果は、2019年10月31日にイギリスの王立化学会の速報誌である「Chemical Communications」のweb 上で公開された。
 ポイント
 〇電気エネルギーを使い、水とバイオマスから入手可能なα-ケト酸からの高効率アミノ酸合成を達成。
 〇世界で初めて電力を使ってアミノ酸を連続的に合成するフロー型リアクターを構築した。
 〇本プロセスは新しい低環境負荷型のファインケミカル製造法として注目される。
 アミノ酸は生物の重要な構成要素であるだけでなく、飼料添加物、風味増強剤、医薬品などのさまざまな機能性材料に関与する基本的な物質である。現在、発酵法によりアミノ酸が生産されているが、微生物培養に大量のエネルギーが必要であることや分離・精製工程が煩雑であるなどの問題がある。化学的に合成する既存の方法では、有毒な物質が用いられるため、食
品・医薬品用途には、使用が敬遠されている。
 本研究では、電力をエネルギー源、水を水素源として、木質バイオマスから抽出可能なα-ケト酸と呼ばれる有機酸と含窒素化合物を高選択的に反応させることにより、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンの7種類のアミノ酸を高効率で合成することができた。
 アスパラギン酸、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンの4種類のアミノ酸は、本研究で電気エネルギーを使って初めて合成された。さらに、アミノ酸を連続的に合成するフロー型リアクターの構築にも世界で初めて成功した。これまで、有毒な鉛や水銀、あるいは高価な白金の電極上でアミノ酸合成が行われた例はあったが、合成効率は非常に低いものであった。
 本研究では、電極触媒として、より安全で安価な酸化チタン(TiO2)を用いることで高選択的にアミノ酸を合成することに成功した。この新しい合成法は、経済的で環境に優しい持続可能なアミノ酸の製造を実現できるという点で他のどの方法よりも優れているため、将来の画期的な合成法となる可能性を秘めている。

 天気は晴れ、雲が多い。風は弱い。
 散歩道の街路樹の”クチナシ”に果実が付いている。葉もまだ落ちていない。果実が付く”クチナシ”は一重咲きである。園芸種の八重咲き(雄しべがない)には果実ができない・・最近はこちらが多いのかな。
 花は、梅雨の頃に甘い芳香のある純白の花である。
 果実は、先端に萼片のなごりの角(つの)様なものが6本付き、側面に角につながって角(かど)が出ている。名(クチナシ)の由来は、果実が熟しても割れたりしないので、「口無:果実が熟しても割れない・・口が無い」説、「口梨:果実の先端に残る角(萼片)を鳥の嘴に見立て、果実を梨に見立て、口のある梨」説などがある。熟すと橙色となり、山梔子(さんしし)と呼ばれ、薬用・染料や食品の黄色の着色料に使われる。
 クチナシ(梔子、巵子、支子)
 学名:Gardenia jasminoides
 アカネ科クチナシ属
 常緑低木
 開花時期は6月~7月
 花は径数cmで強い芳香を出す、花色は初め純白、次第に乳白色になる
 果実は10月~11月ごろに赤黄色となる
 ”クチナシ”の果実にはクロシン(Crocin;カロチノイドの一種)が含まれている。
 果実は山梔子(さんしし)と呼ばれ、漢方方剤や食品の着色料(黄色)に使われる。



近畿大学、ウナギの人工ふ化に成功

2019-12-20 | 科学・技術
 近畿大学は、ニホンウナギの人工ふ化と50日間の飼育に成功したと発表した(11月1日)。
 ウナギは養殖に使う稚魚の漁獲量の減少が問題となっている。今後は人工ふ化で生まれた魚を親に育ててから卵を取り出し、さらにふ化させて2代目をつくる完全養殖の研究を進める。早ければ3年で完全養殖技術が確立する見通し。4年後には飲食店で完全養殖ウナギの提供を目指す。
 ウナギの国内消費の99%は漁獲した天然の稚魚「シラスウナギ」をいけすで育てる養殖である。だがシラスウナギの漁獲量が激減し、養殖生産量は1990年をピークに減少傾向が続く。環境省は2013年にニホンウナギを絶滅危惧種に指定し、資源の枯渇が危惧されている。
 ◆ウナギ稚魚(シラスウナギ)採捕量
 水産庁の調べによる
 1963年に232トンを記録
 2017年漁期には15.5トン
 2018年漁期には8.9トンにまで落ち込んだ
 2019年(今期)は3.7トン となるのか
 ウナギの養殖は国立研究開発法人の水産研究・教育機構が完全養殖に成功したが、コスト面から商業化ができていない。近大は2018年に水産研究・教育機構から研究者を招き、2019年3月から養殖研究を本格的に始めた。9月に成熟したウナギから数十万個の卵を採取し、人工授精に成功。ふ化した稚魚のうち約20尾が50日間生き残り、2cmほどに育った。ふ化して成魚に育つまでに約1年、卵を産むまでにさらに約2年かかる。

 晴れ。雲が少し多い。
 電車道沿いの横のお庭、”ローズマリー”に淡青紫色の花が咲いている。花は年に数度咲く、なので何時も咲いている感がある。花は1cm程の大きさで、枝の先端に付く。
 ”ローズマリー”には、半匍匐(ほふく)性・匍匐性種と立ち性種があり、この木は立ち性種。
 シソ科の常緑性低木で、瑞々しい細長い葉が特徴である。葉には芳香がある。消臭効果や抗菌作用などもあるので生葉・乾燥葉とも香辛料などとして用いられ、料理では肉の匂い消しなどに使われる。
 ローズマリー(Rosemary)
 別名:迷迭香(まんねんろう)
    万年朗(まんねんろう):葉っぱが冬も緑色だから
 学名:Rosmarinus officinalis
 シソ科ロスマリヌス属
 常緑性低木
 原産地は地中海沿岸
 ポピュラーな花色は青紫色だが、濃紫・ピンク・白などがある