骨粗鬆症は、骨量と骨質の低下により骨の脆弱性が増加し、骨折を起こしやすくなる疾患である。骨折による骨格の変形、歩行障害、慢性疼痛などにより、日常生活動作や生活の質が低下し、介護の必要性を増大させる原因となっている。骨粗鬆症の有病率は中年以降年齢とともに増加し、特に閉経後の女性では約30%以上の人が骨粗鬆症にかかるという統計もあり、高齢化社会の大きな課題の一つとなっている。医学・医療だけでなく、社会・経済的にも深刻な問題で、その原因、病態の解明、新たな予防・治療法の確立が待ち望まれている。
骨粗鬆症は、遺伝的因子と環境因子の相互作用により発症する多因子遺伝病、生活習慣病である。
骨粗鬆症の遺伝因子の同定には、さまざまな評価法がある。双子や家族の研究で、踵骨(かかとの骨)の骨密度(BMD)には高い遺伝率(82%)があることが示されている。過去のゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析の結果、踵骨BMDに関連するいくつかの遺伝子座位が明らかにされてる。しかし、これまでの研究は主にヨーロッパ人が対象で、東アジア人における調査はまだない。
そこで、国際共同研究チームは、台湾人、日本人、韓国人において、踵骨BMDに関するGWASのメタ解析を行うことにした。
理化学研究所生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの池川志郎チームリーダー、呂幸芳研修生(臺北醫學大學藥學院博士課程、RIKEN IPA)らの国際研究チームは、台湾人、日本人、韓国人について骨粗鬆症に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新しい遺伝子座位(原因遺伝子の存在する領域)を3ヵ所発見した。
国際共同研究チームは台湾、日本、韓国の共同研究により、骨粗鬆症の良い指標である踵骨(かかとの骨)の剛性指数(SI)に関するGWASのメタ解析を行った。その結果、台湾人と韓国人に共通して、遺伝統計学的に有意な相関を示す七つの一塩基多型(SNP)を発見した。これらのSNPは、7番、11番、17番染色体内の7q31.31、11q14.2、17p13.3の3カ所に存在した。これらの3遺伝子座位の相関は、英国人のGWASデータでも再現された。さらに、インフォマティクス解析から、これらの遺伝子座位内に14の骨粗鬆症の候補遺伝子を同定した。
研究手法
超音波測定法によって得られ得る踵骨の剛性指数(SI)は、骨密度の定量的な良い指標である。国際共同研究チームは、台湾のバイオバンクからの7,742人の遺伝子情報を用いて、踵骨SIについてのGWASを実施し、SIに関連する七つの代表的な一塩基多型(SNP)を同定した。これらは、7番(7q31.31)、11番(11q14.2)、17番(17p13.3)染色体に存在した。続いて、Korean Genome Epidemiology Studyの韓国人(2,955人)の踵骨SIのGWASで、台湾人で得られたデータの再現性を確認した。しかし、日本人(バイオバンクジャパン)の骨粗鬆症のGWASでは、これらのSNPの相関は再現されなかった。
七つの代表的なSNPについてコンディショナル解析を行うと、そのうち三つのSNP(rs2536195、rs1231207、rs4944661)がこれらの遺伝子座内の最も重要なシグナルであることが分かった。これら三つのSNPの相関は、英国のバイオバンクのBMDのGWASでも確認され、韓国人集団とのメタ解析でも再現された。
次に、台湾人のGWASで得られた候補遺伝子を、エピジェネティックアノテーション、遺伝子オントロジー(GO)、タンパク質相互作用、GWASカタログ、および発現量的形質遺伝子座(eQTL)解析によって評価した。これらの結果を統合したインフォマティクス解析により、相関遺伝子座内のSNPと遺伝子に対する14のSI関連遺伝子の候補を発見した。
今後の期待
国際共同研究を拡大して検体数を増やし、相関解析の解析力を向上させ、さまざまなインフォマティクス解析を追加することで、さらなる遺伝子の発見が期待できる。また、今回発見した候補関連遺伝子の機能解析により、骨粗鬆症の理解、病態解明がより進展することが期待できる。
◆用語説明
1.ゲノムワイド関連解析(GWAS)
疾患の感受性遺伝子を見つける方法の一つ。ヒトのゲノム全体を網羅する遺伝子多型を用いて、疾患を持つ群と疾患を持たない群とで遺伝子多型の頻度に差があるかどうかを統計学的に検定する方法。検定の結果得られたP値(偶然にそのようなことが起こる確率)が低いほど、相関が高いと判定できる。GWASは、Genome-Wide Association Studyの略。
2.剛性指数(SI)
骨の超音波検査によって得られる二つの測定値、the speed of sound(SOS)と the broadband ultrasound attenuation(BUA)によって計算される骨密度の定量的な指標。SIはStiffness Indexの略。
3.メタ解析
二つ以上の統計解析結果を合わせる際に、それぞれの解析結果のばらつきを補正し、偏りのない合算をする統計学的手法。
4.一塩基多型(SNP)
ヒトゲノムは30億塩基対のDNAからなるが、個々人を比較するとそのうちの0.1%の塩基配列の違いがある。これを遺伝子多型という。遺伝子多型のうち一つの塩基が、ほかの塩基に変わるものを一塩基多型と呼ぶ。SNPはSingle Nucleotide Polymorphismの略。
5.インフォマティクス解析
情報科学を用いたコンピュータ上での解析。ゲノム研究では、データベース上の情報を統計的手報で、検索するものが多い。
6.骨密度(BMD)
骨の強度を表す指標の一つ。一定容積の骨に含まれるミネラル成分(主にカルシウム)の量。BMDはBone Mineral Densityの略。
7.遺伝率
環境要因と遺伝要因の割合。遺伝率は0から1の値をとり、大きいほど遺伝要因から受ける影響が大きいことを示す。
8.バイオバンクジャパン
オーダーメイド医療実現化プロジェクトの基盤となるDNAサンプルや血清サンプルを47疾患(約20万人)から収集し、臨床情報とともに保管している世界でも有数の資源バンク。
9.コンディショナル解析
相関解析の手法の一つ。あるSNPの相関は、常にそのSNPと連鎖不平衡にあるSNPの影響を受ける。この他のSNPからの影響を排除した相関を調べる方法。
10.エピジェネティックアノテーション
DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化などのエヒ゜ケ゛ノムテ゛ータについての注釈。
11.遺伝子オントロジー(GO)
統一された用語(GO term)による遺伝子の生物学的概念の記述。これを用いて、遺伝子の機能情報など遺伝子関連情報を記述することで、さまざまなデータベースの遺伝子関連情報を統合して、包括的に活用できる。GOはGene Ontologyの略。
12.発現量的形質遺伝子座(eQTL)
解析QTLとはQuantitative trait locus(量的形質遺伝子座)の略で、量的形質がどのように生物に表現されるかに影響を与える染色体上のDNA領域のこと。
eQTL解析は遺伝子発現プロファイリングとQTL解析を組み合わせた手法であり、疾病など形質に関連する遺伝子そのもののほか、その発現に影響する調節因子(遺伝子近傍にある調節配列などのシス因子、および遺伝子に結合する転写因子の遺伝子などのトランス因子)を明らかにすることが可能である。
今日は晴れ、雲が多い。
散歩道沿いに、”クリスマスローズ”が咲いている。咲いた花は下向きで、上からは花びら(花弁)しか見えない。”クリスマスローズ”の花びら(花弁)に見えるのは萼(がく)である。花びらは退化して小さな蜜腺(ネクタリー)となり、おしべの付け根を囲むような形で小さく残っている。花の中心は雌しべ、その外に雄しべ・蜜腺・萼となる。
”クリスマスローズ”と呼ぶのは、クリスマスの頃に開花する「ヘレボルス・ニゲル」だけを指した呼称である。日本の園芸市場では、クリスマスの頃ではなく春に開花する「レンテン・ローズ」と呼ばれる「ヘレボルス・オリエンタリス」なども「クリスマス・ローズ」の名前で出回る。
”レンテンローズ”は、レント(Lent:受難節、復活祭(イースター)までの40日間)の頃、2月頃~3月頃に咲く。この種を元にして他種とで作られた園芸種はオリエンタル・ハイブリッドと呼ばれる。日本の気候に合い良く育つので広く普及している。
クリスマスローズ
別名:雪起こし(ゆきおこし)
名の由来:雪に覆われても持ち上げて花を咲かせるから
学名:Helleborus
キンポウゲ科ヘレボラス属
多年草
原産地はヨーロッパ、西アジア
日本には明治の初めに入り、薬草として栽培
開花期は12月~4月
花色は多彩で、赤・桃・白・緑・複色系など
花弁に見える部分は、萼片。このため「鑑賞期間」が比較的長い
骨粗鬆症は、遺伝的因子と環境因子の相互作用により発症する多因子遺伝病、生活習慣病である。
骨粗鬆症の遺伝因子の同定には、さまざまな評価法がある。双子や家族の研究で、踵骨(かかとの骨)の骨密度(BMD)には高い遺伝率(82%)があることが示されている。過去のゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析の結果、踵骨BMDに関連するいくつかの遺伝子座位が明らかにされてる。しかし、これまでの研究は主にヨーロッパ人が対象で、東アジア人における調査はまだない。
そこで、国際共同研究チームは、台湾人、日本人、韓国人において、踵骨BMDに関するGWASのメタ解析を行うことにした。
理化学研究所生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの池川志郎チームリーダー、呂幸芳研修生(臺北醫學大學藥學院博士課程、RIKEN IPA)らの国際研究チームは、台湾人、日本人、韓国人について骨粗鬆症に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新しい遺伝子座位(原因遺伝子の存在する領域)を3ヵ所発見した。
国際共同研究チームは台湾、日本、韓国の共同研究により、骨粗鬆症の良い指標である踵骨(かかとの骨)の剛性指数(SI)に関するGWASのメタ解析を行った。その結果、台湾人と韓国人に共通して、遺伝統計学的に有意な相関を示す七つの一塩基多型(SNP)を発見した。これらのSNPは、7番、11番、17番染色体内の7q31.31、11q14.2、17p13.3の3カ所に存在した。これらの3遺伝子座位の相関は、英国人のGWASデータでも再現された。さらに、インフォマティクス解析から、これらの遺伝子座位内に14の骨粗鬆症の候補遺伝子を同定した。
研究手法
超音波測定法によって得られ得る踵骨の剛性指数(SI)は、骨密度の定量的な良い指標である。国際共同研究チームは、台湾のバイオバンクからの7,742人の遺伝子情報を用いて、踵骨SIについてのGWASを実施し、SIに関連する七つの代表的な一塩基多型(SNP)を同定した。これらは、7番(7q31.31)、11番(11q14.2)、17番(17p13.3)染色体に存在した。続いて、Korean Genome Epidemiology Studyの韓国人(2,955人)の踵骨SIのGWASで、台湾人で得られたデータの再現性を確認した。しかし、日本人(バイオバンクジャパン)の骨粗鬆症のGWASでは、これらのSNPの相関は再現されなかった。
七つの代表的なSNPについてコンディショナル解析を行うと、そのうち三つのSNP(rs2536195、rs1231207、rs4944661)がこれらの遺伝子座内の最も重要なシグナルであることが分かった。これら三つのSNPの相関は、英国のバイオバンクのBMDのGWASでも確認され、韓国人集団とのメタ解析でも再現された。
次に、台湾人のGWASで得られた候補遺伝子を、エピジェネティックアノテーション、遺伝子オントロジー(GO)、タンパク質相互作用、GWASカタログ、および発現量的形質遺伝子座(eQTL)解析によって評価した。これらの結果を統合したインフォマティクス解析により、相関遺伝子座内のSNPと遺伝子に対する14のSI関連遺伝子の候補を発見した。
今後の期待
国際共同研究を拡大して検体数を増やし、相関解析の解析力を向上させ、さまざまなインフォマティクス解析を追加することで、さらなる遺伝子の発見が期待できる。また、今回発見した候補関連遺伝子の機能解析により、骨粗鬆症の理解、病態解明がより進展することが期待できる。
◆用語説明
1.ゲノムワイド関連解析(GWAS)
疾患の感受性遺伝子を見つける方法の一つ。ヒトのゲノム全体を網羅する遺伝子多型を用いて、疾患を持つ群と疾患を持たない群とで遺伝子多型の頻度に差があるかどうかを統計学的に検定する方法。検定の結果得られたP値(偶然にそのようなことが起こる確率)が低いほど、相関が高いと判定できる。GWASは、Genome-Wide Association Studyの略。
2.剛性指数(SI)
骨の超音波検査によって得られる二つの測定値、the speed of sound(SOS)と the broadband ultrasound attenuation(BUA)によって計算される骨密度の定量的な指標。SIはStiffness Indexの略。
3.メタ解析
二つ以上の統計解析結果を合わせる際に、それぞれの解析結果のばらつきを補正し、偏りのない合算をする統計学的手法。
4.一塩基多型(SNP)
ヒトゲノムは30億塩基対のDNAからなるが、個々人を比較するとそのうちの0.1%の塩基配列の違いがある。これを遺伝子多型という。遺伝子多型のうち一つの塩基が、ほかの塩基に変わるものを一塩基多型と呼ぶ。SNPはSingle Nucleotide Polymorphismの略。
5.インフォマティクス解析
情報科学を用いたコンピュータ上での解析。ゲノム研究では、データベース上の情報を統計的手報で、検索するものが多い。
6.骨密度(BMD)
骨の強度を表す指標の一つ。一定容積の骨に含まれるミネラル成分(主にカルシウム)の量。BMDはBone Mineral Densityの略。
7.遺伝率
環境要因と遺伝要因の割合。遺伝率は0から1の値をとり、大きいほど遺伝要因から受ける影響が大きいことを示す。
8.バイオバンクジャパン
オーダーメイド医療実現化プロジェクトの基盤となるDNAサンプルや血清サンプルを47疾患(約20万人)から収集し、臨床情報とともに保管している世界でも有数の資源バンク。
9.コンディショナル解析
相関解析の手法の一つ。あるSNPの相関は、常にそのSNPと連鎖不平衡にあるSNPの影響を受ける。この他のSNPからの影響を排除した相関を調べる方法。
10.エピジェネティックアノテーション
DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化などのエヒ゜ケ゛ノムテ゛ータについての注釈。
11.遺伝子オントロジー(GO)
統一された用語(GO term)による遺伝子の生物学的概念の記述。これを用いて、遺伝子の機能情報など遺伝子関連情報を記述することで、さまざまなデータベースの遺伝子関連情報を統合して、包括的に活用できる。GOはGene Ontologyの略。
12.発現量的形質遺伝子座(eQTL)
解析QTLとはQuantitative trait locus(量的形質遺伝子座)の略で、量的形質がどのように生物に表現されるかに影響を与える染色体上のDNA領域のこと。
eQTL解析は遺伝子発現プロファイリングとQTL解析を組み合わせた手法であり、疾病など形質に関連する遺伝子そのもののほか、その発現に影響する調節因子(遺伝子近傍にある調節配列などのシス因子、および遺伝子に結合する転写因子の遺伝子などのトランス因子)を明らかにすることが可能である。
今日は晴れ、雲が多い。
散歩道沿いに、”クリスマスローズ”が咲いている。咲いた花は下向きで、上からは花びら(花弁)しか見えない。”クリスマスローズ”の花びら(花弁)に見えるのは萼(がく)である。花びらは退化して小さな蜜腺(ネクタリー)となり、おしべの付け根を囲むような形で小さく残っている。花の中心は雌しべ、その外に雄しべ・蜜腺・萼となる。
”クリスマスローズ”と呼ぶのは、クリスマスの頃に開花する「ヘレボルス・ニゲル」だけを指した呼称である。日本の園芸市場では、クリスマスの頃ではなく春に開花する「レンテン・ローズ」と呼ばれる「ヘレボルス・オリエンタリス」なども「クリスマス・ローズ」の名前で出回る。
”レンテンローズ”は、レント(Lent:受難節、復活祭(イースター)までの40日間)の頃、2月頃~3月頃に咲く。この種を元にして他種とで作られた園芸種はオリエンタル・ハイブリッドと呼ばれる。日本の気候に合い良く育つので広く普及している。
クリスマスローズ
別名:雪起こし(ゆきおこし)
名の由来:雪に覆われても持ち上げて花を咲かせるから
学名:Helleborus
キンポウゲ科ヘレボラス属
多年草
原産地はヨーロッパ、西アジア
日本には明治の初めに入り、薬草として栽培
開花期は12月~4月
花色は多彩で、赤・桃・白・緑・複色系など
花弁に見える部分は、萼片。このため「鑑賞期間」が比較的長い
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