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■コレクション展 躍動する個性―大正の新しさ 東京2017-2(3)

2017年04月17日 08時57分25秒 | 道外で見た展覧会
(承前)

 いまでこそ日本のあちこちに美術館があるが、神奈川県立近代美術館は1951年設立で、全国の公立館で最も古い。そのためか「大正の洋画」というテーマでも、さすがに有名どころをそろえている。
 われらが道立近代美術館も77年設置だから都道府県立では古参の部類に入るのだが、同じテーマでこれだけの画家をそろえることができるだろうか。
 ちなみに、歴代館長で有名なのは、1965年から館長を務めた土方定一で、『近代日本の美術』(岩波文庫。当初は岩波新書)などの著書があるほか、国内各館にも影響力があったといわれる戦後美術館業界の巨人だが、続く第3代館長の匠秀夫は夕張出身、第5代館長の酒井忠康さんは後志管内余市町出身で、なにかと北海道に縁の深い美術館でもある。異才版画家の一原有徳さんを、小樽美術館の次に多くコレクションしているのも、神奈川県美である。

 筆者がこの美術館に行ったのは「砂澤ビッキ展」のためだったが、展示室の構造上、まずコレクション展を見てからでないと入れないようになっている。

 最初の1点、鹿子木孟郎かの こ ぎ たけろう「牛」。鹿子木は何度もフランスに留学した画家だが、この「牛」は泥臭いリアリズム。糞便で汚れた乳牛の尻とか、暗い牛舎など、泥臭さは、たとえば神田日勝など、全道展のリアリズムに共通するものがあると思った。

 小出楢重「静物(乙女椿とレモン)」は、べたっとしたタッチがいかにも小出らしい。ペンキ絵みたいな感じもする。

 さすがと思ったのは関根正二が6点も出ていたこと。
 20歳で早世した画家ゆえ、そもそも作品があまり残っていない。「少年」「村岡みんの肖像」といった作品をじっと見ていると、若い画家が人間を見つめる視線の深さを感じる。

 青山義雄(1894~1996)もあった。「家鴨の葬式 油彩習作」。
 解説によると青山は滞仏時、大作3点の制作を計画しており、これはそのうちの1本の下絵とのこと。本絵は完成しなかったとみられる。
 青山は幼少時、根室に住み、根室商業学校(現根室高)に入っていますが中退している。
 ただし、いま「北海道ゆかりの洋画家」として、道内の関係者にひろく認知されているかどうかはわからない。

 大正といえば、とくに後半の大きな話題は、三科などの前衛芸術運動だろう。
 この展覧会でも村山知義が4点も出ている。

 ほかに、藤田嗣治、清水登之、村山槐多、岸田劉生、梅原龍三郎、萬鉄五郎、中村彝、中川一政、有島生馬など。

 新収蔵品コーナーもあり、ここではとくに麻生三郎の肖像画「男」の高い技量に感心した。

 
神奈川県立近代美術館 葉山(葉山町一色2208-1)
2017年4月8日(土)~6月18日(日)午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)、月休み(5月1日は開館)




・JR横須賀線「逗子駅」、京浜急行線「新逗子駅」から、京浜急行バス「逗11」「逗12」に乗り、「三ケ丘・神奈川県立近代美術館前」で降車。乗車およそ20分(250円)、降りて目の前




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