つい先日も書いたが、札幌時計台ギャラリーで毎週見ごたえのある展覧会が続いているのに、このブログでの紹介がベタ遅れになってしまっている。
野本醇さんは、主体美術と全道展の会員で、道内を代表するベテラン画家の一人。同ギャラリーでは長いこと、隔年で個展を開催している。つまり、新作発表の場であったのだが、1930年生まれという年齢もあってか、今回は、1956年から近作まで約30点を並べるという、回顧展方式の個展になった。
あらためて見直してみると、56年の「黒い風土」「黒い炎」などは、全面が真っ黒で、マティエールのみによって画面が成立している。当時全盛をきわめたアンフォルメルの影響が明らかな、激しい画風だ。
その後、真冬の風景や動物、人物がリアルに描かれた時期(70~80年代)を経て、再び抽象画に戻る。つまり、野本さんの画業は、抽象に始まり抽象に戻ってくるのである。近年の作は、円というか球がおもなモティーフになり、画面はどこか形而上的な雰囲気さえ帯びている。
たとえば、近作の「個の存在」など。浮かぶ数個の球(円)は、それぞれが個的存在であるとともに、相互に関係を有した存在なのだ。などと、考える。
では、野本さんは抽象画家なのかというと、そう話は簡単ではないのであって、やはり「北の箱舟」「春を待つ(家族)」といった70年代後半から80年代にかけての一連の作品があってこそ、絵画は現実の風土に根をもったのではないかと思う。これらの作品があったからこそ、抽象画は、単なるかたちや色の遊びに終わらず、現実の世界と接点を持ったものになったのではないだろうか。
2013年10月21日(月)~26日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
【告知】野本醇個展 (2011) ※年譜などあり
■野本醇展(2009年)
■野本醇個展(2007年)
■野本醇個展(2003年)
=いずれも作品画像なし
野本醇さんは、主体美術と全道展の会員で、道内を代表するベテラン画家の一人。同ギャラリーでは長いこと、隔年で個展を開催している。つまり、新作発表の場であったのだが、1930年生まれという年齢もあってか、今回は、1956年から近作まで約30点を並べるという、回顧展方式の個展になった。
あらためて見直してみると、56年の「黒い風土」「黒い炎」などは、全面が真っ黒で、マティエールのみによって画面が成立している。当時全盛をきわめたアンフォルメルの影響が明らかな、激しい画風だ。
その後、真冬の風景や動物、人物がリアルに描かれた時期(70~80年代)を経て、再び抽象画に戻る。つまり、野本さんの画業は、抽象に始まり抽象に戻ってくるのである。近年の作は、円というか球がおもなモティーフになり、画面はどこか形而上的な雰囲気さえ帯びている。
たとえば、近作の「個の存在」など。浮かぶ数個の球(円)は、それぞれが個的存在であるとともに、相互に関係を有した存在なのだ。などと、考える。
では、野本さんは抽象画家なのかというと、そう話は簡単ではないのであって、やはり「北の箱舟」「春を待つ(家族)」といった70年代後半から80年代にかけての一連の作品があってこそ、絵画は現実の風土に根をもったのではないかと思う。これらの作品があったからこそ、抽象画は、単なるかたちや色の遊びに終わらず、現実の世界と接点を持ったものになったのではないだろうか。
2013年10月21日(月)~26日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
【告知】野本醇個展 (2011) ※年譜などあり
■野本醇展(2009年)
■野本醇個展(2007年)
■野本醇個展(2003年)
=いずれも作品画像なし