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■第44回道都大学中島ゼミ展 版と型をめぐって(8月19日まで)

2007年08月17日 23時50分49秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 
 斬新なシルクスクリーン・染色作家を次々と輩出している中島ゼミの学生と卒業生による展覧会。
 ことしもバラエティにとんだ作品がならんでいます。

 冒頭の画像で、会場の中央に置かれているのは、JAMANIさんの手になる人形「モンタージュ」と「立体 自画像」の2体。
 手首なども動く精巧なものです。
 「モンタージュ」のほうは、ステンドグラスの写真をコラージュしたものをドレスとして着ています。
 それにしても、JAMANIさんはつぎになにを出してくるか、まったく予想がつきませんね。


 以下、版画などは、額にアクリルやガラスが入っていて周囲のものを反射するため、写真のうつりもいまひとつですが、ご容赦ください(←言い訳)。

 つぎは関谷修平さん。
 昨年、第7回BHARAT BHAVEN 国際版画ビエンナーレ(インド)でみごとグランプリを受賞した人です。 



 うーん、関谷さんの作品って、どうがんばっても写真にうまくうつらないんですよ。怒涛のモアレ攻撃!
 細かい等間隔の線を画面いっぱいに引き、それを少しずつずらすことで、ふつうのシルクスクリーン作品にはみられない物質感のようなものが表現されています。
 画面左の「深呼吸」は、いままでなら「これ以上線を重ねると黒くなるから」という理由で、版をかさねるのをやめていたような版に、さらに白い線を重ねることで、めまい感?がいっそうアップしています。
 ほかに「いってきます」「動転」「blue」「匂い」。




 抽象作品やポップな作風のわりと多かった中島ゼミですが、舘内美久さんは、絵本の挿絵を思わせるやさしい調子です。
 上の画像は「雨森」。ただ甘いだけではなく、家並や森のユニークな描写に、想像力のはばたきを感じます。
 「時の粒」は、砂時計がメーンのモティーフ。
 「綿の夢」は、羊の群れと少女を描いており、まるっこい羊がかわいらしいです。
 ほかに「蜜あそび」「春の庭」「朝のひかり」と、計6点も出しています。




 犬飼康太さん。
 黒い地が強い印象をあたえます。
 右から「それではみなさんさようなら」「茜」「焼けた妻か子」と、題も強烈です。(4点目は、クレヨン画で、題がない)
 「茜」は、今回の中島ゼミ展の案内状にも採用されました。人物画と装飾性とを併せ持った異色の作品です。
 それにしても「焼けた妻か子」って、すごい題です。原始絵画のような曲線で女性が描かれています。頭上には、飛行機の模型がいくつもつり下げられています。なにか、精神が画面にふるえているようです。


           

 岩井玄さんの「大乱闘」(右)と「リコピン」。
 「リコピン」は旧作。
 スラップスティックのマンガを思わせる楽しい作品。


           

 岩本奈々さんは小品が4点。
 「cannel C」「TINT」「INK OUT」「Cannel 0.1」
 「INK OUT」は箱型の作品で、画像では中央にあります。


           

 
 石井誠さんは、大小とりまぜ、なんと12点も出品。すごく意欲的です。
 先日、茶廊法邑でひらかれたアワードで賞を得た「coccon」や、4プラホールでのグループ展で出品されていた楽しい小品「カタミチハッピャクエン」、油彩の小品「底には」、抽象的なフォルムがおどる鉛筆画「cell bolt III」、縦に線が走り木版画のようなテイストをかもしだす「雨乞」など、バラエティにとんでいます。
 画像は「干渉」にしました。都市の風景を、直線を生かしてダイナミックに図像化しています。信号、群集、ビルなどが力強く、また、要素の稠密(ちゅうみつ)もうまく計算されています。
 ほかに「沙の果実」「SYNDICATE」「イヌノメ」「クドリャフカ」「凍譜」「ウリイタ」。


           

 昨年の、札幌芸術の森美術館での「北の創造者たち Lovely」にも出品した、ご存知、森迫暁夫さん。
 今回は銅版画に挑戦しました。もともと細密な世界を作り出す人でしたが、ますますち密になっています。
 「コトバト」「さむがりなキヨン」がエッチング、「野はらに器。白いさくらんぼ」「ドーナツ」がアクアチントではないかと思います(が、自信ない…)。


           

 左は橘内美貴子さん。
 明度が高く、清新な画面です。
「ナツカゲ」「ナツイロ」「ナツモヨウ」の3点。


 染色にうつります。

           

 藤井エリさんは、美工展では、「藤井映莉」さん名義だったりする人だと思いますが、今回はそのときの受賞作などを出しています。
 ただし、媒染を変えているので、色はかわっています。
 右の「目玉サイダー」はインド綿に染めたもの。
 「パチバナとミツバチ」は、セイタカアワダチソウを用い、6回も染めています。
 ほかに「マトウオ」「開花」。


           

 篠木正幸さんも美工展でユニークな作品が評価されています。
 今回の「アダルトチルドレン」は、アポロ11号で月面に到着した宇宙飛行士の図像ではないかと思いますが、題との関聯はよくわかりません。
 ろうけつ染めとシルクスクリーンの併用。刷毛で色を着け、蒸してから、ガソリンで洗うのだそうです(技法に暗いので間違ったことを書いていたら、すいません。指摘してください)。

           

 篠木さんの画像の右にうつっている藤井さんの作品の拡大図。
 一見、よくある装飾的な模様に見えて、かわいらしいキャラクター的な感じも併せ持った作品だということがわかります。


           

 最後は、知られざる名作マンガ「ワラビモ」の作者、ミカミイズミさんの「ソラニンの夕べ」です。
 2枚ぐみで、左右はちがったものに見えますが、じつはおなじ型をつかっています。ジャガイモの実を擬人化した模様がおどる、たのしい作品です。

 ほかに、松本直也、小菅結成、岡野郁子、佐藤郁美、石田恵祐、栗本優紀、風間雄飛、久須田麻子、北岡蘭、須藤由希子、近藤歩未、杉本真衣、柚原一仁、烏一匹、高橋龍弥、PAUL、藤林剛、八鋤淳二、青木政巳、大泉力也、増井和人、兼平浩一郎の各氏が出品しています。


07年8月14日(火)-19日(日)10:00-18:00(初日13:00-)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)

□サイト

第42回展(06年12月、画像なし)
■第40回展(05年冬)

岩本奈々展(07年5月)
NANA iwamoto SOLO exhibition(07年3月)
関谷修平個展(06年7月)


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2 コメント

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記事掲載ありがとうございます (石井 誠)
2007-08-19 08:09:12
2度もお越しいただきありがとうございました!
しっかりお会いできて嬉しかったです。

そして早いエントリ掲載ありがとうございます!
早速印刷してゼミ展の方で皆と読みつつ、話しつつ次のゼミ展へつなげていきたいと思います。

ありがとうございました!
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こちらこそありがとうございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-08-20 22:50:26
 石井さん、お礼を申し上げなくてはならないのはこちらのほうです。

 印刷ですかあ。照れくさいです。。。
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