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■河口真由美展―氷の溶けるスピード■河口真哉インスタレーション作品展 言葉の雨が心の中にいつも降っている。(後編)(2024年11月6~10日、札幌)

2024年11月10日 14時41分06秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 いま札幌で最も精力的に制作・発表を続けている画家のひとり河口真由美さん。コンチネンタルギャラリーでの個展は3年連続となりました。
 そのほか、今年だけでも春に、南区が札幌芸術の森工芸館で開いた「南へモンパルナス」で大作を発表する一方で、素材としての写真拡張展 ~写真か?vol.4~でもインスタレーション作品を発表。さらに7月には西区のカフェ北都館ギャラリーに小品を並べ、9月には南区のカフェで個展を行い(これは筆者未見。その際に行ったギャラリートークの映像が今回の個展会場で流れています) 、道展にも会友として出品しているのですから、驚くしかありません。
 実は、上で列挙した展覧会で発表した作品は今回も並んでいます。つまり純粋な新作ばかりではないのですが、会場などが変わると、やはり見え方などはずいぶん変わってきます。

 冒頭画像は「素材としての写真拡張展」で発表した「ヒカリガの群れ」。
 120号ぐらいありそうなキャンバス(大きさをちゃんと取材してくるのを忘れて申し訳ありません)と、同じ大きさの板30枚を組み合わせています。
「素材としての…」では絵の前をふさぐようにつるされていた板は、多くが右側に寄せられていて、今回は画面を隅々まで見ることが可能になっています。
 絵と板のいずれにも、カタツムリやトカゲ、セミなどの写真が刷り込まれていて、人によっては
「わっ、気持ち悪い」
と後じさりするかもしれません。
 そこが作者の狙いで、作品自体が、凝視させる要素とそれを阻む要素を併せ持っているといえると思います。凝視を阻むといっておかしければ、遠くから離れて見せる要素といっていいかもしれません。この両義性はさまざまなアートにもいえそうです。
 ちなみに、絵のほうは「エマニエル夫人」の有名な図像を元にしているそう。ポルノグラフィも、凝視と嫌悪の双方の態度を誘因する画像である点は共通しています。
 
 ただし、この絵は別として、河口真由美さんの抽象的な絵には必ずと言っていいほど「元ネタ」があるのですが、ご本人に尋ねると、けっこうな確率で、脱力するようなこたえがかえってくる場合が多いのです(笑)。
 そこは「知らぬが仏」で、純粋に色や構図を楽しんで、想像をたくましくするほうが良いかと思います。

 さらに付けくわえると、虫やトカゲの写真はネットから拾ったものではなく、自分で撮影したものだそうで、そういう努力を惜しまないのもこの作家らしいと感じます。
 

 「南へモンパルナス」で発表した3枚組の大作「ミナミクドライブ」。300号相当はありそうです。
 これは珍しく、描かれているモチーフが、信号機やシカ、鳥、アオダイショウなど、だれにでもわかるようになっています。
 この作家が住んでいる、自然豊かな札幌市南区を表現しています。
 
 
 新作の小品「戻れ!」。
 あるとき、路上でひかれて死んでいたキツネを見て描いたとのことです。
 
 魂や記憶が光線のようにキツネの体から離れていくのか、それとも戻っていっているのか、わかりませんが、印象に残る場面です。

 ほかに「会議中」「ぼくなりのこだわり」「かもされる白と黒」など。
 会場にいた別の人に指摘されて気が付いたのですが、以前は頻出していた縞模様が、今回の出品作からは姿を消していました。

 会場では画集を2800円で販売しています。
 また小品などが当たるくじ引きも行っています(筆者はティッシュをもらってきました。昔からこういうのはあまり縁がないのです)。
 

 夫の真哉さんが、もう一室のほうで、インスタレーション作品展を行っています。
 壁の両側に、地下通路を歩く人を写したモノクロの動画映像がループで投影されています。
 足音は別に録音したらしく、わずかに映像とずれています。
 屋根がある通路なのに、主人公が傘をさしているのがミソです。

 その間には、人のかたちに切り抜いた物体が配されています。
 

2024年11月6日(火)~10日(日)午前10時~午後6時(最終日5時)
コンチネンタルギャラリー(札幌市中央区南1西11 コンチネンタルビル地下)

過去の関連記事へのリンク
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・中央バス、ジェイアール北海道バス「北1条西12丁目」から約490~570メートル、徒歩7分
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