大がかりな美しいコンピュータグラフィックスでインタラクティブアートを展開する日本の「チームラボ」の展覧会が札幌でひらかれている。
ファクトリーホールの「踊る! 美術館」、アトリウム1階の「学ぶ!未来の遊園地」に各3点が展開されている。
会場は撮影オーケーだから、こうやってブログに写真をはることもできるし、チームラボの作品は大量にユーチューブにアップされているから、アウトラインをつかむことはできる。
追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 - Light in Dark
でも、こればっかりは、実際に体験しないと、わからないと思う。
この作品は、五つの横長のスクリーン(奥、中、手前)に映像が投影されるもので、アニメ「超時空要塞マクロス」などで有名になった「板野サーカス」へのオマージュだという。
たしかに、視点が自在に移動する立体的な描写を見ていると、船酔いしそうだ。
光線が走り、カラスが舞う。宇宙空間が見る人を取り囲むように。
テレビなどでは「学ぶ! 未来の遊園地」がよく紹介されていることもあって、子ども向けのイベントだと思っている向きも少なくないようだが、大人が行っても楽しめる。
というか、「踊る! 美術館」のほうは、主催者による長大なテキストが会場にパネル展示されており、大人こそが見るべきだと思う。
西洋的な透視図法による世界認識を相対化する、興味深いテキストなのだが、会場ではなかなか落ち着いて読むことができないので、これは図録か小冊子にして、じっくり読めるようにしてもらいたかった。
順番が前後したが、最初に見られるのは「花と人、コントロールできないけれども、共に生きる」。
さまざまな花の絵が投影された壁に手をかざすと、花が開いたり散ったりする。
二つめの作品「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」。
これは、映像で上からおりてくるさまざまな漢字(花、虹、金など)に手をかざすと、それに対応する動画が画面のどこかに現れるというもの。
いったい、どういう仕組みなんだろうと、あらためて考えさせられる。
筆者は同作品を茨城県の県北芸術祭で見ており、しかも、札幌では1面のスクリーンだったのに対し、茨城ではこの3倍ほどの広さの部屋をぐるりと取り囲んでいたので(しかも観客は数人)、正直、今回はちょっと物足りなかったです(笑)。
茨城の展示に比べて今回不満だったのは、それぞれのスクリーン(投影壁面)の高さが足りなかったこと。
これが足りないと、「作品に包み込まれる」という感覚が不足するのだ。
とはいえ、チームラボ以外では、まず体験することができないアートであることは確かだ。
さて、アトリウム奥の「学ぶ! 未来の遊園地」のほうは、それほど広い空間ではなく、大勢の親子連れでごった返していた。
子供向きなのは、こちらの会場のほうだろう。
とくに人気だったのは「お絵かき水族館」。
クラゲやイカ、カメなどの輪郭があらかじめ描かれた紙が用意されており、これにクレヨンで自由に絵を描いて、係員に渡す。
係員がスキャナーで取り込むと、壁面の映像に、さっき描いたクラゲやイカが登場して、ランダムに泳ぎだすのだ。
筆者が描いたクラゲも、その後数分間、横長の大きなスクリーンでゆらゆらと漂っていた。
しだいに右へと移っていき、画面から姿を消して、あらたにほかの人が描いた魚介類に場所をゆずっていくのだ。
これは「つくる! 僕の天才ケンケンパ」。
ケンケンパという、子どもの遊びとインタラクティブアートを合体させたもの。
自ら、ケン、ケン、パのパターンを作ることもできるし、作らなくてもケン、ケン、パを足で踏んで遊ぶこともできる。
さすがにこれは、大人はやっていませんでした。
靴をはいたまま体験できるのがポイント高い。
海外では「靴を脱ぐ」という作品は提示しづらいというのも一因なのかもしれない。
ほかに「小人が住まうテーブル」も、大勢の人が、天井から投じられる映像に戯れていた。
いずれにしても、ここに現代アートの最先端のひとつがあるのは間違いない。
油絵もブロンズもかつては最先端のテクノロジーだった。それを思えば、いま現在の最先端テクノロジーを駆使した作品を見ないという手はない。
しかも、最先端であることによって、従来の「ものの見方」をアップデートしようという意図が込められた作品なのだから。
(追記)両会場を結ぶトンネル内にも作品があります。お見逃しなく。
2017年1月1日(日)~17日(火)午前10時~午後8時(入場午後7時半)
第1会場:サッポロファクトリーホール、第2会場:サッポロファクトリー アトリウム1階(札幌市中央区北2東4)
一般1200円、小学生以下700円
親子ペアチケット1200円、アフター5ペアチケット(午後5時以降大人2人)1600円
http://www.team-lab.com/
□札幌展のサイト http://exhibition.team-lab.net/sapporo/