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■無言館「祈りの絵」展 (10月18日で終了)

2009年11月16日 23時50分17秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 いつかの北海道新聞で、無言館の館長である作家の窪島誠一郎さんが、講演で次のように述べていたという記事を読み、強い感銘を受けた。

 無言館が「反戦平和を訴えている」といった「わかりやすい言葉」で語られることには強い違和感を覚える。深い思考がないまま「情報をうのみにする人たち」の姿は、戦時下の熱狂とも重なるからだ。流されず「足を止め、自分を見つめることが大切なんです」

 もし、無言館に収められている絵が、反戦平和を訴える内容だったら、ここまで深い感銘を呼び起こすことはなかったと思う。
 若くして前途を絶たれた画学生による、普通の絵(ほとんど習作といってもよい)だからこそ、彼らの、永遠に失われてしまった未来に思いをはせるのだろう…。

 観衆は多いにもかかわらず、沈黙が支配し、ときおりすすり泣きが漏れる会場で、そんなことを考えていた。

 膨大な戦争の犠牲者の中で、画学生だけが特権的に扱われる理由はないだろう。
 無言館は、そういう施設ではないのだと思う。
 画学生である前に、どこにでもいた、有為の青年であり、そういう普通の人が次々と命を落としていくことの悲惨さを、文字通り「無言のうちに」物語っているからこそ、ここに並んでいる絵には意味があるのだ。

 それぞれの画学生に、死亡した場所と日時が記されている。
 それを読むと、戦場で華々しく散った者は意外と少なく、武器を手入れしている最中の事故だったり、戦病死だったりといった例が非常に多い。
 「8月15日」の直前に落命した者もいる。
 もちろん、敵に撃たれて死んだ方が偉いというつもりはない。ただ、彼らの無念を思う。

 強く感動したのは、同時に展示されていた、画学生たちが戦地から銃後へ向けて送ったはがきの数々である。
 言いたいことがたくさんあったのだろう、小さな文字でびっしりとつづられている。絵が添えられていることも多いが、さすがにそれらは上手だ。
 細かい文字を読んでいると、現代人にこれほど流麗な文字と文章を書くのはおそらくムリだろうと感じる。
 皇国教育の復活は絶対にイヤだけど、しかし現代の教育と文化の失ったものの大きさに愕然がくぜんとしたのだった。

 
2009年9月12日(土) ~10月18日(日)午前10:00-午後7:00(入場-午後6:30)
JRタワープラニスホール(中央区北5西2 札幌エスタ11階)

一般800円(600円)、高大生600円(400円)、中学生以下無料
カッコ内は前売りと10人以上の団体料金


戦没画学生「いのちの詩絵」展(2003年、画像なし)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
それにしても (エゾ三毛猫)
2009-11-17 07:40:04
いつ無言館のことを
アップするのかなと
待ってました。

ちょっと気軽には、
コメントできないしね。

風邪が治まったら
感想を書きたいと
思います。
返信する
あらら (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2009-11-17 20:47:20
エゾ三毛猫さん、こんにちは。
風邪ですか?
インフルエンザじゃないと、いいですね。
忙しくなる前にしっかり治してくださいね!
返信する

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