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「0地点」オープンスタジオ (2022年5月7、8日、札幌)

2022年05月08日 17時22分13秒 | 情報・おしらせ
 札幌の中心部から東側には、東区苗穂町とは別に、俗称として「苗穂地区」と呼ばれる一帯があります。おそらく、苗穂駅の出入り口が、苗穂町のある北側ではなく、北3条通りのある南側に面していたのも一因でしょう。
 つい十数年前までは古い住宅や飲食店などが建ち並ぶ、かつて工場街だった頃(サッポロファクトリーは以前、サッポロビールの工場でした)の面影を色濃く残した地区でしたが、苗穂駅の移転改築なども手伝って、いまではタワーマンションや高層住宅の多い街に変貌しつつあります。
 その一角に、若手アーティストが集まり、築96年という老朽化した木造家屋を改修して「0地点」というアトリエをつくっています。完成前に、2日間にわたり、内部が一般公開されました。

 場所は、水穂大橋から現苗穂駅へ向かう通りと国道12号の交叉点(タワーマンションとファミリーマートがある)からすぐ近くで、国道12号から北側に路地を入って20メートルほどです。

 7日には、著名なインディペンデントキュレーターの長谷川新さんも、わざわざこのアトリエ開放にあわせて札幌を訪れていました。

 
 さて、会場の玄関で、500円で販売していた ZINE(小冊子)によると、参加しているのは7人のようです。
 アトリエとしてかなり使える状態になっている一角もあれば、屋外との間にほとんど壁がないような場所があったり、地下に向かう階段を利用して映像作品が上映されていたりで、完成途上のおもしろさをじゅうぶんに体感できました。
 階段の奥に投影されていた映像や、廊下などあちこちに置かれていたパネル作品は、キャプションはありませんでしたが、上記の7人には入っていない大橋鉄郎さんのものにしか見えません。パネルの作品は、昨年の網走市立美術館での個展で展示されていたものと同じシリーズです。

 また、0地点の北1条側にある木製品ギャラリー WOOD LINK の方の展示もあるようで、太い枝2本を立てた素朴な作品からは、水の流れる音がしていました(これは、どういう仕掛けなんだろう?)
 7人の作品は、現代アートにはっきりと軸足を置いたものといえそうです(技法が、というよりも、バックボーンとなる考え方において)。
 橘雅也さんという方の映像作品は、高級ブランドショップの玄関先に小さないすを出してそのブランドのロゴマークを描くという行為を、引いた位置から固定撮影したもので、鉛筆でロゴが胸の部分に描かれたTシャツも一緒に展示されていました。問題意識としては、かつて中村政人がマクドナルドのロゴを素材に取り組んだシリーズを想起させるとはいえ、なかなか興味深い作品でした。

 なお、WOOD LINK 内にも、0地点メンバー堀江理人さんの絵画の小品が展示されています。


 自分は、ドラクエ通信ヤマグチさんが、かつて山鼻地区にあったフリースペースPRAHA を引き合いに出してツイートしていたことに、共感しました。



 ちょっと話がそれるようですが、山鼻、苗穂、桑園、すすきのの4地区は、正式な住所としては存在しないのに、なんとなくこのあたりだという共通認識が札幌市民にあるところが、共通しています。

 おなじ苗穂地区で、ここからあるいて10分ほどの所にある naebono なえぼのアートスタジオとあわせ、札幌の新しいアートの発信基地になりそうな、そんな予感がします。


 以下、モルタルやサイディングを施していない、古来の木造家屋についての余談。
 札幌で古い木造家屋といえば、ことしで築100年のギャラリー犬養(豊平区豊平3の1)が有名です。
 市民ギャラリーや中央体育館(現存しない)にほど近い大通東5と、「0地点」のある北1東10は、私見では、札幌の中心近くにあって「二大・木造家屋の多い一帯」でした。
 2022年現在、大通東5の木造家屋群はほぼ全滅。北1東10も「0地点」などを残すのみとなっています。

 筆者も1974年までは似たような家に住んでいたので、親近感がわいてくるのです。

 「0地点」の建物も、札幌五輪の聖火を歓迎する小旗(1971年のもの)が置いてあったり、ラッセンのポスターが貼ってあったり、拓銀の平成10年(1997)のカレンダーがあったり(絵は砂田友治さん!)、作品もさることながら、そういう細部が楽しかったりします。

 1990年代ころまでは、菊水や豊平、桑園などにも、戦前の古い木造の家が残っていましたが、こちらも非常に数が減っています。


2022年5月7日(土)、8日(日)午前11時~午後8時
スタジオ0地点(札幌市中央区北1東11)

□公式ツイッター @0_chiten_



・JR苗穂駅から約330メートル、徒歩5分

 ・「時計台前」(SCARTS のあるビルの on ちゃんコーナーのすぐ前)からジェイ・アール北海道バスか中央バスに乗り、北1条東10丁目で降車、すぐ(約30メートル)。(1時間に5、6本程度)
※画像は、北1条東10丁目の、札幌駅前行き停留所(つまり反対側のバス停)。ここまで180メートルほど


・バスセンター地下から中央バス「東6 札苗線」(1時間に2本)に乗り「苗穂駅」降車、約320メートル、徒歩5分
・札幌駅前から中央バス「56 東雁来線」に乗り「苗穂駅」降車。1時間に1本

・地下鉄東西線「バスセンター前」から約970メートル、徒歩13分

※アリオ、サッポロビール園から徒歩10分余りです


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