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中江紀洋さん(彫刻家)死去

2021年05月20日 15時03分16秒 | 情報・おしらせ
 北海道新聞2021年5月20日「おくやみ」の釧路・根室の項にある中江紀洋さんは、道内を代表する彫刻家・立体造形作家の中江さんではないかと思われます。
 77歳でした。

 中江さんは釧路生まれ。
 武蔵野美術大の卒業後、釧路に戻り、父親の調理師専修学校(現在は閉校)を継ぐ一方で、創作活動に取り組んでいました。
 自由美術と全道展の会員でしたが、1996年に退会しています。

 筆者が印象に残っているのは、まず98年と2004年に札幌のコンチネンタルギャラリーで開いた個展です。
 知り合いの歯科医に譲ってもらったという歯形を、黒い木の棚にひとつずつ並べたインスタレーション「未来への遺産」は、おびただしい人間の生と死を象徴しているようで、圧巻でした。
「歯型一個一個が何かしゃべっているような気がするでしょう」
 この話を中江さんに聞いたのは、もう25年前のことです。
 黒が基調の作品でしたが、ご本人はいたって愉快な方で「よく生徒から、作品は暗いけど先生は明るいねって言われるさ」と笑っていました。

 近年ではサケの遡上をテーマにした大作が印象に残っています。
 冒頭の画像は「回帰(終章)」。この冬、釧路芸術館で開かれた所蔵品展「旅とアート 巡る・還る」のトリを飾っていました。

 2011年には道立近代美術館と釧路芸術館を巡回する個展が企画されています。

 最近あまり札幌でお会いしなくなっていたのですが、近年は病気を患って人工透析をするようになったり、2012年にはアトリエを全焼して、自作のほか工具類も失ったりといった苦労をされていたことは、全然知りませんでした。
 
 かつて佐藤忠良さんから「がまんして50歳まで続けていれば仕事が来るようになる」と励まされたが、ほんとうにそうだった―と述懐していたことが、なぜか印象に残っています。
 あと、これはもう時効だと思うのですが、釧路芸術館のオープニングセレモニーでばったり会ったときのこと。道教委の人が、芸術館前の作品の作者を
「イタリアの巨匠」
と紹介したので、中江さんに
「知ってます?」
と聞いたら
「知らない」
と正直に答えていました。

 道東・釧路の美術界としては大きな損失なのは間違いありません。
 札幌彫刻美術館の「北の彫刻展」や、北海道立体造形展でも、欠かせない作家でした。

 ご冥福をお祈りします。


過去の関連記事へのリンク
旅とアート 巡る・還る(2021年2月6日~4月11日、釧路)=画像あり

【告知】交差する視点とかたち vol.5(2012年9月8~23日、札幌/11月30日~12月24日、釧路)
【告知】中江紀洋展 北斗の彼方へ (2011年2月5日~3月27日、釧路)

中江紀洋「未来」 釧路の野外彫刻(23)
題不明 釧路の野外彫刻(20)
中江紀洋「地殻交信機」 釧路の野外彫刻(13)

北海道立体表現展'08
北海道立体表現展’06
北の彫刻展2006
=以上、画像なし
中江紀洋展(2004年)


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