道内の高校で書を教える先生とOBによる展覧会で、毎年この時期に開かれている。
新年らしい気持ちにさせてくれると同時に、北海道書道展や毎日書道展ほど大規模でなく、社中展でもなく、バラエティーに富んだ作品が集まっているので
「ちょっと書を鑑賞したい」
という人にはうってつけだと思う。
宇野雉洞「心事一杯中」の前で目がとまる。
書いた人とこちらの呼吸が合ったような気がしたのである。
行書で、2字目の「事」はゆるやかな省筆が心地よく、最後の縦棒に入る前でふっと筆を持つ手の高さを落としたことが伝わってくる。そこから、急に線が太くなるからである。
そして3字目に入る前に墨を継ぎ、潤渇に意を用いていることがわかるのだが、といって、力んでいるのではなく、自然な呼吸なのだ。
最後の「中」は「事」を反復するような運筆。最終画の縦棒で全体を引き締めている。
となりの石田壱城「神妙」。
軸作品で、2字が別の紙に書かれ、斜めに配置している。
たしか奥さまが表装を手がけておられたはずで、それを思うとほほえましい作。
山田太虚「墨心」。
大字作品ではあるが、墨のしたたりは書き始めのところにあるだけで、力が入りすぎたところがない。一気呵成に書いてはいるが、書き流した感じはない。
年の初めに、心を新たにして紙と墨に向かい合った清新さが伝わってくる。バランスの良さは、さすがベテランとしか言いようがない。
参与として、田頭玄峰、若林徑竹の両氏も出品している。
以下、会員作品。
60人が1点ずつ出している。
諸橋めぐみ「リルケの詩より」
リルケは20世紀前半のドイツの詩人で、小説「マルテの手記」や、「ロダン」などでも知られる。
詩は
というもので、詩行の内容はもちろん、漢字大きめ、かな小さめのリズム感に惹かれた。
ただ、なぜ歴史的かなづかいなのだろう。
土井伸盈は、帯広で農家を営みながら歌人としても活躍する時田則雄の歌を取り上げた。
幼い孫にひそひそ話をしている、ほほえましい情景が浮かんでくる一首。
右上を大きく空白にした構成がおもしろく、書き出しの墨の滴が雪を連想させる。
同様の、上を大きくあけた配置は今野冲岳「北の大地ー」などにも共通する。
長澤玄來「雲心月性」
淡墨の行草書。ところどころで筆をとめたのか、墨がたまっているのが、おもしろいアクセントになっている。
本間太洲「深山幽谷」
正方形の作。突飛なところはないのだが、やわらかな運筆が、見ているこちらの心までやわらかく、ときほぐしてくれるようだ。
佐藤寿邦「虎」
大字。襲いかかってくるような迫力があり、一方でネコ類の生命感のようなものも感じられる。最終画は、まるで動物の脚のようななまめかしさがある。
今田朋美「海のこゑよ 風の聲よ ぼくのこゑを 乗せてゆけ」
二尺八尺より小さい縦長の紙に、2、3字ずつ横書きで書いた異色の近代詩文。
題材は、桐谷健太がCMで歌ったBEGINの歌の詞ではないかと思う。
割合としては漢字と近代詩文が多いが、かな、前衛、篆刻もある。
漢字も臨書と創作のいずれも出品がある。
2019年1月9日(水)~13日(日)午前10時(初日正午)~午後6時(最終日~4時)
札幌市資料館(中央区大通西13)
過去記事へのリンク
■第43回高書研展=北海道高等学校書道教育研究会・展覧会 (2018)
■第41回高書研展 (2016)
■第40回高書研展 (2015)
■第35回高書研(北海道高等学校書道教育研究会・展覧会)展 (2010)
■第32回高書研展 (2007)
・地下鉄東西線「西11丁目駅」から約290メートル、徒歩4分。「西18丁目駅」から約560メートル、徒歩7分
・市電「中央区役所前」から約420メートル、徒歩6分。同「西15丁目」から約430メートル、徒歩6分
・じょうてつバス「西11丁目駅前」から約330~390メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「教育文化会館前」から約230メートル、徒歩3分
(小樽、岩内方面行き都市間高速バス、小樽・手稲方面と札幌駅前を結ぶ快速・普通のバスの、全便が止まります=ただし北大経由小樽行きを除く)
・ジェイアール北海道バス「51 啓明線」(札幌駅前―北1西4―啓明ターミナル)で「大通西14丁目」降車、約350メートル、徒歩5分。ギャラリーミヤシタ、ギャラリー門馬へ直行する裏技
※駐車場はありません。周辺にコインパーキングが何カ所かあります
新年らしい気持ちにさせてくれると同時に、北海道書道展や毎日書道展ほど大規模でなく、社中展でもなく、バラエティーに富んだ作品が集まっているので
「ちょっと書を鑑賞したい」
という人にはうってつけだと思う。
宇野雉洞「心事一杯中」の前で目がとまる。
書いた人とこちらの呼吸が合ったような気がしたのである。
行書で、2字目の「事」はゆるやかな省筆が心地よく、最後の縦棒に入る前でふっと筆を持つ手の高さを落としたことが伝わってくる。そこから、急に線が太くなるからである。
そして3字目に入る前に墨を継ぎ、潤渇に意を用いていることがわかるのだが、といって、力んでいるのではなく、自然な呼吸なのだ。
最後の「中」は「事」を反復するような運筆。最終画の縦棒で全体を引き締めている。
となりの石田壱城「神妙」。
軸作品で、2字が別の紙に書かれ、斜めに配置している。
たしか奥さまが表装を手がけておられたはずで、それを思うとほほえましい作。
山田太虚「墨心」。
大字作品ではあるが、墨のしたたりは書き始めのところにあるだけで、力が入りすぎたところがない。一気呵成に書いてはいるが、書き流した感じはない。
年の初めに、心を新たにして紙と墨に向かい合った清新さが伝わってくる。バランスの良さは、さすがベテランとしか言いようがない。
参与として、田頭玄峰、若林徑竹の両氏も出品している。
以下、会員作品。
60人が1点ずつ出している。
諸橋めぐみ「リルケの詩より」
リルケは20世紀前半のドイツの詩人で、小説「マルテの手記」や、「ロダン」などでも知られる。
詩は
風はお前の
感覚から枯
葉のやうに世
界を奪ふ
というもので、詩行の内容はもちろん、漢字大きめ、かな小さめのリズム感に惹かれた。
ただ、なぜ歴史的かなづかいなのだろう。
土井伸盈は、帯広で農家を営みながら歌人としても活躍する時田則雄の歌を取り上げた。
雪を
食へばし
らゆき姫になるといふ
わが嘘を聴く耳やはらかし
幼い孫にひそひそ話をしている、ほほえましい情景が浮かんでくる一首。
右上を大きく空白にした構成がおもしろく、書き出しの墨の滴が雪を連想させる。
同様の、上を大きくあけた配置は今野冲岳「北の大地ー」などにも共通する。
長澤玄來「雲心月性」
淡墨の行草書。ところどころで筆をとめたのか、墨がたまっているのが、おもしろいアクセントになっている。
本間太洲「深山幽谷」
正方形の作。突飛なところはないのだが、やわらかな運筆が、見ているこちらの心までやわらかく、ときほぐしてくれるようだ。
佐藤寿邦「虎」
大字。襲いかかってくるような迫力があり、一方でネコ類の生命感のようなものも感じられる。最終画は、まるで動物の脚のようななまめかしさがある。
今田朋美「海のこゑよ 風の聲よ ぼくのこゑを 乗せてゆけ」
二尺八尺より小さい縦長の紙に、2、3字ずつ横書きで書いた異色の近代詩文。
題材は、桐谷健太がCMで歌ったBEGINの歌の詞ではないかと思う。
割合としては漢字と近代詩文が多いが、かな、前衛、篆刻もある。
漢字も臨書と創作のいずれも出品がある。
2019年1月9日(水)~13日(日)午前10時(初日正午)~午後6時(最終日~4時)
札幌市資料館(中央区大通西13)
過去記事へのリンク
■第43回高書研展=北海道高等学校書道教育研究会・展覧会 (2018)
■第41回高書研展 (2016)
■第40回高書研展 (2015)
■第35回高書研(北海道高等学校書道教育研究会・展覧会)展 (2010)
■第32回高書研展 (2007)
・地下鉄東西線「西11丁目駅」から約290メートル、徒歩4分。「西18丁目駅」から約560メートル、徒歩7分
・市電「中央区役所前」から約420メートル、徒歩6分。同「西15丁目」から約430メートル、徒歩6分
・じょうてつバス「西11丁目駅前」から約330~390メートル、徒歩5分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「教育文化会館前」から約230メートル、徒歩3分
(小樽、岩内方面行き都市間高速バス、小樽・手稲方面と札幌駅前を結ぶ快速・普通のバスの、全便が止まります=ただし北大経由小樽行きを除く)
・ジェイアール北海道バス「51 啓明線」(札幌駅前―北1西4―啓明ターミナル)で「大通西14丁目」降車、約350メートル、徒歩5分。ギャラリーミヤシタ、ギャラリー門馬へ直行する裏技
※駐車場はありません。周辺にコインパーキングが何カ所かあります