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■末次弘明個展 “mono” (2017年11月1~23日、札幌)

2017年11月23日 08時06分49秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 札幌拠点で、道教大岩見沢校で教壇にも立っている末次弘明さんの個展。
 タイトルの「mono」は、モノクロームなど、「単」という意味を示す接頭辞だろう。

 黒い顔料が、心臓のパルスのように生々しく揺れる大作が、床置きされている。

 その上に天井からあかりがつるされている。
 画家本人から話を聞いたわけではないので、意図は断定できないが、古い建物をリノベーションした会場の雰囲気とあいまって、なにか「生命」の輝きのようなものの暗喩ともとれる。

 以前、末次さんが岩見沢駅構内の小さなギャラリー「i-Box」で開いた個展で、燃えるろうそくをモチーフにしたドローイングの連作を発表したことを思い出す。

 細部まで作りこむタブローが悪いとはいわないが、絶え間なく揺れ動く生命という現象に対しては、ある種の即興的な感じを取り込めるドローイングという形式は、案外向いているかもしれないとそのときに思った記憶がある。末次さんはドローイングも版画も、よいと思ったらどしどし取り組んでいくタイプだと思う。

 壁面に並べられた版画には、木版画の新作がまじっている由。
 抽象画であるが、やはり床置きのタブローと同じように、躍動的なリズムのようなものの存在がつたわってくるようだ。


 会場に1個だけ、本物のリンゴが置いてあった。
 モノクロームの会場のなかで、そこだけが有彩色だ。
 いうまでもなく旧約聖書では「知恵の実」であり、また、セザンヌが繰り返し描くことで近代絵画の象徴ともいえる役割を担うようになった果実である。
 末次さんのモノクロームの絵画も生命の発露であろうが、このリンゴは色彩を有することで、とりわけモノクロームの世界を活性化させる一種の触媒のような存在になっているように感じられた。

 書いていてもなんだかもどかしい。
 末次さん、しばらくお話してないので、こんど話しましょう(笑)。


2017年11月1日(水)~23日(木)午前11:00~午後7:00、月・火曜休み
クラークギャラリー+SHIFT(札幌市中央区南2東1 MUSEUM)


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