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歌舞伎で用いられている「伎」という文字。
複数の辞書によると「技/技巧」とともに「技なす人」、またその「技」の中に盛り込まれた「滑稽さ」や「愉しむ/愉しませる」という「あそび」の要素も併せ持っています。「仲間」という意味も。
本展は11人の版画作家による展覧会ですが、版画というジャンルが一般にイメージする版材を刻み紙面へ「移す/写す」などといった「複数化/置換/間接的」という行為から現代では録音や映像、さらには記憶に刻み伝達・共有するといった展開へと「版」の解釈は大きく拡がっています。
版画作家ならではの「版」を介在させてこその「版」的思考の跳躍によるワザの饗宴。
愉しみ愉しませる空間の妙技をご堪能ください。
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…と、フライヤーや、会場の入り口に貼ってあったパネルには、書いてあります。
ただ、この「伎」という漢字が、最年長メンバー木村多伎子さんの名と重なるのは、すぐに気づくでしょう。
木村さんらによるこの版画グループ展は、2018年に第1回を開催。
隔年の予定でしたが、20年は新型コロナウイルス感染拡大のため21年に延期して開き、今回が3回目となります。
顔ぶれは少しずつ変わっており、今回は全員が道展関係者となっています。
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木村さんは国展と道展、北海道版画協会の会員。
昭和2年生まれなので、今年で96歳です。
国展の版画部は、かつては道内からの出品は木村さんぐらいでしたが、いまは大勢が出しています。
石川亨信さんによると、木村さんは施設に入っているため彫刻刀が使えず版画の制作はできませんが、ドローイングは今も続けているとのこと。
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左側の2点の、巨大なロール紙にドローイングを描いています。
右側が今年の新作。
年齢を考えると
「枯淡の境地」
とか
「余分な力の抜けた小品」
といった画風になりそうなものですが、そんなところはみじんもありません。
さまざまな花や草がびっしりと画面を埋め、力強さが伝わってきます。
ぱっと見ても、筆圧の強さは一目瞭然です。
新作の一部を拡大してみると、おびただしい数のスズメが、風景との組み合わせで、生き生きと描かれているのがわかります。
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その石川亨信さん(道展、北海道版画協会の会員)だけが、2カ所の壁面にわかれて展示しています。
画像では、左側と右側。
いずれも2枚組で「凹凹に」。
微妙な気配を封じ込めたような抽象作品です。
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出品者のなかで、内藤克人さん(国展、道展、北海道版画協会の会員)の作品撮影に失敗してしまいました。
この画像は、フライヤーに印刷されていたものです。
出品作は、次の3点がリトグラフ雁皮刷りです。
「とぶかたち~回帰 2023-1」
「とぶかたち~回帰 2023-2」
「とぶかたち~回帰 2023-3」
色の面ではなく、あくまでシャープな線の組み合わせによる躍動的な画面は、さすが建築家だと感じさせるものがあります。
「FAT OLD SUN」「回帰」という2点のドローイングも出品。
前者は、英国のプログレッシブロックを代表するバンド、ピンク・フロイドが名盤「原子心母」(1970)に収録した曲のタイトルと同じですね。
早川尚さん(国展、道展会員)。
一時、銅版画制作を休んでいましたが、木版画で復活したのは喜ばしいことです。
黒を基調とした静かな世界。
「聖」
「奏 II」
「朝霧」
「奏」
早川さんの画像も見当たらず。申し訳ございません。
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種村美穂さん(道展、北海道版画協会の会員)。
カラフルでポップなシルクスクリーン。
「easily influenced」
「i feel beteer」
「peace of mind」
「i wish」
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水野恵子さん(道展会員)はコラグラフという珍しい技法を使っています。
「水・日・花」
「水の遊び」
「水圏 II」
「水圏 III」
「静かなる」
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神田真俊さん(道展、北海道版画協会の会員)。
ミクストメディア、シルクスクリーンによるモノタイプ作品。
「volcano」(同題2点)
「solvent form 1」
「solvent form 2」
道都大中島ゼミ出身者の「出世頭」のひとりでしょう。ポップなモティーフは影を潜め、抽象化が進んでいます。
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竹内博さん(道展会員)は木版画。
「なんてったってゴム長」5点と「クツクツ」
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泉谷進さん(道展会員)はデジタルプリント。
「風景」と題した作品。
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「Ame」シリーズを制作し続けている高野理栄子さん(国展、道展、北海道版画協会、小樽美術協会の会員、小樽市展委員)。
今回は大小11点を並べています。
まさに雨が降り始めるときの湿り気を折りたたんだような、繊細な画面です。
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福地秀樹さん(国展準会員、道展会友)。
「種子5」
「何も聴こえない」
「生成2」
「生成3」
卵のパック(容器)やギターなど身の回りのものを凝視して、木版画にしています。
日常性のなかにも、かたちへの鋭敏な感受性が伝わってきます。
こうして眺めると、風景などへのロマン派的な感覚とか、現代社会への批評的な視線とかとはあまり縁が無く、かたちや色を追究するモダニスム的な構えの作品が目立つように感じました。