槌本さんは札幌出身で、武蔵野美大でテキスタイルを学び、この春に卒業した若手です。この秋からスウェーデンに留学する予定だそうです。
札幌で初の発表・個展になる今回は、細長いギャラリー門馬アネックスの中央にどーんとテキスタイルを天井からつりさげたインスタレーションで、見ごたえ十分です(というか、ぜひ見てほしいです)。
作品は2点のみ。
近くの壁に、作品を女性がまとっているときの写真や、日英併記の詩がパネルに仕立てられて添えられています。
個展のタイトルにもなっている“The Dawn”に添えられた詩。
英語では、最後の行が
I pray for peace
になっています。
筆者は、もこもこした布を見ながら
「ああ、この作者にとって、世界は、このように立ち現れているのか」
と、感じていました。
それは、唐突な聯想かもしれませんが、初めて上野憲男さんの絵を見たときのことを思い出しました。
アーティストによって、世界の見え方、現れ方というのは、ほんとうにさまざまです。
石や豆をいったん織り込み、形状記憶させた布は、一般では考えられないほど凹凸がついています。
シルクオーガンジーやフェルト、真綿などを自在に継ぎ合わせ、場所によって極端に薄いところと厚いところが生じています。
色は草木染めで
「すおう・タンガラ/刈安・柘榴 ミロバラン 胡桃」
などの名がデータにしるされています。
近づいてじっと眺めてみても、布というよりは、大地がそこにあるみたい。
「夜明け」という題にふさわしい原初のおもむきがあります。
「まず、でこぼこした表面をさわって、楽しく感じてもらえれば」
と作者は言っているので、さわってもOKのようです。
そのあとで作品の持つ意味について考えてくれたら-ということのようです。
槌本さんの作品の場合、題も重要ですし、詩もワンセットです。
「題を後でつけるのっていやなんですよ」
すこしおおげさな言い方になるかもしれませんが、彼女の哲学が、題や詩に(もちろん、布にも)こめられているのでしょう。
その思想・哲学は、世界中を旅することによってつちかわれたのかもしれません。
ちなみに、もう1点は「trace」と題されています。
傷跡などがテーマのようです。
こちらも草木染めで、ごわごわした感じは“The Dawn”とよく似たインスタレーションです。
ポートフォリオに「the dawn」について書かれていたテキストに、筆者は強く感動しました。
引用します。
わたしたちはいつかかならず死にます。
死ねばすべてが無にかえるのであれば、わたしたちの生の意味とはいったい何なのか、わたしはいつも考えています。
“The Dawn”は、魂が輪廻し永遠に存在することを、ことばではなく、布で伝えようとしているのかもしれない。
そのようにして世界は日々新しくなるのかもしれない。
だとすれば、わたしたちが生きていることも、意味があるのかもしれない。
もっと長時間、会場にいて、布の凹凸と無言の対話を続けていたかったと思いました。
人間と世界の存在の根源にせまった力作です。
08年7月3日(木)-9日(水)11:00-19:00、会期中無休
ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ケ丘2)
・地下鉄東西線「円山公園」から、ジェイアール北海道バス「循環10、循環11 ロープウェイ線」で「旭丘高校」降車、3分
・おなじく「円山公園」から、ジェイアール北海道バス「円11 西25丁目線」で、終点「啓明ターミナル」降車、7分
・JR札幌駅・大通西4丁目から、ジェイアール北海道バス「51 啓明線」「53 啓明線」で、終点「啓明ターミナル」降車、7分
(ほかにも、南北線の中島公園駅、幌平橋駅から啓明ターミナルや旭丘高校へ行くバスの便があります)
札幌で初の発表・個展になる今回は、細長いギャラリー門馬アネックスの中央にどーんとテキスタイルを天井からつりさげたインスタレーションで、見ごたえ十分です(というか、ぜひ見てほしいです)。
作品は2点のみ。
近くの壁に、作品を女性がまとっているときの写真や、日英併記の詩がパネルに仕立てられて添えられています。
個展のタイトルにもなっている“The Dawn”に添えられた詩。
それは日常に蕩け
それは自然に溶ける
混沌と秩序の交わり
日が沈み また昇るように
生物は土に還り、また糧となる
古の世界に思いを馳せ
静謐を祈る
英語では、最後の行が
I pray for peace
になっています。
筆者は、もこもこした布を見ながら
「ああ、この作者にとって、世界は、このように立ち現れているのか」
と、感じていました。
それは、唐突な聯想かもしれませんが、初めて上野憲男さんの絵を見たときのことを思い出しました。
アーティストによって、世界の見え方、現れ方というのは、ほんとうにさまざまです。
石や豆をいったん織り込み、形状記憶させた布は、一般では考えられないほど凹凸がついています。
シルクオーガンジーやフェルト、真綿などを自在に継ぎ合わせ、場所によって極端に薄いところと厚いところが生じています。
色は草木染めで
「すおう・タンガラ/刈安・柘榴 ミロバラン 胡桃」
などの名がデータにしるされています。
近づいてじっと眺めてみても、布というよりは、大地がそこにあるみたい。
「夜明け」という題にふさわしい原初のおもむきがあります。
「まず、でこぼこした表面をさわって、楽しく感じてもらえれば」
と作者は言っているので、さわってもOKのようです。
そのあとで作品の持つ意味について考えてくれたら-ということのようです。
槌本さんの作品の場合、題も重要ですし、詩もワンセットです。
「題を後でつけるのっていやなんですよ」
すこしおおげさな言い方になるかもしれませんが、彼女の哲学が、題や詩に(もちろん、布にも)こめられているのでしょう。
その思想・哲学は、世界中を旅することによってつちかわれたのかもしれません。
ちなみに、もう1点は「trace」と題されています。
傷跡などがテーマのようです。
こちらも草木染めで、ごわごわした感じは“The Dawn”とよく似たインスタレーションです。
ポートフォリオに「the dawn」について書かれていたテキストに、筆者は強く感動しました。
引用します。
I drew out this theme“The Dawn”meaning the origin
of things from the keyword “primitiviness”which
I always have in my work.
The things human beings have primarily,the
primtive expressions and the principle conduct
connected with the beginning is a mix of chaos
and cosmos,and includes the earliest elements.
This theme “The Dawn” means three begingings,
the beginning of things and human beings,
the beginning of a new day,and reincarnation,
that is to say,death also means the beginning.
わたしたちはいつかかならず死にます。
死ねばすべてが無にかえるのであれば、わたしたちの生の意味とはいったい何なのか、わたしはいつも考えています。
“The Dawn”は、魂が輪廻し永遠に存在することを、ことばではなく、布で伝えようとしているのかもしれない。
そのようにして世界は日々新しくなるのかもしれない。
だとすれば、わたしたちが生きていることも、意味があるのかもしれない。
もっと長時間、会場にいて、布の凹凸と無言の対話を続けていたかったと思いました。
人間と世界の存在の根源にせまった力作です。
08年7月3日(木)-9日(水)11:00-19:00、会期中無休
ギャラリー門馬ANNEX(中央区旭ケ丘2)
・地下鉄東西線「円山公園」から、ジェイアール北海道バス「循環10、循環11 ロープウェイ線」で「旭丘高校」降車、3分
・おなじく「円山公園」から、ジェイアール北海道バス「円11 西25丁目線」で、終点「啓明ターミナル」降車、7分
・JR札幌駅・大通西4丁目から、ジェイアール北海道バス「51 啓明線」「53 啓明線」で、終点「啓明ターミナル」降車、7分
(ほかにも、南北線の中島公園駅、幌平橋駅から啓明ターミナルや旭丘高校へ行くバスの便があります)