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■札幌大谷大学芸術学部芸術学部美術学科 卒業制作展 (2018年1月24~28日、札幌)

2018年01月30日 18時17分27秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 油彩、日本画、版画、立体、写真、映像、グラフィックデザイン、情報デザインなど60人の作品。時間が無いので映像は見なかった。すみません。
 あらためて思ったのは、卒展を見てきちんと批評するのは、意外と難しいということ。

 それでも、専門学校であれば、卒業生は即戦力であることを求められているから、見た目の完成度などはそれなりの水準に達している。
 個人的な意欲や必然性もさることながら、「商品としていいデザインかどうか」が大きな意味を持つ。

 しかし、芸術系大学の4年生については、どうやって見ればいいのだろう。
 「4年間をかけて基礎的な技倆をしっかりと学ぶ」ことが大学の役目なのであれば、それ自体を否定するつもりはない。ただし、それだけの作品には、とくに興味は持てない。やはり、その人なりの独自性があるものでないと、このブログで紹介する意味は乏しいと思う。
 むしろ、完成度は低くても、個性が感じられる作品を見たい。それは、卒展であろうがなかろうが、関係ない。
 全体を通して言うことはあまり意味がないかもしれないが、まじめに先生の教えに従ってそれなりの完成度に達した作品を出している人が多い一方で、「こんなの見たことない!」という驚きが伝わってくるような作品は少なかった。

 「のびしろ」を、若い人の作品に見いだすということは、欠点を見つけてあげつらうよりも、はるかにむつかしいのだ。
 そして、いちばん大事なのは、技術や個性より、本人の「持続する志」だったりする。 
 大谷大の卒展を見ても、この60人のうちいったい何人が今後も制作を続けていくつもりなのか、正直なところよくわからない。こればっかりは周囲が「続けろ」「やめろ」などと強制することはできないし。


 なかでは、小車楓さんの版画「虫と蛙」が、かの「鳥獣戯画」の系譜に連なりそうなユーモアが感じられておもしろかった。カエルがボールのかわりにテントウムシをジャグリングしたり、遊び心がある。
 日本画の中川彰子さんは2点出しているが、「殻」が額縁のような作品で、「中心」という作品を取り囲んでいる。「殻」はレース編みのような模様をジェッソでかたどりしており、西洋的な意匠によって日本画の物質性・装飾性をとらえ直し考え直すという、なかなかに批評的なつくりになっている。


2018年1月24日(水)~28日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


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