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■斎門富士男写真展「地図のない旅」 (11月23日まで)

2008年11月21日 23時47分17秒 | 展覧会の紹介-写真
 「コマーシャルフォト」の編集長だった吉岡達夫さんのプロデュースによる写真展は、6月の大坂寛写真展につづき、ことし2度目となります。
 今回は、さいとうギャラリーのA室とB室で、まったく毛色の違う写真家による個展となっています。

 A室は1960年生まれ、伊豆の下田に住む斎門さんの個展。
 斎門さんの写真の、最大の特色は、カラープリントを自力で行っていることです。
 デジタルが急速に普及してきた近年を別にして、日本のプロ写真家はおもにポジフィルムで仕事をしてきたので、ネガカラーを使う斎門さんは異例の存在です。
 独特の色調は、「ニューカラー」とよばれたイーグルトンなどを思わせますが、彼の色調とも異なります。
 わざとらしい色味でもなく、デジタルのべったりとした画面でもなく、いったいどうやって言葉にしたらよいのか、困ってしまいました。しかし、おそらく、この色が、斎門さんご本人の記憶にもっとも忠実なのだと思います。


           

 展示されているのは、バラの花、西域や米国の人々のポートレイト、湘南などに住むふつうの女の子のヌードなどです。
 吉岡さんによると、斎門さんは奥さまとふたりでふらっと海外を長期旅行し、お金がなくなると日本に帰ってきて仕事をする-ということを繰り返していたそうです。米国では、英語のできる奥さまがまず話しかけて相手を安心させ、ポートレイトを撮っていたとのこと。
 ポートレイトは、オーギュスト・ザンダーのような即物的なものでもなければ、土門拳ほど接近してもおらず、これまたことばにするのがむずかしい独特の味わいを持っています。
 ヌードも、素人を使うという点ではアラーキーと共通していますが、彼ほど湿り気のあるエロティシズムを感じさせるものではありません。といって、まったく性のにおいがないというものでもなく、これまたどうやって言ったらいいのか…。


           

 筆者はどうしても風景写真に目が行ってしまいます。
 オーストラリアのピナクルズや、人気のない浜辺の夕暮れなどをとらえた写真を見ていると、個展タイトルの「地図のない旅」ということばがいかにもふさわしい-と思えてくるのでした。



2008年11月18日(火)-23日(日)10:30-18:30(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3 ラ・ガレリア5階 地図B


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