木枯らしの季節。
木枯らしとくれば鍋物。
鍋物といえば大きな鍋を大勢で囲んでワイワイ、ガヤガヤ、和気あいあい、湯気モーモーという風景を思い浮かぶ。
だが今はコロナ禍。
そういう賑やかな鍋はやめて、小さな鍋にたった一人、陰々滅々、ともかく陰気、陰鬱という風景を思い浮かぶ鍋もある。
小鍋は陰気が似合う。
一人で小鍋をつつきながら、手拍子なんか打って陽気に騒いでいたらおかしい。
陰気は陰気だけど、ただの陰気ではない。
孤高の気配が感じられる陰気。
その周辺には清貧、高潔の空気さえ漂う。
どことなく陰のある男、過去を背負った男が似合う小鍋。
シンプルでなければならない。
湯豆腐、これに尽きる
ポン酢、あるいは土佐醤油をつけて食べるのが好き。
豆腐一丁も食べれば腹いっぱい。
安上がりなおかずでもある。