2001年にニューヨークの在住していた者にとって911はやはり忘れられない日。今でもその一日24時間の記憶が鮮明に蘇ってくる。テロ発生後、日本を含め海外との電話が不通となり、家族からはいつになく心配されたものだ。航空機2機が突入した倒壊したワールドトレードセンターの地下鉄駅は毎日の通勤経路にあたっていたから、その日の出勤時間によっては巻き込まれた可能性もある。オフイスのあったマンハッタンをハドソン川越しに望むジャージーシティから見た、航空機の突入と2棟のビルの倒壊の瞬間は死ぬまで忘れることはないだろう。
テロ自体は1980-90年代ロンドンに在住時にもIRAの爆弾テロに頻繁に遭遇していたから驚くことはなかったが、911のそれは市民の犠牲者の多さ、同時多発という規模の大きさ、6機もの航空機乗っ取りによる乗客を巻き込む残虐さいずれにおいても空前絶後だった。
911は今や不吉な数字の一つになっているが、今年は事件発生から13年目、不吉な数字が重なる今日、そして、アル・カイーダに代わってイスラム国の台頭著しい現在の状況、さらにはオバマの当事者能力喪失の中で一日が平穏に過ぎ去ることを祈りたい。
このテロ事件で、当時ニューヨークでは、この世の中の何かが完全に変わった、それが何かはわからないが、とよく言われた。いまでも、911を契機に何かが変わったことは確かだと思うが、それが何なのかについてのはっきりした回答は出ていないように思う。ただ、これまでのところ、2001年から始まった21世紀が、テロの世紀になりつつあることは確かなようだ。
この年、地上から姿を消したワールドトレードセンターを追想する多数の写真集が出版されたが、その一つであるThe World Trade Center Rememberedの両表紙を。