初めてスコットランドを訪れたのは30年以上前になる。ロンドンからエジンバラへは国鉄で、そこからはレンタカーで一週間ほどかけて最北端までほぼ全域を走り回った。英語、といってもスコットランドの訛りは強烈で最初のホテルではほとんど理解できず、その抑揚や巻き舌のような発音に慣れるまでには時間がかかった。しかし、一旦練れてしまえば音楽的で心地よい響きだったことを思い出す。そしてエジンバラやグラスゴーの持つ重厚な文化は、イングランドにはない。
このシングルモルトウイスキー、Tomatinはその時、この蒸留所で買ったもの。10年物だが、今では40年物になっている(はず)。この蒸留所はその後、倒産や外資による買収など数奇な運命をたどった。1870年代のフランスの置時計の傍ではしっくりこないかもしれないが、時間が止まっているようなのは同じ。
このボトルを開けることはこれからもないだろう。