会社の会議でも、スクーリングでも、要約筆記の利用者は戦闘モードに入っています。要約筆記を武器に健聴者とチャンチャンばらばら渡り合おうとしているのです。
現に、要約筆記者をつけてもらうために学校と戦って、自治体と戦って、スクリーングの会場に要約筆記者が来ることになったのです。
そこへ、何とかワイヤレスシステムを使ってもらわなくてはと思って、担当者と初めて接したわけです。担当者は、いまさら講師に頼めないと考えて断ってきました。講師はR大学学長でしたから遠慮したかもしれませんが、こちらは講義の内容が分からなければ単位が取れないと思っているから必死です。
「いや、どうしてもこれを使ってもらわないと聞こえない」と言って、「じゃあ試してみましょう」ということになりました。ほぼ満員の教室でみなが見ている前で渡り合うわけですから、気合いが必要です。普通だったら気後れしてそうですかと言ってしまうかも知れません。
要約筆記者も一人は私のただならぬ気合を感じ取って、パッと紙を取り出してやり取りを書こうとしました。しかし、もう一人はそうでなかったのです。紙は利用者が用意することになっていたので私は席に取ってきて戻ると、何やら話しをしていて、その一人が名刺を受け取りました。名刺まで受け取ってどうするんだと怒鳴りたい気持ちでした。
その要約筆記者は利用者が主体ということを忘れ、面前で利用者から主体権を奪ったのです。
要約筆記者が毅然として、利用者と一体となった態度をしないと、利用者が周囲から甘く見られます。
どんな状況でもこの利用者のコミュニケーションに責任を持って対応するという気持ちがあれば、笑って対応は出来ないと思います。
要約筆記者に癒しを求める利用者もいます。声を掛け合っている様子も見かけます。そういう場面もあるでしょう。
しかし、世の中、聞こえないものが一人で渡り合おうとしたら、気合が必要です。少なくとも一身同体になって欲しい。
ラビット 記